ハイスクールD×S   作:超人類DX

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此処で加速して超駆け足でやる


死する赤龍帝

 大いなる力を使役するには、大いなる責任が伴う。

 

 なんて誰かは言うが、そんな事をバカ真面目に考えるやつなんて人間だろうが悪魔だろうが居る方が珍しいと俺は思っている。

 

 でなければ、他人から奪った力をホイホイ使って嫌なことから逃げまくったりなんざしやしねぇんだ。

 

 

「昨日、あれほど言ったのに何故あの二人と会ったの?」

 

 

 勘違いしてる支配欲バカ程、そんなもんなぞ考えやがれねぇんだ。

 

 

「………」

 

「黙っていたら分からないのだけど?」

 

 

 自分の弱さに反吐が出る。

 イリナとゼノヴィアの聖剣探しの手伝いをした後、二人と別れた瞬間にいきなり背後から襲われた。

 

 脳天に喰らった鈍い痛みと、全身を焼かれる様な痛みを一瞬感じてから視界をブラックアウトさせ、意識を取り戻したと思ったら、居たくも無いクソ部室の壁に縛られており、目の前には顔も見たくねぇクソ悪魔と手下共と来たもんだ。

 目覚めからして最低最悪だぜ。

 

 しかも一丁前に尋問の真似事でもしたいのか、縛られて強制的に床へ座らされた俺と目を合わせながら勝手に触れてきやがる。

 

 

「触んな不細工」

 

「………」

 

 

 そもそも何故イリナとゼノヴィアと行動したのかだと? んなもんテメー等が憎いからに決まってんだろうが。

 何回も言った筈なのに、このクソ共は何を勘違いしてるのか、俺を所有物扱いしてきやがる。

 ……。いや、正確には転生によるクソみたいな繋がりのせいで獲られた俺の劣化しまくりな能力(スキル)をだが。

 

 俺の顔に触れようとしたクソ悪魔から顔を逸らして言ってやると、手を伸ばしたまま一瞬だけ固まると『そう……』とだけ呟きながらスッと立ち上がり、俺を見下す。

 

 

「いくらのぼせても構わないけど、イッセー……これだけは覚えておきなさい」

 

 

 俺を見下ろすクソ悪魔が気取った様に話す。

 

 

「アナタは死ぬまで私のモノよ」

 

 

 うっすらと……嘲笑う様にしてほざくその姿はまさに悪魔らしい物言いだ。

 吐き気のしやがる……俺が最もぶっ殺してやりたい人物像そのものだ。

 

 

「肝に命じて、暫く此処で頭を冷やす事ね」

 

 

 そう偉そうにほざいたクソ悪魔は、ご丁寧に白髪チビを置いてクソ女王と共にクソ部室から出ていった。

 こんな程度のロープなんて無理矢理引きちぎれ様もんなら引きちぎれる筈なんだが、ちきしょう……何か仕掛けてあるせいか身体に力が入らねぇ。

 加えてこのクソ戦車の白髪のクソガキが見張りのつもりか、この場に残ってるせいで逃げられもしねぇ。

 

 イリナとゼノヴィアと明日もと約束してたんだが……クソ、これじゃあ無理だ。

 

 

「チッ……」

 

「無駄です先輩。部長の魔力で縛ったので、先輩の力ではどうする事もできません」

 

「口を開くな……殺すぞクソガキ」

 

 

 それを見越してなのか、此処に残った白髪クソガキの忠告にイライラした俺は、声すら聞かせるなと言ってやる。

 そういやあのクソ騎士のカスはどうなったんだろうか……。

 回収でもされて治療か? まあ、死んでてくれようが俺には関係無いが。

 

 

「……。先輩、ご飯でも食べますか?」

 

「テメーの腸引き裂いてから引きずり出して、その口の中に突っ込む方法を考えてるんだ、話し掛けんなクソガキ」

 

 

 取り敢えず、このクソガキを出し抜いて逃げないとな。

 ………。それか、俺に構う暇も無くなる位の災害が近くで起きれば良いんだがな。

 

 

 

 その力は人じゃない。

 その力は自分達の遥か上だった。

 その力は簡単に世界を破壊できる危険なものだった。

 

 その上今代の赤龍帝……だからリアスは一誠を下僕にしてその力を封じてやろうとした。

 

 

「あの教会の二人はどうするのですか? 恐らく彼を訪ねて此処に来るかもしれませんよ?」

 

「来たら来たよ。『私達は聖剣や貴女達に関わらない。だから下僕であるイッセーも関わらせない』と言って追い返せばいい」

 

 

 自身の騎士である木場が、復讐心で先張っていた所を一誠が勝手に動いて共に行動していた二人の教会の使いが押さえ込んだ。

 それにより木場の身柄も回収でき、尚且つ二人と別れた所を押さえ込んで一誠も回収した。

 

 これで物理的に一誠とあの二人の距離を離せ、尚且つ二度と会わせない為に縛り付ける事もできた。

 

 

「あの二人もイッセーくんと『同じ』みたいですが……」

 

「ええ、祐斗がやられた辺り、あの二人も結構な力を持ってるみたいだけど、イッセーさえ居れば大した問題じゃないわ」

 

 

 元々リアスが一誠を下僕にするのは、圧倒的な差があるために無理な話だった。

 何せ全盛期状態の一誠は、リアスの許容を遥かに越えた実力を持ち、転生させるには余りにも大きすぎた。

 

 しかしリアスは今一誠を下僕にしている。

 その理由は……偶然一誠が修行で死の手前までにまで弱っていたのを発見したからだ。

 といっても、五分も寝れば勝手に動けるまで回復する……とは知らなかったリアスはこれをチャンスと考え、殆ど試す勢いで気絶していた一誠に自身の持つ兵士の駒全てを与えて転生を試みた。

 

 その結果、将来確実に悪魔――いや、世界の脅威となるだろう兵藤一誠を大幅に弱体化させた状態で手中に収めることに成功した。

 

 転生し、力を封じられたと知った一誠が今尚続く憎悪を向け、時には反逆をしてきたが、大幅に弱体化した一誠を抑え込む事なぞ造作も無く、あれほど脅威と怯えていた相手を膝まづかせる事に一種の快楽すら覚えた。

 

 

「イッセーから貰ったこの力さえあれば、私達はもっと強くなれる。

そうしたら誰も私達に指図出来ない、強要も出来ない」

 

「……ええ」

 

 

 その上、転生させて下僕にした事で一誠との繋がりを獲た結果……リアス達は一誠があれほどまでに強かった理由の一部を使用出来る事に気付き、その力を利用して急激に強くなった。

 それこそ、フルメンバーですら無いのにレーティングゲームで勝利を収め、嫌がっていた婚約騒動を力で白紙に戻せる程に。

 だからこそますますリアス達は一誠を縛り付けようとした。

 

 自分達を常に憎悪の対象と睨む一誠から何を言われようが、決して解放なんかしてやらなかった。

 それはこれからも変わらない。

 

 

「誰にもイッセーは渡さない……絶対に」

 

 

 それはどす黒い欲なのかもしれない。

 力を獲られる元であるイッセーの自由を束縛し、永遠に縛り付ける。

 愛だ恋だなんて健全な精神は皆無で……身勝手な程に。

 

 

 それで破滅を迎える事になろうとも……。

 

 

 

 

「……。イッセーが来ない。

という事はやはりリアス・グレモリー達に捕らえられたと考えるのが妥当だな」

 

「じゃあ直ぐにでも助けに行かないと!」

 

 

 一誠が捕らえらから時は過ぎ、次の日の朝。

 今日も聖剣探しに出掛けようと、昨日の別れ際に約束した場所で待っていたのだが、約束の時間になっても一向に来ない一誠に、二人はリアスに束縛されているだろうと予想し、直ぐにでも助けに行こうとその場から駆け出そうとした。

 が、それに待ったを掛けたのは、昨日の捜索の際、自分達の前に現れていきなり襲い掛かってきたはぐれ悪魔祓いだった。

 

 

「ちょい待ち、昨日はど~も」

 

「っ! またお前か。悪いが今お前と遊んでる暇は無い!」

 

「邪魔するなら擦り傷程度じゃ済まない怪我にして――」

 

 

 白髪で白い神父服を着た少年のニヤニヤした顔での襲来に、ゼノヴィアとイリナは直ぐ様ぶちのめしてやろうと構える。

 しかしどういう訳か白髪の少年神父はそんな二人に対してヘラヘラしながら降参すると示すかの様に、両手を挙げ始める。

 

 

「待て待て待て、今日はそんな気分じゃねーんだよ」

 

「何? じゃあ何をしに来た?」

 

「今アナタと遊んでる暇は無いの!」

 

「話は最後まで聞こうぜ元同僚。

アンタ等が今お助けに行こうとしてる悪魔くんに関係してんだからよ」

 

 

 このままでは話が進まないと判断したのか、昨日のフィーバーしたかの様な雰囲気を引っ込める少年神父に、ゼノヴィアとイリナはピクリと反応し、構えを解きなごら訊ねる。

 

 

「どういう事だ、何故お前がイッセーの居場所を知ってる?」

 

「いや、別に知ってるって訳じゃねーんだな」

 

「じゃあ何なのよ?」

 

 

 昨日の七本に別れた聖剣の一つを力任せに振り回しながら襲ってきた時と随分違う冷静な口調に、ゼノヴィアとイリナは眉を寄せつつ、目の前の神父の告げた言葉に目を見開いた。

 

 

「ボス……コカビエルがアンタ等と直接話がしたいんだと。

昨日アンタ等に奪って貰った聖剣はその手土産さ」

 

「なに!?」

 

「コカビエル……って」

 

 

 流石にこの話に二人は驚いた。

 何せコカビエルと云えば、聖剣を奪った張本人で、更に言えば自分達が今追ってる堕天使だ。

 その堕天使から直接自分達と会いたいと目の前の神父を通じて申し出て来たのだ。

 しかも――

 

 

「ボス曰く、例の無理矢理悪魔にさせられたイッセーくんだっけ? 上手くいけば全部の力を取り戻せるかもしれないだとさ」

 

「「!?」」

 

 

 一誠の事情をどういう訳か知っていて、加えて昨日の戦いで取り返した聖剣の一つは、わざと自分達に手土産としてあげたとまで主張している。

 

 

「どうする? このままお助けに行っても悪魔にされてる以上は抜け出せない。

だが、ボスなら力を取り戻せる方法を知ってるから、悪魔共から自由にもなれる。

決めるのはアンタ等だぜ?」

 

「……。どうするゼノヴィア?」

 

「………」

 

 

 攻撃意思が見えない神父を油断無く見据えながらイリナは相棒と相談しようと声を掛ける。

 コカビエルが何故一誠の事を知っているのか……更に言えばどうして力を失っているのか、そして取り戻す方法を知ってるのか。

 

 正直な所罠かもしれないという懸念は大いにあったが、それ以上に全盛期に戻れるという言葉もまた魅力的だった。

 

 

「賭けになるが……行くしか無いだろう。

結局、残りの聖剣はコカビエルの手にあるのだし、何れは会わなければならなかったんだ」

 

「……そうね」

 

「決まりだな」

 

 

 考えた結果……ギャンブルになると覚悟した上で二人はコカビエルと会うことを了承し、ニヤリと笑って『じゃあ此方だ』と道案内をする神父の後を油断無く着いて行く事にした。

 

 どちらにせよコカビエルとは一戦交えなければならなかったと考えれば、例え罠でも会う価値はある――そう思いながら。

 

 

 

 そして――

 

 

 

「ほう、貴様がサーゼクスの妹で、そっちがセラフォルーの妹か。

なるほど、その髪の色はまさに奴の妹と一目で解るぞ?」

 

 

 二人の姿はその日以降……忽然と姿を消してしまい、駒王学園の校庭には、七つの聖剣を今まさに一つへと戻そうとする儀式が執り行われていた。

 

 

「コカビエル……! その七本の聖剣はっ!」

 

「あぁ、悪魔祓いの小娘二匹を少し罠に嵌めてな……くく、だが貴様には関係ないだろう? いや、あるか……ククク」

 

 

 それから更に数日が過ぎたある夜。

 リアスが率いるグレモリー眷属と、もう一人の悪魔が率いる眷属が合同して、宣戦布告をしてきたコカビエルを迎え撃とうと駒王学園に終結し、今まさに聖剣を一つへと戻す儀式を行おうとしている校庭内にて睨み合いが始まっていた。

 

 

「さてと、貴様等と遊んでる暇は無いのだが、どうやらやる気に満ち溢れてる様だ。

特にリアス・グレモリー達が俺を倒せるといった顔だが……ふむ、下僕の数は少ないようだな」

 

「………」

 

「それか、まだ居るのに隠しているのか……」

 

「っ……」

 

「まあどちらにせよ、儀式が終わるまでの間は俺が少し遊んでやろう」

 

 

 そうニヤリとした笑みを浮かべたコカビエルは、背に十二もの漆黒の翼を広げながら、リアス達を威圧する。

 

 

「来るがいい小娘共。俺を止めたくば殺すしかないぞ?」

 

 

 それがコカビエルの思惑であるとは知らずに。

 リアス達は一誠から奪った無限の進化の劣化版の力を解放し、コカビエルへと向かっていった。

 

 

 

 リアス達がコカビエルと戦っているその頃、白髪神父のフリード・セルゼンは、ボスと慕うコカビエルに命じられた通り、こっそりと駒王学園の旧校舎内を捜索していた。

 理由は一つ……ある男を連れ出す為であり――

 

 

「い、居た……イッセー!」

 

「イッセーくん!」

 

「うわ、ひでぇ……ボロボロじゃねーか」

 

「………」

 

 

 一誠を連れ出す為に一時的に手を組んだ悪魔祓いの少女二人と、旧校舎の地下にあったとある光が全く刺さない部屋の中から、傷だらけで放置されていた茶髪の少年を見事発見することに成功した。

 

 

「イッセーくん!」

 

「イッセー!」

 

 

 ペンライトで照らし、見付けた少年の無惨な姿に、イリナとゼノヴィアは直ぐ様駆け寄り、一誠が無事かを確かめる為に身体を抱き寄せる。

 

 

「うぉ……ま、まぶし……」

 

 

 息はある様で、ライトを顔に照らすと眩しそうに顔をしかめる一誠に安堵の表情を浮かべた二人だが、かなり衰弱している姿に途方もない怒りを覚える。

 

 

「くそ、あの悪魔共……!」

 

「絶対に許せない!」

 

「へい待て、今行ったら折角ボスが囮になってくれたのがパァに何だろうが。

先ずはコイツの力を全部復活させるのが先決だ」

 

 

 今すぐにでも報復に向かおうとする二人を止めたフリードは、見える範囲だけでもボロボロな一誠の顔を覗き込む様にして眺めると、そのままゆっくりと話し掛ける。

 

 

「聞こえるかい兵藤一誠。

俺が誰かなんて多分分かりゃしねぇと思うが、取り敢えずアンタの力を完全に復活させる為にこうして来た。

今の言葉が聞こえたら返事をしてくれねーか?」

「あ、あぁ……ちょっと目が見えねぇが、聞こえてるよ。

だ、誰の差し金だ? 安心院なじみか?」

 

 

 視力を大幅に失って目の前が見えなくなってる一誠が力無く頷きながら訪ねる質問に対し、フリードは違うと言う。

 

 

「いや、違う。

違うが、ウチのボスはその女と一応知り合いでな。その女からの依頼でアンタの手助けに来たんだ」

 

「そ、そうかい……フッ、俺もまだ完全に運が尽きてなかったらしいな。げげげ……げほっ!」

 

 

 中途半端に笑おうとして噎せる一誠を、イマイチ良く解らなそうにしつつも黙っていたイリナとゼノヴィアが肩にそっと触れる。

 

 

「イリナとゼノヴィアとは敵対してる訳じゃないのか?」

 

「まあ、種族と所属柄はそーなるが、生憎ウチのボスが聖剣を奪って逃げたのは単なるフェイクでね。

全てはアンタをクソ悪魔から解放する為だ」

 

「そうか、くく……連中に是非ともザマァ見ろと言ってやりたいね」

 

 

 安心院なじみ……即ちコンタクトすら取れなくなった師の計らいと知り、安堵するように力を抜いた一誠は、見えなくなってる目を開きながら、目の前に居るだろう少年の声に向かって口を開く。

 

 

「どうすれば良い?」

 

 

 力を奪われ、その力を勝手に使われるという屈辱に堪えなければならなかった。

 だがそれから抜けられる……ともなれば今の一誠は何でも受け入れる覚悟があり、精一杯の意思表示を示した。

 

 それを見たフリードは、そんな一誠に対してニヤリと嗤うと……。

 

 

「簡単さ――いっぺん死ねや!」

 

 

 その手に持っていた剣で、一誠の胸を貫いた。

 

 

「っ!?」

 

 

 それが取り戻す……鍵となりて。

 

 

 

 

 

「存外、餓鬼にしてはやるじゃないか」

 

「っ……!」

 

 

 一誠が貫かれたその頃、リアス達は焦っていた。

 

 

「髪の色が変わると戦い方も変わるとは……何の力だか気になるな。

バラキエルの娘も、聖剣計画の生き残り小僧も、猫妖怪も揃って同じ真似が出来るとなれば尚更な」

 

 

 コカビエルの力が予想以上に強力であった事に。

 

 

「げほっ……くっ……!」

 

「つ、強い……!」

 

「こっちの力がまるで通じてない……!」

 

「こ、このままだと聖剣が……!」

 

 

 コカビエルの力を利用し、聖剣を一つに束ねる儀式をしているバルパー・ガリレイという初老の男を殺してでも止めようとしたリアス達だが、それを阻止せんとコカビエルがリアス達の予想を遥かに越えた強大な力で跳ね返してしまう。

 

 一誠の異常性による成長により、何とか食らいつけているものの、それでもコカビエルの態度はまるで遊んでいるようなソレだった。

 

 

「消し飛ばしてやるわ!」

 

 

 だがそれでもリアス達には一誠の成長する力があり、徐々にながらコカビエルの力に対応できるようになっていた。

 故にこのまま何とかコカビエルに本気を出させず、そのまま殺しきると決めたリアスは、滅びの力を全身から放出し、一度見たことのある一誠の『音速で動き回る』技を使って畳み掛けようと、『改神モード』と本人が言っていた技術と合わせて、上空から此方を見下ろしているコカビエルへと特攻しようと力を込めた――

 

 

「――――え?」

 

 

 その瞬間(トキ)だった。

 

 

「え? ……え!?」

 

「ち、力……が!?」

 

「ぬ、抜けていく……!?」

 

 

 黒神ファントムを使おうとしたリアスが困惑した表情をしながら、改神モードも切れて元の紅髪の状態になりながらヘナヘナとその場にへたり込む。

 それは小猫も、朱乃も、祐斗も同じであり、無限にみなぎっていた力が急激に抜け落ちたかの様な疲労感と共にその場に膝を付きながら激しい息切れを起こしていた。

 

 

「な、なんで……い、イッセーの力が……!」

 

 

 それはある意味で絶対的な信頼であった一誠の力が無くなった事を意味しており、これまで散々それに頼ってきたからこそ、自分の中に宿っていた一誠の力が無くなったと自覚したリアスは盛大に狼狽えつつ、ハッとしながら思わず旧校舎の方角を見つめる。

 

 

「まさか……イッセーになにか……!」

 

 

 もし死んでしまった場合、この力を失うと危惧していたリアスは、予め――いや、数日前から一誠を旧校舎の地下に軟禁していた。

 それは死なせない為であり、自殺をさせない為でもあり……何より自分の所有物である事を一誠に解らせる為だった。

 

 その一誠の身に何かが起きたせいで力が使えなくなった……と、焦り出したリアスは気付いてない。

 

 

「仕事が早かったなフリード」

 

 

 同じく旧校舎の方角を眺めながら、微かに獰猛な笑みを浮かべたのを。

 

 結論から言えばリアス達はやり過ぎたのだ。

 封印した……いや、そもそも只その日を強くなる為に生きていた一誠の事を放っておけば、今こうして膝を付いている事なんて無かった。

 

 だがもう遅い。

 偶発的にとはいえ、一誠の無限に進化する異常性を使い続け、やがては酔いしれてしまった今となっては全てが遅い。

 

 力を行使するということは……ましてや他人から獲られた力を使い続ける事に多かれ少なかれ代償がある事から目を背けてはならない。

 

 

「っ!? な、何……!?」

 

「旧校舎の方から爆発の音が……?」

 

 

 背けた結果――

 

 

「きゃあ!?」

 

「げほっ! な、何かが上から……!?」

 

「ごほっごほっ! め、目に砂が……」

 

 

 

 

 

「くく……くくくっ!」

 

 

「そ、そんな……どうして……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……いい気分だぜ。なぁ、そうは思わないかクソ共よ?

げげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげ!!!」

 

 

 破滅の未来が待っていたとしたら、それは本人の責任なのだから。

 

 

「イ、イッセー……」

 

 

 恐怖は突然やって来る。

 まさにリアス今それを身に染みて味わっていた。

 危険極まり無い男を封印し、下僕とし、そして偶発的に獲られた力でもっと自由になりたいと思っていた。

 それなのにその力は自分の中から消滅した。

 

 何故か? それは今絶望の表情をするリアス達の目の前には隕石を思わせる速度で落下し、激しい砂ぼこりと共に見えた……少年から発せられる『眷属にする前』まで感じた、圧倒的な力の差。

 

 

「言ったよな? 精々後ろから首を撥ね飛ばされないようにってさ? くくく……アッハハハハハハ!!!!」

 

 

 左右の米神から天を目指して伸びる二本の鬼を思わせる角。

 白と黒が反転している金色の瞳……。

 そして左腕に纏う龍帝の籠手。

 

 

「月並みの言葉だが言ってやる。

恐怖を教えてやろう――げげげげげげ!!!!」

 

 

 力を失った少年はその全てを……完全な死を経る事で取り戻した。

 そして始まるは――報復だった。




補足

はい、復活。

コカビーとフリードが一晩でやってくれました(ジェバンニ感)

その2
使ってる内にある意味ストーカーじみた執着心を抱いたリアスさん達ですが、理由としては一誠の異常性を擬似的に体感し、その力に魅入られてしまっという、ぶっちゃけ褒められたものでは無いですね。

その3

一度完全に死ぬ事で、師と夢の中で再会。
肉体の中に入れ込まれた駒を取り除く事で……繋がりが切れ、完全な復活となりました。

復活後すぐなんで、ぶっちゃけ言彦スタイルになって人外度が暴上がり。


その4
コカビーとフリードは元々聖剣を奪ったのも、騒動を起こしたのも、悪魔達の気をわざと引くことでした。
まあ、イリナさんとゼノヴィアさんがスキル持ちだとは知らなかったので、途中で事情を話して協力を仰ぎました訳です。

ちなみに、アーシアさんは眷属じゃないです。

何処に居るか……別に意外な所でも無いです。

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