GODEATER 夜明けの空   作:ひちみ

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輝く宴

アナグラ内の食堂。

現在、此処には極東支部の面々が勢揃いしていた。

 

 

 

「それでは皆様グラスを持って…ソラおかえり!かんぱーい!!!」

 

「「「かんぱーい!!!」」」

 

 

 

コウタの掛け声と共に皆んなでグラスを掲げてソラの歓迎会が始まった。

当の本人もヘラッと笑って小さく杯を上げる。

当たり前だが子供はジュース、大人は酒だ。

 

驚いた話だがソラはこの間20歳になったばかりだそうだ。

まさかイオルは一つ下だとは思ってもいなかった。

 

各々がムツミの豪華料理に舌鼓をうち、楽しそうに談笑を始めた。

ソラの周りには早速人が集まっている。

まずは元第一部隊で一緒に前線で戦ったと言っていたアリサだ。

 

 

 

「ソラ!無事で良かった…。私がどれだけ心配したと思ってるんですか!」

 

「わー、ごめんねってさっきも謝ったじゃん」

 

「何度謝って貰っても許しませんからね!ね、コウタ!」

 

「うぇ!?俺?別に俺は無事だったなら良かったしソラが簡単にくたばるようなヤツじゃないって知ってるから…うーん、別に怒ってないよ」

 

「コウタ!あ!ソラも喜ばないで下さい!」

 

 

 

そこからは二人はアリサによる御説教コースだ。

コウタは既にチーンと死にかけた顔をしているがソラは何処となく楽しそう。

そんな彼等の救済にリンドウが現れた。

 

 

 

「よ、ソラ。元気だったみたいだな」

 

「あ!リンドウさん、貴方もちょっとソラに喝の一つや二つ入れて下さいよ」

 

「俺は謎のゴッドイーター騒ぎの時点でコイツだって何となく思ってたからな。だけど、報告をサボっちゃダメだぞ?」

 

「リンドウさん、それ、全然説得力ないよ」

 

「わはは!そうだな!ま、取り敢えず、アリサにコウタ。他の奴らも話したがってるんだ。ちょっと俺の方に付き合って大好きなリーダーを他の奴に譲ってやれ。ほら、いくぞー」

 

「あ、ちょっと!リンドウさん!?」

 

 

 

アリサとコウタを軽く肩に担ぐとリンドウは二人を連れて他のテーブルへ移って行った。そこへ賺さず現、第一部隊のエリナ・デア=フォーゲルヴァイデとエミール・フォン=シュトラスブルクが現れる。

 

 

 

「久しいな我が旧友よ!此度の旅路は如何だったかな?」

 

「エミール五月蝿い!久し振りね、ソラ!」

 

「エリナにエミール。久し振りだねー。あれ、二人ともちょっと大きくなった?」

 

「はて?ソラ君、私と君は同い年だったと記憶しているが…。いや、だが君が言うからにはまだ私の成長期は終わってなかったということか!まだまだ私は男として大きくなるという事なのか!」

 

「ちょっと!子供扱いしないでって言ってるでしょ!だ、だけど私身長伸びてる?!」

 

「うんうん、あと何か強くなった気もするね」

 

「本当か!?」

「本当に!?」

 

 

 

ソラの一言に二人は飛び跳ねてハイタッチをする。

何でもソラはエリナの憧れのゴッドイーターらしく何時もより少し素直に応対している気がした。

 

エミールは彼女に何度か窮地を救われたと言っており二人共彼女によく懐いていた。

 

エミールが彼女があまり食べてない事に気付き、自分のオススメを持ってくると立ち上がるとエリナが負けじと立ち上がり二人してバイキング形式の食事台の方へ向かった。

 

賺さず防衛班と第4部隊の面々が彼女を囲んだ。

真壁ハルオミもここへ来て長いが彼女とは初対面らしい。

 

 

 

「君が元第一部隊の隊長さんか。俺は真壁ハルオミって言うんだ。結構可愛いね、今度ゆっくり俺とお茶でもどお?」

 

「だ、駄目ですよハルさんー!ソラさん困ってるじゃないですかー!」

 

「あら、カノン。大人の話に子供が首突っ込んじゃ駄目じゃない」

 

「よぉ、ソラ。外は色々稼げたんだろ?今度ジュースの一本でも奢ってくれよ」

 

「お前がいれば割りの良い仕事が出来るからな。金振りの良い仕事が入ればまた俺を呼べよな!」

 

「お前ら久々に会って金の話なんかするな。底が知れるぞ」

 

「ヒバリちゃんから聞いたぞー、一人でピターをやったって。しかもヒバリちゃんがカッコ良いって言ってたぞ。羨ましい」

 

 

 

上から第4部隊隊長の真壁ハルオミ、隊員台場カノン、防衛班のジーナ・ディキンソン、カレル・シュナイダー、小川シュン、ブレンダン・バーデル、大森タツミである。

 

中々に騒々しいメンバーから取り敢えず労いの言葉だけ貰うと各々また食事に向かった。

 

次に来たのはブラッド隊だ。

極東最強と謳われる噂の元第一部隊隊長を前にして隊員全員興味深々である。

 

 

 

「お、君らがブラッドだったかー。改めて、北條ソラだよ、宜しくね」

 

 

 

軽い挨拶に各々自分の名前を述べて簡単な自己紹介を済ませる。

ブラッドの女性隊員二人が彼女の隣を固めて他の男性陣は各々彼女を囲むように適当に席についた。

 

 

 

「ね、ね、ソラさんあのピターを本当に一人で討伐しちゃったの?」

 

「んー、まあ、そうかな。逃げて逃げてだったから大変だったよ」

 

「なぁ!今度俺とミッションに出てくれよ!あんたの実力が見てみたい!」

 

「えー!ロミオ先輩ずるい!私も!私も行きたい!」

 

「あ、なら、その私も…」

 

 

 

ナナとロミオそしてシエルは彼女の実力を見てみたいとのことで彼女に是非ミッションを、と迫っている。

イオルも一度しか見た事のない彼女の実力をしっかりと観たいと思わず手を挙げそうになるがその前にブラッドの保護者二人が三人を諌めた。

 

 

 

「お前らいきなりガッつき過ぎだ。すまねぇな」

 

「彼女とのミッションはまた日を改めてお願いしに行こう。俺も個人的に興味があるしな。イオルもだろ?」

 

「まあ、少しは見せて貰ったけどやっぱり気にはなるよね。また暇な時にでもお願い出来るかな?

 

「…そうだね、考えておくよ」

 

 

 

彼女の返答に少し間があったのをイオルだけが気付き、少しだけ首を傾げた。

が、それほど大した事ではないし気にせず談笑を続けた。

 

彼女は自分の話より相手の話を聞くのが好きなようで、皆んなの話を笑いながら聞いていた。途中、入れ替わりで何度か人が変わり、その度に色んな話を聞いた。

 

そして今まで姿を現さなかった人物が遂に彼女の前まで現れた。

 

 

 

「ソラ」

 

「あ、ソーマ。どったの?」

 

「いや、楽しんでいるかと思ってな、聞きに来た」

 

「楽しいよー。20歳になってお酒も飲めるし、ご飯も久々にちゃんとしたの食べて美味しいし、何より皆んなの笑顔が絶えないこの雰囲気が良いよね。やっぱアナグラはいいなー」

 

「そうか、楽しいか。お前が楽しいなら俺も楽しい」

 

「…なに、ソーマ、酔ってる?」

 

「あー?そんな訳ないだろー」

 

 

 

ソーマは何時もは見せない笑顔全開でわしゃわしゃとソラの頭を撫で繰りまわす。

その顔は少し紅みを帯びており、酒臭がしていた。

 

ソーマの後ろを覗くとリンドウが笑いながら酒を煽っており、何名かは潰されていて未成年組が必死に介抱している姿が見えた。

 

ソラはブラッドメンバーに少し席を立つことを伝えて、出来ればリンドウの相手を頼むと言付けてソーマの片腕を引っ張って食堂を出てエントランスの椅子に彼を座らせてその横にソラも座った。

 

彼は酒の席を外されたからか若干不服そうである。

 

 

 

「ソラ、酒は」

 

「私もソーマもちょっと休憩。リンドウさんも皆んな潰しにかかるとはかなり酔ってるねー」

 

「俺は別に酔ってない」

 

「はいはい、そうだね。取り敢えず恥かかない内に助けてあげたんだから寧ろ感謝してって、何してんの」

 

「酒がねぇなら寝る」

 

 

 

ソラの太腿に自分の頭を置いて目を閉じたソーマ。

なんて俺様なんだとソラは思って揺らしてでも起こそうかと思ったが彼の眼の下に濃い隈を見つけて手を止める。

 

研究者として最近名を上げ始めてきたこの男はこのくらいの時しか休めないのかもしれないと思い直してため息を吐いた後、自分も背凭れに深く体を預けた。

 

彼女も基本、深く眠れるような質ではないのだが今日だけは彼女も静かに眠れるような気がしてゆったりと襲ってきた睡魔に身を預けた。

 

 

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

食堂の中はまさに阿鼻叫喚。

初めに飲んでなかったジュリウスやギルまでリンドウ、ハルオミに巻き込まれて酒を煽って、見事に成人組は御座で全員がダウンして未成年組も流石に呆れ返っていた。

 

コウタとアリサも疲れ果てて部屋に戻ろうとエントランスに出て来たところベンチの所に明るい空色の頭を見つけた。

リーダー大好きアリサが構って欲しそうにテテテッと近付くと彼女の他に誰か居ることに気づいた。

 

喋り声や動きが見えないことからもしやと思ってそっと覗き込むと、ソラも、彼女の膝を枕にしているソーマも二人とも寝ていた。

コウタとアリサは二人、顔を見合わせると急いで毛布を持ってきてそれぞれにかけてやる。

 

満足したようにアリサが「戻りましょうか」と振り向くとコウタがシーッと人差し指を立ててカメラを二人に向けて構えていた。

 

 

 

「コウタ…」

 

「い、いいじゃん、偶には。可愛い悪戯だろ?」

 

「別に止めないです。私にも後で回して下さいよ」

 

 

 

なんてやり取りがあって後に二人のツーショット写真が出回るのはまた別のお話である。


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