(……なんで俺はこんな姿勢に?)
最初に思ったのがそれだった。俺は椅子に座りながら意識を失った筈だ。今回世界中を回ったのが相当負担かけたんだろうな……。
最初は日本を回って魔法少女達と出会い、そして元の少女に戻すと言う行為の繰り返し……時には敵対する者も現れたが、そこは懇切丁寧に話し合いで解決していった。彼女達を救う筈が、逆にこちらから彼女達を傷付けてしまうなんてもってのほかだ。そんな事をするぐらいだったら、気付かれずに相手の意識を刈り取ってやった方がまだ早いし、わざわざ話を持ちかけることもしない。
それをしないのは……俺が艦これの世界にいた時からだ。大切な人を誰1人死なせたくない。そして、傷付けさせたくない……甘い考えかもしれない。いくら頑張ったところで、誰かを傷つけてしまうかもしれない。でも俺は、その生き方を曲げたくない。
(そう思うからこそ、今の俺がいるんだ)
まぁそれはともかくとして、日本を離れて今度は外国の地を転々としていった。日本の国土は地球で見るとたったの0.3%だ。それでも1つの県に平均5人だ。それが世界全土まで拡大すると一体どうなるか……何十倍どころでは過ぎないと思う。
単純計算したらそんな感じだが、それでも1人1人にちゃんと接した。勿論その国の言語でだ。それで魔法少女が残る地は見滝原だけで、結界が機能してない所も見滝原だけだ。それ以外は全部やった。
にしても、ずいぶん無理したかもな……日本で1日だったのを、世界全土でたったの3日だ。キューピッチにも程がある。
だが、全部を俺がやったわけじゃない。魔法少女達を元の少女に戻したのは全て俺がやった事だが、その間に精霊達には世界各地の結界を張ってもらった。それで、俺のやる事が終わったら合流して結界を施す。
簡単に言えばそんな感じで、全てを俺がやったわけじゃない。しかしながら、この世界に行く前の俺だったら、絶対に1人でやってたな。精霊達が俺に向かって頑張り過ぎだと言っていたのが、何となくわかる気がする。それだからこそ、これからはもう少し頼っても良いんじゃないかって思ってる。
それでもまぁ、少し日が経ったらまた俺1人が〜って思ってるんだろうけど……
で、いつのまに俺は寝そべった姿勢で寝てるんだ? しかも顔の下には何か柔らかい物が敷かれているし、それ弾力性もあって……あぁ、また睡魔が……こんな所でノンビリとしているわけには行かないが……
(だが……たまには良いよな?)
こうして安騎尭はまた意識を失った。
side マミ
「ふぁ〜……よく眠れたわ」
安騎尭さんが帰ってきてまた眠ってしまったわ。後もう少しで退院できるってお医者さんは言っていたし、それに……
(私にはもう家族はいないけど……でも安騎尭さんがずっと私の側にいてくれるって、そう言ってくれた。これからは、安騎尭さんが私の家族になってくれる……と言う事で良いのよね? 本当は両親を失って悲しい気持ちもあるわ。でも、安騎尭さんとなら……)
そしてマミは目を開ける。どうやら座ったままの姿勢で眠っていたらしく、目を開けると病室の壁がまず目に移る。次に感じたのは、自分の両腿に安騎尭の頭が乗っかっている心地よい重みと、それを自分の両手が包んでいる事だった。
(そういえば安騎尭さんが気持ちよさそうに寝てたから私も寝てしまったのね)
そう思いながら安騎尭の顔を覗こうとする。彼女としては、まだ眠っているであろう安騎尭の寝顔を見るつもりでいた。ただそう不意に思ったから覗こうと思ったわけだが……
(……えっ?)
マミはどうやら、安騎尭が変化してしまった事に気付いてしまった。それも……
先程自分が不意に思った事が現実になってしまうとは予想外だった。
(あっ、でもこれはこれで……)
何かとマミは順応するのが早かった。
side out
……頭を優しく撫でられているような気がする。いや、撫でられているのか。
安騎尭は誰かに自分の頭を優しく撫でられている感覚で意識が覚醒した。そしてゆっくり目を開けると、そこには優しく微笑みながらこちらを見るマミの姿があった。
「あら、もう目が覚めてしまったのかしら?」
少し残念そうな顔をするマミ。しかしながら撫でる手つきは止めなかった。
「俺はどれくらい寝てたんだ?」
時計を確認すると、大体3時間ほど眠っていた。
「もうそんな時間になるのか……取り敢えず起き上が……ん?」
そこで安騎尭は異変を感じた。自分が来ていた服のサイズが、何故か大きく感じられ、少しダボついて感じた。それはズボンの大きさも同じようにいえた。
(疲れからこう感じるのか? いや、まさかな……)
そんな時、ある疑念を抱いた。この状況は……自分が力を使った事による代償によるものではないかと? 安騎尭は、元いた艦これの世界でも、シュヴァルツェスマーケンの世界でも同じような事が起きていた。急激に力を使い過ぎると、自分の体が縮んでしまうのだ。それも、人形サイズまでに……
だが、今回は人形サイズまで縮んでいない事ぐらいは分かる。ならば今回はどうなってしまったのか?
(あぁ……確認するのが億劫になって来た……でも確かめてみない事には先には進まないしな……)
そして安騎尭は恐る恐る自分の体に目を向ける。そしたら案の定……
「……身体が縮んだか」
確かに安騎尭の身体は縮んだ。元の身長が180後半の身長が、今では140後半ぐらいで、中学生くらいの身長になっていた。
と言うより少しどころのダボ付きではない……
「ふふ、そんな安騎尭さんも可愛いと思います♪」
「……マミちゃんは、俺が何なのかとか聞かないのか?」
「そうですね……確かにそこはとても疑問に思います。でも、安騎尭さんが私の事を助けてくれたのには変わりないと思いますし、それに言ってくれたじゃないですか。私を1人にしないって」
「……あぁ、確かにそう言ったな」
「だから、私は貴方が何者なのかについては聞きません。貴方が自分から言うまでは、私は貴方のことについて聞きません」
「……はぁ、そんなこと言われたら、隠してた俺が馬鹿みたいだな。なら、俺がマミちゃんのお父さんの知り合いっていうのも、嘘だって気付いてたかな?」
「何となく……ですけど」
「……どうやら俺は嘘をつくのは苦手だな。まぁ、回りくどいよりも正直に言った方が良いな」
そこで決心がついた安騎尭は、自分の正体とこの世界に来た目的を話した。
「そういう……事だったんですね」
「騙すつもりとか、そんな事は一切考えてなかった。だが、結果的にマミちゃんを裏切るような事をしたと思ってる。罪滅ぼしとか、そんな事で償える事でもないって思ってる。だから、俺にできる事なら、何だってする」
「……本当ですか? 何でもするって」
「あぁ。ただ、俺にできる事でなら……」
「そう……ですか……ふふ、分かりました。確かにずっといられないのは残念ですけど……安騎尭さんと一緒にいる以外に、私にも願望がありますから」
「願望……か。それで、俺は君の為に何をすれば良い?」
「えぇ、それも私の中では既に決めてあるんです。それに、私のお願いは1回だけで良いです」
「1回だけで良いのか?」
「はい。1回だけで……それで安騎尭さんには今から……」
そして……マミの口からとんでもない願い事が安騎尭に言い渡された。
「安騎尭さん……私の……
弟になってください‼︎」
「……えっ?」
何だか最近安騎尭のキャラがぶれている気がする。まぁこれだけ時間が空いてしまうと仕方ない(……のかなぁ?)
まぁともかくとして、安騎尭はマミから弟になれと言われたわけですが……実際彼はどうするんでしょうね?
それも私次第ですが……
と言うわけで、今回はここまでです。、