さて、今回はワルプルギスとオリ主闘います。さて、オリ主はこの話の中でどうワルプルギスに対峙するのか?
それではどうぞ!
「さて……取り敢えずはこれで大丈夫だな」
俺は相手を眠らせる呪文をピンク色をした髪の少女にかけた。確か名前は……鹿目まどかだったか。マクスウェルにこの世界を見せてもらった時、その世界にいる主要人物の名前も俺の頭に流れて来た。だから、さっき時を遡っていった魔法少女の子の名前も知っている。そして……。
「君は本当に何者なんだい? さっきの第三者による契約破棄の事象、鹿目まどかに何らかのことをして気を失わせて、それよりも不思議なのは君がいきなり現れたことだ。それと同等に僕を見る事ができて、それだけでなく話すこともできる。本来なら第二思春期を迎える少女達にしか見えるはずが「聞いてなかったか?」っ⁉︎」
「俺はさっき言ったよな……俺は貴様に対して発言を許可していない……と。だから、どうなっても構わんよな?」
「……なるほど。その殺気……確かに君はすぐに僕を殺す事ができそうだね。でも無駄だよ? 僕には……いや、僕らには感情は備わってはいないんだ。だから痛みも感じない。いくら君が僕を殺そうとも、無限に出てくる事ができるから、結局は徒労に終わるよ?」
「……果たしてそうかな?」
安騎尭はそう言うと、何かを呟いた。そのすぐの事だった。
「がっ⁉︎ な、何で痛みが⁉︎ ぼ、僕に一体何をした⁉︎」
「唯単に幻術の類をかけただけだ。確か貴様は仲間同士で何もかも共有しているんだろう? ならそれも共有されている事になる。貴様らに足りないのは……全て足りないがその中でも唯一足りないのが苦悩、辛いという感情、そして痛みだ。貴様らが彼女達にやって来た苦悩、俺はまだ……いいや到底測れるものではない。まぁ、とりあえず俺の他にも貴様には嫌な思いを抱いてるのがいるんでな。そいつらの恨みの分の痛みは知っておけ」
そう安騎尭は言うと、未だに上空に漂いながら進むワルプルギスに体を向ける。
「ま、まさか1人で立つ向かうのかい? 無理だよ……いくら君でもあんな災害級には「黙れ」うぁぁ……」
「誰も貴様の意見なんて聞いてはいない。それも貴様が元凶なんだぜ? どの口が言っている。貴様は黙って目の前で起こる事だけ見てろ」
そう言って安騎尭は宙を歩いた。まるでそこに道があるかのように……。
「さぁ……君達は世界を滅ぼす程の怨みがあるのだろう。ならその怨み……俺が全て受け止めよう」
安騎尭がそう言ってすぐ、安騎尭の目の前に半ばから折れたビルの残骸が降ってきた。本来であれば誰であろうと、ビルの質量×速度で簡単に押し潰される。そして押し潰された後は何も残りはしない。
そんな攻撃が既に安騎尭の目と鼻の先、接触まで2秒程まで差し掛かっていた。そんな状況に際しても安騎尭はまだ動きはしない。
「まさか君はそのまま死ぬつもりかい? まぁ僕としては君の生死はどうでも良いかな。この痛みさえ解ければ僕は……」
これをキュウべえが言い終わったのが、残骸と安騎尭がぶつかる1秒前……その時でも安騎尭は動く気配はない。
そしてついに安騎尭にビルの残骸は衝突した。残骸はその勢いとともにぶつかった箇所から崩れて屑鉄やコンクリ片ガラス片となった。
ワルプルギスは笑ったまま、そこに留まる。キュウべえは安騎尭が登場してすぐに死んだと思った。だが……。
「な、何で……まだ痛みが……」
そう、キュウべえの痛みは治まってはいない。まさか安騎尭が死んでも痛みだけは続く幻術をかけられたのだろうかと、キュウべえはそう思っていた。
「君達の痛み、苦悩、辛さはこんなものじゃないだろう? 俺は君達の痛みとかがこんなものじゃないと思っている。だから……」
ビルに押し潰されたはずの安騎尭の声が聞こえた。それから数秒、安騎尭を押し潰したビルの残骸は物凄い音を立てながら全て崩れ去った。そこには……服は所々ボロボロになっている安騎尭が息も切らさずに立っていた。
「さぁ、俺はこの通りまだ息も切らしていない。君達が苦しみながら流した血も出していない。だから……俺を本気で殺す気で来い‼︎」
『キャハハハッ、アーッハハハハハ……キャハ……アハッ……ギャァーーーーーー‼︎」
今まで胴体を下にし、歯車を上にした状態で宙に浮いていた。それを安騎尭が挑発した事によって、それが逆になった。胴体は上に、歯車は下になり、先程あげていた笑い声が悲鳴と言う名の叫びとなっていた。
それと同時に安騎尭の周りにワルプルギスから生み出された使い魔が囲み、その更に外をビルの残骸が周りながら安騎尭に矛先を向けていた。
まずは使い魔が一斉に攻撃を仕掛けた。安騎尭に各々が持っている武器で攻撃を繰り出す。安騎尭はそれに対して丁寧に対応していく。剣を振られればそれを片手で白刃どりする。2つ振られた時はそれを両手で受け止める。槍に対しては矛先を手でそらす。斧に対しては体を逸らして避ける。
その間、安騎尭の死角からビルの破片がぶつかりに来る。それを安騎尭は意にも介さずわざとぶつかる。しかしそれでも安騎尭は健在だ。ただぶつかったところの服の箇所がボロボロになるだけだ。
「それが本気じゃないんだろう? なら一気にぶつけて来い‼︎」
安騎尭はまたもワルプルギスに向かって挑発をした。それからすぐ、ワルプルギスに動きがあった。再び悲鳴を発したと思うと、使い魔は消え去り、代わりにビルの残骸が倍に増えた。そして一気に安騎尭を潰しにかかった。安騎尭はそれを眺めているだけで一向に動かない。
そのために、安騎尭は無数のビルの残骸に押し込まれる形で押し潰される。そして出来上がったのは、ビルの残骸でできた大きな球体だった。そこには安騎尭に向かって強烈な重力系の魔法がかかっていた。それは明らかにワルプルギスがかけている魔法であり、キュウべえもこれは幾ら何でも安騎尭が死亡したものだと思った。
しかし、一向にキュウべえを襲う痛みはなくならなかった。何故なら……。
「そうか……これが君達が受けてきた辛さや痛みなんだな」
その声が聞こえた瞬間、ビルの残骸でできた宙を浮かぶ球体は四散した。残骸でできた球体があった中心には、もはや下半身の服しか纏っていない安騎尭の姿がいた。上半身の服は無くなり、体の所々から血が流れていた。頭からも少量には収まらない血が垂れ流れていた。
「君達が未だに苦しんでいるなら、俺はそこから解放しよう。いや、無理矢理にでも解放する‼︎」
『ギャーー……ジジジジッ……うに?』
安騎尭がワルプルギスに優しく話しかける。すると、悲鳴が途中でノイズが走り、女の子の声が一瞬聞こえた。
「俺は君達を助ける。でもそのためには、君達の声が欲しい。君達がここにいるよって言う道標を俺に教えてくれ! 助けて欲しいと、自分達を解放して欲しいと、俺に君達の声を聞かせてくれ‼︎」
『ギャーージジジッ……とうに?』
『ギャジジジッ……ちを助けて……』
『ジジジッ……って』
安騎尭の声に、ワルプルギスが段々と反応して来る。最初はノイズ混じりではあったが、それもはっきりと聞こえるようになっていく。
『本当に……?』
『私達を助けてくれるの?』
『救ってくれるの?』
少女達の声が次々と聞こえて来る。その声は喉から出ているものではない。その少女達の魂の叫びだった。それに安騎尭も声を大にして応える。
「あぁ! 俺は君達を助ける! その暗く辛い檻から俺が助け出す‼︎ だから叫んでくれ! 君達の今の願いを‼︎」
『……私は、あなたを信じてみる』
『私も……こんな所は嫌だよ……』
『もう傷付きたくない……誰かも自分も……』
『助けて……』
『助けて!』
『私達を助けて‼︎』
『この負から』
『この続く因果から……』
『『『私達を助けて‼︎』』』
「君達の声……俺にしっかりと届いた‼︎」
いつのまにか、安騎尭の両手に刀が握られていた。右手には漆黒に彩られた、柄は無く、日本刀よりも刀身は長く幅も広い刀が右手に握られ、左手には雪のように白く日本刀と同じ大きさの、しかしその柄は細かい装飾がされている刀が左手に握られていた。
「俺は今から、君達を閉じ込めているこの檻をぶち壊す‼︎ だから安心しろ‼︎」
俺はワルプルギスに向かってまっすぐと飛ぶ。それに対してワルプルギスは何もしてこなかった。多分中にいる少女達の魂が、憎しみや悲しみといった負の感情を抑えてくれているんだろう。俺はそんな時間を無駄にしない。
「夕黒! 張雪! 俺に力を貸してくれ‼︎」
俺が刀の名前を呼んだ。すると夕黒と張雪は俺の声に応えるように、自らの色の光を発した。その光からは確かな力を感じた。
そして俺はワルプルギスに接近し、力を貸してくれる愛用の刀を振るった。
「うおぉぉっ! 響け! 届け‼︎ 俺と彼女達の願い‼︎ 助けを求める者の刃となれ‼︎」
安騎尭は2振りの愛刀を振るった。縦、横、斜め、それを複雑な組み合わせで振るっていく。その度に刀が発する光も強さを増していった。そして夕黒と張雪を交差するようにしてワルプルギスに叩き込んだ後、安騎尭は両手を段上に構えた。そして……。
「ロストフォン・ドライヴ‼︎」
夕黒が発する漆黒の光と、張雪が発する白い光が混ざり合った巨大な光がワルプルギスを飲み込んだ。それが数秒ほど続き、巨大な光は無くなっていた。そしてワルプルギスもいなくなり、ワルプルギスがいた所には複数の白い輝きを放つ球が漂っていた。
『ありがとう、優しいお兄さん』
『私達を、あのくらい檻から助け出してくれて』
『これで誰も傷つける事も無くなったわ』
『私は早くお兄さんみたいな人に会いたかったな……』
その白い輝きを放つ球からは少女達の声が聞こえた。まぁこれが囚われていた少女達の魂なんだろうなって事は分かっていたが……。
『ねぇお兄さん……最後にあなたの名前を聞かせて欲しいの? ダメかな?』
「俺の名前?」
『うん。私達、この魂の状態では長くここにはいられないの。だから……最後にお兄さんの名前を聞かせて』
「……そうか。あぁ、分かった」
俺はそこで一旦区切りを付け、自分の名を彼女達の魂の奥底まで響くように大きな声で言った。
「俺の名前は脩鴑安騎尭(しゅうどあきのり)! 精霊神として君達を助けに来た者だ‼︎」
『脩鴑安騎尭さん……』
『ありがとうございます』
『まさか神様に助けてもらえるなんて……幸運だね』
「別に俺は神だからって理由で助けたわけじゃないさ。俺が助けたいからこそ助けた。だから幸運でもなんでもねぇさ」
『ううん。それでもあなたが来なければ私達はずっとあの檻に閉じ込められてた』
『だから私達は幸運なの』
『……もうそろそろ時間ね。お兄さんとお別れしなくちゃ』
『バイバイ、優しいお兄ちゃん』
『出来る事なら、生まれ変わったらお兄さんみたいな優しい人に巡り逢いたいな』
少女達の魂は、そう言って空高く登って行った。俺はそれが見えなくなるまで見送る。
「……本当は優しい少女達だったはずだ。成長したら綺麗な子になって、そして彼氏とか作って結婚して、幸せな家庭を築けた子もいたかもしれない……」
俺はそう言って未だに苦しんでいる白い下衆に顔を向けた。
「……もぅやめてくれないかな……僕が……僕が悪かったよ……」
下衆は俺に苦しい顔をしながら俺に言ってきた。だが……。
「貴様……どの口でその言葉をほざいている? それ以上の苦しみを発達途上の少女達に味あわせてきたんだろう? それも、たかだか宇宙の寿命を延ばすっていう不必要なことのためにな」
「き、君が何故そんなことを? でも……うっ……宇宙の寿命は刻一刻と減り続けて「貴様こそ分かってはいない」っ⁉︎」
「貴様らが何を観測したか知らんが、宇宙の寿命は減る事などない。それはこっちで観測済みで、確たる証拠もある。まぁ証拠など挙げればキリはないがな? そして、貴様らが間違っている事も既に挙がっている。だから、こ以上“無駄”な事は金輪際やめろ。そんでもって地球から消え去れ……最悪しかもたらさん詐欺師共が」
「わ……分かったよ。分かったからこの痛みを「何を言っている?」……えっ?」
「それは貴様ら自身が犯した罰だ。一生それを背負って生きろ。それと……この星から出ない場合は、貴様らは俺のかけた呪文で死ぬ事になってるからな」
「っ⁉︎ わ、分かったよ……僕達は……この星から出るよ」
そして下衆の詐欺師は消えた。
【精霊神様! 聞こえますかな⁉︎】
そんな時、マクスウェルの声が聞こえた。
「あぁ、聞こえているよ」
【あぁ、それはようございました! それでなのですが、これから精霊神様を先へと続いている時間軸へと転送いたしまする。ですので準備の方をお願い「なぁマクスウェル」な、なんですかな?】
「先の時間軸へ転送する前に、複数回転送して欲しいところがある」
【それは……まさか! その世界の過去時間軸へと渡るつもりですかな⁉︎】
「あぁ。さっき救った少女達の苦しみは分かった。だが俺には、先に行く前に行かなければならない」
【……分かり申しました。精霊神様の頼み事なれば、断る理由はございませぬ。しかしこの世界は抵抗力が強いようでございます。ですので改変は……】
「あぁ、それはあらかじめ予想していた事だ。悔しいがな……たが、この地に住む……いや、住んでいた魔法少女達の苦しみを知っておきたい。特に時間軸を移動できるあの少女の事を……」
【分かりましたぞ。では、まずは過去へと精霊神様を誘いまする。誘う先は……最初からで宜しいですかな?】
「あぁ、そこで頼む。マクスウェルには苦労をかける」
【いえいえ、気になさらなくて結構ですじゃ。……精霊神様も自ら辛い道に進みなさるのですな】
「俺には、この方法でしか彼女達の苦しみを知る事ができない」
【ふふ、実に精霊神様らしい。それでは、過去の時間軸へと転送いたしますぞ】
「あぁ、頼む」
視界がどんどん明るくなって行く。俺はこれから彼女達の苦しみを知る。彼女達を助けるために……例えこの世界の修正力が強かったとしても……。
「俺は、必ず助ける!」
遂には視界が白に覆われた。過去へと……俺は誘われた。
いかがでしたかね?
分かりにくかったら申し訳ないとは思います。
さて、ここで突然ですが武装や技名の解説を……。
夕黒・張雪
安騎尭の愛用している2振りの刀。艦これの世界で夕張に贈られた武装。今では安騎尭の神格による力が刀に宿っている。
ロストフォン・ドライヴ
テイルズオブ・ジ・アビスに出でくる主人公の秘奥義。最大補足は一体で、光を纏った剣で敵を斬り、最後に光の本流で敵を飲み込む。
詳しく知りたい方はYou Tubeなどをご覧下さい。
ではでは……。