「魔将召喚」
デミウルゴスは50時間に一度しか使えないスキルを使用して、レベル80の魔将を召喚する。
「最終戦争・悪」
更に召喚の魔法を3回使い、大量の悪魔を召喚。時間稼ぎが目的なので、数を揃えることを重視して、レベル10の悪魔を100体以上用意する。
「魔法抵抗難度強化」
シャルティアは分身を産み出し自身にバフをかける。アインズはアルベドにバフをかけ、そして準備は完了した。
「準備はよいか?……よし、行け!!」
アインズの合図と共に一斉に偽姉に向かって進行する。その勢力に対し、偽姉がワールドエネミーの光属性魔法を発動、一撃でほぼ全ての悪魔が消失させられる。
「うおおおお!!!」
しかしそれは計算の範疇。召喚した中で残った唯一の悪魔、魔将が偽姉に切りかかった。
「獣王牙操断!!」
そこでリナが魔術を放った。偽姉はそれに反応、魔将を即座に切り捨て、魔術を迎撃しようとするが、そこで分身と共にシャルティアが飛び掛かる。
「御方の邪魔をする不敬。断罪に値するでありんす!!」
シャルティアが攻撃している内に、リナは獣王牙操断の軌道を操作し、偽姉を迂回し、鏡に向かわせた。しかし魔力の弾が鏡にぶつかろうとした瞬間、鏡の周囲に魔力の結界が発生し、弾を消滅させた。
「やっぱ、そう簡単には行かないわね!!」
偽姉を産み出す程の高度な技術で作られた遺跡だ。当然、その程度の防壁は予測済み。リナは翔封界を使って、鏡に接近。しかしそこで偽姉がシャルティアの分身を切り捨て、本体を弾き飛ばす。
「はあっ!!!!」
そこで入れ替わりにアルベドが突っ込む。今なら刃はシャルティアに向けられ、自分の攻撃は防げない。アルベドはそう確信するが、彼女がふるった一撃を偽姉は素手で掴んで見せた。
「んなっ!?」
アルベドはタンクタイプ、防御や耐久力に多くステータスをふっているため、レベル100としてパワーもスピードもかなり低い。それにしても素手で武器を止められるとは予想しておらず、一瞬硬直してしまう。
「えっ、きゃあああ」
そしてルナは掴んだ武器ごとアルベドを持ち上げ、ぶん投げた。壁に叩きつけられた所で、ダメージはたいして無いが、予想を超えた事態に思わず悲鳴をあげてしまう。
「これはとんでもないですね。まさかこれほどまでの怪物が存在するとは」
その光景に流石に冷や汗をたらすデミウルゴス。しかしそれで臆することは無い。主の為に身を張ることこそ下僕の本懐とばかりに偽姉に挑む。
「悪魔の諸相:豪魔の巨腕!!」
腕を巨大化させて殴りかかる。仮にも戦闘タイプのアルベドの攻撃を余裕で防ぐ相手に、自分の攻撃が通じるとは最初から思っていないデミウルゴス。予想通りに、その腕は偽姉によって切り裂かれ、更に叩きのめされるが、そのタイミングでアインズの援護が入る。
「万雷の撃滅!!」
タイミングよく放たれた高速の雷撃が偽姉に直撃する。
そしてそれとほぼ同じタイミングで、リナが翔封界を解除しする。目標物、鏡までの残りの距離を足で駆け寄りながら、呪文を詠唱する。
「―悪夢の王の一片よ 世界のいましめ解き放たれし」
それに気付いた偽姉が超高速で距離を詰め、リナに飛び掛かろうとした。
「!!」
しかしそこで、シャルティアとアルベドが同時に飛び掛かって、それを阻もうとする。無論、彼女達はリナなど助けたくないが、リナを支援するのが主の命なので仕方が無い。しかし二人同時にかかったにも関わらず、偽姉のふるった剣で弾き飛ばされる。
「がああああ!!!」
だが、大きく吹き飛ばされたのはシャルティアだけ。防御力の高いアルベドは鎧を破壊されるだけで堪えて見せた。そして必死なあまり、顔芸とも呼べる程に凶悪な表情を浮かべたアルベドは、その表情のまま再度飛び掛かってみせた。
「!!」
それに対し、偽姉はアルベドの心臓めがけて突きを放つ。このままいけば形の上では相打ち。しかし攻撃力の差からアルベドだけが死ぬ状況であった。
「心臓掌握」
そこでアインズの魔法が入り、アルベドの命を救う。グラスプ・ハートは心臓を握り潰し即死させる魔法だが、抵抗された場合でも朦朧状態になる追加効果がある魔法だ。心臓自体が存在しない魔族には効果が無いが、偽姉には有効だった。一瞬とはいえ、動きを鈍らせ、そのタイミングでアルベドの攻撃が炸裂。吹っ飛ぶ偽姉。
そしてそれが勝敗を決定させた。
「神々の魂すらも打ち砕き 神滅斬!!!!」
リナの一撃が結界ごと鏡を切り裂き、そして予想通りに偽姉は光の粒子となって消滅するのだった。
「アインズ様」
「ああ、よくやったぞ。アルベド」
「あっ、ああああああ」
戦いが終わり、賞賛の言葉をかけるアインズ。その言葉にアルベドは感極まり、同時に気力が尽きたのか気絶した。ちなみにシャルティアとデミウルゴスは戦闘中に既に気を失っている。
「ふぅ、なんとか勝てたわね」
「ええ、しかし、本当にとんでもない人ですね。リナさんのお姉さんは。絶対に敵に回したくないです」
偽姉の使ったワールド・エネミーのスキルはオリジナルと大体同じ位だった。そこから、偽姉は2つの存在の力をあわせもっていただけで、強さを加算するようなことはされていなかったということが想像できる。つまり、身体能力もろもろはオリジナルと同じということだ。
(耐性についてはつけ入る隙ができるかもだけど、それでもまともにやったら絶対勝てる気がしない)
その強さに身震いを覚えるアインズ。加えて、強さを抜きにしても、リナの姉と本気で敵対するような状況はリナ達とも敵対するということ。折角、友人になったリナ達とも仲たがいするリスクも含め、間違っても敵対しないようにしよう、っと、いうかできれば関わりあいたくないと心の中で誓う。
一方、リナの興味は遺跡内の宝に移っていた。
「さてと、それじゃあ、お待ちかねのお宝タイムね。これだけの守りがあるってことは、さぞ・・・」
「おーい、リナァァァ!!!!」
そこでアルベド達がやってきた方とは逆の通路から5人の存在が新たに現れる。それはリナの仲間達だった。
「ガウリイ、遅いわよ。もうっちょっと早く来なさいよ」
「まったく、行き成り文句か。これでも急いでお前を探していたんだぞ」
最初に声をかけてきたガウリイ。リナの悪態に不満の表情を浮かべたゼルガディス。そして残りの3人にアインズが挨拶をする。
「お久しぶりです。アメリアさん、ルークさん、ミリーナさん」
「んっ、おう、アインズじゃねえか。こんなとこで会うなんて奇遇だな」
アインズに対し軽口で答える黒髪の男、ルーク。久しぶりの再会に話も弾もうとしたその時だった。
「ボウエイキコウノハカイヲカクニン。トウシセツハキミツホジノタメゴフンゴニジバクシマス」
「へっ?」
「えっ?」
それと同時にシャッターのようなものが奥の道を塞ぐ。特殊な金属で明らかに簡単に破壊できそうには見えない。 神滅斬なら勿論別だが、残りの魔力でもう一度使うのは不可能である。
そしてカウントダウンが鳴り響く。
「ぜ、全員退避!!!!!! あっちで倒れてるシャルティアとデミウルゴスを回収して!!!!」
倒れているNPCを抱きかかえ、残りの全員が協力し全力で脱出をはかる。
その後、何とか魔法が使えるエリアまで退避し、そこからアインズの転移魔法で安全圏まで避難した一行だったが、遺跡は跡形もなく吹っ飛び、結局何も得ることができないのであった。
更にその後。
「おーほっほっほっ。アインズ様は私を庇ってくださった上に、抱きかかえて運んでくださったのよ」
「ぐっ、ぐぅ。気絶していて、記憶に無い癖に」
遺跡から脱出する際、アルベドはアインズが抱きかかえ、他の2人はリナと仲間達が運んだ。その人選は位置関係の都合上で、特に深い意味は無いというか気にしている余裕がなかったのだが、起こった事実に対し優越感をみせるアルベドと悔しがるシャルティア。
「記憶になくても、事実に代わりないわ!!あー、アインズ様にお姫様抱っこされる私」
「やめないか。それよりも我々は主の手を煩わせてしまったことを反省すべきではないのかね?」
一方、今回の失態の数々を恥じるデミウルゴス。それに対し、アインズが本心からのフォローをする。
「いや、その必要は無い。今回は皆、よくやってくれた。強敵相手に見事な活躍、連携を見せてくれた。今日のお前たちはウルベルトさん達にも匹敵する戦いぶりだったぞ。命賭けの戦いではあったが、昔を思い出し楽し……いや、高揚感を感じた位だ」
「あ、アインズ様……」
ウルベルトに匹敵、最上級どころではない誉め言葉に感極まる、いや最早言葉では表現できないレベルで喜ぶデミウルゴス。先程まで喧嘩していたアルベドとシャルティアもそれを止めて喜びを露わにした。
そしてそんな彼らに更なる朗報が訪れた。
コキュートスがその報せを持って駆け込んでくる。
「アインズサマ、ヘロヘロサマガキカンサレマシタ!!!」
「なっ、なんだと!?」
特大の吉報に驚愕するアインズ。
そして更に現れる闖入者。一緒に奇抜なファッションの女性とアウラがその場に現れる。
「おーほっほっほっ、この白蛇のナーガが、迷子のへろへろさんをお家にまで案内してあげたわよ」
「あーもう、待機していてって言ったじゃないのよ!!」
ナザリックの中で傍若無人に動こうとするも、主の超恩人であるため、強く窘めることもできずにイラつくアウラ。
そしてその二人の人物を追って、話題の人物が現れた。それは緑色の軟体生物、まぎれもなくヘロヘロであった。
「あのー、お久しぶりですモモンガさん」
「へろへろさん!!」
「実はあの、ユグドラシルの最後の日、最後にモモンガさんが何か言おうとしてましたよね。それが気になってもう一回ログインしようとしたんですけど、ログアウトした後、寝ちゃってたみたいで。インしたのはサービス終了ギリギリで、そしたら何か色々バグが起きちゃったみたいで……。後、その関係で、弱体化しちゃったりもしてるんですけど……また、仲間に入れてもらえますか?」
申し訳なさそうな感じでこれまであった概要を説明し、そして最後に「また、仲良くしたい」というヘロヘロ。そしてその答えは決まっていた。
「勿論ですよ!!それからNPCの皆やこっちで出来た友達のこと、へろへろさんに紹介しますね」
「はは、私も一杯仲良くなった人いますよ。皆、変な人でしたけど、でも面白くていい人達です」
そして久しぶりに再会した友人は互いに笑いあうのだった。
最後はアインズさん、いやモモンガさんにとって最高のハッピーエンドでした。
今回で書きたいことはほぼ書ききったので、多分、今度こそ完全完結だと思います。
応援いただいた皆様、ありがとうございました。
補足
帰還したへろへろさん:バグによりスキルの大半、特に全てのパッシブスキルが使えなくなっている。スライム自体、パッシブスキルが頼りの生物なので、それにより超弱体化。しかし基本スペックの高さから、スレイヤーズ世界基準ではまあまあの強者。ナーガと出会い、1年以上一緒に旅していた。旅の途中ですぺしゃるにでてくる色々な連中と出会っており、何だかんだでエンジョイしていた。
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