魔法少女まどか☆マギカ 〜諦めない心〜2   作:橆諳髃

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投稿が物凄く遅れて申し訳ありません……。

ゼミ関連の事などで忙しくしていたものですから……こちらの方がおざなりになっておりました。誠に申し訳なく……。

とまぁ謝罪はこの辺にして、4話ご覧ください。


4話 君は独りぼっちではない

あの後のことだが、救急車両と警察車両が来るまでその場にいた。現場保存のためというのもあるが、もう1つ訳がある。それは、今俺が介抱している少女だ。この事故においてこの子だけが生き残っていた。残念ながら、車に一緒に搭乗していた男性と女性については助ける事が出来なかった。

 

ここでも、この世界の修正力が働いているらしく、過去に死んでしまった人は生き返らせる事が出来ないという事なんだと思う。俺が少しでもここに来るのが早かったのなら、助ける事が出来たのかもしれない。

 

だが、過ぎてしまった事をいくら考えて言ったとしても、それが現実になる事はない。そう、悔やんでいても仕方がない。

 

だからと言ってこの子をこのまま放っておくという選択肢は存在しない。この子が目覚めるまでは、一緒にいようと考えている。それで救急車が来たために、俺はその子を救急車に乗せて一緒に病院まで行った。救急車に乗る際、保護者ですかと問われた。俺は迷わずに保護者ですと言って同乗した。病院に着いたとき、彼女はタンカーで運ばれて一応治療室へ、そして俺は治療室前で待つように言われた。それからわずか数分で医師が治療室から出てきた。

 

「巴マミさんの保護者の方でいらっしゃいますか?」

 

「はい、巴マミの兄ですが……」

 

「あぁ、お兄様でいらっしゃいましたか」

 

「えぇ、それで、妹の容体はどうですか?」

 

「はい、マミさんは未だに意識は戻ってはいませんが、外傷は全く見受けられませんでした。あんな悲惨な事故だったのがまるで嘘だったかのように……」

 

俺は嘘を吐いて彼女の兄だと言った。とっさにそう言ったが、少しばかり心が痛かった。だが、無関係の奴、それも事故現場にいなかった奴が付き添うのはおかしいと思ったためにそう言った。

 

それから医師と少しばかり話して、それが済み次第彼女の病室に向かった。そこは個室で、ベット意外だと液晶テレビやイスなど、簡単な家具が置かれていた。そしてベッドには、巴マミ……いや、ここからはマミちゃんと呼ぶことにしよう。マミちゃんが規則正しい息遣いをして眠っていた。点滴はうっているものの、見る限りではどこにも悪そうなところはない。ただ……。

 

(外見はどうもなくても、彼女には心の傷がある。あの詐欺師と契約した後の事は分からないが、その前に目の前で家族の死は見てしまったはずだ)

 

だからこそ、あいつはそこに漬け込む。マミちゃんの友達だと表面上はつくろって、彼女を自分達の思い通りに利用するだろう。それについても対策はしないとな……。

 

そんな事を考えながら、俺はマミちゃんが起きるのを待った。まぁつきっきりの看病というやつだな。体を拭くなどは看護師達に任せた。というかほぼ俺にできる事なんて無いんじゃないかと思った。そう思っていたのだが、彼女がうなされる事があった。お父さん……お母さん……そんな風に苦しそうにしながらうなされていた。

 

だから俺はその度に、彼女の手を両手で包み、大丈夫だと念じた。俺は彼女の父親でも母親でもない。ましてや親戚でもない。だが、周りに誰もいないよりかはマシだ。家族が目の前で亡くなって、それで頼る人が傍にいないのはいないというのは……女の子にとってはとても辛い事のはずだ。年は分からないが、それでも辛いと思うだろう。

 

俺の時は……正直親がどう無くなってしまったのか覚えていない。あの時は確か俺が5歳の時で、両親と一緒に旅行中だった。だが、とある事故に巻き込まれて……俺だけが生き残った。その後は、親と仲が良かった人達が俺の傍にいてくれたから、そこまで寂しくはなかった。まぁそんな事はともかく、今は彼女の目が覚めるまでこの場にいる事にしよう。その後の事は……決めていないがな。

 

そう思いながら3日ぐらい経った。少し用ができてしまったために、マミちゃんの病室から出ていた。その用も済んだから病室に戻ると、今まで眠っていたマミちゃんが目を覚ましていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side      マミ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開けると、そこは見知らない天井だった。辺りを見回すと、私の腕に点滴から伸びている管がうたれていて、着ているものは患者が着ている病院服だった。でも、なんで私はここにいるのかしら?

 

(確か……お父さんとお母さんと一緒に車で出かけていたはずなんだけど……あれ?)

 

そこまで考えた私は、この場にお父さんとお母さんがいない事に気が付いた。そこで出かけている途中の記憶を私は思い出した。そう……あれは普通に私を乗せた車が道路を走っていた時だったわ。後ろから速度を大幅に超えた車が私の乗る車に近づいて来て、それで車の側面同士が衝突した。その時、私の乗る車は制御がきかなくなって前の車に激突してしまった。前の車がどうなったかは分からないわ。その時には私も意識が朦朧としていてはっきりとは覚えていないの。ただ、キュウベエという動物みたいなのと契約をしたことは覚えているわ。

 

私が魔法少女になる代わりに、私の願いを1つだけ叶えてくれる……そう言われた私は、自分の命が消えかけているのが理解していた。だから私はこう願ったわ。生きたい……ただそれだけを願ったの。そしたら、私の傷は最初から無かったかのように消え去った。それで安心したのか、そこで私の意識は途切れているわ。途切れる瞬間、キュウベエが私に近いうちに会いに来ると言っていたことは覚えているわね。でも辺りを見回す限りだとその姿はない。

 

(いえ、そんな事よりも……お父さんとお母さんはどこかしら?)

 

私は願いによって生き永らえたけれども、お父さんとお母さんがどうしてしまったのかは覚えてはいないわ。だからベットに備え付けてあったナースコールのボタンを押そうとした。その時だった。

 

「目が覚めたんだね。体の調子はどうかな?」

 

聞いたことの無い男の人の声が、私のいる部屋に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

side    out

 

 

 

 

 

 

 

 

俺がまず最初に目が覚めたマミちゃんにかけた声がそれだった。他にも言葉はあるとは思うんだが、その時はそれ以外には思いつかなかった。まぁ、見知らぬ他人……それも歳が離れた男が声をかけたとすれば誰だって警戒すると思う。

 

「あ、あの……どちら様ですか?」

 

……まぁ案の定そんな反応をされてしまったな。だが、これで挫ける俺じゃない。俺はこの世界の過去時間軸で、俺が体験した事ではないにしろ挫けそうになった。精神的にだがな。そんな事はどうでも良い。今はマミちゃんの質問に答えないとな。

 

「あぁ、俺は君のお父さんの知り合いだよ。まぁ高校時代のね」

 

「お、お父さんの知り合いの方ですか?」

 

「あぁ、最近は忙しくて連絡も取れてはいなかったが、今回の事をニュースで偶々見てね……それでここにいるんだ」

 

「そう……だったんですね。私に関しては赤の他人なのに……私のお見舞いに来てくれて……」

 

「いや、そう気にするはないよ。体に異常はないにしろ、今は十分に休養をとる方が良い」

 

「あ、ありがとうございます」

 

とっさに吐いた嘘ではあったけれど、何とか話はできた。しかし、難題はまだ残っている。話してみて分かったが、マミちゃんはどうやら両親が死んだことについて気づいていないようだ。だから、この話をどう切り出したらいいのかと迷っている。彼女を傷つけたくはないが、両親の死を知るのが先にしろ後にしろ、辛い。そう……思っていた時だ。

 

「あの……ところでなんですけども、お父さんとお母さんが今どうしているか知っていますか?」

 

……切り出しにくい質問を彼女の方からしてきた。俺は……どうすれば良い?

 

(ご主人様……ここは正直に言われた方が良いかと思います)

 

迷っていた時にそう声をかけてくれたのはウンディーネだった。

 

(確かに……身近だった人が突然いなくなってしまうのは辛い事です。しかし、そのままにしていたら彼女はもっと悲しんでしまいます。大丈夫です。ご主人様なら、例え彼女がそれで傷ついたとしてもその傷をいやすことができます!)

 

そんな事を言われた。確かに、話さないままの方が彼女の悲しみは深くなるだろう。そうなるのなら……そうなってしまうくらいなら俺が彼女を支えよう。いつまでも傍にいる事はできないかもしれないが、彼女の傷が癒えるまでなら一緒にいられる筈だ。だから俺は言った。

 

「……辛いかもしれないけど……心して聞いてほしい。君のお父さんとお母さんは……残念ながら助からなかったんだ」

 

「……えっ」

 

俺は、この口が憎い。こんな事しか言えない己の口が憎かった。だが……それでも言うしかない。

 

「君と君の両親が事故に遭われたとき。前に座っていたお父さんとお母さんはもう助からなかったんだ。特に出血がひどくて……」

 

「……それじゃあ……私は独りぼっちなの? もう……お父さんとお母さんには会えない……の?」

 

マミちゃんは泣きながら俺にそう問うてきた。俺は……静かに首を縦に振るしかなかった。それを見てマミちゃんは……当然泣いた。当たり前だ。親が自分の気づいてないときに亡くなって、それでこう告げられて……泣かない方がおかしい。でも俺は、この状態のままにはしない。そっと近寄って、マミちゃんの事を優しく抱きしめる。不安な時は、こうやった方が相手も感情を出しやすくなって、気持ちの整理はすぐに付かないかもしれないが、思いっきり泣きたいときはこうした方が良いと俺は思っている。最初はビクッとしていたが、それからマミちゃんは思いっきり泣いた。それから数十分した時だろうか。マミちゃんはいくらか落ち着いた。それで俺も抱きしめるのを止めて、近くの椅子に座った。

 

「その……ごめんなさい。私……」

 

「悲しい時は泣く」

 

「えっ?」

 

「悲しい事や辛い事があったら泣く。そんな事は当たり前でね。それで楽しい時は笑って、怒りたいときは怒る。子どもでも大人でもそんな事は当たり前で、誰だってその権利を持っているんだよ。だから、謝らなくてもいいんだよ。それに、謝るとしたら俺の方だ。君につらい現実を押し付けて、すまなかった」

 

俺はそう言って謝る。マミちゃんを傷つけたのは事実だ。だから頭を下げながら謝った。

 

「顔を……上げてくれませんか?」

 

そう言われて俺は顔を上げる。

 

「確かに……聞いたときは嘘だと思いたかったです。何かの間違いだって……でも、あなたは真剣な顔でそう言った。そして、泣いた私を優しく抱きしめてくれました。その時の温もりが……私にとってはとても心地よく感じました。それにあなたが申し訳なく思っていることも伝わりました。だから、私はもう大丈夫……と言ったら嘘になるんですけど……」

 

マミちゃんの手が震えていた。顔には出ていなくても、心の底では悲しんでいると分かった。これからどう生きて行けばいいのかという不安も、俺は感じた。だから俺は、マミちゃんの手を優しく握る。そうされてマミちゃんは驚いていたようだが、俺は構わずに言った。

 

「さっき言ってたよね。自分は独りぼっちなのかって? でも、それは違う」

 

「で、でも……私のお父さんとお母さんは……」

 

「確かに、君のお父さんとお母さんは君を置いて行ってしまった。手の届かない遥か遠くに行ってしまった。それでも君は独りぼっちじゃない。これからは……俺が君を1人にしない」

 

「……あなたが……私の傍に?」

 

「俺は……君の両親の様に振る舞う事なんてできないと……正直そう思ってるよ。でも、俺は心の傷が癒えていない君を放っておくなんてことはできない。だから……俺と一緒に暮らしてみないか?」

 

「……いいんですか?」

 

「君が良ければ、俺は君を支えよう。君が独りぼっちにならないように、俺が君の傍にいよう。寂しい思いをさせないように……ね」

 

「本当に……本当に良いんですね? 私を……独りぼっちにしないって」

 

「あぁ、約束する。君を独りぼっちになんてさせない」

 

「……うぅっ」

 

それからマミちゃんはまた泣いた。でも、今度はさっきの様な悲しみから来るものじゃなくて、安心から来るものだった。まぁ、それでも俺は優しく抱きしめて背中を優しくさすった。マミちゃんがまた落ち着くまで俺はそうした。それからまた落ち着いて、今度はさっきとは違う笑った顔を俺に見せてくれた。

 

それで俺は改めて決心したんだ。この笑顔を失わせてはならないと……。

 

(あの詐欺師の思い通りになんてさせるものか!)

 

この世界にもはびこっている詐欺師の思い通りにもさせないために、今日この日から俺はある活動を開始した。

 




おい作者! もの申したいことが沢山ある! 

とお思いの方は大勢いらっしゃいますでしょうが、その際は感想欄にお申し付けを……。

まぁ、全てに対処できればいいのですが、こちらも後の事を考えての展開にしておりますので、そこは承知してくださいませ。

それでは、また機会がありましたら会いましょう。

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