オッス、俺ゴールド 〜ヤンデレ娘クリスとポケモンの世界で旅をする〜 作:友親 太一
「出番だ、マグマラシ!」
「まっぐ~!」
「羽ばたけ、ピジョン!」
「ピージョン!」
俺の二匹目のポケモンはマグマラシ、そしてハヤトさんはピジョン。
これに勝てたらバッチが手に入ると思うと否応無しに気合が入るな。
「ゴールド君、さっきのお返しだよ、『でんこうせっか』!」
「しまった!?」
余計な事考えてるスキに先手を取られた。
マグマラシは『でんこうせっか』が当たってその衝撃で二転三転と転がり壁際まで押し込まれた。
……すまないマグマラシ、俺のせいだ。
「次いくよ、『どろかけ』!」
「避けろマグマラシ!」
だが壁際故に逃げ道は無くピジョンが上空から急降下し、地面の泥を巻き上げマグマラシにぶつけた。
「まぐ~!?」
マグマラシは泥だらけになり非常に嫌そうにしてる。
「ふふふ、どうだい 攻撃しながら相手の命中率を下げる『どろかけ』の威力は。しかも『どろかけ』は地面タイプの技、炎タイプのマグマラシには効果抜群だよ」
一石二鳥ってか、鳥ポケモンだけに。
……て、冗談言ってる場合じゃねぇ。
さてどうする…………無理矢理でも突破する以外ないんだから悩むだけ無駄か。
「マグマラシ、『ひのこ』だ!」
「まっぐ~!!」
「ピジョン、『かぜおこし』!」
「ピジョーン!」
『ひのこ』と『かぜおこし』がぶつかりお互いを相殺する。
「まだまだぁ! マグマラシ、『たいあたり』!」
「まぐまっぐ~~!」
「ならこちらも『たいあたり』だ!」
マグマラシとピジョンは物凄い勢いで距離を詰め……
「……ふっ」
ハヤトさんが……笑った!?
あーっ!
マグマラシがよろけた!!
ピジョンはその一瞬を見逃さずマグマラシの上から『たいあたり』を決めた。
……『どろかけ』の泥がマグマラシの足を滑らしたのか。
「トドメだよ、『かぜおこし』!」
「マグマラシーッ!!」
……ちくしょう……負けたか……だが次はバタフリーを出して………
「まっぐ~!!!」
「えっ!?」
「ピッ!?」
……マグマラシが!? ……って驚いてる場合じゃねぇ!
「マグマラシ、『たいあたり』だ!」
マグマラシの『たいあたり』は呆然としてたピジョンの腹部にドスンと当たりピジョンをぶっ飛ばした。
「ピジョンが!?」
「ピージョ!?」
……でもどうして、マグマラシの体力は確かに尽きた筈なのに……
……ポリポリ
ん、 何の音?
「モグモグ……ぅまっぐ~♪」
……ポリポリ
……まさかマグマラシの奴、昼飯にあげた木の実をヘソクリにして持ち歩いていたんか!?
「……なるほど。やられたフリして持たせてた木の実で回復してたのか、完全に騙されたよゴールド君」
いえ違います、マグマラシが食い意地張ってただけです。
……アイツは木の実好きだからな、大方おやつに食べるつもりだったんだろな。
だが今回はその食い意地に感謝しないと。
「……おやつの時間は終わり、次は反撃の時間だ! マグマラシ、全力で『えんまく』だ!」
「まっぐぅ!!」
フィールド全体を煙が覆い隠す。
煙がピジョンを、そしてマグマラシも見えなくした。
「ちっ! だがこれではゴールド君もピジョンの場所が分からないぞ?」
「……別に俺が分かる必要は無いんですよ。マグマラシ、木の実の匂いがする方に『ひのこ』だ!」
「なんだと!?」
一瞬だが俺は見た、ピジョンの腹には『たいあたり』の時にマグマラシの口から飛び出した木の実の欠片が絡み着いてるのを。
……そして木の実大好きっ子のマグマラシはその匂いを確実に嗅ぎ分ける!
「まっぐ~〜っ!」
俺からは何も見えない……でも、俺は信じてる……アイツは……マグマラシは……十キロ先の木の実の匂いが分かるほどの食欲魔獣だから!
……煙が晴れてきた。
「ピジョン、大丈夫か!?」
「ピジョーン!?」
ピジョンの翼に『ひのこ』の火が燃え移ってる……ピジョンは火傷状態だ。
「決めろマグマラシ、『ひのこ』だ!」
「まっぐ~〜まっ!!」
「かわせピジョン!」
「ピッジョン!!」
だが遅い!
『ひのこ』を避けきれず、ピジョンはそのまま戦闘不能になる。
「やったぞ! マグマラシ!」
「まぐ~♪」
俺達の勝ちだ!
「……やられたよゴールド君、おめでとう」
そう言うとハヤトさんは近づいて来てそっと右手を出してきた。
俺も右手を出し握手する。
ふと横を見るとマグマラシも倒れてるピジョンに近づき……
パクッ!
……ピジョンに付いてた木の実の欠片を口に入れた。
「ポリポリ……ぅまっぐ~♪」
……それを見ていた俺とハヤトさんは何とも言えない気持ちになった……あぁ、穴があったら入りたい。
「……」
「……」
俺達は黙ってモンスターボールにポケモンを戻す。
「……ウォッフォン! とにかく、おめでとうゴールド君。これはウイングバッチだ受け取ってくれ。あとこの技マシンもあげよう」
「あ、ありがとうございます」
……良くこの空気を無理矢理変えたなハヤトさんは。
「おめでとう〜ゴールド♡」
「うわっと! 抱きつくなクリス!」
いきなり背中に抱き着いたら危ないだろが!
「おやおや、お熱いねお二人さん♪」
「だから違うって!」
俺達は……
「いやーナイスファイト、おめでとう」
げっ! 受付のメガネ、何しに来やがった。
「僕には一目見たときから分かってたよ、君ならやってくれるって」
よく言うな、人を小馬鹿にしたくせに!
「やっぱり僕のアドバイスが良かったからかな? いや、お礼はいいんだよ。僕はとうぜ………イッ゛!!」
ん? どうしたんだ? 男がいきなり腹を抑えだして……
「イッ゛、イ゛デデデデデデ!! は、腹がぁ………」
「大丈夫か!?」
……ま・さ・か……俺はそっと背中のクリスの顔を見た。
……クリスの顔は……ゲンガーみたいなドス黒い笑顔だった。
「……ハヤトさんコレ使ってください、胃薬と毒消しです」
「あ、ありがとう」
「では俺達は先を急ぎますので」
そう言い終わると俺はクリスをおんぶしたまま走ってジムを抜け出そうとした。
……この馬鹿娘、ついにやりやがったな!
絶対この後説教してやるからな!
「イ゛デーーーッッ!! し、死ぬーーー!!!」
「誰か救急車を呼んでくれー!!」
だが今はジムを離れるのが優先。
チクショー、何で勝ったのに逃げなかんのだ!?
クリス、今日という今日は徹底的にお仕置きだからな!!!
こうして俺の初のジム戦は勝ったのに何故か逃げ帰る形で幕を閉じた。
「イ゛デッッッーーー!!!」
……幕を閉じたって言ったから幕を閉じたんだよ、コンチクショー!