オッス、俺ゴールド 〜ヤンデレ娘クリスとポケモンの世界で旅をする〜   作:友親 太一

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第十話 クリス対長老 その二

 まずは一勝、次もこの勢いで勝ってみせるわ!

 

「お願い力を貸して、バタフリー!」

 

「フリィィ!」

 

「修練の成果を見せよ、ホーホー!」

 

「ホー!」

 

 長老さんが繰り出したポケモンはホーホー。

 対するアタシはゴールドに借りたバタフリーよ。

 ……本当は長老さんはマダツボミを使う可能性が高いからマグマラシを借りたほうが絶対に有利なのは分かってる。

 でもアタシはあえてバタフリーを借りた。

 この子は虫タイプのポケモンだけど虫タイプの技を覚えてないしゴールドの手持ちポケモンの中では一番レベルが低い。

 

 ……シルバーはマダツボミと相性が悪いワニノコで長老さんを倒した。

 なのにアタシがゴールドのエースポケモンのマグマラシで戦ってもシルバーとアタシの力の差は分からない。

 ゴールドは不思議そうな顔をしてたけど何も言わずにバタフリーを貸してくれたわ。

 

 予想とは少し違う形になったけど飛行タイプのホーホーと虫タイプのバタフリーとの対戦、相性的にはこちらが不利。

 これならシルバーの戦いと近い状態で戦えるわ。

 

「バタフリー、『ねんりき』よ!」

 

「ホーホー、『つつく』じゃ!」

 

 いきなり飛行タイプの技を!?

 

「『ねんりき』中断、『かたくなる』で受けて!」

 

 ギリギリで『かたくなる』が間に合ってダメージを減らせたわ。

 ……あぶなかった、弱点の飛行タイプの技をあのまま受けてたら防御力の低いバタフリーだとそのまま一撃戦闘不能もあり得た。

 

「受け切ったか、なら連続で『つつく』」

 

 くっ、冗談じゃないわ!

 いくら『かたくなる』で防御力が上がっても連続で受けたら持たない!

 

「バタフリー、ジグザグに避けてかく乱して!」

 

 これなら……

 

「……甘い。ホーホーよ、『みきり』じゃ」

 

「ウソ!?」

 

 あれじゃ避けれない!

 

「……そして『つつく』」

 

「バタフリー!?」

 

 バタフリーは『つつく』を受けて床に叩きつけられた。

 

「バタフリー、大丈夫!?」

 

「……バタ、フ、リィ……」

 

 よかった、まだバタフリーは倒れてない。

 ……でもバタフリーの体力の残りは少ない。

 

「……バタフリーいける?」

 

「バタフリィィ!!」

 

 大きく頷いてバタフリーはアタシにまだ戦えることをアピールする。

 ……負けず嫌いなのはゴールドに似たのかしら、ゴールドも結構負けず嫌いだしね。

 

「……ありがとう。いくわよバタフリー、やられっぱなしで終われないんだからね!」

 

「フリィィ!!」

 

「……その心意気やよし。だが心意気だけでは勝てぬぞ? ホーホーよ、もう一度『つつく』」

 

「ホー!」

 

「バタフリー、『いとをはく』をしながらホーホーの周りを旋回!」

 

「何?」

 

 バタフリーはホーホーの攻撃より早く『いとをはく』を当ててそのままホーホーを中心に円を書くように飛ぶ。

 

「いっけー! そのままホーホーを糸でグルグル巻にしちゃえ!」

 

「フリィィ!!」

 

 あの子の『いとをはく』の凄さはアタシ自身が食らってよーく分かってる。

 ましてやアタシが食らったときはトランセル、今はバタフリー、威力はあの時より上よ!

 

 みるみるうちにホーホーはまるで毛糸玉みたいに真ん丸になったわ。

 

「さっきのお返しよ、『ねんりき』で連続で床に叩きつけなさい!」

 

「フゥリィィ!」

 

「いかん……」

 

 ドスン、ドスン、と何度も『ねんりき』で叩きつけるバタフリー、だがその衝撃で糸が緩みホーホーが開放された。

 

「トドメよ、『たいあたり』!」

 

「避けよホーホー」

 

 だがホーホーの動きは遅い、ホーホーの翼にはまだ糸が絡みついてるから上手く飛べないのね。

 

 避けようとしたホーホーの背中に『たいあたり』が決まり、そしてそのままホーホーは戦闘不能。

 

「やったわ!」

 

「フリィィ!」

 

 アタシとバタフリーは、ほぼ同時に声を上げた。

 

「……まさか、あそこからあの様な手段で逆転するとは……少し気が緩んでたか、ワシもまだまだ未熟よ」

 

 そう言いながらホーホーをボールに戻す長老さん。

 ……今回はかなりギリギリの戦いだった。

 ……一歩間違えてたらアタシ達が負けてた。

 この人、ゴールドが戦ってたお弟子さん達よりずっと強いわ。

 

「……次で最後、覚悟は決まったか?」

 

「覚悟なんて、はじめから決めてるわ!」

 

 アタシはバタフリーを回収しながら言い放つ。

 ……バタフリーはダメージを受け過ぎてもう戦えそうにないわ。

 ありがとうバタフリー、無理させてゴメンね。

 

「出ておいで、チコリータ!」

 

「チコ!」

 

「構えよ、マダツボミ!」

 

「……つぅぼぉ……」

 

 な、なによ、あのマダツボミは!?

 見た目は普通のマダツボミなのに纏ってる空気がなんか違う。

 最初に戦ったマダツボミともゴールドがここまで倒してきたマダツボミとも違う。

 ……気を引き締めないと、あの子は強いわ。

 

「ほう、一目でコヤツの強さを理解したか」

 

 このバトルが始まって初めて長老さんの表情が変わった。

 ……だが、その表情は獲物を見つけた獣の様な鋭い笑顔……あなたの本性はそっちなの?

 

「こちらから行くぞ! 『つるのムチ』!」

 

 またそれ? ならこちらも……

 ……一瞬ゾワッと背中が冷えた気がした……

 

「チコリータ避けて!」

 

「チコ!」

 

 チコリータの避けた後に遅れて『つるのムチ』が床を叩き………え、床にヒビをいれた!?

 なんて威力、もし当たってたら仮に『リフレクター』を使っても受けきれなかったかも。

 

「……勘のよい子じゃ」

 

「く、チコリータ、攻めて攻めて攻めまくるのよ! 『はっぱカッター』!」

 

「チッコー!」

 

 あのマダツボミに攻撃させてはダメ、こちらが攻め続けて攻撃させてるスキを与えないようにしないと。

 

「……ふむ、ならチコリータに近づくのじゃ」

 

「……つぅ、ぼぉ、みぃ……」

 

 ……ウソ!?

 マダツボミはゆったりとした動きで『はっぱカッター』の嵐の中を進んでくる。

 幾つかは当たってるけどそれはかする程度。

 ……あのマダツボミ、最小限のダメージで『はっぱカッター』を避けて間合いを詰めてくる。

 

「……マダツボミ、『まきつく』!」

 

「……つぅぼぉぉ」

 

「チコ!?」

 

 マダツボミのツタがチコリータに複雑に絡みついた。

 

「振りほどいてチコリータ!」

 

「……無駄じゃよ、それはただの『まきつく』ではない。蔦の一つ一つが関節を完全に固める特別な『まきつく』、長年の修練の賜物よ」

 

 それって『まきつく』で関節技してるって事!?

 そんなの聞いたことないわよ!

 

「……チ、コ……」

 

 まずいわ、チコリータは初戦で受けたダメージが残ってる。

 それなのにこの『まきつく』を受け続けるのは危険だわ!

 ……仕方ない、もう少し取っておくつもりだったけど。

 

「チコリータ、『どくのこな』よ!」

 

「何じゃと!?」

 

 超至近距離で受けたマダツボミは毒状態になる。

 

「……つぅぼ!?」

 

 そして毒の苦しさで『まきつく』を緩めた。

 

「今よ、抜け出しなさいチコリータ!」

 

「チコー!!」

 

 脱出成功、やったわ!

 

「……いつ、『どくのこな』を覚えた?」

 

「ついさっきよ! 最初のマダツボミとのバトルが終わった時に覚えたのよ」

 

 運が良かったわ。

 もし『どくのこな』を覚えてなかったら負けてた。

 

「チコリータ、『はっぱカッター』!」

 

「避けよマダツボミ!」

 

 それは読んでたわ!

 

「そのまま『たいあたり』!」

 

『はっぱカッター』は囮よ、ホントはこっちが本命!

『はっぱカッター』に気を取られてたマダツボミは、『たいあたり』を避けれずモロに当たり態勢を崩す。

 

「いっけー! もう一度 『はっぱカッター』!」

 

「チィコー!!」

 

 今度こそ避け……

 

「マダツボミ、『こらえる』」

 

 ……えっ?

 

 『はっぱカッター』が終わるとそこにはマダツボミが傷つきながらも立っていた。

 ……この二人、本当に強いわ。

 

「……少々焦ったぞ……」

 

 ……でもね、

 

「忘れてない?  マダツボミは毒状態なのよ」

 

「……しまった!?」

 

「……つ……ぼ……」

 

 辛うじて立っていたマダツボミは毒のダメージを受けて床に倒れた。

 ……勝った!

 

「やったわ、チコリータ!」

 

「チコチコ♪」

 

 チコリータと抱き合って喜び合う。

 ……本当に強敵だった、長老さんは本当に強かったわ。

 

「……ふむ、見事であった。こちらの一瞬の隙を見逃さない洞察力、他人のポケモンとも築ける信頼関係、なによりどれだけ追い詰められても諦めない心……本当に見事であった。

 お主たちにマダツボミの塔の修行を終えた証としてこの秘伝マシンを与える」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「よくやったなクリス」

 

 アタシが秘伝マシンを受け取るとゴールドがアタシの頭を撫でてくれた。

 ……ゴールドの手はすごく暖かくて、すごく気持ちいい、幸せ♡

 

「さぁ次はキキョウジムだ、行くぞ!」

 

「え、ちょっと置いてかないでよ!」

 

 もう少し撫でて欲しかったのにぃ。

 

「……すいません、アタシ達はいきますね」

 

「ふむ、精進するのじゃよ」

 

 アタシは軽くお辞儀をしてチコリータを抱えてゴールドを追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 ★☆★☆

 

「……変わった子達であった……」

 

 今日会った子達は三人が三人とも興味深い子達じゃった。

 

 最初の長髪の少年の瞳は孤独の色で染まってた。

 それは自分のポケモンですら信じておらん悲しい色をしてた。

 だが、それとは別に強さに対する執念も感じた。

 ……いつか、あの少年が孤独から開放される日が来るのだろうか。

 

 帽子の少年の瞳は長髪の少年とは逆に愛情の優しい色に染まっておった。

 だが奇妙なのは同じくらいの歳であろう少女にまるで親が我が子に向けるような視線で見ておった。

 あの歳であれ程の父性を持つとは、あの子はまるで成熟した大人の様な、本当に奇天烈な少年だった。

 

 そして……最後の少女の瞳は……強い……強すぎる憎悪の色で染まってた。

 この世のすべてを憎むような、そんな危険な色であった。

 だが、少女はポケモンと帽子の少年と接する時に暗い色は薄まり明るい愛の色に変わる。

 ……あの少女を救えるのは帽子の少年とポケモン達しか居らんじゃろ、願わくばあの少女の憎しみが晴れんことを。

 

 ……三人が三人とも歳相応とは言い難い感情を持っていた、それと同時にトレーナーとしての才能も。

 彼らがいずれポケモントレーナーの未来を担ぐ日が来るやもしれんな。

 

 彼らの旅が実り多い物であるようにワシはここで祈るとするか。

 


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