ハイスクールD×S   作:超人類DX

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確かここまで……だよな?


自由の赤龍帝

 慈しみは無く、ただ壊す。

 力を完全に取り戻した龍帝はその破壊行為の最中ですら無限に進化をしていく。

 

 もはや力を取り戻した直後の彼と、今の彼の力の差は文字通り次元が違う。

 

 ありとあらゆる力、生物、環境、事象、概念に即座に適応・吸収・学習し、それを礎に更なる進化を無限に行う事が出来るというものこそが兵藤一誠の持つ本来の異常性。

 

 

無神臓(インフィニット・ヒーロー)……それが俺の本質。

全く以ての名前負けだけど、ククッ……分かるかい? 俺を制御したつもりになって散々勝手に行使してたテメー等は、本来の数%程度しか使えてなかったんだよ。

まあ、それでも俺からすれば勝手に人の中の領域に侵入して好き勝手してくれたと思ってるがなぁ?」

 

『…………』

 

「ま、もう二度とテメー等はその数%も使えない……いや、まともな日常生活すら送れなくなってしまった訳だがなぁ?」

 

 

 全ての存在に勝利出来る可能性のある異常性……それこそが兵藤一誠の無神臓の本質だった。

 故にその本質を勝手に利用した連中は決して許さない。

 

 

「ぐぉ……がぃ……が!」

 

「おいおい、此処は人間界だぜ? ちゃんと人の言葉で喋ろうぜクソ悪魔? ゲゲゲゲゲ!」

 

 

 命乞いをしようが何をしようが、一誠は決して許さずその者達を丹念に破壊する。

 それが例え、悪魔全てを敵に回すことになろうとも……。

 

 

『Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!』

 

「助かりたいのであれば『助かりたい』と言ってみな?」

 

「ぐぎ!? ぎごがごがば――ぎぃぃっ!?」

 

「ごめん何言ってるかわっかんねーや? アッハハハハ!」

 

 

 一誠は絶対に止まらない。

 

 

 

 

「両足の破壊か……。

これくらいならまだ許容範囲内だろうな……奴にすれば発狂物かもしれんが。

まぁ、どっちにしろ済まんな兵藤一誠よ、恩に着る」

 

「アンタ達には借りがあるからな。それに、もう大体の気も済んだ」

 

 

 駒王学園・校庭。

 夜ということもあるせいか、それともあっという間に嵐が過ぎ去ったせいなのか……。

 異様なまでの静けさだけが残るこの場所で、力の全てを取り戻し、更にその報復の最中にも進化を果たした茶髪の少年が、目の前に転がる……死んだ方がさぞ楽に思える生きた屍を前に、実に冷たい表情を浮かべながら隣に降り立つ黒髪の男相手に会話をしていた。

 

 

「しかし師匠とアンタが知り合いとは……」

 

「言うほど親しくは無いぞ? 知り合い以上程度だ」

 

 

 木場祐斗、塔城小猫、姫島朱乃、そしてリアス・グレモリー

 衰弱していて完全に弱っていた所を無理矢理悪魔へと転生させる事で制御を図り、それに成功すれば今度は偶発的に発見した一誠の持つ異常性の一部を使役し、我を通してきた悪魔の集団を完膚なきまでに再起不能にした事で折り合いを付けた訳だが、その内の一人である朱乃だけは両足の骨と精神をへし折って破壊する程度に、コカビエルの懇願により留めたが、残りの三人に至っては持て囃されていた容姿が見る影もなく破壊されており、最早日常生活すら満足に送れないだろう。

 

 しかし一誠に罪悪感情はゼロだった。

 

 

「アンタ達には感謝してる。

お陰で全部取り戻す事が出来たからな」

 

「頼まれからやっただけだし、気にする必要はない。

それよりもこれから恐らくこの事実を知った悪魔の一部に狙われる事を気にしろ。

まあ、その実力なら何の心配も要らんとは思うがな」

 

「ご忠告に感謝するぜ……」

 

 

 呻き声を出す屍を無視してコカビエルの忠告に頭を下げていると、自分の名前を大きな声で呼びながら此方に向かって走ってくる少女二人に視線を向ける

 

 

「イッセーくん!」

 

「大丈夫だったか!?」

 

 

 明るめの茶髪をツインテールに縛る少女イリナと、青髪に緑色のメッシュを入れてる少女ゼノヴィアが、転がる屍達に目もくれず、角も反転した瞳も無い只の少年に戻った一誠に駆け寄り、妙に過保護気味な様子でペタペタと怪我が無いかと身体に触れてくる。

 どうやら二人にとっては一誠がまだ心配で仕方ない様だ。

 

 

「怪我とかしてないよな?」

 

「あの悪魔に変な事とかは……」

 

「い、いや……別に何にもされてないっつーか、寧ろ引く程ぶちのめしたというか……」

 

 

 どうも二人はまだ一誠が力を取り戻す前の、顔を倍に張らして腕もへし折られた封印一誠の印象が強過ぎたのか、揃って困惑する一誠の身体をペタペタと触りまくりながら心配している表情だ。

 

 

「ったく、そのお二人に大丈夫だって言ってるのにアンタの心配ばっかりしてたんだぜ?」

 

 

 そんな困惑する一誠に後からゆっくりと歩いてきたフリードが呆れた様子で、二人の事を伝えてきたので、一誠はまだペタペタと触ってくる二人から距離を離しつつ、ペコリと頭を下げながら改めて今回世話になった事のお礼をする。

 

 

「キミにも世話になった。本当にありがとう」

 

 

 今回の事が無ければ、自分は力を取り戻せなかった。

 感謝してもしきれないとフリードとコカビエル……そして然り気無く七本の聖剣を一つに融合させたバルパーにも頭を下げる一誠に、受けた三人は微妙にむず痒そうな表情だ。

 

 

「よせよ、別に偶々そんな気になったってだけだし」

 

「まあ、あの女に借りを作るつもりなだけだったしな」

 

「私は……只の手伝いで何もしてないし」

 

 

 直接お礼を言われることにあんまり慣れてない三人組は口々にそう言いながら微妙に視線を逸らしつつ、これ以上言われるのもアレだったので、無理矢理話題を逸らそうとコカビエルが口を開く。

 

 

「そういえばセラフォルーの妹とその下僕共はどうするんだ?

奴等も一応悪魔で、今も離れた所から――あー……どうしたら良いか解らないって顔をしてるな」

 

「どうせだし、ついでに滅しちまうか?」

 

 

 話題逸らしに利用されたソーナ達をどうするのかと云うコカビエルと滅する気なのか手に七本の聖剣とは違う聖剣を手にしていたフリードの好戦的な台詞に、一誠は学園の屋上から障壁を張っていたもう一組の悪魔団体の姿を見据えつつもどうでも良さげに口を開いた。

 

 

「余計な事をしゃべる前にぶちのめしても良いんすけど、ぶっちゃけあの悪魔共から何をされたって訳でも無いですからね。

正直、このゴミ共の後処理を押し付けてメッセンジャーにでもなって貰いたいから、俺は別に何もしませんよ」

 

 

 興味の無さそうな目でソーナ達は無視すると宣言した一誠にコカビエルはそうかと頷く。

 

 

「それなら放っておくか。

あの小娘も魔王セラフォルー・レヴィアタンの妹だが、別に戦いを楽しめる程度の力も無いしな」

 

「ボスが言うなら俺っちも何もしねー」

 

 

 今も恐怖に引き吊った顔で屋上から様子を伺ってるだろうソーナ達に向けていた視線を切る。

 その表情はフリードと共に最早一ミリも興味が無くなったといった顔だった。

 

 

「それでだ、今バルパーが持ってる通り、聖剣が元の状態に戻った訳だが……」

 

 

 それよりもコカビエル達にとって重要なのは、フェイクで集め、そして流れで一つに合体させて元に戻した聖剣をどうするかであった。

 

 

「む……アナタの相棒に渡して天界に返還するのでしょう?」

 

「ガブリエル様にですよね?」

 

「うむ……とはいえ、堕天使の俺が本当にガブリエルと知り合いなのかという証拠を示さないとお前達としても不安だろう?」

 

 

 そもそも今は既に七本が一つに纏まった聖剣だが、コカビエルもバルパーもこれを使って何かをするという考えは皆無であった。

 寧ろバルパーからすれば聖剣自体が昔の嫌な記憶を呼び覚ますので、あんまり触れたくは無い代物とすら思っている。

 過剰に嫌悪感を示さないのは、バルパー自身が大人で聖剣自体が原因とはあくまで考えて無いからだ。

 

 なのでさっさとこの聖剣を教会側に返してしまうつもりなのだが、問題はその返還の方法だった。

 コカビエルとバルパーとフリード的には、任務で派遣された二人に渡して、その二人が教会に返還すればそれで良いのではとは思うのだが、イリナとゼノヴィアはあの日コカビエル――と、びっくりな事にそのコカビエルと当たり前の様に一緒に居た天使のガブリエルから聞かされたコカビエル自身の人格を信用し、彼から元々は天使側の所有物である聖剣をガブリエルに渡すと思っていた。

 

 

「それはそうでしょうが、私とイリナとしてはアナタを信じるつもりです」

 

 

 地味にリアス達の呻き声が聞こえるが、全員が全員してガン無視であり、全てを一体化させた聖剣をコカビエル経由でガブリエルに返還するという方向で話は纏まった。

 

 

「なら確かにこの聖剣は預かった。

必ずガブリエルに渡すことを誓おう」

 

 

 二人に言われてしまえば断るという訳にもいかず、コカビエルはバルパーに封印の術式をする様に命じてから誠実にそう宣言する。

 基本普通に極悪人みたいな容貌だが、その実は普通に誠実な男なコカビエル。

 欠点があるとすれば、戦闘狂である事ぐらいだが、生憎その戦闘狂に救われた者達が今コカビエルと共に居るので余り咎められる事も無かった。

 

 

「聖剣はこれで良いとして、お前達はどうするつもりだ? 正直……俺はバルパーという例を見てるせいか、悪魔祓いやら教会の人間達が微妙に信用ならんのだが」

 

 

 が、問題はその後であり、イリナとゼノヴィアの今後の身の振り方についてだった。

 

 

「教会の人間はバルパー・ガリレイを聖剣計画の主犯格として扱っています」

 

「……。皆殺しの神父等と呼ばれてるからな私は」

 

 

 コカビエルの問いに対し、ゼノヴィアが少しばかり目を伏せながらこれまでバルパー・ガリレイが聖剣計画の狂気の主犯格と思っていた事を暴露する

 それに対してバルパーは半分諦めてる様な、少しだけ遠くを見るような目で苦笑いをしており、ゼノヴィアもイリナも数日前までバルパーを狂人と思っていた事に罰が悪そうな表情だった。

 

 

「恐らく、知りすぎた私達は戻っても秘密裏に処理される可能性が高いと思います……」

 

 

 それ故に、もし教会に戻った場合口封じで処理される可能性が実に高くなっており、どうであれ神を信仰してきた二人はショックから抜け出せない表情で自分達のこれからについての予想を話す。

 

「え?」

 

「まあ、そうなる可能性は高いな。

聖剣計画自体はあのおぞましい人体実験を経験しても尚、未だに残ってるものだからな。

もしかしたらキミ達の中に残る因子を抜き取られ、始末される可能性も無きにしもあらずだ」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。教会ってのはそんなにアレな組織なのか?」

 

 

 経験者は語るとばかりにバルパーが複雑そうな顔でイリナとゼノヴィアの今後についてを予想する横で、一誠が驚いた表情をする。

 どうも一誠の中ではまだ悪魔より教会組織の方がクリーンと思っていた様だが、それを否定したのはフリードとコカビエルとバルパーだった。

 

 

「全部が全部クリーンではない。

一部にはそういう輩も居るんだ……現に今話した聖剣計画にしても、ミカエルの意思を完全に無視したものだったからな」

 

「でなければ、そこでくたばってる彼が復讐なんて企てないだろ?」

 

「まあ、今でこそ本来の急進派共はコカビエルとガブリエルによって駆逐されたが、秘密主義の強さだけは未だに根強く残ってる。

恐らく、知りすぎたという理由でこの二人はタダでは済まないだろう」

 

 

 口々に完全なクリーンではないと語る三人組。

 特にフリードの表情は格好こそ悪魔祓いのソレだが、教会側を一切信用していないといった顔だった。

 それもその筈、何せこのフリードもまた幼少期は天才と呼ばれた悪魔祓いだったが、その実はかなり壮絶な人生を送っており、それを補足するかの様にバルパーが隠されていた真実の一つをイリナとゼノヴィアに語る。

 

 

「このフリードもまたあの計画の被験者だったからな」

 

「え!?」

 

「あ、アナタも!?」

 

 

 バルパーの暴露にフリードが目を逸らし、イリナとゼノヴィアは驚愕する。

 

 

「だが計画の雛型は確かそこの木場祐斗達では……」

 

「フリードはその更に前の完全なプロット段階の、たった一人の被験者だ。

だから七本に別れた聖剣をキミ達と同じように扱えたんだ。

とはいえ、元々フリードは聖剣に対する適合数が他の子供達と比べて次元の違うものがあった。

理由はキミ達も見たかもしれないが……フリードは生まれながらにして『ジョワユーズ』の使い手だったからだ」

 

「そーそー、これの事だ」

 

「っ……なるほど、だからあの時キミの持っていた剣に何かを感じたのか」

 

「そーゆーこったデュランダル使いさん」

 

 

 明かされる真実の一端に尚驚くイリナとゼノヴィア。

 木場祐斗達雛型の被験者よりも更に前、プロット型のただ一人の被験者だったフリード・セルゼン。

 その身には様々な初期実験が施されていて、その実験を基に雛型生まれ、そして自分達の世代へと徐々に安全面を考慮された計画へとスライドされいった。

 その事実は所謂計画の完成形と呼ばれる二人にしてみれば更なるショックを受けるに充分であり、器用にジョワユーズの剣を回してるフリードに対して何とも言えない気分を抱いてしまうが、フリード自身はヘラヘラ笑って気にする事でもねーよと言う。

 

 

「まあ、クソみてーに身体を弄くられたのは否定しねーが、お陰で今までこうして生き残れたんだ。

それに今の人生は楽しいな……だから気にすんなって後輩ちゃん?」

 

 

 ケケケケケと口を歪めて嗤うフリードに二人は言葉が出ずに押し黙ってしまう。

 そんな一誠は途端に心配になってイリナとゼノヴィアを見つめる。

 この二人にも一誠は大きな借りがあるので、これまでの話を聞いてて楽観視は出来なかった。

 

 故にそんな話を聞いた以上……じゃあ頑張れよと送り出す訳にもいかなくなったと一誠は二人に訊ねた。

 

 

「二人は戻るのか?」

 

 

 そして取り敢えず聞いてみた、二人の意思を。

 これで二人がそれでも戻るというのであれば止める事は出来ない。

 

 

「「……」」

 

 

 そんな一誠の問い掛けに二人は――――

 

 

 

 

 

 

 

 化け物……化け物がそこには居る。

 赤龍帝を手中に納めたと機嫌良く言っていた幼馴染みの黒い部分に対して忠告出来ずに居たソーナは、来てしまった悪夢に足がすくんで動けなかった。

 

 

「あ、アイツ……な、仲間を……こんなに……!」

 

 

 人の形をした悪鬼達が消えた後、取り残された幼馴染みとその仲間達へと直ぐ様駆け寄ったソーナ達は、その成れの果てとなった残骸を見て全員が吐いた。

 

 

「むぐぉ…がぉ!」

 

「リ、リアス達を直ぐに治療しなさい! 私は魔王様達にこの事を報告します!」

 

『は、はい!』

 

 全身を隈無く破壊され、それでも意識だけが残ってるのか、声も言葉も満足に発せずに口らしき箇所からくぐもった声を発する、見る影も失った幼馴染みとその仲間達に真っ青な顔をしながら指示を飛ばしたソーナは、直ぐ様魔王達に今晩起きた全てを話し、駆け付けた悪魔の医療班達と共に冥界へと渡った。

 だが、その途中で恐ろしい現実……。

 

 

「ち、治療が出来ない!? な、何故ですか!」

 

 

 リアス達の治療が全く出来ない。

 そう顔を真っ青にした医療班の悪魔に詰め寄るソーナに、その悪魔は震えた声で言った。

 

 

「治療の魔法も、秘薬も、フェニックスの涙も……ありとあらゆる手を尽くしました。

し、しかしその全てを以てしてもリアス様達の受けた傷は全く回復がしないのです……! まるで治療を拒絶するかのように……!」

 

「そ、そんなバカな事が……!」

 

「わ、私達ですらこんな事は初めてです! 一体どんな力を受けたからこんな事になったのか……!」

 

「………」

 

 

 絶望に満ちた表情の悪魔にソーナもまた絶望の底へと叩き落とされる。

 眠らせる魔法を駆使しても、麻酔薬を使用してもリアス達は眠らず、それどころか痛みに獣の唸り声の様な絶叫をあげる。

 これのせいで外科的な施術すら施せず、かと云って冥界に伝わる秘薬をも治療できない。

 

 壊れた所は壊れたままで……受けた傷は何をしてと直らない。

 

 それは恐らくリアス達を此処まで痛め付けた赤龍帝の兵士の影響である事は間違いなかった。

 なかったが……ソーナはあの悪鬼の様な男に挑み、リアス達の治療方を聞く勇気が既に失せていた。

 

 理由は簡単だ……余りにも彼の戦い方が残酷で……余りにも怖かったからだ。

 

 

「到着すればもっと色々な手段を試せますが……恐らくは……」

 

「………」

 

 

 永遠にこのまま……。

 幼馴染みでありライバルでもあったリアス達が永遠に壊れたまま永遠に苦しみ続ける。

 その現実がソーナの心をへし折るに充分であり……。

 

 

「も、もし彼が悪魔に恨みが強かったら……み、皆殺される……」

 

 

 只の赤龍帝では無い兵藤一誠に、ソーナは更なる恐怖心を植え付けられてしまうのを責めるのは、余りにも酷なのかもしれない。

 

 

 

 

 悪魔にとっての悪夢の夜から時は流れた。

 駒王学園の一般生徒達からすれば、オカルト研究部の面々は一種のアイドルの様な存在であり、そのアイドル達が挙って『休学』となったと知った時は学園全体が騒然となった。

 

 

「おい兵藤! 何でグレモリー先輩達が休学なんだよ!」

 

「…………」

 

 

 その理由が……転校と同時にオカルト研究部の部員となった一誠というよく解らない転校生によるものだと知らず、唯一部員の中で普通に登校してきた一誠に、ここ最近は同じような質問を毎日の様に男女問わず、嫉妬もあったせいか責めるようにする生徒達だが、決まって一誠は何時もこう返す。

 

 

「知るか、部員ではあるが親しい訳じゃ無いんでね」

 

『………』

 

 

 いっそ吐き捨てる様にそう返されてしまう生徒達。

 言われてみれば確かに一誠はオカルト研究部の面々を怨めしそうに睨んでる事が多く、その態度に対しても部員である事を妬む一部によく絡まれていた事を思い出した生徒の大半はそれで諦めてしまうが、特にファンだって方の生徒は妬みもあってか、それでも納得せず一誠を問い質そうとする。

 

 

「またイッセーくんにそんな質問してるの?」

 

「まったく、本人は知らんと言ってるのだからいい加減納得したらどうだ?」

 

 

 が、それに対して何時も間に入る二人組が居た。

 それが、オカルト研究部員の謎の休学から数日後に入れ替わる様にして転入してきた二人の美少女……紫藤イリナとゼノヴィア・ルイゼンバーンであり、この二人の美少女が一誠を庇い、そしてその一誠がオカルト研究部員達にすら一切見せたこと無い、優しげな態度を見せるものだから、彼女いない歴=年齢の男子生徒の多くは、更に一誠に対して妬みを強くしていた。

 

 

「そもそもイッセーはもう例のオカルト研究部とやらを退部したんだぞ? しかもその部員達との交流はほぼ無かったと主張してるんだ。

問い質しても答えなんて求められないだろう?」

 

「そうよ、まあ、聞いてみればかなりそのオカルト研究部の人達が人気者だったらしいし? その部員だったイッセーくんが知らないと言っても納得出来ないって思う皆の気持ちも解らないでもないけどね」

 

 

 今日も過激ファンからの無意味な尋問の間に入り、そのまま無言の一誠の手を取って教室の外へと連れ出すその背中を怨めしそうに睨む生徒達。

 

 

「う……」

 

「こ、こんな美少女二人とも知り合いとか……マジで死ねよ兵藤」

 

 

 美少女二人が転入してきたとテンションが上がったかと思えば、よりにもよって一誠と知り合いでしかも妙に距離感が短いときた。

 この時点で妬むネタとしては充分すぎる程であり、今もまた二人に手を引かれてさっさと教室から出ていった一誠の無表情な態度に嫉妬の念を向ける生徒達は、ますます一誠が気に食わないと思うのだが、一誠本人は一切気にしてなかった。

 

 何せ一誠からすれば、オカルト研究部……いや空中分解待ったなしの部活の面子共の嘘だった関係より、同類として再会した昔馴染みとその相棒の友人との時間の方がよっぽど有意義で本物を感じるのだから。

 

 

「予想はしてたけど、いい加減うざったくなってきたぜ」

 

「まぁ、原型も留めない程のボロクズになってて二度と復学もしないと言われるよりマシだろ……本人達にとっても」

 

「しかしまあ……見た目だけしか見られてなかったと思うと滑稽に思えるわ」

 

 

 教室を出て、使われてない空き教室へ入った一誠、ゼノヴィア、イリナの三人は、用意したご飯を食べながらうんざりした様子で駄弁っていた。

 

 結局あの夜二人が出した答えは……一度教会に戻って任務達成の報告をして様子を見る――という選択だったのだが、程なくしてバルパーが予想した通りに『知りすぎた』と言われて追放された。

 その際、ゼノヴィアは隠していたデュランダルの適合パターンのサンプル採取としてモルモットにされそうになったのだが、ゼノヴィアが捕まる訳もなく、同じく家族から化け物扱いされていて追い出されていたイリナと一緒に教会から脱走……そのままガブリエルとコカビエルの手引きにより、一誠の待つ駒王町へと戻って年相応の学生生活を営む事となった。

 

 ちなみに二人の家は、親に捨てられて独り暮らしの一誠宅に転がりこんでたりするが、別にだからと云って何がある訳でも無いとだけ言っておく。

 

 

「もう一組の悪魔は生徒会として残ってるが、まあ、何もしては来ないだろ。

聞けば偉い悪魔から『関わるな』とか言われたらしいし」

 

「それで絡んできたとしても、どうとでもなるしな」

 

 

 コカビエルとガブリエルという堕天使と天使側からのバックアップにより、以前以上に悪魔からの干渉をほぼ防いでいる状況は、自由を取り戻したのと相まって久々に充実した日々を一誠に与えており、また、自分と同じ能力保持者(スキルホルダー)であるイリナとゼノヴィアとの刺激のし合いが更なる進化を一誠に与えていた。

 

 

「今日のご飯だけど、誰が作る? 流石にずっとイッセーくんばっかりってのも申し訳無いし、そろそろ私かゼノヴィアが――」

 

「いや良い。

あんまり言いたくないけど、二人して料理が壊滅的というか……」

 

「む……一応サバイバル訓練みたいな真似事をしてて料理が不得意って訳じゃないんだが……」

 

「それは聞いたけど……取り敢えずまともになるまでは俺がやる。

……まさか米を磨ぐのに洗剤をぶちこむなんてベタな真似をされるとは思わなかったんだ」

 

「それはゼノヴィアじゃない。私はただお砂糖とお塩を間違えただけで……」

 

「只の目玉焼きを炭の塊に錬金するイリナも相当だと俺は思うが」

 

「「むぅ……」」

 

 

 胃の方もある意味耐性的な意味で進化していたりと……今の一誠は実に充実していた。

 料理下手な二人はちょっと不満そうだったが。

 

 

「誰かの嫁さんになるまでにはその下手くそさを直した方が良いと思うぜ?」

 

「あ、うん分かった。イッセーくんのお嫁さんになるまで二年ちょいだから、それまでには何とかするね?」

 

「え? いや何で俺――」

 

「嫁か……ふむ、ついでに私の事も引き取ってくれるよな? イリナと同じく飯ならそれまでに上手くなるようにするから」

 

「は? いやだから、俺じゃなくてこの世界の男の誰かの嫁さんになった場合の――」

 

「「じゃあお嫁さんにしてください」」

 

「………。あっれ、俺達そこまで仲良かったか?」

 

 

 これから先、助け合いながら生きていく事を思えば苦でも何でも無かったのだという。

 

 

 紫藤イリナ

 

 元・悪魔祓い

 現在無所属

 

 能力・快楽手義者(ハンドレッドブレジャー)

    

 

 ゼノヴィア(名乗る上ではゼノヴィア・ルイゼンバーン)

 

 元・悪魔祓い

 現在無所属

 

 能力・時由時在(オーバークロッカー)

    デュランダル適合者

 

 

 兵藤一誠

 

 元・グレモリー眷属兵士

 現在無所属(種族も人間に回帰)

 

 能力・赤龍帝の籠手

    無神臓(インフィニットヒーロー)

    破壊のスタイル

 

 

 備考……能力保持者同士による共鳴により自然発足されたチームであり、気色悪いレベルの仲の良さで基本的に一誠が妬まれてる。

 

 例・基本ずっと三人一緒に行動してる

   基本普通にボディタッチが多い。

   基本気付くと何かハグしてたりする。

 

 

「というか、冗談でそういう事は言わん方が良いと思うぜ? 普通に誤解するし」

 

「今の台詞は完全に傷ついたよイッセーくん。

冗談なんかじゃないもん……」

 

「あー……私はどうもお前が放って置けないというか……お前ってなんかこう、私の中に無かった何かを目覚めさせた様な気がしてな。因みにイリナと同じく冗談では無いぞ?」

 

「………あー……そう」

 

 

終わり

 

 

オマケ・帰還

 

 

 フリード、バルパー、コカビエルの三人はやるべき事を終えて帰還した。

 外敵から守る為に徹底的に施した防護の術式で覆われた大きめの家には、現在三人の他にもバルパーが必死になって救い出した聖剣計画の雛型にされた子供達と、偶々フリードが行き倒れになっていたのを拾ったルフェイという美少女、そしてコカビエルと切磋琢磨してきた美女天使・ガブリエルがそこには居る。

 

 

「安心院なじみの依頼は完了だ。あ、これ聖剣だからお前からミカエルにでも返しておいてくれ。

あと騒動に巻き込んですまんかったと……」

 

「ええ、確かに受け取ったわ。

それにしても……その子供の為とはいえ、あの女性の言うことをホイホイ聞くのは微妙に納得できませんね」

 

「……。まだ言ってるのかお前……というか、それ俺の服だろ。何でお前が着てるんだ?」

 

「………。察してくださいよ……ばか」

 

 

 

「俺達の後輩がボスと同類の力を持っててよ? あれやっぱスゲーわ」

 

「ふーん、女の子でしたっけ? ふーん?」

 

「え、何そのリアクション? つーか、微妙に怒ってねーかルフェイたん?」

 

「いーえ別に……ふーんだ」

 

「? ? ?」

 

 

「バルパーお爺様、こっちにお花を植えてみたよ!」

 

「お、パンジーか……ふむ、中々センスがあるじゃないか」

 

「お爺様! その……僕達の仲間は……?」

 

「…………。すまん、彼は悪魔に染まりすぎて助けられなかった。すまん……」

 

 

 それはまさに平和だった。

 種族の隔たりも無く、ただ平和に過ごすは理想の場所。

 コカビエル・チームの平穏はこれにて戻った。

 

 

 

その2

距離感の近すぎる三人組。

 

 同類故のシンパシーなのか、イリナとゼノヴィアとイッセーの三人の距離感は十代集まる高校でも異様だった。

 

 

「ワンルームは狭すぎだな。そろそろ適当な広さの部屋に引っ越すべきだぜ。

と、いう訳で俺は押し入れで寝るから二人は相談して布団かベッドで寝れば良い…………ってこの前ずっと言ってるのに、どうして二人揃って押し入れに来るんだよ! 意味ねーじゃん!?」

 

 

 例えば部屋を二人に提供し、家主なのに押し入れで寝るつもりだったのに、イリナもゼノヴィアもわざわざ一誠の入る押し入れに入り込んできて密着するわ。

 

 

「んが……?」

 

 

 じゃあジャンケンで寝る場所を決めようというルールに乗っ取り、ベッドで寝た一誠が朝になり目を覚ますと……。

 

 

「どぅわ!? な、生おっぱい!?」

 

「ん……なんだ、朝か……?」

 

「おはよーいっせーくん……」

 

 

 別々に寝てた筈なのに、いつの間にか自分の真横で……しかもほぼ全裸で寝ている二人の胸に挟まれてビックリドッキリなイベントが起きたり……。

 

 

「ちょっと待て、決して嫌な訳じゃなく寧ろうほほーな嬉しさがあるが、おかしくねーか? 俺がここまでサービスして貰う程、イリナとゼノヴィアに好かれる覚えが無いんだけど!?」

 

「えー? 私、昔からイッセーくんのお嫁さんになりたいって思ってたしー……」

 

「私は……何だろうな……力を奪われてたお前と、取り戻したお前を両方見た結果、『イッセーはイリナだけじゃ無く私も居ないとダメだ』と思ってな……。それに、お前の事は好意を抱いてるつもりだが?」

 

「え、えぇ……?」

 

 

 力を取り戻し、同類故に惹かれ合っている三人はほぼ事実婚状態に近い生活パターンを送っていた。

 

 

「そら、早く風呂にでも入ろう。私が洗ってやるから」

 

「……。ねぇイリナ、ゼノヴィアって俺を餓鬼扱いしてないか?」

 

「何かイッセーくんを見てると『変な保護欲が沸いてくる』んだってさ。

良いじゃん、ゼノヴィアも胸大きいよ?」

 

「そら確かにそうかもだけど……何かなぁ……」

 

 

終わり 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悪魔達は困った。

 天使と堕天使との会合で、こんな事を言われたからだ。

 

 

「同盟……まあ、アザゼル達とはしても良いですが、ちょっと悪魔達とは……」

 

「無理矢理悪魔に転生させて力を奪って、報復されたのがお前の妹って時点で地雷の気配が半端無いんだよ。

コカビエルとガブリエルのお陰でミカエル達とはすんなり同盟は結べるが……」

 

「くっ」

 

 

 ミカエルとアザゼル両方から同盟を拒否られ。

 

 

「は? クソ悪魔を直す方法?」

 

「そうだ、キミに妹がした無礼は我々一同誠心誠意謝罪する。だから、せめて妹を直す方法を教えてくれないか?」

 

 

 それから屍のまま強制的に生かされているリアス達の治療法を聞き出そうと、元凶の少年に訪ねれば……。

 

 

「死んで火葬でもしてやれば治ると思うけど?」

 

 

 少年は自分達悪魔を嫌悪するような態度で教えるつもりは無いと言ってアッサリ去っていき……。

 

 

「へぇ、主に害を為したからはぐれ悪魔ねぇ? 面白いな、俺悪魔じゃねーんだけど?」

 

 

 人間にやられた事に我慢できなかった過激派のバカのせいで完全に敵対関係となってしまったり。

 

 

「人間ごときが、ねぇ? 別に見下したければ好きにしたら良いけど……」

 

 

 

―我、目覚めるは覇の理を神より奪いし二天龍なり―

 

    ―無限を超越し、夢幻を破壊せん―

 

―我、全てを喰らい、全てを糧とし永遠の進化を遂げる無神臓と化し汝を滅ぼさん―

 

 

「いい加減貴様等には飽きたな。

新しさの欠片も無いし、そろそろ終わってしまえや……! ゲゲゲゲゲゲ!!!!」

 

 

『悪魔如きが俺とイッセーを殺れると思ってるのか? 笑わせるな!!!』

 

 

 龍の逆鱗に再び触れし時、世界の勢力から一つの種族が滅びる。

 

 

 エセ予告




補足

ゼノヴィアさんのスキルは勝斗さんのアイデアを貰いました。
アザっす。

時由時在(オーバークロッカー)

 時間の流れが視え、更にその流れを弄くれるスキル。
 これによりゼノヴィアさんは某クロックアップ的真似が可能であり、更に言えば真の意味でイッセーのスキルの影響による進化にて研ぎ澄まされている。

その内『Hyper Clock Up!』とか言い出したらガチで黒猫変態お姉ちゃん並みに手が付けられなくなるかもしれない。

これ、因みになんですけど、ルイゼンバーン姓はスゲー適当に思い出したまんま付けました。
語呂的にも自然だったので……まあ、元ネタは老いを司るお爺ちゃんですけど

その2
ヴァーリきゅんですが、実は見てました。
見てましたが……


『いや、流石に今挑んでも殺されるから修行しよ……』

と、ドン引きレベルで暴れてたイッセーこと赤龍帝を見てそそくさと帰りました


その3
フリードきゅんは、木場きゅん達よりも更に前の聖剣計画被験者でした。
しかも天然でジョワユーズを持ってたのを隠してきたせいで、相当無茶な実験をさせられてたという……



ちゅーか、やっぱり感想多くてびびるぜ

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