オッス、俺ゴールド 〜ヤンデレ娘クリスとポケモンの世界で旅をする〜 作:友親 太一
【つながりの洞窟】
オッス、俺ゴールド。
最近クリスが可笑しい。
いや違う、クリスが普通なんだ。
なんて言うか今までがいつ爆発するか分からん時限爆弾みたいな、あるいはブレーキの壊れたレーシングカーみたいな奴だったのに今は普通の女の子みたいなんだよ。
今日も、
「ねぇゴールド、手つないでいい?」
って俺に聞いてきた。
ありえねぇよ!
アイツは今までだと俺に許可なく、いきなり抱きついて匂い嗅ぎまくるってたのに。
なのに今日は俺に聞いてしかも手を繋ぐだけ!?
俺は自分の耳を疑ったわ!
……だが上目遣いで少し顔を赤くして言われたから思わず許可してしまった。
少し可愛いと思ってしまった自分が憎い。
だってよ、あんなクリスは初めてだったんだよ。
いや確かに俺はアイツを普通の女の子にしたかったがこんなにも突然変わると戸惑うわ!
いったいクリスの心境にどんな変化が……
「ねぇゴールドどうしたの? 難しい顔して?」
「いや少し考え事してただけだ」
「そうなの? ひょっとしてさっきのオジサンが言ってたこと?」
あぁ、それもあったな。
先程山男のオッサンとポケモンバトルした後にそのオッサンが、
「そう言えばこの前変な男に無理やりヤドンの尻尾を買わされてしまったよ。なーんかヤドンが可愛そうだね」
て言ってたな。
「ねぇそのシッポ売ってたのって……」
「……ほぼ間違いなくポケモンセンターの前に居た男だな」
あのシッポがヤドンのシッポだったんだ。
「ねぇゴールド、無理やりシッポ切られたヤドンって……痛かったよね?」
悲しそうに言うクリス。
俺も同じ気持ちだ。
「……次アイツを見付けたら必ず捕まえて警察に渡そう」
「うん、それが一番だよね……」
シリアスな雰囲気なったが俺はヤドンの事より……いやヤドンの事も気になるし気の毒だと思うが、それより【放送出来ません】を言わないクリスが気になる。
クリスはポケモンを大切にしない人間に容赦ない。
それこそ【放送出来ません】や【放送出来ません】や、酷い時は【放送出来ません】なんてザラ。
なのに今は全く暴言も吐かない。
不気味だ。
クリスが普通の女の子になったのに、俺の胃はストレスでキリキリと痛む。
……マジでクリスどうしたんだ!?
誰が知ってたら教えてくれ!
★☆★☆
【ヒワダタウン 〜人とポケモンが仲良く暮らす町〜】
昨日は夜遅くにヒワダタウンに着いたから町を見る事なくそのままポケモンセンターに直行した。
だから今日クリスと町を見て回ったんだ。
そしたらアッチコッチに黒い服着た怪しい連中がウジャウジャいやがる。
……こんだけ怪しいんだから誰か通報しろや。
「ゴールドこの怪しい人達は……」
「とりあえず町の人達に話を聞こう。まだコイツ等がヤドンのシッポを切った犯人とは限らないし」
……十中八九コイツ等が犯人だろうけどな。
色々聞いて回ったが何でも最近町にいたヤドンが一匹残らず居なくなったそうだ。
……やはりあのヤドンのシッポはこの町のヤドンのか。
酷い事しやがる。
だがヤドンを助けるのには情報が足りない。
明らかに黒い服の連中が怪しくても証拠が無けりゃ警察は逮捕できない。
何とかして証拠を見付けないと。
「……次はあの家か」
「そうね、えーっとココは……ガンテツさんの家ね。何でもモンスターボール作りの名人だそうよ」
モンスターボールって手作り出来たんだ、あれって機械じゃないのかな。
俺達はガンテツさんに家に入れてもらった。
ガンテツさん曰く、三年前に解散したロケット団が今回の事件の犯人。
で、そいつらがヤドンの井戸でヤドンのシッポを切って売り捌いてるらしい。
……ロケット団か、キキョウタウンで罪擦り付けてスンマセン、と心の中で謝罪しとく。
だが今回の事を許す気は無いからな!
話が終わるとガンテツさんは、いきなり立ち上がり、
「うぉーっ待ってろヤドン達! 漢ガンテツが助けたるぞ!」
そしてすごい勢いで家を出てった………
「……ガンテツさんがいっちゃった、ゴールドどうする?」
「いやどうするっつても……」
「うぇ~ん、おじいちゃんどこいったの……? あたしさみしいよ……うぇ~ん!」
ガンテツさんのお孫さんが泣いちゃった。
……仕方ない、やるしかないか。
「……お嬢ちゃん大丈夫だよ。お兄ちゃんとお姉ちゃんがお爺ちゃんを連れて帰ってくるからね」
「グスグス……本当?」
「本当だよ。つう事で勝手に決めたがクリスはどうする?」
「モチロンいくわ! ヤドン達を助けないとね!」
「うっし、んじゃ行くぞ!」
「お〜ッ!」
ヤドン達、今助けるぞ!
あとガンテツさんは俺達がいくまで無茶せんで下さいね。
★☆★☆
【ヤドンの井戸】
「イテテ……年はとりたくないのぉ。上で見張りしてた奴は大声で叱りとばしたから逃げよった。
じゃが儂、井戸から落ちてしもうて腰打って動けんのじゃ」
ガンテツさんは既に無茶した後でした。
幸い腰を痛めただけみたいだが一人では家には戻れそうもない。
さて、どうするかな?
「……ねぇゴールド。ゴールドがガンテツさんを家まで運んであげて」
「それはいいがクリスはどうするんだ?」
「アタシはヤドン達を助けにいくわ!」
「一人でか!? いくら何でも危険過ぎる!!」
いくらクリスが規格外といえど女の子を一人で残せるかよ!
「大丈夫だよ、ポケモン達もいるから一人じゃないしね♪ それよりガンテツを早く連れてって。
アタシとアタシのポケモン達だと力が弱くてガンテツさんを運べないの。だからゴールドよろしくね」
「……絶対無理するなよ。ガンテツさんを送り届けたら直ぐに戻るかな!」
俺はイシツブテとマグマラシをボールから出した。
マグマラシにガンテツさんを乗せ俺とイシツブテがガンテツさんの横から支える形で運ぶ。
……早く戻って来ないと。
俺は内心焦りながらも丁寧にガンテツさんを家まで運んだ。
★☆★★
……ゴールドはいったわ。
もう感情をおさえる必要はない。
アタシの怒りでゆがんだ顔をゴールドに見られる心配はない。
多分、今アタシはヒドい顔してるだろう。
コレをゴールドに見られるのはイヤ。
だがゴールドは今はいない。
待ってなさい
罪の無いヤドンのシッポを切り落としたお前たちを一匹残らず始末してやる。
地獄よりも恐ろしい生き地獄を味わいなさい。
害虫駆除開始よ!!