IS〈インフィニット・ストラトス〉少女の目に映るもの 作:煌酒ロード
さてさて今回はインフィニット・ストラトスです。これもまた書きたかった話なんですよね〜もう。他の話も更新していきたいと思ってはいるのですがいかんせん時間というものは待ってくれず・・・ああザ・ワールドが欲しい
ではお楽しみください!
困った。具体的にはこの状況に。どのくらい困ったかっていうとオンラインゲームのまったり部屋に入ったらガチ勢と効率勢しかいない時見たく・・・わかりづらいな。まあ兎に角私は非常に困っている。理由?簡単だ。今私の目の前にニヤニヤした顔でいるコイツが来たことが原因だ。
「もう一度言います。貴方にIS学園に入っていただきたい」
もう一度言う。私は困っている。
IS――インフィニット・ストラトス
至上最高の天才にして天災。篠ノ之束博士が作り出したパワードスーツ。宇宙活動を想定した宇宙服だったらしいのだが、そのISの前に現行兵器は一切役に立たず、それどころか最初に出てきた機体 ――【白騎士】に傷一つ付けることも出来なかった。その後篠ノ之束博士は、ISのコアを適当に世界にバラ撒いて失踪。その後十年で世界は様変わりした。
篠ノ之束博士が日本人だからなのかどうかは知らないが、IS技術を優先的に所持していた日本を世界は危険視し、IS運用協定、通称『アラスカ条約』を結び、IS情報を世界に開示、共有することの他に、研究のための超国家機関設立、軍事利用の禁止などが定められた。
それでもIS保持数が国の即戦力になる為、各国こぞって操縦者を集めた。そしてISは女性にしか扱えない。これが何故かなど誰も気にせず。女性を優遇しはじめたため、見事に女尊男卑の世界が出来上がった。これが今の世界だ。
ISと言う
とまあ要するにこれが今の世界。そしてIS乗りを育成するための機関がIS学園という訳である。
「・・・なぜ僕に?」
「お前が一番IS適性が高い。貴様の様な忌み子が役に立つ時が来たのだ。腹立たしいがな」
私のお父様は徹底的な男尊女卑の考えを持った人だ。金が稼げるからISを作っているし、金が稼げるから愛想を振りまく。しかし今の世をよくは思っていない。
「・・・僕に何をしろと?」
「貴様は男として入学し、〝ヤツ〟のデータを取ってこい」
ヤツ ―― 織斑一夏。世界でただ一人の男性IS操縦者。要するに彼のデータで男性でもISに乗れるようになれれば、女性の機嫌をとることもなくなる。お父様はそうお考えなのだろう。
「・・・わかりました」
そしてこの家で私はお父様に・・・・・・いや、女性は男性に逆らえない。
「貴様の専用機は貴様の要望通りにしておいた。これがそれだ」
そう言って差し出された黒いリストバンドを腕にはめる。これが私のISの待機状態らしい。
「入学手続き等も済ませてある。明日には出発しろ」
「わかりました。お父様」
それだけ言ってお父様は奥に引っ込んでいかれた。私と話すのですら穢れると言って近寄ろうとしなかったお父様だ。別の部屋で今頃悪態でもついているのだろう。織斑一夏のデータをとってきた後私がどうなるのかは知らないけど。まあいい事は無さそうだ。少なくとも私に出来るのは、部屋に戻って出発の準備をする位だ。
次の日、私はIS学園で二番目に注目されていただろう。なんせ日本有数のIS企業。更衣財閥から二人目の男性IS適合者だ。注目されても無理はない。そんな針のむしろのような自己紹介は進んでいく中、織斑一夏が当てられてテンパっていた。
「えー・・・・・・えっと、
それだけ言って固まってしまう。次の瞬間に織斑一夏に浴びせられる視線の嵐。明らかにもっと喋ってよ!とかそういう類の視線だ。それを感知したのか少し黙った後・・・・・・
「以上です!」
ガタガタっ!と何名かがずっこけた。その中には私も入っている。少なくとも力強く言い切るセリフではない。
バアンッ!
物凄い音がした、比喩とかではなくマジで。そして頭を抑える織斑――面倒くさいから一夏でいいだろう。が涙目で頭を抑えていた。その前には黒いスーツにタイトスカートを着た長身つり目の女性が立っていた。そして、
「げぇっ、関羽!?」
再び殴打音。そして女性からトーン低めの声で
「誰が三国志の英雄だ馬鹿者」
そう叱責が飛んでいた。その後副担任で山田真耶と名乗った先生と少し話した後、こちらを振り返り、
「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育て上げるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠十五歳を十六歳までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」
なんという暴力宣言。これがかのブリュンヒルデか、なんか最強というのも頷ける気がする。
そして次の瞬間。
「「「キャー!千冬様ー!」」」
沸き起こる黄色い声援。なんとまあさすがブリュンヒルデ。しかし本人はうっとおしそうに
「・・・・・・毎年よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させているのか?」
それほんとにあったら教師間のイジメですよねと口に出して突っ込みそうになるのを抑える。それでも上がる黄色い声に、千冬さんは本気でうんざりしていた。
その後一夏と織斑先生が姉弟なのがバレ、一悶着あった後、自己紹介を続行。まさか私の番がすぐだとは思わなかった。
「更衣・・・、
それだけ言って席につく。周りからはそれだけー?みたいな視線が飛んできたけど全てスルー。私には関係ない。その後授業や簡易的な説明を終え、山田先生から部屋の鍵を貰って部屋に戻る。同室は当然の事ながら織斑一夏。
「宜しく、青春の一ページ」
「宜しく・・・ってなんだよそのニックネーム!?一夏だからか!?」
「ご名答」
そうやって一夏を少しからかって遊んだ。
それから次の日にクラス代表を決めようと言う話になった。
「はーい、織斑君がいいと思います!」
「更衣君がいいと思います!」
私か織斑君の二択だった。面倒くさいが、先程一夏君が抗議した時に千冬先生が推薦されたものは強制だと言っていたから恐らく私に拒否権は無い。一夏君もだが
「納得いきませんわ!」
その時叫んだと思ったら立ち上がる金髪ロール。確かイギリス代表候補生セシリア・オルコットとか言ったと思う。私は人の名前を覚えるのが苦手なので間違っていたら申し訳ないな。
「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!わたくしに!このセシリア・オルコットに!そのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」
面倒臭いなこの人。絶対自分は強いとか思い込んでるタイプの人だよ。でもこの人自体は大して強くない。前に戦闘データを見たことがあるけど、狙撃能力が高いだけで、後は機体の性能に頼り切りって感じだった。
「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!私はわざわざこのような島国までサーカスをしに来たのでは御座いませんわ!」
「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。あ、クソ不味い料理だすって有名だっけ?」
「機体のおかげで代表候補生になれたようなモンなのに、最強気取りとか笑わせる」
一夏君の挑発に私がかぶせる。でも確かにイギリスの料理は当たりハズレが大きいらしい。
「貴方達・・・、このセシリア・オルコットと我が祖国を侮辱しますの!?」
「侮辱したつもりは無いけどな」
「それ以前に先に
私達二人の言葉に少し押されたのか、セシリアさんは黙るが、収まらないらしく、机を叩き
「決闘ですわ!」
そう申し付けてきた。面倒くさい。
「いいぜ、四の五の言うよりわかりやすい」
「嫌だ、と言いたいところだけど貴方の機体は見てみたいからね。いいよ」
「ハンデはどのくらいつける?」
一夏君のその発言で教室が一瞬静まり、そして笑い声に包まれる。アホなのかな一夏君
「一夏君。幾ら機体におんぶに抱っこで代表候補生名乗ってるって言ったって、一応はそこそこの実力者なんだよ?君はむしろハンデをつけてもらう側なんだけど」
私の発言に一夏君は自分の失言に気づいたのかハンデはいいと言っていた。彼は面白いね。そして千冬さんから正式に決闘を受けることが認められ、一週間後に第三アリーナで決闘ということになった。
放課後になり、私は部屋でシャワーを浴びていた。一夏君は篠ノ之さんが鍛え直す!とだけ言って剣道場に連れていっていた。可哀想に。そう考えながらシャワー室を出ると、
「忌・・・悪・・・?」
目を丸くした一夏君がいた。
待ってくれ私は今シャワー室から出てきた、当然のごとく服など来ているはずもなくいつも胸を隠すためにつけているサラシもつけてはいない。自分の顔が熱くなっていくのがわかる。自分でもありえないほどの速度でシャワー室の扉を閉め、中に立てこもる。
「なんでいるの・・・!?」
当たり前だが私と一夏君は同室だ。別にいても不思議ではない。というか問題はそこではない。裸を見られたということはつまり自分が女だということがバレたわけで
「最悪のパターンだねコレは・・・」
私は思考する。誤魔化せるのかどうかを思考し、無理だと判断する。ならば次に考えるべきは一夏君に迷惑が行かないようにするにはどうするかを考える。
「・・・なあ、忌悪。出てきてくれないか・・・」
「僕の着替えは下着類も含めてそっちにあるんだけどね・・・、それとも君はそんなに女の子の裸が見たいのかい?」
「そういう訳じゃねえよ!ってか着替えないんなら言ってくれ取ってくるから」
「流石に僕も荷物を引っ掻き回されるのは遠慮したいかな・・・、まあいいよ。さっきは急だったから驚いてしまったけど別に見られて困るものでもないしね。着替えに出るよ」
そう言って私はシャワー室から出る。慌てて目をそらす一夏君を横目に着替え、ジャージ姿になってから一夏君に向き直る。
「もう着替えたからね・・・、こっち向いてもいいよ」
その言葉を受けて一夏君がこちらを向く。やはりと言うか若干驚いてる様子だった。
「まあ先ずは騙していたことを謝るよ。僕――ああ、もう一人称を偽る必要も無いのか、私は女の子だよ」
「・・・なんで男子の格好なんかしてたんだ?」
「そうだね・・・、単純に言うなら君のせいだよ」
「俺!?」
「そう、君。多分これからも似たようなことが起きるかもしれないけど、君はかなり注目されているんだ。それこそ世界初の男性IS操縦者。つまり男性でもISを動かせる可能性が出てきたんだ。まあ一部の人にとっては大変なことだよ」
「一部の人ってのは・・・政府の要人とか・・・国とかにとってか?」
「それもあるけどね・・・、一夏君は今の女尊男卑の世界をどう思う・・・?」
「どうって・・・、行き過ぎてるとは思うけど・・・」
「そう。行き過ぎてるんだよ。かと言って男尊女卑がいいとは言わないよ、どちらも間違ってると思うからね。と、そんなことはどうでもいいんだ。要するに今の女尊男卑の社会をよく思わない人達にとって君の存在は好都合なのさ」
「えっと・・・?」
「男性でもISを動かせるかもしれないという可能性。これがどれほどのものか分かるかい?」
「流石にそれくらいはわかるって。要するにISを使える人の幅が増えるってことだろ?」
「その程度で済んだらいいよね・・・」
私の言葉にまだハテナマークを浮かべている一夏君。
「男性でもISを動かせるってことは女性に頭を下げなくても良くなるってこと。今の女尊男卑の世界はISという優位性が女性にあるからなんだ。そしてそのせいでいい思いをしなかった人達が何人も世の中には居るんだ」
「そうか、じゃあISを男性でも使えるようになれば・・・」
「当然、そんな格差は無くなるだろうね・・・、そしてまた男尊女卑の世界になるかもしれない。その時には戦争になるかもしれないね」
「戦争!?なんでだよ!?」
「簡単さ、男尊女卑と女尊男卑の考えで勢力がわかれ、そして両方の手には兵器であるISがあるんだ。相手を力で黙らせるのは当然の方法だしね」
「・・・そんな・・・話し合いで解決とか」
「話し合いで解決?してるじゃないか。
私はお父様のそういうスタイルを常に見てきた。話し合いという名の腹の読みあい。賄賂。そういう汚い手を使って人は話を進めていく。
「さっき別に裸を見られてもいいって言ったのはさ、別に深い意味は無いんだよ」
そう言うと一夏君は訳の分からない顔をする。
「私の家――要するに更衣家だけどお父様が徹底的な男尊女卑の人でね。女は男の道具であれかしって事を本気で言っているのさ。その上僕は長女として産まれた。よっぽど気に食わなかったんだろうね・・・」
「気に食わないって・・・自分の娘だろうが・・・」
「長女ってことが気に食わなかったんだろうさ、私には弟がいる。
一夏君が酷く嫌なものを見るような顔をする。まあ当然だ。汚れきった私を見るのは耐え難いだろう。でも話が終わるまで我慢してもらおうか。
「まあ要するに私はお父様が仕事で相手を墜すために必要な
私はそう言って笑ってみせる。相変わらず一夏君は苦虫を噛み潰したような顔をしている。それでも話を聞こうとしてくれているあたり、彼は本当に優しい人なのだろう。私の愚痴の相手には勿体無いくらいだ。
「要するに私は娘でもなんでもない。今回男装して入ってきたのも君のデータを取るためだったしね」
まあそれは失敗したんだけれど、と付け足して私は笑う。それでも一夏君は苦い顔のままだ。彼にこんな顔は似合わないというのに。
「私の体は汚れきってる。誰とも知らない男に抱かれて、いつかは好きな人と、なんて夢見てた
そこまで言った時には既に一夏君の顔は渋面と言ってもいいものになっていた。
「ゴメンね・・・、こんな汚れた〝物〟と同室で、しかもこんな暗い話しちゃって。あーあ、君の顔から笑顔が消えちゃった」
正直。次に一夏君が何を言うのか怖かった。汚れた私を見て、なんて言うのかが怖かった。初めてあってから一日しかたってなくて、それでも同室になった時に笑ってくれて。あの時私みたいな物にでも笑顔をくれて嬉しかった。知らないでいてくれることが嬉しかった。
ああだから
そんな顔をしないで、君は笑っていて。私のいない世界で、笑っててよ
「ゴメンね一夏君。後、バイバイ」
それだけ言って私は部屋を飛び出す。一夏君の顔は見れなかった。後ろから声がしたけど振り向かなかった。振り向いて、止まってしまったら。また迷惑をかけてしまう。だから私は――
海が見える。お父様から正体がバレた時にはこうしろと命令されていた。だから私は躊躇うこと無く首筋をナイフで切る。腕から力が抜け、ナイフが海面に落ちる。それと同時に私も仰向けで倒れ込む。体から力が抜け、視界が暗くなっていく。
完全に見えなくなる前に、男物の制服が見えた気がした。
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