日常生活は日にちが進むにつれて長兄がブラコン・シスコンに目覚めていく予定。
きっと10年後には弟妹廃になっていることでしょう。
それはそれで幸せそうですが牙を捥がれた長兄に果たしてあの大戦を乗り切る精神力があるのやら…(;´・ω・)
いや、ブラシスコン精神でむしろ精神力は前回の比ではないかもしれない長兄ェ。
取りあえず長兄の幸せな生活を見てやって下さい(*- -)(*_ _)ペコリ
ポップの家にヒュンケルが引き取られて3日。
現在ポップの部屋にはベッドが2つある。
1つはヒュンケル用のシングルベッド。
因みにポップのお下がりだ。
2つ目はポップとメルルが2人で寝るためのダブルベッド。
ダブルベッドを置くことで大して広くもなかった部屋がよりいっそう狭くなったが、どうせ寝るだけの部屋だから、とポップは割り切っているらしい。
さて何故ベッドが2つになったのか?
本来は子供たちが3人仲よく寝れるように、とクイーンサイズのベッドを入手する予定だったのだが、ヒュンケルがポップの性別をジャンクに聞いて以来ポップをどちらかと言うと女の子として扱うので一緒に寝るのは良くないと判断したのだ。
3人で寝ていた時は少年のポップが真ん中であるし、ポップもメルルもまだ5歳と言う事で「まぁ良いか」と思っていたのだが女の子が2人では話が別だ。
ヒュンケルの父バルトスも言っていた。
女性は大切に扱いなさい、と。
嫁入り前の女性と同衾などもっての他である。
例え相手が子供でもだ。
メルルはどちらかと言うとポップを男の子として見ているようだが2人の中で互いが人生の伴侶になるのだから問題ないと思っているようだ。
しかし頭の中では半分は男の子と言うのは理解しているのだが、ヒュンケルはどうしてもポップを女の子として見てしまう。
最初の出会いで「この子供は女神に違いない」とか思ってしまったからだろうか。
抱きしめられた時に母性を感じてしまったからだろうか。
兎に角ヒュンケルは自分は違うベッドで寝なければいけないと言う使命感が生まれたのである。
それにしても妹になったポップとメルルは本当にかわいい。
欲目無しに見ても物凄く可愛い。
メルルは将来それは綺麗に育つだろう。
この年にして端正な顔立ちをしている。
ポップは中性的な美少女に育つだろう。
いや少年じゃないの?と思われるだろうがヒュンケルはどうしてもポップの事が女の子に見えるので致し方ない。
ポップも女の子扱いしても怒らないから「まぁ良いだろう」とヒュンケルは思っている。
しかし可愛すぎるのも困りものなのである。
ポップとメルルは眠る前に「お休みのキス」をする習慣がある。
2人は唇を合わせるのだが、それをポップは自分にもしようとするのだ。
因みにメルルからは頬にお休みのキスをして貰っている。
唇のキスを拒んだら「何で?」と大きな目でヒュンケルを見つめコテン、と首を傾げるのだ。
「俺の妹超可愛い!!」状態のヒュンケルだが半分とは言え女の子の唇に血が繋がっていない男とキスさせる訳にはいけない。
「メルルと間接キスになる、メルルは将来のポップのお嫁さんだろう?そのメルルと間接キスになるのは男として考えさせられるものがある」
この言葉で納得してくれたらしいポップはヒュンケルのメルルがした方ではない頬にお休みのキスをしてくれた。
「お休みヒュンケル」
「お休みなさい義兄様」
ニッコリ微笑む2人はとてつもなく可愛い。
妹が可愛すぎてイキツラァ、と言うヤツだ。
隣で眠る体温が無くなったのは正直寂しいが可愛い妹の事を思えばそれくらい乗り越えられる。
ヒュンケルは出会って3日にして完全にシスコンと化していた。
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「ヒュンケルは武器の扱いが上手いな。手入れに無駄がない。将来この武器屋を継ぐのはお前かもな」
商品の剣の手入れをしていたらジャンクがヒュンケルの頭を乱雑に撫でた。
「有り難う御座いますお父さん。でも武器屋は継げるか分かりません。俺、剣が好きなんで…将来は剣士になりたいんです」
ヒュンケルがしょんぼりと肩を下げる。
その肩をジャンクが力強く叩いた。
「やりたいことがあるのは良い事だ!その程度の事で落ち込むな。そして武器屋を継がないんなら世界一の剣士になれ!!」
義理の父はヒュンケルの事を心の底から自分の子供として扱ってくれる。
もちろんスティーヌもだ。
「はい、頑張ります!!俺の名が世界に知れ渡ってこのお店にお客がいっぱい来るよう世界一の剣士になります!!」
顔を上げたヒュンケルの目はジャンクの顔を捉え目をキラキラさせていた。
「世界一の剣士になれ」、その言葉が自分の育ての親であるバルトスまで認められた気がしたのだ。
「ついでにポップの剣の鍛錬にも付き合ってやってくれ。メルルと結婚するなら将来は男として生活するだろうから、多少男らしいことも出来る様にならないといけないからな。アイツは魔法の才能はあるようだが剣の方はからっきしだからな」
「ポップが魔法を使えることに気付いていたんですか!?」
「アイツは隠してるみたいだがな。多分スティーヌも気が付いている。メルルと2人して森に遊びに行くのも訓練の一環だろうこともな。多分お前も近々付き合わされるぞ」
「何故ポップとメルルはあんなに幼いのに戦う術を身に就け付けようとしているのでしょうか?」
「多分メルルが将来に何かを感じたんだろうな。メルルの占いはもはや予知の域だからな。だからヒュンケル、この家の長兄としてあの二人を護ってやってくれ」
「2人は俺の可愛い妹です!命に代えても守り抜きます!!」
「こら!この馬鹿が!!命をかけて守るのは良いが命に代えてじゃ駄目だ。お前が死んで泣くのはポップとメルルだけじゃない。俺やスティーヌも居ることを忘れるな。お前はウチの家族なんだ。家族は誰一人欠けてもいけないんだ」
「お父さん…有り難う御座います。2人が教えてくれるその日まで、俺も皆を護る力を身に就けます」
「力を身に就けるのも良いが店番や武器の手入れも怠るなよ?お前は家族なんだから家の仕事はしっかりやれ」
「はい!」
最後に背中にバシン、と力強く叩かれジャンクは酒瓶を持って「知人に会いに行く」と家を出たがヒュンケルにはジャンクの乱暴にも見えるヒュンケルへの当たりが本当に自分を家族として見てくれているのだとより伝わり、ヒリヒリする背中の痛みに僅かに口に弧を描いた。
それを偶々見たスティーヌはたった3日でもう笑顔を浮かべれるようになったのだと喜んだ。
この日何時もより晩御飯が豪華だった理由は誰も知らない。
つづく
もう暫く長兄のターンが続く予定。
長兄とポップ・メルルの心の距離がもっと縮むところまで書きたいと思います。
と、言っても前回も嘘予告してるので本当にそうなるか分かりませんが(;^ω^)