私は365日なのはさんの家政婦のようです   作:蟹ふらん

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6 私はスバル・ナカジマは家政婦と再開した

燃え盛る業火の中、少女は当てもなくさ迷っていた。

 

目が覚めると倒壊した建物の瓦礫、辺り一面爆発の影響があってか、周りは火の海となっており、喉が引き裂かれると思うほどの熱気が少女を襲う。

 

何故こうなったか?姉は何処に?父は来てくれるのだろうか?様々な思いが頭をよぎるが一番は帰りたい、元の日常に戻りたいと言う思いが強かった。

 

声を出したいが熱気で声が掠れ出る、熱で喉を焼かれて出ないのだろう。この場を逃れなければ呼吸さえもままならならなくなるだろう。

 

(は、はやく出なきゃ…!)

 

暫く歩くと疲れたのか少し広い広間で足が止まりその場にしゃがみこむ。

 

(疲れた…こんなことならもう少し魔法覚えておけば良かったな…)

 

そんなことを思っていると近くにあった大きな石像が大きな音を立てながら此方へ倒れてくる。少女が気付いた時には避けるなんて事は出来ない、最早数秒後に待っている死を待つばかりであった。

 

(い、いやだ…嫌だ!私は…私はまだ…!!)

 

──────────────

────────

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「…ル!…バル!スバル!」

 

「…あれ?」

 

椅子に座ってある人の作業を見ていたスバルは自身が呼ばれる声によって目が覚める。

 

「寝てるなっての…レポートまとめ終わったぞスバル。お前仮にも御役所の仕事なんだから自分でやれ、俺は保護者か」

 

「えへへ…だって纏まらないし…恵也がやってくれた方が…ね?」

 

「学生じゃないんだからその考え止めろ。どーしてもって言うとき以外は控えろ。もうお前の家政婦じゃないんだから気を付けろ」

 

「はーい、反省しまーす」

 

「してないなその言い方は」

 

「あの、なのはさん?」

 

「…ティアナ、何かな?」

 

「口が開いてますが…大丈夫ですか?その…まるで信じられないといわんばかりの表情で見てますが…」

 

「…ちょっとびっくりしてる」

 

なのはは驚いていた。普段は敬語しか使わない、ああいう砕けた口調はキレた時にしか使わない筈の家政婦が…しかも大体の人にはさん付けなのに呼び捨てだ、しかもお互いに。

 

「最近どうよ?フォワードだっけ?少しは税金貰ってる分の働きはしてるか?税金泥棒は許さないからな?」

 

「そっちこそ、暴れたりしてない?」

 

「…」

 

「やったの?」

 

「やってねぇ」

 

「やったんだね?もしかしてシグナムさんのって…」

 

「はやく仕事に戻ってくれませんか?私、こう見えても忙しいので」

 

「あっ、ズルい。家政婦モードで煙に巻く気だ」

 

家政婦さんは完全いつもと対応が違う、よそ行きの口調では無く完全に身内での会話をしている。なのはの目には家政婦はそれは心なしか楽しんでいるようにも見えた。

 

「ね、ねぇ家政婦さん?」

 

「なんですか御主人」

 

「なんでスバルには呼び捨てで私には御主人呼びなの…?」

 

「何か?」

 

「い、いやそう言うのは特には無いんだけど…ちょっと気になっちゃって」

 

「そう言うのって何でしょうか御主人」

 

「恵也とは友達なんです。ね?恵也?」

 

「んー…そうかもしれません、付き合いのある友人だからこその呼び名なのかもしれませんね」

 

「そ、そうなの…あの…私と扱い違うんだけどそれは…」

 

その言葉を遮るかのようにスバルは恵也に話し掛ける。わざとでは無いだろうが話を遮られてなのはは少しむっとした顔付きとなる。 

 

「そうだ恵也!今度の週末暇?」

 

「えー…6時までなら暇がありますね」

 

「じゃあ久々に遊びにいこ!昼は恵也持ちで!」

 

「稼ぎを破産させる気ですか?と言うかその話の前に仕事を…」

 

その時、各々のデバイスから音声通信が入って指令が流れ始める。

 

『ガジェット出現しました、スターズ隊は直ち今から言う地点に出動してください』

 

するとスバルは爛々とした目で恵也を見つめてくる何か思い付いたのかと恵也は思いを馳せる。こう言うときのスバル・ナカジマは押しが強いのだ。

 

「お仕事入ったよ!折角だし見ていってよ!」

 

「スバル、遊び感覚で…」

 

「大丈夫大丈夫!恵也はヘリで見ているだけで良いから!それじゃ行こう?多分許可ならなのはさんの御付きってことでスグとれるから!」

 

そう言うとスバルは半ば無理矢理家政婦を連れていってしまった!

 

「…私あんなスバルが積極的な所見たことないの」

 

「…奇遇ですねなのはさん。私もです」

 

 

 

 

 

 

「ディバイン…バスタァァー!」

 

通知では山岳地帯にガジェットの出現、これを撃破してほしいと言うことであった。スバルはいつも以上に力が入っているのか次々とガジェットを撃破していく。

 

「スバル!あまり飛ばしてると動けなくなるわよ!」

 

「分かってる!ペース配分なら大丈夫!」

 

「むぅ…木とかに隠れてちょこまかちょこまかと…もう一掃した方が早い?」

 

『Master、ここで一掃したら他の仲間にも当たります』

 

地上でスターズ隊が戦う一方、連れてこられた家政婦は上空で飛んでいるヘリに搭乗してその様子を見ていた。

 

「ヴァイスさん、コーヒーです」

 

「すまねえ、んー良い薫りだ。観戦にはもってこいだな」

 

操縦主のヴァイスは出されたコーヒーを飲みながらヘリの操縦をしていた。

 

「それにしても大変だねぇ家政婦は、こんな最前線に連れてかれてよ」

 

「家政婦の身であるため断りにくいんですよね。特には人の好意は」

 

「俺はじめて見たよ、あの嬢ちゃんのあんなに張り切った顔なんて見たことない」

 

「知り合いに見られて張り切ってるのでしょう」

 

「…俺はそうとは見えないけどねぇ…ん?」

 

スバルを見ていると敵の前なのに、その場にしゃがみこんでしまう姿が見えた。

 

「…オイオイ何してんだよ…!」

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ…!」

 

飛ばしすぎた、結構ハイペースでディバインバスターとかの大技を必要以上にやってしまった。もう疲れで立てない、疲れでまともな動きが出来ない。

 

「…」

 

「きゃっ!」

 

ガジェットの魔力弾をモロに喰らって膝をついてしまう。情けない、少し調子に乗った結果がこれだ。

 

私に撃ったガジェットは近付いて狙いを定める。こっちが指一つ動かせないのを知ってかの行動だろう…

 

「スバルッ!」

 

相棒の声が聞こえる。ハハッ、人間馴れないことをするとろくな目に合わないね…

 

瞳を閉じて来る衝撃に備える…だがそれは、何時になっても来なかった。

 

「…あれ?」

 

再び瞳を開くとガジェットは真っ二つになっており、代わりに折れた包丁を片手に何時もの燕尾服を風に靡かせながらそこに佇んでいる家政婦、間藤恵也がそこにはいた。

 

「恵…也…?」

 

「…」

 

「恵也…?」

 

手に持っていた折れた包丁を捨てる。そしてこちらに近寄って拳を握って頭上に上げて…脳天に拳骨を浴びせた!

 

「痛っ!?」

 

「この馬鹿がッ!何ガス欠喰らってるんだよ!お前の頭は豆腐か!?あぁ!?これパフォーマンスじゃねぇんだよ!分かってんのか!?」

 

「うー…ごめん」

 

「思わずヘリから飛び降りちまったろ…あー足痛い。なけなしの強化魔法で足を強化して正解だわ」

 

足ジンジンしているのか足をブラブラとさせて痺れを和らげようとしている。

 

「あ、あのね?これは…」

 

「話は後だ、周りを見ろ」

 

辺りを見ると数十機のガジェットに囲まれていた。

 

「さっきの飛び降りで少ない魔力がさらに無くなった、手を貸せスバル。厳しい訓練で鍛えてるんだろ?張り切ってるのは分かった…だったら間近で見せてくれよ?」

 

「…うん!」

 

スバルは傷付いた身体に鞭を打つと立ち上がり恵也の横で構える。恵也も懐から銀の鋲が入った手袋を取り出すと手に嵌めて構える。

 

「さっさと掃除して飯食いに行くぞ!」

 

「…了解!よっし行くぞー! 」

 

…その後、幾多のガジェットの亡骸が二人の足元に転がっていた。

 

 

 

 

 

 

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────────

────

 

「助けて…助けて…っ!」

 

石像が落ちてくる中、出来る限りの大声を上げた。その声は届かずともしなければならないと思った…精一杯足掻いてなければ後悔する、そう思ったのだ。

 

そして、その声は届いたのだ。

 

「伏せてろ!」

 

石像はスバルに到達する前に轟音と共に横へ吹き飛ぶ。石像はへし折れて少し離れた場所に転がる。

 

「…っ!」

 

そこには焦げ付いた燕尾服に黒いショートヘアー、煤で汚れているがその顔立ちははっきりと分かる…間藤恵也だ。スバルは見覚えのある顔を見つけて笑顔を見せる。

 

だが少し見ると異変に気付く。彼は右腕を後ろに隠して見せないようにしていて床には血が垂れていたのだ。きっと今ので怪我をしたに違いない。

 

「…けーや?怪我してるの?」

 

「喋らないでください。煙を吸い込んでしまいます」

 

「でも…けーや…」

 

「大丈夫ですから」

 

「絶対大丈夫じゃないよ…だって血がこんなに…!」

 

目に熱いものが滲むようにあふれでる。自分のせいで目の前の人に迷惑を…!

 

「ですから、大丈夫です」

 

「だっで…だっでぇ…ヒッグ…うぇぇ…」

 

「…大丈夫だっつってんだろオラァ!」

 

恵也は残った左腕でスバルの額を小突いた!

 

「う"ぇっ!?」

 

「迷惑かと思ってんのか!?このクソガキが!ガキは迷惑をかけるのが仕事なんだよ!じゃなきゃ家政婦なんてオマンマ食えないっての!迷惑なんざいくらでもかけろ!」

 

「…」

 

「…表でゲンヤさん待ってる、ギンガちゃんも局の人が救出した…だから帰るぞ。皆待ってるから」

 

「…」

 

「…ほら!手間をかけさせんな!帰るぞ!…歩けないとか言うなよ?」

 

「…けーや」

 

「…何?」

 

「…ありがと」

 

「…家政婦だからな、当然だ」

 

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───────

────

 

「…んっ」

 

目が覚めると機動六課の医務室のベッドで寝ていた。確かガジェットを全部倒したあと…意識が無くなって…そのまま倒れて…

 

「あら?起きたの?」

 

「…シャマル先生」

 

「怪我の方は大丈夫よ。打撲だけだからたいした怪我じゃ無いわ」

 

「…」

 

「治療が終わったらヴィータちゃんが呼んでたわよ。多分お叱りだろうけどそんなに責めはしないわ」

 

「…シャマル先生、家政婦さんは?」

 

「家政婦さん?貴女を担いでここまで来たあとすぐに帰ったわよ」

 

「…そうですか」

 

少し気が落ちる、あれから随分成長し誰かを守れるくらいの力を手に入れたと思った。しかしそれは気のせいで私はまだまだ未熟であることを確認された。

 

(馬鹿みたい…あんなにはしゃいじゃって…)

 

「…あぁそうそう、家政婦さんが言っていたわ。高町さんの部屋で食事会を開くからスバルもいらっしゃい?美味しい料理があるらしいわよ?急がないと料理が冷めちゃうわ」

 

「…はいっ!」

 

伝言を受け取って直ぐに身だしなみを整えると医務室を出ていく。表には恵也が待っていた。

 

「恵也?どうしたの?」

 

「迎え、俺も戦場に乗り込んだことについてヴィータさんに呼ばれちまったから行くんだよ」

 

「あー…うん…あのさ?」

 

「何?」

 

恵也の手をとって連れていく。この人はもう私の家政婦ではない、だが今は友達だ。向こうもそれを承知している。だが今だけは…昔のように"私の"家政婦でいてほしい。

 

「ありがとね、家政婦さん。これからもよろしくね?」

 

──私は、家政婦と再会した。

 


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