オッス、俺ゴールド 〜ヤンデレ娘クリスとポケモンの世界で旅をする〜   作:友親 太一

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第五十五話 二組の幼馴染

 ハァイ、アタシはクリス。

 アタシ達は誕生日パーティーの翌日にワカバタウンを出発したわ。

 お父さんとリザードンもアタシ達と一緒に町を飛び立ったの、またあの長距離を飛んでアローラに帰るのに二人は爽やかな笑顔で飛んで行ったのよ。

 

 お母さんはキマワリと一緒にアタシ達を見送ってくれたわ、でも出発する前にまたキマワリとお父さんは喧嘩してゴールドがお仕置きしてたの、二人は本当懲りないよね。

 でもキマワリのおかげでお母さんはいつもより明るい表情で見送ってくれたの、キマワリをプレゼントして本当に良かったと思うわ。

 

 そしてアタシ達はあのウソッキーが居た道を抜けてエンジュシティを目指してる。

 エンジュには伝説のポケモンを祀ってる塔があるからアタシは楽しみなの♪

 ゴールドは道中でもエンジュでのジム戦のイメージトレーニングに余念がなかった、でも余りにもトレーニングに集中して転けそうになってるのが心配よ。

 でもアタシはゴールドなら大丈夫だと思うよ、必ず勝てるとアタシは信じてるよ。

 

 ★☆★☆

 

【エンジュシティ〜昔と今が同時に流れる歴史の町〜】

 

 オッス、俺ゴールド。

 俺達はエンジュシティについた、ここはコガネと違って古い建物が建ち並ぶ古風さが印象的だ。

 特に印象的なのが西と東にある二つの塔、だが片方は火事で半分焼け落ちていてるのが個人的に残念だ、本当は二つの塔が凛々しく並ぶ姿を見てみたかったな。

 

 そして俺達は今夜の宿の確保の為に毎度おなじみポケモンセンターにやって来た、だがセンターのドアを開けると……

 

「おんどりゃあ、シバキ倒したるわぁ!」

 

 物凄い聞き覚えがある怒鳴り声がセンターの中に響いた。

 

「あっ、アカネの声だ♪」

 

 だよね、この独特の高い声のコガネ弁はアカネちゃんの声で間違いないだろ。

 でもコガネのジムリーダーのアカネちゃんがなんでエンジュに?

 

「二階にいるみたいだから行こうよ」

 

 そして俺の手を引っ張ってクリスは二階に行こうとする、俺としては嫌な予感がするから全力でスルーしたいんだが……

 

 ★☆★☆

 

 二階に上がると般若みたいな顔で椅子を振り回してるアカネちゃんと、そのアカネちゃんから必死に逃げてるクセ毛の青年がいた。

 

「……なんだ、この修羅場」

 

「と、とにかく止めようよゴールド」

 

「だけどよ……仕方ない、少々手荒になるがアレやるか」

 

「アレ?」

 

「そ、アレ。クリスは下がってろよ、危ないから」

 

 あんま使いたくないが、あれだけ暴れてるアカネちゃんを止める手段は他に思いつかんし仕方ないな。

 青年の頭部目掛けて椅子を振り下ろそうとしたアカネちゃんの前に素早く潜り込み、その椅子を持つ手を掴む。

 

「!?」

 

 そして驚いて一瞬動きを止めたアカネちゃんの片手の手首、肘を捻りながら椅子を叩き落としアカネちゃんをうつ伏せに倒す。

 

「うがっ!!」

 

 最後に手首を本来曲がらない方向に雑巾を絞る様に捻る。

 

「いででででっ!!」

 

 これぞ合気道の技の一つ、変則正面打ちの一教だ。

 

「アカネちゃん、もう暴れないか?」

 

「暴れん、暴れんからはよ止めてくれぇやぁ!」

 

 ちなみにこの技は物凄く痛いがアカネちゃんを傷つける事は無いので安心してくれ。

 

「ゴールドってこんな事も出来たんだね」

 

「まぁ、かじった程度だけど」

 

 そのかじったのは前世だがな。

 

 ★☆★☆

 

 そんなこんなでクリスがアスカちゃんを宥めながら事情を聞くために四人で椅子に座ってる。

 ちなみにアスカちゃんはまだ苛ついてて、青年はそれをチラチラ見ながら少し怯えてる。

 

「んじゃあ、まずは自己紹介からしますか。アスカちゃんはともかくそっちの方とは初対面だし。俺はワカバタウンのゴールド、んでこっちはクリスです」

 

「はじめまして、アカネの友達でゴールドの恋人のクリスです」

 

 俺は最近はクリスの恋人宣言はスルーしてる、どうせ否定しても誰も信じないし。

 

「ゴールドはんにクリスはんな。さっきは助けてくれはってありがとう。ワイはマサキ、このじゃじゃ馬娘の幼馴染や」

 

「誰がじゃじゃ馬やって!?」

 

「お前に決まっとるがな」

 

「アカネ、どうどうどう」

 

 クリスに宥められて振り上げた拳を下ろすアカネちゃん。

 だがクリス、それは馬の宥め方だぞ。

 後マサキさんはあんまアカネちゃんを煽らんでくれ、また暴れられたら面倒だし。

 

「ん? マサキさんってひょっとして『マサキのパソコン』のマサキさんですか?」

 

「せやで。ポケモン及び道具転送預かりシステム、通称『マサキのパソコン』はワイが開発したんや」

 

 マジか、て事はこの人メチャクチャ頭良いんだよな。

 

「スゲー、マサキさんて天才なんですね。あ、『マサキのパソコン』には何時もお世話になってます」

 

「いやぁ、そんな褒めんでくれぇや。照れるやんか」

 

「せやでゴールド、このバカを付け上がらせるとろくな事しいへんから適当にシバキ倒しときゃいいんや!」

 

「ホンマお前はひでぇ奴やな、だから彼氏が出来ないんやで」

 

「なんやて!!」

 

「まぁまぁ、つか本題に入りますが何で二人は喧嘩してたんですか?」

 

 喧嘩っつうかアカネちゃんが一方的にリンチしかけたようなもんだが。

 

「それな。まぁさっきコイツも言ってたが遺憾ながらウチとコイツは幼馴染や。

 んでコイツは今はカントーに住んでいてここ数ヶ月は何も連絡が無かったんや、なのに今日いきなりウチに電話よこしおったんやで」

 

「え、カントーに? 今ってリニアが使えないからカントーからジョウトに来るのは難しくないですか?」

 

 クリスの疑問は最もだ、リニア無しで来るとなると週に数回の定期船かポケモンで飛んでくるしか無いし。

 船は高いしポケモンだと秘伝マシンがいるんだよな。

 

「それはセキエイ高原経由で来たから問題ないで。ワイはポケモンリーグのポケセンのマシンメンテもしてるからフリーパスで通れるんや」

 

 この人は手広く仕事してるなぁ。

 

「話進めるで。んでな、マサキが電話で『むっちゃ大切な話があるんや、エンジュまで来てくれへんか?』って言いよったんや。せやでウチが急いで来たら、用件はポケモンを一匹預かってくれ、それだけやったんやぁっ!!」

 

「ヨシヨシ、落ち着いて」

 

 怒りが再熱したアカネちゃんをすぐさま宥めるクリス、クリスも成長したなぁ。

 

「これが落ち着いてられるかって話や! わざわざアスカにジムリーダー代理を頼んで急いで来たのに用件がポケモン預かってくれだけ? なめとんかぁっ!」

 

「いやいや、ワイは急いで来てくれとは言ってないで」

 

「大切な話があると言われたら勘違いするやろ!」

 

「へぇ〜アカネは勘違いしたんだ〜。アカネはどんな用件と勘違いしたのかなぁ?」

 

 クリスはニタニタと笑いながらアカネちゃんに聞く。

 

「そ、それはやなぁ……」

 

 それをアカネちゃんは顔を赤くしてモジモジしなが答えたくなさそうにしてる。

 分かりやすいなぁ、よく見ると前に会った時よりお洒落してるし。

 アカネちゃんがマサキさんに告白されると勘違いしてたのが丸わかりだよな。

 

「と・に・か・く、全部マサキが悪いんや!」

 

「ホンマひでぇわ」

 

「事のあらましは分かりました。呼び出した、勘違いしたはとりあえず置いといて、その預けたいポケモンって何ですか? マサキさんなら『マサキのパソコン』でアカネちゃんに送る事も出来るのにわざわざ手渡ししなければならない理由があるんですよね?」

 

 大切な話って言ったんだから普通のポケモンじゃないんだろうな。

 

「それやなぁ、まぁ実際に見たほうが話は早いわ。出てきぃや」

 

 マサキさんはモンスターボールから一匹のポケモンを繰り出した。

 

「……ブイ」

 

 出てきたのはイーブイ。

 

「イーブイ?」

 

「綺麗な女の子のイーブイだね」

 

「何やイーブイやんか。またゲットしたんか? マサキは何匹もイーブイを仲間にしてるやろ」

 

「そいつはワイがゲットしたイーブイやないで」

 

 ん、どういう事だ?

 

「今から説明するんやで。アカネは知ってるがワイは今タイムカプセル、まぁ俗に言うタイムマシンを開発してるんや」

 

 タイムマシン!? マサキさんはそんなのまで作れるのかよ!

 

「どうせまだ試作品を作ってる最中やろが、出来んうちから自慢するなアホマサキ」

 

「黙っときじゃじゃ馬、お前の予想は残念ながらハズレや、試作品は先日完成したんやで。んで早速実験したんやが……」

 

「ちょい待ちぃや、アンタまた一人で実験したんか!? 前に転送装置の実験の失敗でポケモンと合体したん忘れたんかいな。あんときは偶々親切な人に助けられたから良かったが今回も失敗したらどないする気やったんや!!」

 

 ポケモンと合体!? それで良く無事だったな。

 

「あれは物質干渉実験やから起きたミスや。今回は時空間干渉、及び時空間測定の実験やから前回みたいな事は起きんわ。だいたい時空間に電波流してその電波の波長を計測するだけやから危険はほぼ無いんやで。一応安全対策もしてあったしな」

 

 駄目だ、マサキさんの話が難しくて全くついていけん。

 クリスにいたっては頭から煙出そうになってるし。

 

「また話が脱線したわ。んで実験自体は成功したんや、言うても僅か一秒程度時空間に干渉しだけやったがな。ただな、一つイレギュラーが起きたんや」

 

「なるほど、そのイレギュラーが……」

 

「お察しの通りそのイーブイやで。実験中にこのイーブイのモンスターボールが転送されてきたんや。ゴールドはんはどこぞのじゃじゃ馬と違って頭切れますなぁ」

 

「なんやて!」

 

「アカネ落ち着いて、ヨシヨシ」

 

「うるさいじゃじゃ馬はほっとくわ。最初は自分で面倒見るかと思うとったんやがワイはこの通り超忙しゅうてな、とてもやないが事情が複雑なこのイーブイを面倒見る余裕は無い。んで、かのポケモン博士ことオーキド博士に頼もうとしたんやがな……」

 

 マサキさんは話ながら服の袖を捲くる、するとマサキさんの腕は無数のひっかき傷と噛みつき跡だらけだった。

 

「この通りイーブイはオーキド博士に渡そうとするとひっかくは噛みつくはで抵抗しまくったんや。んでオーキド博士と二人で相談した結果アカネに任そうと決めたんや」

 

「何で勝手に決めたんや! つうかそれウチである必要ないやんか!」

 

「勝手に決めた事は謝る。せやがこのイーブイは事情が特殊やから信用ならん人間には任せられへん。このイーブイはタイムトラベルの最初の経験者、悪い人間にもし渡ったら解剖されるかも知れへんやん。

 せやから信用出来て、かつノーマルポケモンの扱いのプロのアカネに頼もうって話になったんや

 ついでに言うならパソコン転送しなかった理由はこのイーブイは転送装置を酷く嫌がって暴れたからや」

 

 アカネちゃんはノーマルタイプのジムリーダーだもんな。

 アカネちゃんも信用出来るって言われてちょっと嬉しそうにしてる。

 

「でもなんでオーキド博士は駄目やったんや?」

 

「それはイーブイ本人に聞けや、ワイはこれ以上傷を増やしたくないから手出しせんぞ」

 

「それもそうですね、よしイーブイ本人に話を聞きましょう」

 

「「はぁ?」」

 

 二人揃って驚く、あんた等本当は仲良いでしょ。

 

「つうわけでクリス、イーブイに事情を聞いてくれ」

 

「わかった」

 

 そしてクリスはイーブイと話し出す。

 

「ゴールドはん、イーブイと話すって……」

 

「あぁ、クリスはポケモンの言葉が分かるんですよ、マサキさんはともかくアカネちゃんも知らなかったの?」

 

「マジかて……」

 

「いや、クリスからポケモンとよくお喋りするとは聞いてたが、まさか本当にポケモンの言葉が分かるとは思わんかったわ」

 

 まぁ普通はそう思うよな、俺も旅に出るまで知らんかったし。

 

「ゴールド、終わったよ」

 

「そうか。で、なんて?」

 

「『あんな醜い老人のポケモンになるのは嫌よ』って言ってる」

 

「「「はぁ?」」」

 

 今度は俺も含めて三人で疑問を投げかける。

 

「この子が言うには『美しいワタシの主人になるトレーナーはワタシに相応しいぐらい美しくないと嫌。あの醜い老人のポケモンになるくらいなら、まだそっちの冴えない男のほうがマシよ』だって」

 

 このイーブイはナルシストかよ、つか口悪すぎ。

 

「ま、まぁそれは置いとくとして。クリスはん、次はタイムトラベルしたときの状況とか後はいつの時代から来たかとか、なんで転送を嫌がるのかも聞いてもらえるかいな?」

 

「分かりました」

 

 イーブイに冴えない男扱いされたのにめげずに聞きたいこと聞くマサキさん、結構図太い神経してるよな。 

 

「マサキさん、イーブイが言うには『タイムトラベルとか時代ってのはよく分からない、ただ冴えない男に会う前にいたとことは全然違うのは分かるわ。気がついたら景色もポケモンも後は人間の服装も違うから違和感が凄かった。転送が嫌なのはワタシは転送時の独特の感覚が嫌いなのよ』ですって」

 

「ほー、せやったかメモっとこ」

 

 マサキさんは研究熱心な人だな。

 

「んでアカネちゃんはこのイーブイ預かるの?」

 

「預かりたいのは山々やがウチもジムリーダーの仕事で超忙しいんやで? チャレンジャーとのバトル以外にもにもジムバトル用のポケモンを何十匹も面倒見て、チャレンジャーとのバトルの報告書を書いてポケモンリーグ本部に提出したり、やる事がぎょうさんあるんや」

 

「まぁワイも無理にとは言わんわ。せや、ならクリスはんが面倒見てくれへんか?」

 

「アタシがですか?」

 

「せやで、そのイーブイもクリスはんには懐いとるしクリスはんは悪人には見えへん、アカネの友達なら信用出来るしな」

 

 マサキさん何だかんだアカネちゃんを信頼してるんだな、でなければアカネちゃんと友達だからって会ったばかりのクリスに任せたりしないだろうし。

 

「ちょっと待って下さい、イーブイ本人に聞いてみますね」

 

 そしてまたイーブイと話し出すクリス。

 

「ほんま便利な特技やな。クリスはんはその特技で将来大物になりますなぁ」

 

「せやろ、ウチの親友は凄いんやで」

 

「なんでアカネがドヤってるんや」

 

 また漫才みたいなやり取りを始めてるな、この二人って本当は絶対仲いいだろ。

 喧嘩するほど仲がいいって言うし。

 

「話が終わったよー」

 

「で、どうするんだ?」

 

「うん、この子はアタシが引き取るよ。この子も『貴女ならワタシに相応しい美少女だからいいわ。むしろその冴えない男のとこにずっと居たくなかったから丁度いい、さぁ早くワタシを連れてきなさい』って言ってくれたし」

 

 あー確かにクリスは俳優だった両親によく似て美形だよな。

 そしてマサキさんは本当に酷い言われようだな。

 

「ほなよろしゅう頼むわ。あとコレはワイの名刺、何かあったらこの電話番号に電話してぇや」

 

「クリス、このアホの頼み聞いてくれてありがとな。コレはウチからのお礼や、受け取ってぇな」

 

 俺はマサキさんから名刺を、クリスはアカネちゃんから技マシンを貰った。

 ……って、まさかその技マシンって!?

 

「それは『メロメロ』の技マシンや、クリスの旅に役立てぇな」

 

 やっぱり『メロメロ』か、あの(トラウマ)がクリスの手に……

 心なしかモンスターボールの中の仲間達が震えてる気がするぞ。

 

 とにかくこれでクリスの仲間が一匹増えたんだからそれは喜んでおこう。

 良かったな、クリス。

 

「イーブイ、よろしくね♪」

 

「ブイ」

 

 ✱オマケ ★マサキの実験失敗記〜失敗は成功の母の友達の従姉妹の妹〜

 

【数年前、ハナダの岬にて】

 

「よっしゃぁ、やっとこさ改良型転送機の試作品が完成したで、早速実験や!」

 

「にどにど♪」

 

「そうかニドラン、お前はんも嬉しいやんな。ではポチッとな!」

 

 ガタッ! ドカッ!! ドダダダッッ!!!

 

「な、何か嫌な音が……って暴走やんか!? ニドラン、逃げ……ギァァァッッ!!」

 

【数時間後】

 

「いでででで、酷い目に合ったわ。ニドラン、お前はんは大丈……ニドラン、ニドラン? ニドランがいいへん? それに視界がいつもより低い……ってワイがニドランになっとるやないかーい!? え、まさかニドランと合体してもうた!? いや大丈夫や、同じ現象を今すぐもう一度起こせば理論的には元に……ってこの手でどうやってパソコンを触るんやーい!!」

 

「すいませーん、ここにマサキさ……」

 

「天の助けやーっ!! アンタすまへんがそこのパソコンでワイの指示通りに入力してんか!!」

 

「わっ! ポケモンが喋った!?」

 

「訳は後で話しますがな、何なら船のチケットも上げますわ、せやから協力してんか!?」

 

「わ、分かりました」

 

【それから数年後のハナダの岬】

 

「よっしゃ、タイムカプセルの試作品が完成したで。今回は前のミスを反省して非常時には電源を強制的に切れるようにしたし、ポケモン達は全員実家の妹に預けたから大丈夫やろ。……あんときはワイもニドランも無事に分離出来たが次も助かるとは限らんからなぁ。

 ではでは、ポチッとな」

 

 ウィーン、ウィーン、ウィィィーン!!

 

「お、おおおう!? よっしゃ成功や!! ワイってやっぱ天才やで!!」

 

 コロンっ!

 

「ん、何でタイムカプセルからモンスターボールが?」

 

 ポンッ!

 

「ブイッ」

 

「え、イーブイ? お前はん、まさか別の時代から来たんか!?」

 

【マサラタウン、オーキド研究所】

 

「……てな訳ですわ、オーキド博士。ポリポリ」

 

「なるほどな、つまりこのイーブイは別の時代から来たタイムトラベラーポケモンって訳じゃな。それとマサキ君、なんで君はポケモン用の餌を食べてるんじゃ?」

 

「数年前に実験中の事故でポケモンと合体してからポケモンフードが好物になったんですわ、博士も食べます?」

 

「いらんわっ! それはともかくイーブイの体調には問題ないんじゃな?」

 

「ここ来る前にジョーイはんに念入りに診てもらいましたんで大丈夫ですわ。ただ元の時代に戻すにはタイムカプセルを完成させんと無理でして、タイムカプセルの完成にはワイの計算では十年ほど掛かりそうなんですわ」

 

「たった十年でタイムマシンを完成させると言い切れる君の自信は凄いのぅ。まぁ事情は分かった、この子はワシが預かろう。

 おいでイーブ……イタタタッ!? 何でいきなり噛みつくんじゃ!!」

 

「うわっ、イーブイ離……いでっ!! 今度はワイに噛みついた!?」

 

【数時間後】

 

「あいたたたっ、酷い目にあったんじゃ。どうもワシはこのイーブイに嫌われてるらしい、悪いが他を当たってもらって良いか?」

 

「ホンマすいません、せやったらワイこれから仕事でジョウトに行きますんで幼馴染のアカネに頼んでみます」

 

「アカネってあのコガネのジムリーダーのアカネ君かね? なるほど彼女なら適任じゃな、彼女はノーマルポケモン使いとしては超一流じゃ。それにポケモンジムなら施設もしっかりしてイーブイも快適に過ごせるじゃろう」

 

「ほな今からジョウト向かいますわ、失礼しました」

 

「ああ行ってらっしゃい、後でこの怪我の治療代は君宛に送っておくからな」

 

「……ちゃっかりしてますなぁ」

 

【現在、エンジュシティ】

 

「と、まぁこんな感じやで。ポリポリ」

 

「マサキ、アンタは程々にしいへんとタイムマシンが完成する前に命落とすで」

 

「ほへぇ、発明家って大変な仕事なのね」

 

「つか今も食べてるけどポケモンフードを食べて腹を壊さんマサキさんに俺は驚いた」

 

「いや? しょっちゅう腹は下しとるで」

 

「「「だったら食べ(るんやない)(ないで)(んで下さい)!!!」」」


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