私は365日なのはさんの家政婦のようです   作:蟹ふらん

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7 私とレイジングハートさんと

午前6時30分、なのはは自室の寝室ですやすやと熟睡している。彼女は朝は苦手な方でなかなか起きられないタイプであった。

 

「んー…くぅ…」

 

「御主人、朝ですよ」

 

家政婦の声が聞こえる、きっと起きてお仕事行く準備をしろって言いに来たに違いない。毎朝ご飯作ってもらって洗濯して貰って掃除して貰ってるから正直ありがたい。こんなことをしてもらってる私はきっと特別な存在なのでしょう。

 

「んぅー?わかった。今起きる~」

 

「分かりました。それでは」

 

さて、うるさいのが消えたことだし寝ましょうそうしましょう。寝ても10分くらいなら何も問題ないでしょうお休みなさい。

 

…30分後。

 

「んー…エヘヘ…今日は…お祭り…えへっへっへへへ…」

 

抱き付いた枕によだれを垂らしながら徐々目が覚めていく。

 

「んー…よく寝たの。今何時…」

 

現在時刻 7時

 

今日の業務時間 7時30分

 

無情にも時を刻む目覚まし時計を握り締める。頭が冴えるくらい顔が青ざめ、額から湧き出るように出る冷や汗が止まらない。遅刻寸前ギリギリの…いや、下手すれば遅れるレベルであった。

 

「…お手伝いさーん!なんで!?なんで起こしてくれなかったのー!?」

 

「起こしましたよ、30分前ほどに」

 

「もう一回起こしてくれても良いよね!?あーもう!髪のセットしなきゃ!」

 

「制服はここに、あと今日の朝食はトーストと紅茶です」

 

「わぁ!クシもドライヤーも準備してくれてる!こうなることを予想してたんだね!準備が良いね!でももう少し早く起こしてくれれば良かったなぁ!」

 

自身の長い髪の毛をゴムで縛り付けて制服を着ながらテーブルにあるトーストをくわえる。ある程度の準備をしていてくれていたからこれで直ぐに出れる。

 

「ひっへひはーふ!(行ってきまーす)」

 

「行ってらっしゃいませ」

 

起きてから15分後、直ぐに出発出来た。これなら遅れることは無いのだろう… 

 

「さて、それじゃ片付けをして飲まなかった紅茶をゆっくり飲んで掃除でも…」

 

『なのは…』

 

「…あっ」

 

そこに転がっている相棒、レイジングハートを除いては。

 

「…レイジングハートさん、置いてかれたんですか」

 

『デバイスが無いと知れば戻って来るでしょう…あぁちょっと拾ってください。踏まれて転ばれては迷惑です』

 

「それはそうですね」

 

待機状態のレイジングハートを拾うとテーブルに置く。恵也はイスに座るとなのはが飲まなかった紅茶を飲む。折角準備をしたのに飲まずに捨てるのは勿体無いし努力したかいがない。

 

『いつもすみませんね、マスターの世話をしてもらって』

 

「いえ、それが仕事ですので」

 

『私にも手や足があれば良かったのですが』

 

「いやいや、レイジングハートさんはデバイスでしょう?そんなこと考えなくても…」

 

『八神はやての所のリインフォースは生えてます。私も改造してくれればきっと最低限の事が出来るかと』

 

「あれは特別なデバイスですよ」

 

『そうですか…』

 

音声のトーンを落とし、表情は球だから分からないが心なしかしょんぼりとしたような感じに見える。

 

「…レイジングハートさんは自由に出歩きたいのですか?」

 

『いえ、そんなことはありません。私は生涯マスターのデバイスですそもそも二足歩行で歩くなんてメリットもありますがデメリットもあります。別に、別に興味はありませんがもし手足が出来てもそれはマスターを助けることになっても大きさが変わることでマスターの迷惑になりますしそもそもデバイスである私がそんなものを手に入れても無用の…』

 

「メッチャ気にしてますよね?」 

 

『…ノーコメント』

 

「…そうですか、ではこの話題は止めましょう」

 

『それが双方の為です』

 

そこから会話を切ってしまったせいで辺りが静寂に包まれる。レイジングハートも恵也も静かなのが良いのか互いにだんまり。レイジングハートは無言で、恵也は紅茶を飲んでのんびりしていた。

 

「…」

 

『…』

 

時計の針が20分ほど進んだ辺りまでそれが続くとある考えが頭をよぎる。

 

「…ところで今日の業務は?」

 

『午前にデスクワーク、午後に教導訓練です』

 

「…これ忘れたことすら忘れ去れてません?」

 

『そそそそそそそんなことないですよ私のマスターに限って相棒忘れるなんてことはありません』

 

「仕事始まってる時間ですよね?と言うことは…」

 

『貴方デバイス虐めて楽しいですか』

 

「それなりに」

 

『手足があれは殴りかかってます』

 

「そこまでですか」

 

『デバイスにも心があるんですよ?』

 

「…遊んで申し訳ありませんでした」

 

ずずっと紅茶を飲みながら謝罪する…その時ちょうどカップの中にある紅茶を飲み干してしまった。

 

「飲み干してしまいました。さて…どうしましょう…いつもなら少しの休憩で寝てますが今回はレイジングハートさんが居ます。のでこのまま寝てしまうのは忍びありません」

 

『なら私をマスターのところまで連れていってくれませんか?多分ギリギリまで気づかれませんと思うので』

 

「おー…なるほど。ついでに弁当を届けましょうそうしましょう。今から作って参りますので少々お待ちを…食堂の店長さんからパンを貰ってますから今日はサラダとホットドッグでいきましょう…なぁに昼までに届ければ問題ありません」

 

『こんな家政婦を要らないとかマスターは頭がおかしいのかと疑いたくなりますね』

 

「昨晩酔ってるときにカーチャンと言われて少し傷ついています」

 

『カーチャン…』

 

「止めろ」

 

『カーチャン私のパンツと貴方のパンツを洗わないでください』

 

「お前マジで止めろ、後デバイスにパンツは無いだ…いやあるのはあるのか。リインフォースさんとか」

 

『カーチャン今日の飯はまだですか?』

 

「もうレイジングハートさん。もう食べたでしょ?」

 

『二日前の話じゃよ』

 

「じゃあ後四日我慢して下さい」

 

『餓死しますよ』

 

「デバイスだから餓死しないでしょ?」

 

『そうでした』

 

「『あはははははははははは!!』」

 

 

 

 

 

レイジングハートと家政婦がそうふざけた談笑している一方、相棒を忘れてきた高町なのはと言うと…

 

(やべぇよ…やべぇよ…なの…何処に落としたんだろう…)

 

「…ん?オイどうしたなのは、何キョロキョロしてんだ?今真面目な話してんだからしっかりしろよな。じゃあ話を戻すぞ」

 

「あ、あはは…ごめんごめん」

 

(相棒を落とすなんて…トイレに行ったときに落としちゃったのかな?とうしよう最悪家政婦さんに泣き付いて探してきてもらおうかな)

 

「だから今後は市民を想定した訓練を…オーイ聞いてんのか」

 

「…あっ!聞いてる聞いてる!うん!」

 

自身が忘れたとは思ってなく何処かに落としたのだと思ってその辺をウロウロ探していたのだ。

 

 

 

 

 

「レイジングハートさんは御主人と長い間付き合ってるんですよね?幼少の御主人ってどんな人でしたか?」

 

『そうですね…大人しい性格ながらも自分の意思ははっきりしている女の子でした。今もそんなには変わってませんが疲れているときはお酒に逃げます』

 

「それであのポン…ごほん、だらしなくなるのですね」

 

『私生活以外はエリートですから…』

 

「オンオフきっちりしているところは褒めるべきなのでしょうがお酒が入ると荒れるのは頂けないんですよね…よし、弁当よし」

 

ホットドッグとサラダが入った弁当箱を藍色の布で包むとレイジングハートを胸に下げる。

 

『マスター以外の人に首からぶら下げられるのは始めてですね』

 

「こちらの方が楽ですからね。それでは行きましょう」

 

部屋を出ると待っていたかのか、額にシワを寄せたシグナムと出会ってしまう。

 

「待っていたぞ家政婦、貴様が出るを何時間待ったとと思っているんだ」

 

「失礼ですが御主人が出たあとに待っていたんですか?何故チャイムを鳴らさないんですか?」

 

「サプライズと思ってな」

 

「馬鹿なんですね」

 

「ふっ、何とでも言うがいい。貴様…私との約束を覚えているか?」

 

「約束?あぁ奢りのですよね」

 

「その約束を今果たそう。付いてこい…食べ放題のうまい飯を喰わせてやろう」

 

(だが行き先はトレーニングルーム…昼時ならギャラリーは少なくて済む。そこで私が奇襲をかけてなし崩し的に決闘に持ち込んであの夜のリベンジを果たすんだ!)

 

「すいません、今からですか?申し訳無いんですがこれから御主人の弁当とデバイスを届けに行くんで…明日とは駄目ですか?」

 

『洗濯物も取り込んでませんしね』

 

弁当箱とレイジングハートを見せる。シグナムは断られる事は無いだろうと思っていたのか間が抜けた顔をした。

 

(明日!?貴様!時と場所を選ばないと言ったのはそっちなんだぞ!?自分が言われると撤回するなぞ男とは思えない…! )

 

「…それにシグナムさん、お怪我をしたばっかりなので病み上がりだと(胃袋的に)キツイのでは…もう少し休まないと…」

 

その台詞を聞くとシグナムははっとする。そして今度は難しい顔をしだす。

 

「シグナムさーん?どうしましたかー?」

 

(…そうか、決闘するなら病み上がりで失った力を取り戻さないとキツイと?相手にすらならないと…これは…まさか…挑発か?)

 

「そんなことはないぞ。私はこれでも何時でも(戦いが)出来る体にしてあるんだぞ。人よりも(身体が)丈夫だからな」

 

「えっ?何時でも(大食い)出来るように(胃が)丈夫なんですか?それはすごいです。じゃあ何時でも(大食い)出来ますね」

 

「…ふっ、褒めるんじゃない」

 

レイジングハートは思った。あぁ、またこの二人は微妙に噛み合っていない会話をしていらっしゃると。

 

「それじゃあ…始めようか。誘って貴様を私流のもてなし(奇襲)してやろうと思ってたが…考えが変わったぞ」

 

「私流のもてなし(手料理)ですか?」

 

『家政婦さん、貴方天然ですか?それともわざと煽ってるんですか?』

 

「ふっ…では…参るぞ!」

 

「えっ」

 

シグナムが待機状態のレヴァンティンを展開して抜き身に振り上げる、対する恵也は丸腰で全く構えていない。

 

(反応できてないッ!殺ったぞッ!!)

 

「覚悟ォオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」

 

 

 

 

 

「はぁー…結局無かったの。トイレまで探したのに…仕方ない、家政婦さんに泣き付いて探してきて…」

 

「があ"あ"あああああああああ!!?」

 

「おうごら、何のつもりだ?あぁっ?また人様に光り物向けやがった。二度目は許さんぞこのまま締め上げてやる」

 

『きっ、貴様間接技なんて……があ"あ"あ"ああああああああ!!!』

 

『それ以上いけない』

 

レイジングハート探しを断念して帰ってきたなのはの目に飛び込んできたのは自室の前でバリアジャケットを着込んだシグナムが得物のレヴァンティンを床に落とし、左腕を組まれてそのままアームロックを極められた光景であった。

 

「ゆ、ゆるし…お、おれ…折れる…!」

 

「反省したか?」

 

「した!したから早くこの技を解くんだ!右に続いて左はヤバイ!」

 

「仕方ない…しかし三度目は…」

 

そして家政婦はここで気づく、あれ?弁当箱は?そう思って周囲を見ると…少し離れた所に弁当が散乱していた。

 

その時、家政婦の頭から何かがブチキレる音がしたのだ。

 

「…お、おい。解いてくれ…何か強くなってないか…?」

 

「…やる」

 

「…?」

 

「 へ し 折 っ て や る 」

 

ギリギリギリギリ…ボキンッ!

 

「」

 

「あっ…あー…」

 

「御主人…すいません…弁当箱を…落としました…っ!」

 

シグナムの左腕を綺麗に折ってその場にどさっと置いて真っ先になのはに謝る。シグナムはそのまま動かない、どうやら落ちたようだ。

 

「い、いいよそんなの。どれ…あぁホットドッグはまだ食べられるよ」

 

「すいません…次からは落とさないようにします…!」

 

その謝罪を聞いたレイジングハートと高町なのははこう思った、あぁ、この人の前では食べ物を落とさないようにしなきゃならないと…と。

 

 

 

そしてシグナムはそのまま医務室へと運ばれ、左腕はスカリエッティにやられたとシャマルに報告をしたのであった。




私は365日なのはさんの家政婦のようですの最初の投稿が10000UA…!?ありがとうごさいます!!

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