IS〈インフィニット・ストラトス〉少女の目に映るもの 作:煌酒ロード
皆様はどうやって維持しておられるのやら
「おかえり一夏君」
「ただいま」
そう言った一夏君はどこか落ち込んだ表情でいた。その後一夏君の機体は
「悪い。忌悪」
謝られた。
「・・・なんで謝るのかな?」
「せっかく訓練つけてもらったのに・・・負けちまった」
そう言ってまた俯く一夏君。これは相当凹んでるなぁ・・・。取り敢えず
「とう」
「痛てぇ!?」
チョップしておいた。少し強めに。
「なにすんだよ!」
「一夏君。ISって言うのは訓練時間、さらに言ってしまえば才能が物を言う世界なんだ。
それに何度も言うようだけどあんなのでも代表候補性。そう呼ばれるのに相応しいだけの努力と才能を持ってる。彼女も言っていたけどエリートなんだ。そんな相手に高々一週間程度の訓練でついていける訳無いじゃないか」
「それでも勝てるように色々してくれた。情報だって忌悪が調べてくれたし勝つために特訓までしてくれたのに・・・」
悔しそうに俯く。私はその頭に手を置いて撫でる。
「君は何も残さなかった訳じゃない。一夏君は代表候補性を追い詰めた。正直私はね、少し善戦出来るだろうぐらいにしか思ってなかったんだ」
その言葉に一夏君が顔を上げる。
「ところが一夏君はいい意味で私の期待を裏切ってくれた。彼女を追い詰めて見せたじゃないか。君は私の期待に応えてくれたよ」
「・・・そっか」
そう言って一夏君は微笑む。私もそれに微笑み返す。
「ンンッ!もういいか、お前ら」
その声に向くと呆れたような顔の織斑先生。そして今の状況を確認して慌てて向き直る。一夏君も少し顔を赤くしていた。
「全く教師の前でイチャついてくれるな。織斑、これは専用機を持つ人間の心得などを記した物だ。必読だからな」
そう言って一夏君に分厚い辞書のような物を渡していた。アレ一枚一枚がすっごいペラ紙なんだよね・・・辞書とか目じゃない薄さだよアレ。
案の定一夏君はうげって顔をしてるし。でも読まないと行けないんだよねアレ。
「さて、本来ならここで更衣とオルコットで模擬戦をする所なのだがあいにくと奴のISのダメージが酷くてな。今日これ以上の戦闘は不可能だろう」
「じゃあ俺と忌悪で対戦ですか?」
「それでもいいが織斑、お前は更衣と戦って勝てるか?」
「う・・・」
まあ無理だろう。悪いけど一夏君にも、あの金髪ロールにも負ける気は無い。
「では織斑先生。私は辞退します」
「忌悪!?」
「ふむ、ではクラス代表は織斑一夏。これで決定だ。明日のホームルームにて通知するのでそのつもりでいるように」
そう言うと織斑先生は山田先生を連れて出ていった。そして、
「取り敢えず寮に戻ろうか、一夏君」
「おう」
そう言ってピットから出ると、そこには黒髪をポニーテールにした、目つきのキツイ少女が立っていた。
「待っていたぞ、一夏」
「箒か、どうした?」
「どうせ今から寮に戻るのだろう、それならば道場に来い。鍛えてやる」
「今からかよ・・・流石に疲れたんだけど?」
「ふん、軟弱な事だから疲れなどするんだ。それも含めて鍛え直してやる」
なんだかまあ強引な事で。
「それと一夏。誰だその女は」
なんかピッて音がしそうなほど綺麗に指さされました。と言うか
「初対面の人間を指さすのは良くないですよ、後一応同じクラスなんですけどね、篠ノ之さん。それとはじめまして、私は更衣忌悪です」
それだけのはずなんだがなんか睨まれてます思いっきり。
「それはそうと道場云々よりももうすぐ夕食ですよ?食べに行った方が良いのでは?」
「む・・・それもそうだな。では食堂に行こうか一夏」
「あ、おい!引っ張んなって!と言うか夕飯なら忌悪も・・・」
とか叫びながら一夏君は連行されて行った。取り残されたのは何となく面白く無かったけどあの篠ノ之さんの態度を見る限り一夏君に想いをよせているのは見え見えなので、このまま放っておくことにしようと思う。
思うんだけど。
何となくモヤモヤするのはなんでだろうなーと思いつつ、部屋に戻る。購買で買ってきたパンなんかが入ってる袋をベッドに放り投げて、お茶を入れる。そして一息つく。
「悪い、忌悪。置いて行っちまって」
そこに一夏君が帰ってきて謝る。
「いや別に謝らなくても・・・楽しかった?」
それだけ聞くと少しバツの悪そうな顔をする。
「楽しくなかったの?」
「楽しくなかったというか・・・ひたすらお前の事を聞かれたのと、ルームメイトだって言ったら男女七歳にしてうんぬんって言われた」
「えぇ・・・」
「常識だって言われたんだけど・・・俺が知らないのがおかしいのか?」
そう言った一夏君の頭の中は恐らくハテナマークでいっぱいな事だろう。私もいっぱいだ。
一体それはいつの時代の常識なのか。
「・・・一夏君。彼女はリアル侍なの?」
「いや・・・違うと思うぞ・・・多分」
多分なのか、絶対では無いのか。まあでも確かに彼女には武士道とかそういう言葉が似合いそうではあるけれども・・・。
そんな事を思いながらシャワーを浴びて着替え、一夏君とたわいも無い話をして眠った。
――
「ではクラス代表は織斑一夏。異議は無いな?」
それに対して全員で頷くことで同意を示す。そして、
「それからオルコットから言いたい事があるそうだ。オルコット、出てこい」
「はい」
織斑先生の発言でセシリアさんが前に立つ。そして、
「織斑一夏さんとクラスの全員に侮辱、侮蔑をした事。日本と言う国を侮辱した事をここに謝罪します。本当に申し訳ありませんでした」
そう言って綺麗に頭を下げた。
「全員、思う所はあるだろうがオルコットはこうして誠意を見せた。絶対に許せとは言わん。各人思うところもあるだろうしな。だがその誠意を無視するような真似は絶対にするな。いいな」
織斑先生のその一言が後を押したのかどうかは知らないが、その場で一夏君が俺は気にしていないという発言もあり、全員セシリアさんを許す事にしたようだ。
「ではホームルームはこれにて終了だ。次の時間はグラウンドでの実習となる。遅れるなよ」
そう言って織斑先生は退室する。そして私達は着替えてグラウンドへ向かった。
――
「ではこれより専用機持ちによる実演を行う。織斑、更衣、オルコット。前にでて順番にISを展開しろ、先ずはオルコットからだ」
「わかりましたわ」
その言葉と共にセシリアさんはブルー・ティアーズを展開し、真横にスナイパーライフル『スターライトMk_Ⅲ』を展開する。視線を送るだけで
「流石だな代表候補性、と言いたいところだが真横に銃を向けて誰を撃つ気だ。正面に向けて展開できるようになれ」
「で、ですがこれは私のイメージを纏めるために重要な――」
「直せ、いいな」
有無を言わせず黙らせる織斑先生。その様子は正に鬼――おっとやめよう出席簿がこっちを向いてる。
「次、織斑」
「はい」
そう言うと一夏君は右手のガントレットに左手をそえ、白式を展開。流石に雪片との同時展開は無理か。
「名前を呼ばずに展開できたことは褒めてやろう。だが展開速度がまだ遅い。精進しろ」
「はい!」
織斑先生の指摘に返事を返す一夏君。いつからココは軍隊になったのだろうか。
「次、更衣」
「はい」
私は前に出るのと同時に専用機、『
展開と同時に武器も展開。
左手には拳銃型で銃身が少し長めのハンドカノン、『黒雷』
右手には同じく普通のナイフより少し長い黒いナイフ『慟哭』
を展開し、構える。
「流石だな元企業代表。全員見習うように。続いてオルコットは近接装備。織斑は武装を、更衣は展開が苦手だと思う装備を展開しろ」
その言葉が終わる前に私は余り使わない武器でもある長大なスナイパーライフルを展開。この武器だけ一応と言うことで積んであるので名前も無ければ一般のIS企業が売っているような武器で、私がこの機体に乗ってから一度も展開したことの無い武器。
展開を終えて見ると、一夏君は少し時間がかかったけれど雪片を、セシリアさんの手の周りには光がクルクル回っていた。
え、ちょ
「・・・まだか、オルコット」
「す、すぐですわ!ああ、もうっ!インターセプター!」
そう叫ぶのと同時に青い短剣をセシリアさんは展開するが、今のは・・・
「遅いぞオルコット。貴様は実戦の場でも敵に展開を待ってもらう気か?」
「じ、実戦では間合いに入らせませんわ!」
「ほう、先日初心者に間合いに入られたどころかいいようにやられていなかったか?」
そう言われセシリアさんは真っ赤になって一夏君を睨んでいた。今頃プライベートチャンネルでは貴方のせいですわ!とか叫んでるんだろうなぁ・・・。
「続いて飛行訓練に入る。三名は上空の停止線の位置まで飛行しろ」
そう言うと同時に、ブルー・ティアーズ、白式、ノワールが飛ぶ。因みに飛んでいる順だ。
「飛行イメージって難しいな。前方に角錐を展開するイメージ、だっけ?」
「一夏さん、イメージはあくまでイメージ。自分にとっての飛んでいるイメージを作るとよろしいかと」
「そうは言ってもなぁ・・・」
「一夏さんは放課後に更衣さんと特訓なさってるとお聞きしました、もしよろしければその時に一緒に教えて差し上げますが」
「いいのか?助かる。いいよな忌悪」
「構わないよ、そろそろ一夏君も多方向からの攻撃に慣れる訓練もしなきゃいけないしね」
そこまで喋った所で停止線までたどり着く。そこで停止する。
「全員到達したな。しかし織斑、白式はカタログスペック上はブルー・ティアーズより速度は上のはずだ。出せるように精進しろ。更衣は実力を隠したいのか遊んでるのかはわからんがスペック上の最低限はだせ、白式よりも速いはずだ」
「「はい!」」
「・・・遊んでましたの?更衣さん」
「忌悪でいいよセシリアさん。遊んでた訳では無いんだけどね・・・バレてーら」
「実力を隠したいんですのね・・・」
「目立ちたく無いんだよねぇ・・・」
「そんな理由で俺はクラス代表にされたのかよ」
「いいじゃないか、いつぞや保健室で私に悪戯した罰だよ」
「一夏さん何をなさったんですの・・・?」
「まあ、ちょっとした悪戯をな・・・」
その時ハウリングと共に、
「一夏ぁ!何時までそこにいる!さっさと降りてこい!」
との叫び声が飛び込んでくる。下を見ると篠ノ之さんが山田先生のインカムを奪い取って叫んでいた。あ、織斑先生に出席簿くらった。
「一夏さん・・・アレは・・・」
「一応・・・幼なじみ」
「篠ノ之さん・・・流石にアレは・・・」
「ンンッ、織斑、更衣、オルコット。次に降下をやってもらう。目標は地上から10cmだ」
「では、お先に失礼しますわ」
指示が出ると、オルコットさんが下に降下していく。この辺は流石代表候補生。目標の高さで優雅にポーズを決めていた。
が、しかし
「誰が優雅にポーズを決めろと言った。それも直せ。いいな」
出席簿の洗礼を食らっていた。
「じゃあ私が行くね一夏君。お先」
その言葉と共に私は落下。地上スレスレで停止する。
「流石だ。先程実力を隠すなと言ったが授業中は教員の指示に従え。誰が地表から1mm地点に着地しろと言った」
その言葉に私は苦笑いで返す。さっき実力を隠すなと言われたから私は地上からmm単位で着地したのだ。実力を隠してはいないが指示には従えと怒られてしまった。
その後、
「やっべぇ!」
一夏君が地上からかなり離れた地点で止まった。
「織斑、地上からかなり離れているぞ」
「すいません!」
一夏君は素直に謝る。それを見て少し笑っている生徒もいる。
「しかし今織斑がやったのは初心者にはよくある事だ。
実際に乗ってやってみるとわかるかもしれないが、これはかなりの恐怖が伴う。乗りたてなら尚更だ。このミスは最初の方の実技練習では珍しくない。目測を誤り地面に激突することもな。
織斑は激突しなかっただけまだマシだ。諸君等は織斑のミスを他人事だとは思わないように。
では次に移る」
そう言って生徒に釘をさすと同時に一夏君へのフォローも忘れず。それを引きずらないように切り上げていく織斑先生の授業は、効率的に進んでいった。
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