ハイスクールD×S   作:超人類DX

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アンチ要素強しです。


能力保持者三人組

 最後の最後に俺は運に振り向かれた。

 果報は寝て待て……とでも言っておくべきなのか、兎に角俺はやっと抜け出せた。

 

 後は二度とあんな目に合わない様に遇わないように更に強くなり、邪魔をする者は全部ぶちのめす。

 

 今の俺ならそれが出来るんだ。

 

 

 

 駒王学園の本日は父兄参観日だった。

 其々生徒の親が我が子の授業風景を眺める……のだが、兵藤一誠という少年には親は居らず、何時もの変わらない気分のまま授業を受けた。

 

 

「えっと聞くだけ聞きますが、兵藤君が作ったこれは……」

 

「修行風景。モデル・イリナ&ゼノヴィア」

 

「す、すげぇ……! もはやフィギアじゃねーか」

 

 

 英語なのに何故か紙粘土細工をさせられた際、引くレベルのクオリティーでイリナとゼノヴィアを作り上げたりもしたがそれだけでしか無い。

 

 寧ろ今一誠は今日のこの父兄参観日が鬱陶しいと思っており、その原因は父兄に混じって何故か自分達を見ている『誰か』の視線だった。

 そしてその視線を向けていた者共が自分達の前に現れた時――

 

 

「ライザーとのレーティングゲーム以来だね、兵藤イッセー君?」

 

「…………」

 

 

 終わった筈の悪魔との小競り合いは再び始まる。

 

 

「イッセー……何となく予想は出来るが、彼方の者は誰だ?」

 

「魔王。

で、あのクソ悪魔の兄だかなんだか」

 

「魔王……!?」

 

「そう、キミ達二人には初めましてだね。

僕はサーゼクス、リアスの兄だ」

 

 

 リアス・グレモリーの呪縛から解放され、その借りをタップリ返した際、『抑止』のつもりで肉塊の状態で生かしたまま冥界にリアスを送りつけた一誠は、何時かこんな事が起こるだろうとは思っていた。

 何せリアスは悪魔の中でも影響力の大きいグレモリー家の次期当主だった悪魔であり、そして今目の前に居る紅髪の一見優男風な男性――魔王・サーゼクス=ルシファーの妹なのだ。

 

 その魔王の妹を完膚なきまで叩き潰したばかりか、日常生活すら送れなくなる程の甚大すぎるダメージを元下僕だった一誠が与えた。

 ともなれば、一誠の予想ではまず逃亡すらせずに堂々と駒王が学園に通い続ける自分に遠くない内に悪魔側から接触があるだろうと思っていたし、恐らく来るのはリアスより遥かに力の強い誰かだろうとも踏んでいた。

 

 何せ相手は決して癒えない傷を作れる異常者であり、現代の赤龍帝だ……並みの悪魔では恐らく太刀打ちすら不可能と悪魔の上層部は考え、だからこそ冥界最強の一人であるサーゼクス自らが、妹の元下僕である一誠の前に現れたのだ。

 

 この時点でソーナの『干渉しない』という言葉すら最初(ハナ)っから信じちゃいなかった一誠は、サーゼクスが自ら名乗り出した瞬間に一誠を守る様に前へと出て警戒心を露にしたイリナとゼノヴィアの二人の肩に触れ、黙って後ろに下がらせた。そのあと、全盛期に戻って初めて顔を合わせるサーゼクスに石像の様な表情で見据えながら口を開く。

 

 

「これはこれは……妹の危機にお兄様が自らご出陣ですか?」

 

「………」

 

 

 全然笑ってない顔で皮肉がたっぷりと込められた言葉にサーゼクスの表情は何とも言えないものだった。

 

 

「キミがリアスに行った行動の理由は既にソーナ・シトリーさんから聞いているし、それを裏付ける為にリアスの記憶を読み取った。

……………。妹がキミにした事全てを」

 

「そうですか。で、彼女は元気ですか?」

 

 

 元気な訳が無いことを知っている上で聞く一誠の言葉には思いきり皮肉が込められている。

 しかし、サーゼクスはそれに対して怒るでもなく、ただただ残念そうに目を伏せながら口を開いた。

 

 

「…………。ある意味ね。

手足はちぎられ、顔は原型すら分からなくなるほどに壊され、正直悪魔だとしても死んだっておかしくないレベルの重症だというのに、何故か意識はずっとハッキリしてて、今もずっと苦しんでいる」

 

 

 冥界にて最新の医療設備の整う場所であらゆる手を尽くして治療を受けているが、それでも一切あの日の夜のまま回復しないと言うサーゼクスに、石像の様だった一誠の表情が嘲笑へと変わる。

 

 

「悪魔の寿命は永いって聞かされてましたが……くく、死ぬまであの肉塊のまま生かされるぐらいなら死んだ方がマシなんじゃねーか? ククククク!!」

 

「…………」

 

 

 果てしないほどの憎悪。

 決して癒える事無い傷。

 最早一誠はリアスどころか悪魔全体に不信感と憎悪を抱いていると、嘲笑う台詞を平然と宣う姿を目にしながらサーゼクスは悟る。

 目の前の少年に妹が与えた全ては決して許されるものでは無い事も重々承知している……だが、それでもサーゼクスにとってリアスは妹だった。

 

 言葉すら発せず、生きた屍の様に呻き声しか出せないあの姿からせめて解放し、悪魔としての罰を与えなければならない。

 そう思うからこそ、サーゼクスは後からやって来た妻と両親が見ている前で一誠に土下座しながら言った。

 

 

「虫の良い話かもしれない。調子の良い話なのもわかってる。

リアスがキミにした事を我々も許すつもりは無い、だからこそリアスを元に戻した上で断罪したいんだ。

頼む……キミならリアス達の癒えない傷を戻す方法を知ってるのか……そして知っていたら教えてくれ!」

 

 

 生き地獄からリアス達を解放する方法を。

 一魔王が元下僕悪魔に対しての土下座……それがどれ程のものなのか少なくともサーゼクスの妻や両親は解っていた。

 けど……。

 

 

「だってさ? どう思うよイリナとゼノヴィアは?」

 

「悪魔側の断罪なんて信じられる訳が無いな」

 

「同じく。

治してやった瞬間、私達を殺すかもしれないし」

 

「だ、そうだ。

土下座なんてしてる所悪いけど、俺は土下座されても信じないタイプでね」

 

「…………お願いだ」

 

 

 イリナとゼノヴィアは悪魔の言うことなんて信じないとキッパリ言いきり、同じ意見だった一誠もまた土下座をするサーゼクスを見下しながらハッキリと教えないと宣言する。

 しかしそれでもサーゼクスは土下座の体勢を止めずにひたすら懇願する。

 

 

「全てが終われば、我々悪魔は今後一切キミ達に関わる事をしないと誓う。

だから……どうかリアスを元に戻す方法を……!」

 

「私からもお願いする。私はリアスの父親で、彼女は母親……そして彼女はサーゼクスの妻でリアスと姉妹の様な深い関係だった者だ。

娘がキミにした所業は決して許されない――だからこそ正式に我々がケジメを付けさせたいんだ……!」

 

「お願いします……!」

 

 

 グレモリー家も総出になって一誠に対して土下座をし始める。

 だが――

 

 

「さてとイリナにゼノヴィア、よーく見てろよ?

こやって無視していくと、今度この勝手に土下座してる連中は、『どうしてこんなに頭を下げているのに許してくれないんだ』と心中此方を非難して、冷血漢呼ばわりし始めるから」

 

「なるほど……」

 

「悪魔も人間と内面は変わらないと……」

 

 

 一誠はそんな一家の行動を完璧に見下し、嘲笑って聞こうとすらしなかった。

 許すだの何だの……一誠には何の意味も無いのだ。

 

 

「消え失せな。

尊厳無視されて、玩具にされた経験も無い癖に偉そうに土下座なんざ噛ますなゴミ共が」

 

 

 悪魔として断罪したい? じゃあ肉塊になったまま勝手に自己満足でしておけば良いだろう? そう締めた一誠は、イリナとゼノヴィアを連れて地面に額を擦り付けたまま動かないグレモリー一家に背を向けてさっさと帰ってしまった。

 最早一誠が悪魔に対する持つ感情は『ウザい蠅の大群』としか思っておらず、その蠅の羽がちぎれて飛べなくなろうが知ったことではなかった。

 故に教えない、友好的にもならない。

 

 

「さてと、これで奴等がどう出るか……ククッ、しつこい様ならぶち壊してやるか」

 

 

 一誠の憎悪はどこまでも深かった。

 そして悪魔達の悲運はこれで終わりじゃなかった。

 

 それは後日行われた天使・堕天使・悪魔のスリートップが集まる会合にて、天使代表ミカエルと堕天使総督アザゼルが互いに切り出した話から始まった。

 

 

禍の団(カオスブリケード)の活動が本格的になるだろうし、俺としてはミカエル達と有事に備えて同盟を結びたいと考えてる。

……。まあ、昔から色々あって今更調子の良い話ではあるかもしれねーがよ」

 

「いえ、私も貴方に切り出そうとしていましたので、喜んで受けましょう。

とはいえ、貴方の所のコカビエルとウチの所のガブリエルの件が無ければ上手く行く話ではなかったかもしれませんけど」

 

「……!」

 

「まさかのミカエルちゃんとアザゼルちゃんが握手……!?」

 

 

 三大勢力の内の二つが同盟を結んだ。

 無限の龍神がトップとして君臨すると噂される禍の団(カオスブリケード)なる組織との有事に備えてとの理由でアザゼルからの切り出しに対し、かつて殺し合いまでしたいたミカエルは喜んで引き受けるという展開に、サーゼクスともう一人この会談に出席していた魔王・セラフォルー=レヴィアタンは大層驚いたが……何となく納得もした。

 

 

「コカビエルのヤローが組織抜けやがったから穴埋めが全くできねーんだよ。

この前会った時なんか人間連れて一緒に行動していたしよ」

 

「それは……聖剣計画の犠牲者の生き残りですね。

天然のジョワユーズ使いと、計画の主犯の烙印を押されて冤罪のまま追放された神父とその彼が命懸けで助けた生き残りの子供達。

ガブリエルから聞いていましたが、逆に此方としては安心です……あの二人が居るならまず誰からも彼等は狙われない」

 

「だな……」

 

「「………」」

 

 

 超絶盛大スキャンダル。

 三大勢力戦争後から暫く経った後に発覚した堕天使コカビエルと天使ガブリエルの密会。

 戦後其々史上最強の堕天使・天使との呼び声の高いあの二人のお陰で、天使と堕天使は同盟が簡単に結びやすく、ミカエルもアザゼルも昔の因縁も忘れて架け橋となった二人の話題についてかなり盛り上がっていたが……困ったのはサーゼクスとセラフォルー達悪魔だった。

 

 何せ……。

 

 

「……………。悪いがサーゼクスにセラフォルー。お前達とは組まねーぞ」

 

「え!?」

 

「一応聞くけど、どうしてだい?」

 

「個人的にサーゼクスとセラフォルー……それにアジュカとファルビウムはまだ信用しても良いですが、他の悪魔達は一切信用できません」

 

 

 釘を刺すようなアザゼルの言葉に何故と問うサーゼクスにミカエルが答える。

 そう……二人は当然知っているのだ、ガブリエルとコカビエルにより悪魔の一人が人間の――それも赤龍帝の少年に対して何をしたのかを。

 

 

「サーゼクスの妹……リアスのやったことは既にコカビエルとガブリエルを介して俺達も把握してる。

随分驚いたぜ? 本当にお前の妹かよとすら思ったもんだ」

 

「赤龍帝の少年を無理矢理悪魔に転生させて支配下に置き、更にはその力を駒の繋がりを利用して奪い取り、自分と他の眷属達と共有していた――実に悪魔らしく育ちましたねアナタの妹は?」

 

「それは……」

 

「………」

 

 

 若干どころかかなりを込められた皮肉な一言にサーゼクスもセラフォルーも言葉を返せなかった。

 

 

「故に我々はアナタとは同盟を結べません。恐らく不満が出ますからね」

 

「俺達もだ。

お前達と組んであの赤龍帝を敵にはしたくねーしな」

 

 

 天使と堕天使が組んだ時点で悪魔の勢力を大きく上回るのは明白であり、もし何かの拍子で敵対となればまず不利を強いられるからこそ、自分達もと思っていたがこれでは絶望的に無理だった。

 しかもそれだけに終わら無かった。

 

 

「っ!? な、何だ!?」

 

 

 天使と堕天使が同盟を組む事で更に話は続く中、会議室の壁が巨大な爆撃音と共に破壊され、トップ達の顔付きが変わった中、壁が破壊された際に何かが会議室の中へと進入したのだが……。

 

 

「か……ぁ……ぎぃ……!」

 

「こ、これは……!?」

 

 

 進入してきた何者かは既に虫の息であり、砂煙が晴れると共に無惨な姿で会議室のど真ん中で横たわるそれを見たトップ達は驚愕した。

 

 

「か、カテレア……ちゃん……?」

 

「な、何故こんな事に……!」

 

「旧魔王の血族じゃねーか」

 

「既に虫の息ですが……一体何が――む!?」

 

 

 

 

「オーフィスの蛇だか何だか知らないが、どれもこれも蚊みたいな攻撃ばかりで飽きたぜ」

 

 

 破壊されて大穴となった壁から悠然としながら現れた更なる訪問者に、サーゼクスとセラフォルーは特に驚愕した。

 

 

「って、あら? 皆様お揃いで……ゲゲゲゲ」

 

 

 写真で見たのとは明らかに違う容貌の少年。

 しかしその左腕にある赤き籠手は紛う事なき本物の龍帝の波動を放っている。

 そう……今ボロボロで虫の息となる女性悪魔を此処まで吹っ飛ばしたのはこの少年――

 

 

「お目汚し、失礼しました」

 

 

 悪魔にとっては悪夢の権化……兵藤一誠だった。

 

 

「兵藤君……カテレアをこうしたのはキミか?」

 

「は? あぁ、アンタか……そうだよ。何か禍の団(カオスブリケード)どうたらこうたらとか言って仲間になれとか強要してきたからさー? イラっとしてぶちのめしちゃったわ」

 

「旧魔王の血族がテロ組織に入った? オイオイ、サーゼクス……こりゃどういう事だよ?」

 

「まさか悪魔は禍の団と……?」

 

「そんな訳無い!! 私達現政権とカテレア達旧政権派とで分裂してるんだもん! だから私達は誓って禍の団とは関係ない!!」

 

 

 会談の話題として出たテロ組織に旧魔王の血族が与する……という話を一誠の言葉から察知したミカエルとアザゼルが疑う様な目でサーゼクスを見るがそれに憤慨だとばかりに否定したのはセラフォルーだが……。

 

 

「結局同じクソ悪魔だろ……バカらしい」

 

 

 それを横目で聞きながら虫の息のカテレアの首を掴んで吊し上げにした一誠は『Boost!』という神器の力で倍化させると、アッサリとカテレアの首の骨をへし折り、絶命させた。

 

 

「か、カテレアちゃんを……!」

 

「何故殺したんだ……もう勝負は着いていた筈だろう?」

 

 

 どうであれ同族を目の前で殺されていい気分では無かった二人は、パンパンと一仕事終えたとばかりに手の汚れを叩く一誠を少しだけ睨みながら問う。

 アザゼルとミカエルは然り気無く『自分達の種族が余計な真似しなくて良かった』と思いながら静観していたりする中、サーゼクスとセラフォルーに問われた一誠は只一言。

 

 

「蚊の駆除」

 

 

 悪魔を蚊と比喩し、そして命を奪う事にまるで躊躇しないかの様にアッサリと言ってのけた。

 

 

「……!」

 

「そ、そんな……」

 

 

 あまりにもあんまりな言い方に思わず絶句する悪魔のトップだが、答えた一誠はそんな二人にまるで興味も無いままアザゼルとミカエルの方へと振り向くと……。

 

 

「あ、すいません……何か御忙しい場所に突撃噛ましちゃって」

 

 

 悪魔とは全く真逆の低姿勢な態度でペコペコと頭を下げながら騒がしくした事に謝罪をする。

 

 

「コカビエルから話は聞いてる。なるほどね、うちのヴァーリが逃げ帰った理由が解ったぜ」

 

「同じくガブリエルから話を聞いています、シスターゼノヴィアとシスターイリナと共に居ると」

 

「あ、はい……。教会から追放されたみたいですがね」

 

「…………。その事について今度正式にお二人に謝罪をしたいと思うのですが……宜しいでしょうか?」

 

「え……あ……それは二人に聞かないと。

俺はその事に関しては正直部外者ですから……」

 

「「…………」」

 

 

 この態度の差でどれだけ悪魔を嫌ってるかが窺い知れる様で、サーゼクスとセラフォルー……そして付き人として控えていたサーゼクスの妻であるグレイフィアは、今尚冥界で肉塊となるリアス達の事を頭の中に過らせ、顔を大きく歪めた。

 

 

「我々天使はアナタ達に余計な干渉はせず、必要なら全力でサポートをします」

 

「俺達堕天使もだ。思い出させる様で悪いが、バラキエルという姫島朱乃の父親がお前に感謝している『この程度にしてくれて』とな」

 

「いやまぁ……恩人のコカビエルのおっさんから頼まれたら聞かない訳にもいきませんから」

 

「「……」」

 

 

 更に言えばちゃっかり堕天使と天使が一誠に与する発言をして、本人も別に満更でもない態度になってる事で最悪な状況へと悪魔は追い込まれた。

 これでもし完全に一誠が何かの拍子で悪魔に牙を向けた場合、下手したらアザゼルとミカエル達まで敵になるという事に他ならないからだ。

 

 

「じゃあ俺はこの辺で。

あ、それとあの……学校の周辺で何かスタンバってたこの蚊の仲間っぽい連中が居たんすけど、イリナとゼノヴィアが軽く捻って置いた感じなんで」

 

「マジかよ、その二人もそんな強いのか」

 

「シスターイリナは聖剣適合者で体術の達人で、シスターゼノヴィアは天然のデュランダル使いですからね。

並みの相手には遅れは取りません……という事でしょう」

 

「そういう事ですね。正直友達になれた事に奇跡を感じますわ。あっはっはっはっ!」

 

 

 敵対した時点で一誠が遠慮無く自分達悪魔を絶滅させる。

 しかも堕天使と天使故に頼めばコカビエルとガブリエルという二大超越者も出てくる可能性は高い。

 実質悪魔は完全に抑止力に敗北した瞬間であり、悠然とカテレアの死体を二人の近くに放置して帰ろうとした一誠は最後に――

 

 

「あ、そうだ悪魔方。

ソーナ・シトリーって居るじゃん? 眼鏡の悪魔。

あれ……例の組織に拉致られたぜ? 下僕共々」

 

「なっ!?」

 

「う、嘘……ソーナちゃんが!?」

 

 

 だめ押しとばかりに悪魔へ爆弾を投げつけた。

 

 

「そんなバカな! キミの話だと今居る禍の団の構成員は他ならぬキミ達によって殲滅させられたんだろう!? ならばどうしてソーナさんを……」

 

 

 しかし話に矛盾を感じたサーゼクス達は指摘と共に一誠へと問う。

 しかし一誠は『へっ』と鼻で笑う。

 

 

「俺達が来た時と同時のタイミングで拉致られたのを見たからねー? ま、信じる信じないのはそちらの自由ですのでこれ以上言い様がねーな」

 

 

 心底拉致られ現場を前にしてもどうでも良かったといった言い方で締めると、それじゃあと大穴の空いた壁から外に出ようと歩き出す。

 

 

「なんで……」

 

 

 だけどその足を止めたのはセラフォルーだった。

 帰ろうとする一誠に向かって小さくそう声を出したセラフォルーにピタリと足を止めて振り向き、今更ながら『何だあの格好……』とゴテゴテ衣装の魔王を見ながらふと思っていると……。

 

 

「それが本当なら……どうして黙って見てたの……!? キミならソーナちゃんを助けられたのに!!」

 

 

  妹大好きなシスコンと有名なセラフォルーは、感情を爆発させて一誠に向かって叫んだ。

 確かに一誠ならソーナが拉致されそうになったとしても助けられただろう。

 

 だがその叫びはあまりにも一誠にしてみれば無意味であり、感情が爆発するセラフォルーに対して『ゴミを見るような目』を向けると……。

 

 

「助ける義理が全く無いだろ……? テメー等悪魔なんて」

 

「うっ……!」

 

 

 どこまでも悪魔を毛嫌いしているのが一発で解ってしまう一言により、セラフォルーの勢いは一気に削がれた。

 いやそれどころか……。

 

 

「だから助けないし、助けたければテメー等でやれば? 大事な大事な同族なんだからさ? くくっ、でもなぁ……?」

 

「な、何? 言いたいことがあるなら――」

 

「拉致ったはぐれだか何だかが脂ぎっしゅの如何にもって感じの変態だったなぁ? 早く助けないと後日アンタ等の所に『◯◯◯負けしてダブルピースしたビデオテープ』でも送られて来ちゃうかもね」

 

「なぁっ!?」

 

「くくく、まあ、悪魔のクソ雌なんて何が良いんだか知らねーが、変態からすりゃあ格好の道具なんだろーね。

まぁでも、下僕を縛る為に無理矢理犯してきたクソ所業がテメー等に返ってきたってだけだけどな……ククククク!」

 

 

 心底見下すような表情で言うだけ言ってセラフォルーの心を折った一誠は悠然とした足取りでさっさと帰っていった。

 彼の悪魔に対する憎悪の深さはやはり計り知れなかった様だ。

 

 

「終わったかイッセー?」

 

「怪我とかしてないよね!?」

 

「お、おうしてないしてない……。何でお前らは揃ってそんな心配性なんだよ……」

 

 

 大量の屍の山に戻った一誠を、作った本人達であるイリナとゼノヴィアは心配性を爆発させてベタベタと一誠に怪我は無いかと触って確かめて動揺させる。

 恐らく今の一誠を御せるのはこの二人ぐらいであり、悪魔ではどう逆立ちしても不可能だろう。

 

 

「あの……そんな密着しなくても良いよ。俺怪我してねーし、それ以上おっぱいサンドされると色んな意味で腫れが酷くなるし……うん」

 

「腫れ? 何を言う、腫れたら私とイリナで静めてやるさ」

 

「そうよ、もう私もゼノヴィアも信仰してる訳じゃないもん」

 

「……………。下ネタなのにドン引きされないって……」

 

 

終わり。

 

 

オマケ

コカビエルへの勧誘

 

 禍の団としては組織を脱退して自由奔放にしているコカビエルという最強の堕天使を何としてでも取り込みたいと考えていた。

 

 だがコカビエルは何時でもこう言った。

 

 

無限の龍神(ウロボロスドラゴン)と敵対できるなら俺は喜んで貴様等の誘いを蹴らせて貰おう。

かつて真なる赤龍神帝(アポカリュウスドラゴン)とひょんな事から戦ったが、奴とはまだだからな……クククク」

 

 

 世界最強の龍と殺し合いたいから嫌だと。

 戦後ひょんな事からガブリエルと知り合い、ひょんな事から周りに秘密にした状態で密会し、互いに切磋琢磨した結果種族としての力を遥かに越えた次元の違う力を持つ様になったコカビエルは、基本的に戦闘狂だったのだ。

 故に禍の団の誘いは全部断る。

 というか、抱えてる子供達の事を考えると教育上よくないので無限の龍神と戦う云々以前に入るつもりも無かった。

 

 

「ガブリエルは天使だからか、最初から奴等に勧誘されてないらしいが、俺の所には直ぐに来る……意外としつこいし」

 

 

 そんなコカビエルは、今日も丁重に禍の団からの使者を返した後、徹底的な防護魔法を施して鉄壁の守りを持つ屋敷の居間のソファに座ると、隣に座る金髪の美しい女性に対してちょっとうんざりした様子で愚痴っていた。

 すると金髪の女性……天使ガブリエルは、そんなコカビエルにフッと見惚れる様な微笑を浮かべながら口を開く。

 

 

「私達は最初からアナタが勧誘を受けるとは思って無いわ。だって信用してるもの」

 

 

 現・天界最強の女性天使ガブリエル。

 周囲にバレるもっと前からコカビエルと密会し、切磋琢磨してきた結果、彼女もまた天使という種族を遥かに超越した存在へと昇華し、コカビエルとも互角に渡り合える才色兼備そのままの女性なのだが……若干コカビエルに関わる事になるとぽんこつ化するのがたまに傷だった。

 

 が、超越者になったせいなのか、天使としてタブーな思考に陥ろうとも全く堕天する気配が無く、コカビエルの私物でハァハァしてしまっても天使だった。

 

 

「ところでコカビエル……私って女としてどう思います?」

 

「は? 何だ唐突に……?」

 

「いやその……何と無くそう思ったと云いますか……。昔、アナタにセラフォルーと比べられた事があったなーと思い出しましたといいますか」

 

「あー……強さの事だろ? 別に女としてで比べたつもりは無いぞ?

まあ、セラフォルー・レヴィアタンは別に嫌いじゃないが――――」

 

「わかりました、今すぐセラフォルーを倒してきますね?」

 

「お、おい冗談だ!! そもそもあの女と関わりが薄いんだからどうとも思ってないぞ!」

 

 

 嫉妬深くても天使。

 冗談を真に受けて暴走しても天使。

 

 

「じゃ、じゃあ今すぐ私を孕ませてください!

私は何時まで処女を守ってないといけないんですか!?」

 

「……。えぇー……?」

 

 

 毎晩毎晩コカビエルにちょっと乱暴にされる的なシチュエーションで―――と、妄想しながらハァハァしててもガブリエルは天使だった。

 

 

「こいつ、俺の酒を間違ってまた飲んだな」

 

「コカビエル……コカビエルゥ……!」

 

「おう、はいはい……わかったから暑苦しいぞガブリエル……ハァ」

 

 

 コカビエルチームは今日も平和だったとさ。




補足

前回の流れなんで、悪魔に対してはとことんゲス化します。

故に拉致られそうになってるのもヘラヘラしながら見過ごすし、それをわざわざゲス顔で教えもします。

その代わり悪魔以外であれば普通に普通な態度です。

だから、拉致されたのを見られても平然とお見送りされたのをソーナさん達は悲惨そのもの


その2
コカビエルさんとガブリエルさんはガチガチの最強ランクです。

無限の龍神の天敵の龍神に二人してタイマン挑んでたりとしてる内に他勢力に対する完全な抑止力となるまでに影響力が大きくなりました。

んで、その二人の関係は……まあ、本編の通りです。

コカビエルはミカエルにゴチャゴチャと言われたくないのでガブリエルさんに全く何にもしてませんし、酔っぱらった時のインパクトがデカくてアレというか……。


でもガブリエルさんは悶々と溜め込み過ぎて色々とアレ化しており、時には無理矢理コカビエルに襲われるシチュエーションを夢想してハァハァしてたりと……。


結論からすれば、二人に子は間違いなく新種族としてのポテンシャルが半端無いでしょうね。


その2
イリナさんとゼノヴィアさんは兎に角一誠に過保護です。

曰く、見てるとキュンとするらしいです。

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