魔法少女まどか☆マギカ 〜諦めない心〜2   作:橆諳髃

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14話 正義の味方

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無事に退院した。その日はマミお姉ちゃんと手を繋いで一緒に帰った。それで帰ってから驚いたんだが、なんとお姉ちゃんが退院祝いにケーキを焼いてくれてたんだよ。なんかさ……それ見たら凄く嬉しくて久々に泣いちまった。

 

マミお姉ちゃんはその姿の俺を見て、最初は凄く慌てふためいていたんだけど、俺が嬉しいって一言言ってからは、さっきまでとは裏腹に微笑みながら優しく抱き締めてくれた。

 

俺は……そもそもこの世界では怪我はしても数秒で元に戻る。ぶっちゃけた話病院で入院しなくても良かったんだが……でもこうやって祝い事されるのは凄く嬉しいな。

 

それでその日はケーキをお姉ちゃんと仲良く食べて、残った分も俺が全部食べた。その時マミお姉ちゃんは俺の事を食いしん坊だと少し呆れたような表情を浮かべながら言ってはきたけど、最終的にはいつもの様にマミお姉ちゃんのマシュマロメロンの感触を感じながら頭をナデナデされた。もうこれは日常の一部だな。

 

その後はもう御察しの通り……マミお姉ちゃんの抱き枕にされながら一緒に寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日……朝マミお姉ちゃんを送り出した後、俺は風見野に来ていた。目的は久々に杏子ちゃんに会うためだ。会うためだったんだが……

 

「何だこの人の多さは……」

 

数日前には閑古鳥が鳴いていた教会が、今では中から溢れ出すぐらい人がごった返していた。それでこの状況になったという事は……

 

(佐倉杏子が魔法少女になったという事……)

 

「あっ‼︎ ひっさびさだな兄ちゃん‼︎」

 

そう結論づいた時、教会の裏に立つ家の方から杏子ちゃんが笑顔を振りまきながら俺の所に走って来る……左手の指に今まで付けてなかった指輪をつけて。

 

「最近来ないから心配したんだぞ! 何してたんだよ?」

 

「あぁ。それがトラックに轢かれてな……数日の間入院してたんだよ」

 

「えっ⁉︎ そ、それって大丈夫だったのかよ⁉︎」

 

「お陰様で当たりどころが良くてね、そんな大した怪我ではなかったよ」

※もろトラックに轢かれて頭から血を流していました。大怪我です。それでもピンピンしてるこいつがおかしい。

 

「へ、へぇ〜……そうだったんだ。でも意外と兄ちゃんもとろいなぁ〜」

 

「まぁそう言われても仕方がないかな。ところでさ……その左手に付けてる指輪って何だ?」

 

俺は何も知らない事を装いながら杏子ちゃんに聞いた。それに対して杏子ちゃんは、少しバツの悪い顔になりながらも……

 

「あ、あぁこれ? これはさ……お父さんの夢を叶える為の契約の証……みたいなやつでさ」

 

「契約の証?」

 

「その……多分信じられないと思うけど、私の目の前に白くて赤い瞳をしたちっさい犬? 兎? ともかく犬と兎を足して2で割ったような奴が現れてさ 、それで話しかけて来たんだよ。私の願いを叶えるからその代わりに魔法少女になれって……最初は夢なのかなって思ってさ。でも……お父さんの願いをどうしても叶えたかったから。それで願ったんだ……私の、お父さんの話を皆が聞いてくれますようにって」

 

「……それでこの人だかりができたのか」

 

「うん! それで願った翌朝から人が多く来てさ! 私凄く嬉しかったんだ‼︎ まぁその代わりに魔法少女になって、街に蔓延る魔女って奴? そいつらと対峙する日々を送ってるけど、私は後悔してないよ? だってそれって、お父さんと同じで人助けって事だからさ。お父さんが表側で、そして私が裏側で人を助ける……それって凄く良い事だって、私思うんだ‼︎」

 

「……よくは理解出来てないかもしれないけど、ともかく杏子ちゃんは正義の味方になったっていう解釈で良いかな?」

 

「正義の味方?」

 

「だってそうだろ? 杏子ちゃんはお父さんの願いを叶えるとはいえ、困っている人達を救うお仕事だ。例えそれが言葉だとしても、救いを求めている人にとってはありがたくて、それで日々を生きる力になる事もある。凄く立派だよ。それで杏子ちゃんも魔女の手から人を救う魔法少女……でしょう? そしてどちらともに共通する事は、正義感がないととてもじゃないけど出来ないよ。それを自らを犠牲にして他者を救う……それを正義の味方と言わずして何っていうのか僕は分からないよ。まぁ僕が言ったことが全てじゃないけど……ともかくとしてさ。大変かもしれないけど、無理だけはしちゃダメだよ? 無理したら僕みたいに大変なことになるから」

 

「っ‼︎ うん! 私頑張るよ! それで兄ちゃんの言ったように無理はしないしヘマもしないよ‼︎」

 

「こっちはヘマで轢かれたわけじゃないんだがな〜……。まぁ良いや。もし困ったことがあったら、ここに連絡して」

 

「これは?」

 

「僕の連絡先だよ。さて、もうそろそろ帰って夕飯の支度しないと。じゃあまた来るよ」

 

「うん! いつでも来てよ‼︎」

 

そして俺は杏子ちゃんに手を振りながら別れを告げて帰った。にしても杏子ちゃんもいよいよ魔法少女になっちまったかぁ〜……この世界でも見滝原と……そして風見野の時間は他の世界線と同じように進んでいくか。ホント……何の因果かこの地域だけはぽっかりと穴が開いたように俺の結界がはれない……。この世界の修正力というやつが今の俺よりも強いという事だろう。

 

(だが……こんな悲しい世界を何回繰り返す気だ⁉︎)

 

俺は……マミお姉ちゃんが魔法少女になった時、結界を張る作業と並行して世界各地にいる魔法少女を元の人、若しくは俺と契約して魔女化しない様に上書きをした訳だが、勿論マミお姉ちゃんにも真実を話してそうしようとした。

 

だが……その時に限って下衆の詐欺師の気配がある。マミお姉ちゃんや杏子ちゃん、他にも見滝原で魔法少女をしている子達に契約の上書きを実行するには、そいつらの目が無い所でしなければ……これはあくまで予想でしかないが、俺の上書きの契約は何かの拍子で覆ってしまうだろう。特にこの見滝原では特に強い。キュウべぇがもしも、俺が魔法少女に対して上書きの契約をしている所を見られたのなら……彼らは難癖とかつけてまた取り入り、そして元のシステムに上書きする可能性がある。

 

「全くもって難儀だ。そもそもこの世界にあの詐欺師どもがいなければ……あんな悲しい結末を何回も繰り返さずに済むというのに」

 

愚痴を言っても仕方がない。今はただ……大切な人達を守る。それだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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