Fate/is inferior than Love 作:源氏物語・葵尋人・物の怪
後悔はない。
「――では、始めよう、ソラウ」
水銀を使い、召喚の為の陣を書き終えるとケイネス・エルメロイ・アーチボルトは工房の壁に退屈そうに凭れる自身の婚約者に声を掛けた。
「ええ、分かったわ」
どこまでも冷淡な声色、婚約者――ソラウはケイネスに返した。
余りにも素っ気ないと言って然るべき態度。
だが、それすら見逃せるほどに、女は美しい。譬えるならば、氷で出来た薔薇の一輪。男の心を捉えた儘、思慕の儘で凍てつかせる。
併し、あらゆる分野で成功を収めたロード・エルメロイと称される魔術師はそれを認めようとは決してしない。
「……本当に上手くいくのかしら?」
「なる筈だ……恐らく、屹度」
「期待しているわ」
社交辞令めいた激励に対してすら胸が鳴り、必ずや召喚を成功させねばと奮い立った自分を心の内に見つけ乍ら、尚、である。
「陣に手を翳してくれ」
そこから目を背けるようにケイネスはソラウにそう頼みながら自身もそうした。
今から行われるのは召喚の為の術式。それも、一山いくらの霊魂を降ろすのではない。召喚するのはサーヴァント――神話や歴史に名を刻んだ英雄である。
然も、ただの英雄ではない。数多の栄光に彩られたロード・エルメロイの経歴に“武功”という名の華を添えるべく参加した東洋の小さな島国で行われる聖杯戦争という名の儀式。
それに於いて本来召喚出来る筈のない、東洋の英霊である。
だが、本来そんなことをする必要などなかった。
サーヴァントの召喚は、本来呼び出してみなければ鬼か蛇かすらも分からないブラックボックスであるが、聖遺物という英霊に縁のある品物――身に付けていたものやその英霊の死因となったものなど――があれば“何が出るか”を確定させることが出来る。信仰の強さ、畢竟知名度によって持ち得る力が決まるサーヴァントに在って、世界全土に名が知れ渡る大英霊、“征服王イスカンダル”の聖遺物を手に入れる算段をケイネス・エルメロイは付けていたのだ。
だが、彼の手元にそれが来ることは無かった。総ては時計塔――魔術師達の学府――の管財課の失態である。こともあろうに、聖遺物を、十二在る学部のうちの一つを束ねる学部長たるロード・エルメロイへの届け物を一生徒に届けさせるという致命的なミスをやらかした所為だ。
そうしなければ、聖遺物が“大きな誤りを指摘してやった”劣等生のウェイバー・ベルベットに渡ることも無く、彼が小さな復讐心を抱くことも無かっただろうに、とケイネスは追懐する。
とどのつまり、聖遺物を何処かへ隠されてしまったのである……という認識をこの時ケイネスはしていた。
そこで止まれば良かったのだが、更に彼には受難が降り注ぐ。
見よ、陣に設けられた祭壇に置かれた聖遺物を。さる英雄が或る酒宴で使っていたとされる杯である。
併し、悲劇。その英雄の出自も活躍も総て中国。東洋の英霊であった。
『何でもいいから代わりの聖遺物を持ってこい』
そう彼に付き従う魔術師を叱りつけてしまった所為かそんなものが届いてしまったのだ。
だが、稀代の天才と称されるケイネスはそこで諦めはしなかった。
そもそもケイネスは此度の戦に当り、儀式を作り上げた一人である魔術師“マキリ”の契約システムをアレンジし隣に立つ婚約者にサーヴァントが留まるだけの魔力を供給させるという荒業を正立させる理論を編み出したのだ。
ならば西洋の魔術器盤を利用している為、西洋の英霊しか呼び出せないという聖杯戦争のルールにも穴をあける事が出来る筈だ。
否、屹度出来る。出来ねばならぬ。
世界最高峰《サガルマタ》より高く、ケルマディック海溝より深い自尊心の持ち主のケイネスは然う奮い立ち、急ピッチでその術式を編み出した。
そして、今に至り――
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師■■■■■」
斯くて術式は開始された。
ケイネスの詠唱に呼応するかのように、水銀で書かれた陣が僅かに瞬く。
「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」
徐々に、徐々に魔力が充填されていく。それに伴い、体内の魔力回路が蠕動を強めていく。肉体と密接に絡みあう魔力回路の動きは容赦なくケイネスの臓器や骨子に痛みを齎す。
そうして人である肉体は人ならざる喞筒(そくとう)へと組み替えられていく。
世界から奇跡を汲み取る為の喞筒へと――。
「――Anfang(セット)」
魔術師として避けては通れない痛み。最早ケイネスにとっては息を吸うより身近であった。
隣に立つソラウにとってもそうだ。
名家に生まれながら魔術師として基本的な教育しか受けていなくとも、魔術師は魔術師。
ケイネスの秘策“サーヴァントの魔力供給の分担”の為に、共に魔力を注いでいる彼女の表情には一点の曇りすらない。
「告げる――」
その詠唱と共に愈々、陣は超常を巻き起こし始める。
逆巻く風、轟く雷。
現世が現世でなくなっていく。
「――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うならば答えよ」
陣は門だ。別の世界へと通じ、此処とは異なる幽世(かくりょ)へと通ずる。
そして、世界の外側に“座”に召し上げられた、英雄を今世へと引き戻し、瞼をこじ開けるのだ。
「――誓いを此処に。我は此の世総ての善となる者、我は常世総ての悪を敷く者」
それに伴い、ケイネスの肉体に刻まれた九代続く名家の魔術刻印が独自に意思を持ち詠唱を紡ぐ。
目が眩む。そして、眩んだ視界であってもはっきり分かる程、一帯が輝き白む。
この詠唱の後にある詠唱を加えれば剣士(セイバー)、槍兵(ランサー)、弓兵(アーチャー)、騎兵(ライダー)、暗殺者(アサシン)、魔術師(キャスター)、狂戦士(バーサーカー)の七クラスのうち狂戦士を確実に引き当てる事が出来る。
だが、それはしない。狂戦士は元々の英霊が持つステータスを底上げする代わりに、サーヴァントの理性を砕き、暴走と魔力の枯渇に因るマスターの死の危険を孕む。
――危険を冒してまで、そこまでする必要はない。
ケイネスはそう判断する。何故なら、今招かれようとしている英霊は、人の身でありながら中国全土で神として崇められ、人としてあった時は一騎当千、否、万にも比すると謳われた大英雄だ。
狂戦士でなくとも槍兵や騎兵のクラスで充分であろうと判断する。
「――汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」
一気に呪文の結びを片付ける。
注がれる魔力は“奔流”と称するほど膨大に膨れ上がり、豪! と爆音を打ち鳴らす。
こうして遂に使者は現れた。眩い光が晴れ、ケイネスが目を開けると、そこには一人の男が立っていた。
「我槍兵の器を纏いて今一度此の世に舞い戻りし者――」
男が口を開いた。
桃の花が描かれた緑色の戦袍。両肩に龍の咢の意匠を施した青銅の肩当て。腰まで伸びた黒髪とそれに匹敵するほど長く蓄えられた髭。見つめられているだけで薫風を感じるような優美な面差し。天を衝くような長躯と服の上からでも感ぜられるほど鍛え抜かれた肉体。
大凡その英霊に抱くようなイメージを目の前に現れたランサーは全て持ち合わせ、それだけなのに、ケイネスとソラウの瞳を奪って離さない。
「故、我は問う。汝が我を招きし者か、と――」
言葉を伝える為に振動する空気そのものが光って見えてしまうようなよく通る声で紡がれたその問いに、ケイネスは直ぐに応えることが出来なかった。
圧倒的なその存在感に言葉を失っていたのだ。
重い、あまりにも重すぎる沈黙が流れる。
だが――
「HAHAHA! そう鯱ばるんじゃないよ! Relax(ルィラァックス)、Relax(ルィラァックス)!」
それは齎したであろう本人に依って意外にも崩された。
急に気でも違えたような調子でケイネスの肩をバシバシと叩き始めたのだ。
それも顔を恵比寿のように破顔させて。
「はい?」
何かの間違いだと思ったケイネスは、誰に聞くでもなく自答した。
「おお! 令呪あるじゃん、令呪! なんだ、君がボクのこと読んだマスターじゃんか。もー早く言ってよね! ボク、焦っちゃうじゃんか!」
それをよそに、ランサーはケイネスの手を取って、そこに刻まれた三画の赤黒い痣――令呪を確認して、へらへらと力の抜けた笑みを浮かべた。
最早成すが儘。脳が今起こっていることを認識し切れてすらいない。
傍で見ているソラウもただただ唖然としている。
最早、ケイネスは自分が召喚した者を胡乱じ――
「あの、その、なんだ。つかぬ事を窺うが」
とランサーに問い掛けていた。
「何?」
「貴殿の真名は、関羽雲長で間違いはないのか?」
関羽雲長。
時は三世紀――中国が魏、呉、蜀の三国に別れていた俗に“三国時代”、その時代でも指折りの知名度と武勇を誇る猛将である。
中国に住む人間なら誰でも知っている――その誰からも信頼されたとされる人望と受けた恩を必ず返す義理堅さから商業神として崇められてすらいる大英雄中の大英雄である。
聖杯戦争が行われる日本であってすら恐らくその名を知らぬ者はおらず、その名と共に、美髯公と称された艶やかな長い髭と青龍偃月刀と呼ばれる大薙刀を携えたその姿を夢想すらしよう。
だからこそ、ケイネスは強く断言する。目の前にいる酔狂でちゃらなこの男が、関羽雲長である筈がないと。
だが――
「それ以外に見えるようだったら、キミは両親を呪うべきだ。ちゃんと生んでくれなかった証拠だから」
現実は非情である。
にっこりと燦爛たる笑みを湛えて、ランサーは自分こそが関羽雲長だと示す。
ケイネスにとって無礼に過ぎる毒と共に。
宣言されてしまっては、最早疑う余地などない。
しかも、彼の発言を裏付ける証拠をよりにもよってケイネス自身で持ってしまっているのだ。
それは英霊と契約し、マスターになった者に与えられる“サーヴァントのステータス”を読み取る透視能力である。
三騎士と呼ばれる、セイバー、ランサー、アーチャーはとりわけ高いステータスを持つサーヴァントであるがその三騎士の一角を担う関羽はその中であってすら“高い”と言い切るより他ない力を持っていた。
「そうか。うん、そうか……そう……か……」
覆し難い事実はケイネスの頭に酷い鈍痛を与える。
最早、聖杯戦争など忘れてとっとと自室に戻り、ベッドで今すぐ横になることすら視野に入る程に。
「うおぅ!」
だが、そんなケイネスの心の悲鳴はきっとランサーに届いてなどいなかった。
突如、ランサーは目を丸くし、素っ頓狂な叫び声を上げる。
「今度はなんだ?」
頭を押さえ乍ら、ケイネスはウンザリとした声色で問う。
だが、すぐに頭痛は吹き飛ぶことになった。
ランサーの見つめる先にいたのはソラウ。彼女を映すその瞳はうっとりと蕩けている。
「美しい……」
その言葉は讃辞。だが、辺りには不穏な空気が漂う。
何かを察してか、ソラウは恐る恐ると後退る。
併し――
「なんと美しい人だ。ボクはこんなに美しい人を見たことがない!」
ソラウの退路にランサーが既に回り込んでいたのだ!
「どうか受け取って欲しい。ボクの気持ちだ」
「え、あ、ちょ……」
ケイネスは次の瞬間には目を白黒させていた。
さて、一体何が起こったのか。ランサーはまず、ソラウの白い手を取った。そして、次に彼女の顎を持ち上げ、顔を寄せた。
次の瞬間にはランサーの唇がソラウに触れていたのは言うまでもないだろう。
誰がどこからどう見ても、疑いようもなく、“接吻”である。
――ブチリ。
果たして、ケイネスは自分の中に、何かが千切れた音を感じ取っただろうか?
否、屹度それは在り得ないだろう。
その光景を、愛する女の唇が奪われたその瞬間を目の当たりにしたその刹那には、ケイネスの顔は怒りに歪み、考える間もなく、目は右手の甲に映っていたのだから。
「総ての令呪を以て命ずる! 自害――」
「ちょちょちょちょちょ!? タンマ、タンマ、タンマァァァ!」
予想だにせぬ――但し、ケイネスにとっては至極真っ当な―令呪の発動にランサーは慌てて彼の手を取り、そして右拳を彼の口の中に突っ込んで言い掛けられていた言葉を無理矢理止めた。
令呪とはマスターがサーヴァントに対して三回のみ使える“絶対命令権”である。その秘めたる魔力は凄まじく、“ここに行け”と命ずれば時空間を超越してその場へとサーヴァントは転移し、“次の攻撃に全霊を尽くせ”とすれば、サーヴァントが持ち得る力の総てで以て攻撃を仕掛けることになる。
無論、“自害せよ”という命令すら絶対である。
ランサーはクラス特典として持つ“対魔力”というスキルを高いランクで保有している。よって一画分命令くらいならば耐えられるが――それが三画総て費やした命令であれば正真正銘の“絶対”と化すのだ。
……だが、屹度、恐らくは、聖杯戦争の歴史のどこを見ようと、こんな寸劇めいた令呪の遣り取りも、此処まで強引に命令を止めた事例も存在しはしないだろう。
「ふご、ふごごごごっ!」
「ああ、コラ! 痛い、痛い、痛い! 噛むなってばさ!」
ランサーの手に激痛が走り涙目となる。
耐久力……サーヴァントの肉体の頑丈さを示す値だがランサーのそれは高いといえるランクであった。併し、それであっても尚、痛い。
どんな顎力をしているんだとぞっと顔を蒼白させる。
――というかどうしよう、コレ。マジで痛い。首切られた時くらい痛い。泣きそう。
悩んだ挙句、ランサーは漸く、サーヴァントが霊体化出来るという初歩の初歩に至り、如何にか難を逃れた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」
気が付けばお互い肩で息をしていた。
「ひひゅう……令呪を以て――」
「ヤメロォ! ねぇ、マジでヤメテ! このままだと無限ループになって埒開かなくなるから! 落ち着こう? ねぇ、落ち着こうよ! Please(プルィーズ) cool(コゥール) down(ドァン)!」
ランサーの言葉で漸く、ケイネスは我に返った。
「貴様! この痴れ者めが! 私の婚約者に、このケイネス・エルメロイの婚約者に何という狼藉! 無礼極まるぞ!」
「いやいやいや! 知らなかったんだってばホントに! ほら、なんかアレ! ほらアレじゃん! こういう所に連れてくる女の子だからさ! 普通は弟子とか部下とか侍女とかさ! そんな感じのパティーンだと思うじゃん?」
「知らなかったで済まされると思うか!」
「ああもう! 聖杯取って来るから! 絶対取って来るから! マジで機嫌治して!」
そうして、ランサーはこの通りと、平伏した。
ケイネス・エルメロイ・アーチボルトという男は尊大であった。
ランサーは中国史に名だたる大英雄中の大英雄。然も、皇帝に名を連ねる劉備玄徳の義弟でもあり最も信頼された誉れ高き男であった。
無礼狼藉を働いたという前提があるにしろ、そんな男が自分の前に伏しているという状況。
サーヴァントなどたかが使い魔である――ということすら差し引いても悪い気はしなかった。
「フン。サーヴァント風情が。聖杯を取ってくるなど当然であろうよ」
吐いて出た言葉こそ、これであるが。
「マジっすか? ボクにチャンスをくれるんですか?」
「ああ、くれてやる。精々、贖罪に身を窶し給え」
「有難う御座います!」
ランサーは此の儘床が掘れてしまうのではないかと疑われかねない程、もっと深く頭を下げた。
「あ、ところでふと気になったんですが。ボクってなんで聖杯戦争に呼ばれてるんですかね? ボクの中の知識だと、東洋の英霊は原則呼ばれないってことになっとるのですが?」
深く下げていた頭を上げ、ケイネスを見つめる瞳は疑問に溢れ返っていた。
サーヴァントは聖杯から様々な知識を与えられる。現在の世界がどういったものであるか。魔術師という存在。そして、聖杯戦争自体のシステムに関することまで。
ランサーはそれによって自分の召喚がイレギュラーであることに気が付いたのである。
「召喚のシステムを解析し、抜け穴を見つけ出した……それだけだが?」
何気なく返って来た答えに、ランサーは口を半開きにした儘固まってしまった。
「お、おい。どうしたランサー」
突然のことにケイネスは僅かに不安を露わにする。
すると、
「素晴らしい、Great(ゴゥレイト)! Genius(ヅィーニャス)!」
ランサーは勢いよく立ち上がり、力強くケイネスの手を取った。
「そうだったのか! ボクが再びの生を得、この瞬間にも息づき、しかも万能の願望器にまで挑ませていただける! それは総て君のお蔭だったんだね!」
「あ、ああ……」
興奮するランサーに、ケイネスは圧倒される。
というより、反応に窮した。
確かにランサーの言う通りなのであるが、此処まではっきり言われると気恥ずかしいものがあったのだ。
「ボクは感動している! 君の溢れんばかりの才に!」
敢えて口にされるまでもなく、それはケイネスにも理解出来た。
人の心の機微には疎いと自覚している彼であっても、ランサーの言葉には嘘偽りがないことくらいは。
だからこそ、どう返して良いか分からなかった。
「どうせならば女の子に生まれたかった! そうであったならば、御婦人の面前という今この瞬間であっても泣きはらすことが出来ただろうに! 嗚呼――この刹那だけは、ボクに男の肉を与えた父と母とを本気で恨みたい!」
ケイネスの手を離し、ランサーは拳を握り、悔し気に顔を歪めた。
讃辞には慣れている。天才という言葉も聞き慣れている
だが、ケイネス・エルメロイの人生に於いて、“此処まで”は無かった。
蚊帳の外に放り出されたソラウも先ほどの接吻のことなど忘れ去るほどである。
それだけの衝撃であった。
「お、お褒めに預かり恐悦至極」
ソラウはその言葉に、ぎょっと目を見開いた。
どんなに褒められようと至極当然として受け止めるケイネスの“感謝の言葉”を初めて聞いたからだ。
……大変に気持ち悪い、という感想を抱いた。
併し、ランサーはそれに対し満足そうな顔でうんうんと何度も頷く。
「うん、恐悦至極、確かに戴いたぜ、マスター……確かケイネス・エルメロイと云ったね。君の芳名に誓って、生きてた頃以上の武者働き、約束させて貰うよ。Trust(チュルァスト) me(ムウィ)!」
そして、白い歯をニッと見せつけ、グッとサムズアップで誓いを立てた。
短編です。多分続きません。この後、原作通り、ケイネスはしめやかに死にます。
ランサーのデータも置いておきます。
【CLASS】ランサー
【マスター】ケイネス・エルメロイ・アーチボルト
【真名】関羽雲長
【性別】男
【身長・体重】188cm・85kg
【イメージカラー】翡翠色
【特技】恩返し、一騎当千
【好きなもの】義理人情、兄弟と仲間、桃
【苦手なもの】不義理、スケベオヤジ、おっかない女(ショーコー義姉さんとゲンジョー姐さん)
【天敵】孫権おじさん、「りょ、りょ、呂布だァァァァ」
【属性】秩序・中庸
【ステータス】筋力A 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運B 宝具A++
【クラス別スキル】対魔力B
【固有スキル】関聖帝君B:死後関羽に贈られた神号。財を司り商人の神であるランサーのみが持つ特殊スキル。同ランクの神性、カリスマ、黄金律、直感を兼ねる複合スキルである。
騎乗B:騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
勇猛B-:威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。また格闘ダメージを向上させる効果もあるが、味方に被害が出ることがある。
黄金律(体)C:生まれながらに完璧な肉体を持つことの証左。美髯公と呼ばれた彼のそれは、全身の体毛にのみ限定される。併し、ルックスもイケメンだ。
【宝具】青龍偃月刀:関羽が使っていたとされる刃に青龍の意匠を施した薙刀。実際に刃には青龍の霊核が封じられており、対城級の威力を秘めている。なんか三つくらいの使い方がある。冷艶鋸という銘が付いている。
【Weapon】同上
【解説】恐らく三国志に於いて最大の知名度と人気を持つ大英雄。見た目はTHE関羽といった感じであり、スッゴイ英雄らしい人物が期待される。そして、期待し過ぎると痛い目に遭う。中身のあれ加減は黒髭レベル。髭の生えた英霊にロクなヤツはいねぇ。ケイネスの胃に穴を開けるレベルでストレスマッハな言葉回し。疲れる。聖杯から妙な知識を得た所為か、おかしな発音の英語を交える。
だが、こんなランサーであるが生前敵である筈の曹操にそうしたように受けた恩は必ず返す。それが例え、“自身を召喚し、常世に留まるだけの魔力を供給している”というたったそれだけでも。故に、絶対に裏切らない。扱いやすさにかけては№1である。
……マスターが胃痛に耐えられるかどうかは甚だ疑問が残るが。
クラス適正はランサー、ライダー、バーサーカーがある。