オッス、俺ゴールド 〜ヤンデレ娘クリスとポケモンの世界で旅をする〜   作:友親 太一

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第二十七話 約束

【????】

 

 ……ここは、どこだ?

 

「……ちゃん、放課後どうする?」

 

 ここは、教室、なのか?

 

「ごめぇん、彼氏とデート行く約束しちゃった」

 

 俺は、辺りを見回す。

 学生服を着た、若い子達が、それぞれのグループで喋ってる。

 ……ここは、確か、俺が通ってた高校の教室。

 俺は、教室の隅に、いる、のか?

 

 ふと俺は自分の右手を見る。

 ……手の甲に大きなホクロ……これはゴールドには無い……前世の俺の手にあったホクロ。

 ……視点も高い。

 なら、この身体は前世の……なのか?

 

 これは、夢、前世の、夢なのか?

 

 ……学校か、懐かしいな。

 傷だらけの机、汚れが染み付いた壁、クーラーなんてハイテクな物は無く暑苦しい教室、クラスメイトがガヤガヤと雑談する空間。

 ……本当に懐かしい。

 

 確か俺が卒業して数年後に過疎化の影響で廃校になったんだったな。

 俺がいた頃も空き教室ばかりだった、よく友達と使ってない教室に入って授業をサボってたっけ。

 ……この学校に通ってたのは二十年ぐらい前なのにちゃんと覚えてるもんなんだな。

 

「コラ、※※君! 私を無視するな!」

 

 ……あぁ懐かしい、前世の俺の名だ。

 ごく普通の有り触れた、それでも親父から貰った大切な、俺の名前。

 

「私を無視するなといってるだろ!」

 

 コイツも懐かしい、高校の時に付き合ってた、俺の彼女だ。

 サラサラとしたショートの髪、少しキツめの瞳、俺と余り変わらない高めの身長、スカートから伸びる長い足、あぁ俺の記憶と何も違いがない。

 ……って、夢なんだから当たり前か。

 

「……※※君どうしたのよ、ぼーっとして熱でもあるの?」

 

 そう言いながら俺の額に自分の額を当てる彼女。

 ……そいや彼女は身長あるからキスする時は楽だったな。

 思えば前世で付き合った女性の中で、この彼女が一番思い出に残ってるのかもな、だからコイツが夢に出てきたのかも。

 

 この頃の俺は彼女に夢中だった。

 彼女と過ごす毎日がとても楽しかった。

 俺は彼女が大好きだったなぁ……まぁくだらないケンカが原因で卒業して直ぐに別れたがな。

 

「もぉ私を見なさい、ゴールド!」

 

 そうそう、少しでも返事をしないとすぐに俺を怒鳴っ…………ゴール、ド、だと?

 

 俺は彼女の顔をよく見る。

 

「アタシだけを見て、ゴールド」

 

 彼女の顔が……クリ、スに?

 

「アタシだけを」

 

「アタシだけを」

 

「アタシだけを」

 

「アタシだけを」

 

「アタシだけを」

 

 ……教室にいた他のクラスメイト達の顔もいつの間にかクリスになってる。

 クリス達の顔は暗く狂気の色に染まり、その口は耳まで裂け血のような真紅の色をしていた。

 

 クリスになったクラスメイト達は俺にゆっくり近づく。

 ……顔だけクリスで体が高校生ってのも変だな。

 

 近づいて来たクリス達は俺にしがみついていく。

 夢だからか、重さは感じない。

 気がつくと俺の周りには無数のクリスしかいない……教室は消え、暗い、何もない空間に、沢山のクリスと、俺だけ。

 

「ねぇゴールド、アタシだけを見て! 他の女を見ちゃイヤ! アタシだけが、アタシだけがゴールドの女よ! アタシだけを、アタシだけを、アタシだけを…………」

 

 正面にいた元カノの身体のクリスが俺の首に手を回して……俺に顔を近づける……まるでキスをするように。

 それを見た俺は……

 

「クスッ」

 

 思わず俺は小さく笑った。

 

「……ゴールド?」

 

 なんで笑ったの? って感じなんだなクリス。

 だってよ、

 

「……クリス、お前は馬鹿だろ。ゴールドは……俺は……ずっとクリスだけを見てるよ……あの日からずっとな」

 

 夢だから言える、俺の、嘘偽りの無い、本当の、真実の、気持ち。

 

「でも、ゴールドはアタシを受け入れてくれないじゃない! アタシはゴールドをこんなにも愛してるのに!」

 

 ……知ってるよ、ずっと前から。

 

「俺も愛してるよ」

 

 現実では絶対に言えない、短い言葉。

 

「だがそれは恋愛の『愛してる』ではなく、親子愛の方の『愛してる』だがな」

 

 ……周りが明るくなる。

 クリスは普段の姿のクリス一人になり、俺は……転生する直前の……二十九歳の俺の姿になる。

 

「……俺はなクリス、大人なんだよ。体が子供でも、本当の俺は大人なんだよ」

 

 せっかくの夢だ、言いたかった事を全部言ってしまえ。

 

「俺はお前を実の娘のように思ってる。お前の為なら死んでもいい。お前が幸せになれるならどんな事でもやってみせる。俺はお前が何よりも大切なんだ」

 

 ずっと大切だった、クリスが狂ってしまったあの時から、あれからずっとクリスを守ると決めてた。

 

「だったら、アタシを受け入れてよ!」

 

「……受け入れるさ」

 

 本当に恥ずかしいな、でも夢だし……言ってもいいよな。

 

「今のクリスは俺にとって娘だ。だが、いつか、クリスが心も体も大人になって、それでも俺を愛してるなら……俺と結婚しよう」

 

 まぁ、その頃には俺以外の男を好きになってるだろな、シルバー君とか。

 ……子供はいつか親から離れるものだから、少し寂しいけど仕方ない。

 

「……本当に?」

 

「あぁ本当だ!」

 

 いつの間にか俺の姿はゴールドに戻っていた。

 

「約束だよ、ゴールド」

 

「わかった、約束だ」

 

 俺は右手の小指を出す、クリスも右手の小指を出す。

 二人の指が絡まり強く結ばれる。

 ……不思議だがこの時のクリスの小指の感触はハッキリわかる、夢の筈なのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★☆★☆

 

 ハァイ、アタシはクリス。

 アタシが宿泊施設に帰ってきた時には深夜になってた。

 私達を待ちくたびれたゴールドはベットで無防備で寝てたの。

 だからアタシはゴールドのベットに潜り込んだの。

 もちろん、そのまま【放送できません】しようとした。

 そしたらゴールドが寝言で……

 

「クリスが…………大人になって……愛してる……俺と結婚しよう……zzz」

 

 ですって!

 ゴールドはアタシをちゃんと愛してたんだ♡

 ふへへへ♡♡

 

 そうよ、アタシが間違っていたのよ!

 愛する者同士は肉体の繋がりがなくても心が繋がってればそれでいいのよ!

 ゴールドはアタシが大人になるのを待ってる、それなのにアタシが焦ってはダメよ!

 

 ゴールド、アタシ大人になる。

 大人になってゴールドに相応しい女になるの!

 だから大人になったら体でも繋がってね♡

 

 アタシは指切りするためにゴールドと小指を絡める。

 そしたらゴールドから小指を強く結んでくれた!

 

 ゴールド、約束ね。

 アタシが大人になったら絶対に結婚してね。

 アタシは幸せに包まれたままゴールドに抱きついて眠る。

 

 おやすみゴールド、貴方を世界の誰よりも愛してます♡♡♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★☆★☆

 

 …………体が重い、なんでだ?

 確か俺は昨日クリス達が帰ってくるのが遅くて……そうだ、ベットで寝っ転がってるうちに寝てしまったんだ。

 俺の頭が急速に覚醒してくる。

 

 ……なんか、夢を見た気がするが思い出せない。

 懐かしいような、変な、恥ずかしい夢だった気がする……でも内容は思い出せないな。

 

 ん? 目の前に誰かの頭が……

 

「……ゴールドぉ……zzz」

 

 クリス!? 何でクリスが俺に抱きついて寝てるんだ!?

 

 俺は急いで自分のズボンを確認する。

 ……良かった、脱がされてない。

 何度も自分のズボンと下半身を触り確認する。

 どうやら俺の貞操は大丈夫だったみたいだ。

 ……だがクリスはなんでこんなチャンスを見逃したんだ?

 俺は明らかにスキだらけだったのに。

 

「……スゥ、スゥ」

 

 ……クリスは幸せそうに寝てるな。

 ……クリスも寝てる時は可愛いんだな。

 俺はクリスを起こさないように静かにベットから抜け出した。

 さぁて、少し朝の散歩でもするな!

 

 

 

 コラそこ! 現実逃避いうなや!


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