オッス、俺ゴールド 〜ヤンデレ娘クリスとポケモンの世界で旅をする〜   作:友親 太一

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第五十一話 恋なんかしない、絶対

 オッス、俺ゴールド。

 俺は太陽の石を手に入れ、クリスはヒマナッツを無事に捕獲して合流した。

 だが合流すると何故かクリスのポケモン達は追いかけっこしてた、割りと早く捕獲できたから遊んでたのかな? その割にはスリープは随分必死に走ってたが。

 

 そして俺はせっかく捕獲したカイロスを持ってくるのを忘れたがな。

 だが心配するな、カイロスはあの後スタッフが美味しく……じゃなくて、スタッフがちゃんと公園に逃してくれたからな。

 

 何でお前がそんな事分かるんだって?

 ついさっき見覚えあるカイロスに頭をどつかれたんだよ、すっげー痛かったぞ。

 カイロスは置いてかれた事を相当怒ってたみたいだな。

 

 尚カイロスは俺を一発ぶん殴ると何処かに飛んで行ったわ。

 

「ゴールド大丈夫?」

 

「痛いけど、たぶん大丈夫」

 

 頭にタンコブ出来た事以外はな。

 

「もぉ、あのカイロス何なのよ!」

 

 そしてクリスは絶賛激おこプンプン丸中、救いなのは既にカイロスが居ないために報復ができない事だろう。

 クリスはポケモンには優しいが、こと俺絡みについては例外的にポケモン相手でも怒る。

 最近はアカネちゃんのおかげで少し落ち着いたが、こんなところでクリスが暴走するのはかなりヤバイ。

 と言う訳で、いつもの様に俺はクリスを宥めることに全力を尽くすことになる、はぁ。

 

「まぁまぁ、あれは俺が悪いんだ。だからカイロスの事は許してやれよ」

 

「でも!」

 

「だから……ああもぉ!」

 

 説得が面倒くさくなってきた俺はクリスを正面から抱きしめた。

 

「これで許してくれないか?」

 

「うん♡」

 

 よし、クリスの怒りは鎮火したな。

 ……あれ? そいやぁ俺はクリスに触ってるのにドキドキしない? 何でだ?

 試しに俺はクリスの頭を撫でる。

 

「うへへ〜♡ 気持ちいいよ~♡」

 

 幸せそうなクリスの顔を見るのは和むなぁ、って違うし。

 う~ん、確かにアカネちゃんと再戦する前はクリスを女として意識してた筈なんだがな?

 今はこんなに触れてるのに俺の心は平常心だ。

 ………………ま、いいか、これで一つ悩みの種が減ったんだし、気にしても仕方ないか。

 

 尚ポケモン達は俺達を暖かく見守っていた……スリープとヒマナッツを覗いて。

 スリープはニタニタと笑いながら俺達を見つめて、ヒマナッツは俺達の方を見ずオフクロの写真をずっと見つめてた。

 スリープは何となく分かるがヒマナッツは何でだ?

 

 ★☆★☆

 

【ポケモンセンター】

 

 俺達はセンターでポケモン達を回復させた、だがバタフリーの異常の原因だけが分からなかった。

 ジョーイさんに聞いても体には異常は無いそうだ。

 ……体に異常が無いなら心に異常があるのかも?

 

「つう訳でクリス、協力してくれ」

 

「どういう訳か分からないけどゴールドの頼みなら協力するよ?」

 

「まぁやる事は簡単だから気軽にしてくれ」

 

 俺は虫取り大会時のバタフリーの事を説明した。

 クリスが黙って聞いてくれたから説明はすぐに終わって助かるな。

 

「えっと、つまりバタフリーに調子が悪い理由を聞けばいいんだよね?」

 

「ああ、頼んだよ」

 

 クリスとバタフリーと話し出す、バタフリーは少し嫌そうな顔をしながらもボソボソと話し、クリスは頷きながら聞いてる。

 こういう時は本当に便利な特技だよな、羨ましい。

 クリスは将来ポケモンカウンセラーとかになったら良いかもな。

 

 しばらくすると話しは終わり、バタフリーは少し気が晴れたのかさっきよりは明るい表情になってる。

 

「バタフリーは何だって?」

 

 俺はクリスに聞く。

 

「女の子が苦手になったんだって」

 

「はぁ? なんだそれ、もう少し詳しく説明してくれ」

 

 今の説明では色々端折り過ぎて何がなんだか分からんぞ。

 

「えっとつまり、バタフリーはこの前のジム戦での『メロメロ』でメスのポケモンに苦手意識がついちゃったの。

 それだけならまだ良かったんだけど、さっきのカイロスに求婚されて女の子が怖くなったんだって」

 

 あー確かにアカネちゃんのポケモン達にはズタボロにされたからな。

 バタフリーは初戦はミルタンクに瞬殺され、再戦したらピッピにも負けたし。

 

「ん? でもクリスとは普通にしゃべれるんだろ?」

 

「……フリフリ」

 

 俺の疑問にバタフリーは言いづらそうに答える。

 

「『人間の女は大丈夫なんだよ』って言ってるわ」

 

 つまり雌ポケモンだけが怖いんか。

 

「まぁアカネちゃんのポケモンに苦手意識があるのは分かるが、でもカイロスに好かれて嫌がる理由が分からんぞ? あのカイロスは好みじゃないとか?」

 

 バタフリーはさっきより更に言いづらそうに答える……その表情は非常に固い。

 

「…………バタフリ」

 

「『テメェはゴリマッチョな中年ババァに交尾を迫られて嬉しいか?』ですって」

 

「!!!……すまなかった」

 

 俺はそっとバタフリーの頭に手を置き謝罪した。

 バタフリー、お前ってなんて不幸な奴なんだ。

 俺もクリスに夜這いされそうにはなった事はあるが、それでもクリスは美少女。

 それに対してお前は…………やべぇ、涙で目が霞むぜ。

 

 俺はバタフリーを思いっきり抱きしめる。

 

「バタフリー、お前の気持ちは痛いほど分かる! よく耐えた、お前は偉いぞ、凄いぞ!」

 

「フリー!!」

 

 俺の胸の中で男泣きするバタフリー。

 怖かったよな、辛かったよな、それでも必死で俺の為に戦ってくれて本当にありがとう。

 俺はバタフリーが落ち着くまで涙を流しながら抱きしめ続けた。

 

 ★☆★☆

 

 ハァイ、アタシはクリス。

 バタフリーが泣き止んだ後、アタシ達はバタフリーのメスポケモンへのトラウマ克服の為の訓練をすることになった。

 

 これはバタフリー自身が言い出したの。

「いつまでも女にビビってられっか!」ってゴールドにハッキリ言った彼は男らしくてカッコイイと思うわ……若干声が震えてたけど。

 

「頼むぞ、クリス」

 

 そう言い終わるとゴールドは少し離れた所に移動して、腕を組んで傍観する姿勢になる。

 

「じぁあいくよ。出てきて! ベイリーフ! メノクラゲ!」

 

「ベイ!《はい!》」

 

「メノ〜?《お呼びですか〜?》」

 

 アタシの呼びかけに答えてボールから飛び出した二人。

 

「お願い二人とも、バタフリーとお話してくれるかな?」

 

「ベイ?《それは構いませんが?》」

 

「メノノ?《一体なんでそんな事を?》」

 

 アタシは簡潔に事情を説明する。

 

「ベイ、ベイリー?《分かりました、要するにバタフリーの女性に対する恐怖心を取り除けば良いのですね?》」

 

 さすがベイリーフ、あんな短い説明でアタシの言いたい事を理解してくれたわ。

 

「メメ、メノノ♪《ふふふ、トラウマを克服するにはトラウマの元なった事に慣れるのが一番ですわぁ♪》」

 

 そしてメノクラゲはとても楽しそうにしてる。

 

「バ、バタ……フリ《よ、よろしく……お願い……します》」

 

 バタフリーは緊張して口調まで変わってる……これは重症ね、ゴールドが心配するのも分かるわ。

 

「ベイリ。ベイ、ベイ?《ではまず私からいきます。バタフリー、大丈夫ですか?》」

 

「バ、バ、フリ《あ、あぁ、大、丈夫です》」

 

 全然大丈夫じゃないよね、バタフリーは冷汗をダラダラと流して動揺してるのがよくわかるわ。

 

「ベイ?《私が嫌いですか?》」

 

「バ、バタ……《いや、そ、そんな事は……》」

 

「ベイリフ?《私はバタフリーのこと好きですよ?》」

 

「フリぃぃぃ!!?《はいぃぃぃ!!?》」

 

 ウッソォ!? え、いきなり!? ベイリーフがバタフリーに告白した!!?

 

「ベィ、ベイリフ《えぇ、私はバタフリーのことを仲間として好きですよ》」

 

 ですよね~、あーびっくりした。

 そうよね、このタイミングで告白はありえないよね。

 もぉベイリーフったら、なにもわざわざ勘違いするような言い方しなくてもいいのに。

 バタフリーも少し残念そうに、でも明らかにホッとした顔をしてるわ。

 

「ベイ、リーフ、リフ。ベイリ

 《バタフリーは口こそ荒っぽいですが努力家で、真面目で、信頼できる素敵な仲間です。そんな貴方に怯えられるのは私の心が痛みます》」

 

「バ、バタ、バタ、リ、イ《あ、ありがとう。お、俺も、ベイリーフ、さん、の事は、信、頼してます》」

 

 バタフリーったら顔が真っ赤で色違いポケモンみたいになってるわ、ちょっと可愛いかも。

 

「ベィ……《バタフリー……》」

 

「バ、バタ?《な、なんですか?》」

 

 ベイリーフはそっとバタフリーのお腹に自分の頬を当てる、そしてゆっくり頬ずりをする。

 

「ベィ、ベイリ……《バタフリー、私を信じて……》」

 

 ベイリーフは上目遣いに彼の瞳を見つめて、そっと静かにささやく。

 

「バ、バ……………フリぃぃぃ!!!《あ、あ………………うギャゃゃゃ!!!》」

 

 バタフリーは奇声を上げながらゴールドの方に飛んでいったわ。

 そしてゴールドの背中に隠れてガタガタと震えてる……つまり失敗ね。

 

「ベイ?、ベイ、リフ《変ですね? この前に見たドラマだと、これで男性は元気になる筈なんですが?》」

 

 なるほど、ベイリーフがなんかお芝居みたいな事を言うと思ったら、先週アタシと一緒に見た恋愛ドラマのワンシーンを参考にしたのね。

 でもあのドラマは今週の放送で男が自殺したじゃない、そもそも参考にする事自体間違ってると思うよ?

 

「メノノ♪ メノノ、メノノォ《次はワタクシの番ですわぁ♪ さぁ覚悟しなさい、ワタクシはベイリーフほど甘くはないですわよぉ》」

 

「……ベイ、ベイ《……やり過ぎないで下さいね、メノクラゲ》」

 

「バ、バタ《お、お願いします》」

 

 次はメノクラゲね、バタフリー震えながらもゴールドの背中から離れたわ。

 あれだけ怖がってるのにそれでも逃げないバタフリーは素直にスゴイと思う。

 

「メノメノ、メェ♪《さぁスパルタでいきますわよぉ、それぇ♪》」

 

 メノクラゲは初っ端から『からみつく』でバタフリーを拘束する。

 って、アタシは話してほしいとは言ったたけどバトルしてとは言ってないよ!?

 

「フリィィィ!!!《ぎぁぁぁぁ!!!》」

 

「メェ♡ メノ、メノノ〜♪《あぁ良い悲鳴♡ ほらほら、早く振りほどかないとドンドン痛くしますわよ〜♪》」

 

「ベイ! ベイベイ!《メノクラゲ! やり過ぎないでって言ったでしょ!》」

 

「メノ、メノノ♪《大丈夫ですわよ、まだ(・・)手加減してますから♪》」

 

「フリ! フリーッ!! フリーーッッ!!!《助けて! マジで助けてーッ!! 触手がヤバイとこに食い込んでるーーッッ!!!》」

 

 叫ぶバタフリー、それを喜んで虐めるメノクラゲ、それに怒るベイリーフ、そして止めて良いか分からなくてただ見守るだけのアタシとゴールド。

 

 結局、『からみつく』はバタフリーのかんにん袋の緒が切れて『ねんりき』でメノクラゲを気絶させるまで続いた。

 おかげでバトルするだけなら問題無く出来るようになったけど、バトル以外では一層メスポケモンが苦手になったわ。

 バタフリーは今後もメスポケモンで苦労しそうね。

 

「バタァフ、リィィィ!!!《漢の戦いの道に女なんかいらねぇんだよ、バッキャロォォォ!!!》」

 

 その日の夕方に夕日に向かって、そう叫んでた彼の瞳に光るものが流れたのはアタシだけの秘密にしておくね。

 


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