私は365日なのはさんの家政婦のようです   作:蟹ふらん

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おぉ、沢山の人が見てくれている…書こう!


2 私は一週間お試し契約をしてみました

…高町なのはの私生活は荒れていた。

 

部屋中片付けるのが面倒なのか下着や購買で買ったカップラーメンやら空の容器が部屋中ごっちゃになっており、空のビールや焼酎が散乱していた。その情報は一部の職員しか知らず最近頭を悩ましていた…部屋を訪れる客は皆その中年のダメなおっさんのような部屋にドン引きしてしまう、そしてこう思ってしまうのだ…

 

駄目だこの人、早くなんとかしないと…と。

 

機動六課設立して以来、はやて専用で使われている部屋ではその一部の職員が夜な夜なその対策について話し合っていた。

 

執務官でありなのはの親友であるフェイトテスタロッサハラオウン、同じく親友であり六課隊長の八神はやて、スターズ分隊副隊長兼戦闘教官でありはやての守護騎士であるヴィータ、この三人だ。ちなみにフェイトはあまりの汚部屋に自分の居場所を無くして出ていってしまった。南無三。

 

「…今日、少し片付けるようになのはに言ってみたよ…」

 

「どうやった?」

 

「…多分…片付けない…後でやるって言われちゃった…」

 

「むー…どないしよう…なのはちゃんが忙しいのは分かるんやけどこのまま生活水準じゃなのはちゃんの体が壊れてまう…」

 

「最近は日本酒と焼き鳥とビールで暮らしてるって嬉々として話していたよ…」

 

「日本酒とビールでアルコール被ってるやん…っ!」

 

「…外部から雇うというのは?」

 

ヴィータそう口にすると二人ははっとした顔となって、ヴィータの話に聞き入る。

 

「外部って?」

 

「スバルから話を聞いたんだがよ…家政婦を雇うんだよ。そいつは休み無しで365日、その主人の世話を担当してくれるんだってさ」

 

「なんやそれ、労働法に引っ掛からへんか?」

 

「不思議な事に引っ掛からないらしいんだ…因みに時給はこちらで決めて良いらしい」

 

「こっちで?」

 

「あぁ、100円でもOKしたらしい」

 

「ワンコイン!?ブラック過ぎへん!?なんやそれ!?」

 

「…ヴィータ騙されてない?それ絶対に架空の存在だよね?有り得ないよね?何処の業者さんに言われた?」

 

「しらねーよ!本当らしいんだよ!スバルの奴に話を聞いてよ…短期で雇って、お金がないから金の代わりに生活の面倒見るって話でOK出たって言ってたんだよ!」

 

「殆ど無給やん!!」

 

「…試しに雇って見ない?一週間…様子見てからでも…」

 

「…これ電話番号、私自身あんま信用できない話だから…雇うかどうかははやてが決めてくれ」

 

ヴィータからメモ用紙を渡される、メモにはスバルの字で電話番号が書かれていた。

 

「うーん…試しに…なら…ええかな…?」

 

 

 

 

 

 

二人が出た後、はやてはすぐに電話をかける。今の時刻は10時を過ぎておりかからないかもとは思っていた…だが電話はすぐに繋がった。電話を受け取ったのは…声からして大分年を取ったお婆ちゃんだ。少し枯れたら声が電話から聞こえてくる。

 

「はい」

 

「あぁ、すいません。友人の紹介で御依頼のお電話をさせてもらってます八神はやてと申します」

 

「ふむ…時空管理局かね」

 

少しドキッとした、名前を言っただけで職場まで分かるのか。

 

「はい、良くわかりましたね」

 

「なぁに、少し口調が固いから言ってみただけさぁ…おきになさらず…して、何時からで?」

 

何時から?と言うことはOKなのか。意外にすんなり…いや、すんなり過ぎる。

 

「あの…こちらはまだ詳しく話しては…」

 

「お客人は期間と日時、それと場所さえ言ってくれれば現地に行く者が対応するさね。気にせんと話して?」

 

「は、はぁ…」

 

その後、期間は一週間で日時は明日の朝七時と六課の場所を言うと二つ返事で了承してくれた。個人的には少し心配だけど…まぁ良いだろう。

 

「ところで八神さん、独り身?良かったら男の人を紹介するんけど…」

 

「ファッ!?」

 

この婆さん、仕事の話が終わると急にこんな他愛ない話をして来る。なんで独り身って分かるんやこの婆さん…。

 

 

 

 

 

 

次の日の朝七時、その家政婦は来た。

 

彼は黒髪のショートカットで少し大きめの黒目。人種的には日本人だろう…だが燕尾服を着ている彼は家政婦と言うより執事に近かった。彼の荷物は手に持っているボストンバッグ一つ、あの中に道具があるのだろう。

 

「失礼します、間藤恵也と申します。一週間ですがどうぞ、宜しくお願いします」

 

「よろしゅうな。気楽にしていてええで」

 

「はい…所で朝食は取りましたか?」

 

「いや?まだやで。これから食堂に…」

 

「コーヒーとサンドイッチです」

 

「えっ」

 

目の前のさっと出された物を見て少し驚く。今どこからこの高そうなカップに入ったコーヒーとサンドイッチを出した!

 

「何か問題が?」

 

「い、いや。いただきます」

 

そんな不思議な顔されても困る、不思議な事が起こって困惑しているのにそれは駄目だ。凄い聞きにくい。このくらい当然と言わんばかりの顔されてる。なんだこれ、なんだこれ。

 

「はやてちゃーん、ヴィータちゃんが話があるって…あれ?お客様ですか?」

 

リインが来た。リインは目の前の客人を不思議そうに眺めていた手にそりゃそうだ。燕尾服来た男なんて一生に一度見たか見ないかくらいレアだ。

 

「おはようございます。今日からはやてさんの身の回りの世話をさせて頂きます間藤恵也です。宜しくお願いします」

 

「はー…よろしくお願いしますです。あのー…この服は?」

 

「正装です」

 

「はぁー…なるほど…」

 

…ん?今何て言ったあの家政婦?私の世話?あれ?これ私が世話を頼んだみたいな話になってる?

 

「ち、ちょっと待ってな!私じゃない!君の主人は私じゃない!」

 

「えっ」

 

「君の主人はな…」

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わってなのはの部屋。

 

「今日の朝は昨日の焼き鳥にビール!今日は午後から教導だけど!一杯だけなら問題ないよね!朝からこんな幸せ!独り身最高!」

 

当の本人のである高町なのはは朝から変わり無く酒を飲んでいた…皆様見てください。これがエースオブエースの私生活です。もはやおっさんです。

 

「フェイトちゃんが出ていったのはすこーし悲しいけど…でも仕方無いね!私が悪いんだから!さてまずはビールから…」

 

これからいただこうとビールに手を伸ばすとドアからノック音が聞こえて止まる。

 

「すいません、今日からここで家政婦をさせて頂きます間藤恵也です」

 

「…セールスですか?」

 

「管理局でセールスとか気合い入ってますね。八神はやてさんに貴方が主人だと言われました。一週間と聞きましたので今日から宜しく…」

 

「ごめんね?帰って?」

 

「…えっ?」

 

突然帰れと言われて口ごもる。

 

「あのね?ちょっとそう言うの聞いてないから…後ちょっと部屋が汚くて他人を入れたくないの…」

 

「…その為に私が来ました。ドアを開けてくれれば掃除を始めましょう」

 

「駄目、ぜっっったいに入れないの。お金なら後で払うから今日は帰って?お願いなの」

 

「…」

 

…ブッツン

 

(…あれ?今何か切れた音が聞こえたような)

 

静寂がその場を包む。なのははそれを諦めたのかと思って再びビールを飲もうとする…

 

次の瞬間、鍵のかかったドアは蹴破られた!!

 

「っ!?」

 

「上等だオラァ!!そこまで啖呵切るなら強行手段だオラァ!!」

 

「レ、レイジングハート!!」

 

先程まで穏やかな口調で話していた男がキレて乗り込んで来た!先程までとはキャラが変わっておりヤクザのような顔付きになっていたのだ!襲撃されたのが分かるとなのはは直ぐ様胸元にあるレイジングハートに手をかける。

 

「遅ぇんだよ!!」

 

「あっ…!」

 

変身しようとするも、迷いなく距離を詰めた恵也は胸元にあるレイジングハートを没収されてしまったのであった。

 

「たくっ、手間取らせやがって…」

 

魔法使いの無力化に成功した家政婦は回りを見る。360度何処を見ても汚部屋、その様子に顔色は悪くなっていく。

 

「あ、あのー…返して…」

 

「…なるほど、呼ばれた理由が分かった…えー…御主人?」

 

「えっ?私?」

 

「一週間でお前の私生活ぶっ壊して真人間に戻すんで、そこんところ宜しく」

 

「えっ」

 

真顔で生活をぶっ壊すなんて発言が飛び出してきた。有無を言わさない気迫を感じる。

 

「まずは掃除か…うわっ、ブラとかあるし…」

 

手始めにと言わんばかりにそこら辺のゴミから探り始める。途中で下着とかが発掘されるが気にせず分別をし始める。ゴミはゴミへ、服は洗濯カゴへと。

 

「ち、ちょっと!!勝手に人の部屋を弄らないで欲しいな!?」

 

「これデケーなオイ…デバイスさんよ、これサイズいくつよ」

 

『八神はやてさんに聞けば分かるかと』

 

「マジか」

 

「レイジングハートっ!?」

 

「まだいたか御主人様ァ!早く服着て仕事しろ!!」

 

「えっ!?でもまだ時間…」

 

「邪魔なんだよォ!酒呑んでるくらいなら仕事しろォ!」

 

「ひぃーーっ!?」

 

一週間と言う限定的な契約だったが、始まりはこうであった。後に高町なのははこう語ったのであった。

 

……家政婦が押し掛けてきたと。


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