ハイスクールD×S   作:超人類DX

9 / 17
後日談的な感じです。

簡単な話、悪魔は一気にマズイ状況に……。


自由と遺恨

 

 

 血相変えた部下からの報告を受けた時、俺は最初何かの間違いだと思いたかった。

 だがしかし、現実はそのまま現実だった。

 

 

「サ、サーゼクスが完全に再起不能……?」

 

「は、はい……そ、その……初めは判別すら困難な程に手酷く」

 

「……何てこった」

 

 

 あのサーゼクスを誰がやったかなんてのは、簡単に想像出来てしまう。

 そう、会談の際にカテレア・レヴィアタンをアッサリと殺してのけた赤龍帝。

 

 

「本当にやりやがったのか……」

 

 

 リアス・グレモリーに下僕にされた事で憎悪を募らせ、何のカラクリを駆使したのか知らないが、人間に戻ることでその力を取り戻し、そして復讐した子供。

 会談の際に顔を合わせた時は、ミカエルや俺に対しては普通の態度をとるも、悪魔であるサーゼクスやセラフォルーにはとことこん憎悪を向けていた。

 

 だからこそ解ってしまう。

 

 

「冥界内は混乱していますが、どうしましょう?」

 

「どうする事も出来ないだろう。

悪魔達とは同盟は結んでないし、今此処で助ける真似をすれば……ソイツが何を思うかなんてわかりきった事だ」

 

 

 赤龍帝の持つ悪魔への憎悪はどこまでも深く、決して消える事が無いものなのだと。

 

 

「一度、腰を据えて話をしてみないとな」

 

 

 だからこそ、個人的な親しさよりも自分達種族の存続を選ばなければならない。

 はぁ……参ったぜ。

 

 

「サーゼクス・ルシファーがやられたのか。

赤龍帝だろう? 彼をやったのは」

 

 

 部下を下がらせ、この先待ち受ける不安な未来について考えていると、ひょっこりとやって来たのは、俺が拾った『白龍皇』のヴァーリ。

 どうやら近くで盗み聞きしていたみたいで、サーゼクスがやられた話に俺と同じく赤龍帝の小僧が関わっている事を察している様子だったので一つ頷いておく。

 

 

「お前も確か見たんだろ? 赤龍帝を……」

 

「当然見た。

そして、あの時見て感じたものは全て鮮明に覚えている」

 

「……。コカビエルの野郎は『今から実に楽しみだ』としか言わずにはぐらかしたが――実際どうなんだ?」

 

「白である俺の宿敵である赤としてこれ以上無い実力――いや、師……じゃなくて、コカビエルと同じ『臭い』と赤の力を併せ持った異質な存在というべきかな」

 

 

 だから俺は今の実力では無理と判断して、恥ずかしながら逃げ帰った訳さ……と、コカビエルに似て戦闘バカである筈のヴァーリは、少しだけ悔しそうに歯噛みしながら、間近で見た赤龍帝の実力についてを俺に教えた。

 

 コカビエルと同じ臭い……それはそのままの意味では勿論無く、中身……つまり、俺達でも現在に至るまで解析不能の何かをも赤龍帝は持っているという事だ。

 

 そう……どんな存在すらも超越しうる異常な何かを。

 

 

「コカビエルと同質に加えて赤龍帝か……。

その時点で厄介なのに、実力は少なくとも、サーゼクスがどこまで本気だったのかはわからんが、再起不能にまで追い込むレベル……」

 

 

 考えれば考えるほど、厄介過ぎる事に頭が痛くなる。

 禍の団(カオスブリケード)も厄介だが、近い分赤龍帝の方が尚厄介だ。

 幸い、一言二言の会話の感触的に敵意は感じなかったが、行動ひとつ間違えただけでそれもオジャンになる可能性だって否定できない。

 

 コカビエルがウチを抜けなければ、もう少し余裕だったんだが……。

 

 

「今は無理でも自分なりに納得できるコンディションになれば挑むさ。

勿論、アンタ達に迷惑は掛けないようにね」

 

「お気遣いに感謝したくなるよ……はぁ」

 

「まあ、その前にコカビエルにひっついてるジョワユーズ使いを捻り潰してからだがな」

 

「何だそりゃ? そいつは確かコカビエルが拾ったとか言ってた小僧だったが、何かされたのか?」

 

「別に何もされちゃいない。

ただ、置いて行った俺がじゃ無く、あんなのが弟子気取りなのが気に食わないだけさ」

 

「………。あー」

 

 

 コカビエルはコカビエルでいつの間にか大所帯だし、それについて『自立可能』というお墨付きを貰ってるにも関わらず、不満にしているヴァーリが俗に言えば嫉妬してるし……。

 いっそ引き込めでもすれば一番安泰なんだけどなぁ。

 

 

「理由は解ったが真面目に気を付けろよ? 赤龍帝は悪魔を憎悪している。

つまり、お前が半分悪魔の血を持つと奴が解れば――」

 

「ジョワユーズ使いめ。大体何なんだあの白い鎧は? 俺と被り過ぎなんだよ……」

 

「………。おーい、聞いてるかー?」

 

 

 

 

 イッセーは力を取り戻してからも修行を続けている。

 どうやらこの前魔王を再起不能にしたらしいが、それでも尚『全然足りやしない』とより苛烈に自分自身に負荷を掛け続けている。

 

 その理由は考えるまでも無いと私とイリナは思っているのだけど、何となく別の理由もある気がしてならない。

 …………。敢えては聞かないけど。

 

 

「まだだ、まだ足りない!

誰にも文句を言わせない程の力までこれじゃあ足りやしないぜ……!」

 

「根を詰めすぎだ。それではいくら異常性があるとしても逆効果だろう?」

 

「そうよ。それに、そうやって追い込みすぎたから悪魔なんかに足元を掬われたのよ?」

 

「……む」

 

 

 学業以外は全て鍛練に費やすイッセーに付き合い、私とイリナもとある山奥で一緒に鍛練をしているのだが、どう見てもオーバーワークで逆効果状態となってぶっ倒れそうになっているイッセーに少しは休めと無理にでも休憩させる。

 

 悪魔相手では何時でも薄ら笑いか、獰猛な笑みを浮かべて悠然としているというのに、修行の時は何時でも余裕の無い必死の表情。

 付き合いはまだ短いもの、恐らくはこの表情を見せるイッセーこそが素であるのだろうと思っている。

 

 今だってぜぇぜぇとしながらイリナから渡された水を飲んでるし、転生悪魔の頃に戻りたくないという必死にも思える感情が見て取れてしまう。

 

 

『すまんな、このバカは昔からこんな真似ばかりしては死に掛ける。

俺が言っても全く聞きやしない』

 

 

 肩で息をしながら座り込んでる一誠を見かねでもしたのか、その腕に独りでに出現した赤龍帝の籠手の元ことドライグが私とイリナに声だけながら礼を言ってくる。

 

 

「見れば何となく予想はしていた」

 

「小さい頃はもう少し余裕のある感じだった気がするんだけど」

 

『その時はまだ、実の親に存在を抹消された挙げ句捨てられる前だったからな。

独りになってからのコイツは、ある目的の為に――』

 

「ドライグ、それ以上は言うな」

 

 

 ドライグが何かを言おうとした瞬間、一誠の低い声によって憚れる。

 しかし私とイリナは聞き逃す筈も無く、その目的とやらが実に気になってしまう。

 

 

「目的とは何だ?」

 

「私達には言えない事?」

 

「……。別にそんなんじゃない。馬鹿馬鹿しくて話すのが恥ずかしいだけだ」

 

 

 馬鹿馬鹿しい目標。

 そう言った一誠は明後日の方へと視線を泳がせるだけで言おうとはしない。

 だが、私とイリナにジッと見られていたのに堪えられなくなったのか、やがては観念したかの様に首を下げて項垂れると、小さくその目標を語りだした。

 

 

「生き続けたいんだよ……それだけ」

 

「生きる?」

 

 

 結構壮大なものかと思っていたら、何というか、普通な答えに思わず目が丸くなって復唱してしまう。

 しかしどうやらその場凌ぎの誤魔化しでは無いらしく……。

 

 

「生き続けたい。

誰にも邪魔されず、誰にもとやかく言われる事もなく、只ひたすらに生き続けたい。

人類が滅びようが、他の生物が絶滅しようが、この星が朽ち果てようが、太陽が燃え尽きてしまおうが、ただ……俺は俺として生き続けたい」

 

 

 語られた言葉は、生物が持つ生存本能という言葉では生温く思えてしまう程の……果てしなく無謀な欲望だった。

 

 

「人の寿命は短いぞ?」

 

「そんな事は百も承知さ。

だからこそ俺はその寿命や老いの概念すら力でねじ伏せて超越してやるんだよ。

そして、その事を良しとしない連中を黙らせる為に力を付けたい。人間としてな」

 

 

 イッセーの抱える欲望。

 単純に聞こえて、単純では無い絶大な欲。

 教会の者達からすれば、悪魔でないにしても業の深い人間として見られるだろう。

 イッセーがもし神父で、この願いを暴露すれば直ぐにでも異端者とした見なされるだろう。

 

 それほどにまで、語るイッセーの声、目、口元の表情はドス黒く、そして――

 

 

「それ……良いな」

 

 

 あまりにも――魅力的だった。

 

 

「うん、良い。

何だろ……よく分からないけど胸の中にスッと入ってきた気がした」

 

 

 悪魔祓いだった私が何をと自分でも思ったものの、自然と口から出てしまった言葉に、同じく魅入られた様な表情のイリナが私と同じ様な事を言葉に出しているのを聞き、私だけがおかしくなった訳じゃないと安心する。

 

 

「はい?」

 

「生き続ける……良いじゃないか。シンプルながらも果てしなく大きな道のりだ」

 

「生きる事が当たり前過ぎたり、主の為に命を放り投げると考えさせられて来た私達には物凄く新鮮な気持ちにさせる」

 

 

 ポカンとするイッセーに私とイリナは口々に肯定する台詞を口にする。

 簡単に聞こえて何よりも難しいその目標が間違えてるという以前に、私やイリナにしてみれば魅力的なのだ。

 何せ、それを言ったのがこのポカンとしているイッセーなのだから。

 

 

「変な奴等……」

 

「変なのは大分昔から自覚したり、周囲にそう言われ続けてるから解ってるさ」

 

「それに、その変な奴の一人である私を昔助けてくれたのはイッセーくんだよ?」

 

 

 良いじゃないか、生き続ける。

 老いもせず、死にもせず、三人で生き続ける。

 良いじゃないか……楽しそうではないか。

 

 

「決めたぞ、私も生き続けてやる。

お前を独りにしない為にもな」

 

「良いわね、三人で毎日グデーっと楽しく永遠に生き続けてたいわ」

 

 

 だから私とイリナもイッセーと同じ目標を抱く。

 少なき同類同士、馬が合う友人同士……そして何よりもイッセーを一人にしたくないから……。

 

 

「ホント……変な二人」

 

「もう知ってるだろ? それも今更だな」

 

「そーそー」

 

 

 私は生まれて初めて、イッセーとイリナと同じ様なモノを宿している事に心の底から幸福を覚えた。

 

 

 

 

 

 それからの三人は、同じ気質を持つ者同士のシンパシーの他に、同じ目的を持つ同志としての面も加わり、更に距離感が縮まったのは云うまでも無かった。

 

 だがしかし……その分敵を作ってしまったのもまた事実だった。

 

 

「白音……。アナタを傷つけた奴はきっと私が……!」

 

 

 それは、一誠が憎悪した内の一人のただ一人の肉親であったり。

 

 

「お、お父様、お母様……! お祖父様、お祖母様! お姉ちゃん!」

 

「グレモリー家はこれで終わりなのか。

まさか、一家全員があの赤龍帝に……」

 

「赤龍帝……お姉ちゃんを裏切った元眷属の……!」

 

 

 只一人残されてしまったグレモリー一族だったり。

 

 

「やはりどんな手を使ってでも赤龍帝は殺すべきだ!」

 

「サーゼクス様――そしてグレモリー一族を傷つけたという理由がある限り、殺して清算しても足らない程にな!」

 

 

 冥界に存在するほぼ全ての悪魔達だったり……。

 

 

「ソーナちゃん達の居場所はまだなの!?」

 

「も、申し訳ありませんセラフォルー様! ぜ、全力を尽くして禍の団(カオスブリケード)のアジトを探していますが、依然として……」

 

「くっ、ぅ……!」

 

 

 わざと見捨てた悪魔の身内であったり。

 知らない場所で主に悪魔達からのヘイトを集めまくっている兵藤一誠の名前は、ある意味で数ヵ月前と比べるまでも無く広まっていく。

 

 だが……。

 

 

「良いってば! 一人でやれるっての!」

 

「ダメだ!

イッセーはそう言っては何時も適当じゃないか!」

 

「今更照れなくても良いじゃない。

私かゼノヴィアの胸ガン見してる癖に、変な所で頑なになるなんて変よ?」

 

「気持ちの問題なんだよ! つーか、身体くらい自分で洗うからマジやめて! 色々と腫れるから!」

 

 

 そんなの全部知らねぇと言わんばかりに、呑気にその日を楽しく人として生きていた。

 学園では、美少女二人を侍らせてると目の敵にされたり、家では主にゼノヴィアから完全に子供扱いされて色々されたりと……。

 

 多分、今までの人生を振り返るまでも無く今の状況は実に充実していた。

 

 

「ほーら、胸だぞイッセー」

 

「今日も挟んであげるね?」

 

「……にゅ」

 

 

 だからこそ、イッセーの鍛練はより苛烈と壮絶を極めていた。

 悪魔の奴隷から解放される元になってくれた二人を、自分の残した遺恨に巻き込まれてはならないと、守る為により力を求める。

 同じ気質を持つ友達を大切に……同じ目標を抱いてくれた仲間を失いたくないから……。

 

 

「魘されても私とイリナが傍に居る。だから安心しておやすみイッセー……」

 

「…………」

 

「その時はぎゅってしてあげるからね? ふふふ」

 

「……。俺は3才児かよ」

 

 

 イッセーの進化の元である精神性はより強固なものへと進化する。

 何者をも黙らす程の領域となる……最狂の道へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 自由の代償は、残した遺恨による恨みだった。

 

 

「妹の仇を……! お前を殺す!」

 

「やってみろよ似非猫がァ……!

はぐれ悪魔とほざけば俺が同情してやると思ったら大間違いだぜクソが!!」

 

 

 破壊した白猫の妹の復讐へと来た黒い猫。

 

 

「おかしいな、昔から極力女は殴らないつもりで居たんだが、そっか……テメー見てると俺を無理矢理犯してきたあの白髪のクソガキを思い出させるからかぁ……!」

 

「なっ!? う、嘘を言うな! 白音がお前なんかにそんな事っ!!」

 

 

 奇しくも悪魔によって人生を狂わされ、一人は自由へ……一人は追われる身となった者同士の戦い。

 

「『大人しくなってくれた好きになってあげますから』……あぁ、今でも頭の中であのクソガキの声が残ってるぜ……! 何が好きになってやるだ……! 無理矢理縛り付けた状態で俺を……俺を!!」

 

「う、嘘よ。白音はそんなこと……言わない……」

 

 

 それは余りにも……残酷だった。

 

 

「あぁ? ボスの弟子だぁ?」

 

「コカビエルから聞いてないのか。

そうだ、俺は白龍皇にてコカビエルから教えを貰っていた者だ。キミとは色々と被るわ、コカビエルの弟子気取りでムカつくから是非戦おうとね」

 

「……。ほっほーう、半分悪魔って時点で理由としては充分ですなぁ? 上等だぜオマエ」

 

 

 

「おいアザゼル、何でアイツまで連れてきたんだ」

 

「しょうがねーだろ、付いて来ると聞かなかったんだから……」

 

 

その裏で、白夜と白龍がバチバチと火花を散らしてたのだとしても……残酷は残酷なのだ。

 

 

 

「白龍皇か。何だよ、やり合うってなら上等だぜこっちは」

 

「っ……この前から更に強くなったのか……! 本当にコカビエルみたいな奴だ……!」

 

「よせ赤龍帝! そいつは確かにハーフ悪魔だが、決してお前の思ってるような――」

 

「黙ってろアザゼル! これは俺の宿命だ! 生まれも育ちも関係ない!」

 

「……。だそうだから、ゼノヴィアとイリナは離れててくれ」

 

「……。気を付けろよ?」

 

「怪我はしないで……?」

 

「……ふふん、承知!」

 

 

 

以上、似非予告




補足

生き続ける事がイッセーの目標。
まるでデストロイヤーの動機の如し。

その2
そんなイッセーを見てて保護欲マックスなお二人は、それに乗り、自動的にイッセーチームが……チームD×Sが発足。

行動理念は『生きる為に必要な手段の模索』。

夜はおっぱいサンドのおまけつき(ただし、イッセーのみ)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。