この話でまた一旦完結ですが、アイディアだけはポコポコあるので、参考までにアンケートを募集しますので回答いただけると嬉しいです。
切り落とされた右腕が落ちる。
それにより一瞬パニックに陥るが、混乱が一定レベルを超えたことにより、精神鎮静が発動。そのおかげでモモンは冷静さを取り戻す。
そしてそれにより、相手を冷静に観察する余裕が産まれる。
(これは……バーサーカー化してるのか? 原因は恐らく、先程までは持っていなかった剣、呪いの装備か?)
つい先程まで、表面上とは言え仲良く冒険していた相手が、いきなり襲い掛かってきたと言う異常な状況。その目が明らかに正気を失っていること、更に見慣れない不思議な光を放つ、明らかに魔法装備な武器を持っていること。
そう言った情報から現在の状況を推察するモモン。
(恐らくは装備した相手を暴走させるアイテム。しかも先程の動き、不意打ちだったとは言え、太刀筋が全く見えなかった。恐らくは所有者を強化する効果も兼ね揃えているってところか)
モモンの推測はほぼ当たっていた。レミーが持っている剣の銘は斬妖剣(ブラスト・ソード)、嘗て対魔族用に量産され、伝説にまで語られた剣である。現在ではそのほとんどが破壊されてしまったが、僅かに残った内の一本がこの遺跡に保管されていたのだ。
しかしここで注意すべきことがある。量産と言っても、現在のように機械でほぼ同一ものが自動的に生産される訳ではないと言うことだ。確立された製法をもとに、鍛冶師と技術者が繰り返し製造することで量産する訳だが、クリエイターと言うのは基本的に自己主張が強い人種である。決められたものをそのまま作るのでは無く、自分達の独自性を入れようとした奴等がでてきたのだ。
その結果、あるものは剣の切れ味を極限まで高めることに注力し、またあるものは無駄な装飾を付けて、剣を飾り立てると言ったカスタムブラスト・ソードとでも呼べるものが数多く生まれることとなった。
そしてこの遺跡に保管されていた剣には使用者の潜在能力を最大限に解放する効果が付与されていたのである。その説明だけ聞くと、何の問題も無いように感じるかもしれない。しかし、これは欠陥品だった。潜在能力の解放と共に、理性までも解き放ち、使用者の欲望や闘争本能を増大させてしまうと言う副作用があったのだ。
(さて、この状況、どうするか……。あれ? もしかして、これ詰んでる?)
冷静に考えるモモン。しかし、そうしたことで今の自分の状況の悪さに気づいてしまう。
目の前にはガウリイと同等かそれ以上にまでレベルを高め、伝説級、神器級に匹敵する程の切れ味を誇る剣を装備した剣士。
後方には魔法の効かない巨大生物。
どちらも、魔法詠唱者であるモモンガには極めて相性の悪い相手である。本来のスペックならまだしも、今のモモンの状態でこれらを一人で打倒することはほぼ不可能だ。しかも、片腕を落とされ、もう片方の手にはナーベを抱えている状態なので抵抗すら難しい。
戦うのは無謀。では、逃げるのはどうかと言うとそちらも手が無い。前にも後ろにも敵が居るため、物理的に走って逃げると言った手段は取れないし、帰還の魔法を使おうとすれば、そこで生じる隙を突かれて切り殺される可能性が高い。当然、モモンからアインズに戻る余裕も無い。
(レミーを短時間で倒すのも無理。追いかけてきてる自動兵器の方を倒すのも無理。逃げるのも無理。やばい、まじで手が無い!?)
絶望的な状況に何とか打開策を考えるが、それを思いつくよりも早く、しばらく鎮静を保っていたレミーが再び動き出す。抵抗するにはナーベを一度、投げ捨てるしか無いが、大切な仲間の残したNPCに対し、そのようなことをするのに躊躇する。
そして決断できない彼に向かって再び刃が迫った。
(あっ、終わった……)
この世界で死んだ場合、果たして自分はどうなるのであろうか。ゲームと同じように復活できるのか、元の世界に戻るのか、あるいは完全に死亡するのか。死に際の集中力でゆっくりと近づく剣を見ながらそんなことを考えるモモン。
しかし、その刃は彼に届くことはなかった。
「!?」
モモンとレミーの間に割って入り、彼を救うものが現れたのだ。
「わりい。遅れちまったな。大丈夫だったか?」
それは金髪碧眼の男、ガウリイだった。暴走するレミーを追いかけて来た彼の手には光輝く剣が握られている。その光の刃でレミーのブラスト・ソードを受け止めたのだ。
「あ、ああ。助かった。感謝する」
礼を言うとその場にゆっくりとナーベをおろし、代わりに切られた腕を拾う。
そしてアンデッドにも効果のあるレアな特殊回復アイテムを使用しそれをくっつけた。
ガウリイの参戦と回復、これで態勢は一気に立て直したと言えるが、まだまだ安心していられる状況では無い。
ルーン・ガストが追いつき、迫って来ているのだ。
「すまないが、そちらの相手は任せてもよいか? 私はあいつの相手をする」
ガウリイにレミーを任せ、自分はルーン・ガストと戦う決意をするモモン。
言われたガウリイの方は、ルーン・ガストの存在は今、初めて知った筈なのに、慌てることなく、しかし一つだけ聞いておきたいと言った感じで、答えと共に問いを返す。
「ああ。ところで、こいつ、さっきからおかしいんだけど、何とか正気に戻す方法知らないか?」
「生憎、解呪の魔法もアイテムも今は持っていない。だが、武器を破壊すれば正気に戻せるかもしれない」
「わかった」
折角の強力な魔力剣、多少惜しい気もするが、呪われたアイテムなど危なくて使えないと考え、助ける方法として剣の破壊を示唆するモモン。
それを聞いたガウリイは剣の破壊を目指し、戦いに集中する。
一方、モモンの方にはもう一つ、状況の変化が起こる。
「う、ううっ」
「ナーベ、目を覚ましたか?」
意識を失っていたナーベがその意識を取り戻したのだ。それを見て、すぐさま彼女に対し回復アイテムを使うモモン。
「アインズ様?……はっ、申し訳ありません。至高の御方の前で意識を失うなど。こうなればこの首を掻っ切って」
意識を取り戻したばかりな為か、思わずアインズの名を呼んでしまうナーベ。そして自分の失態にそのまま自害しようとする。それを慌てて止めるモモン。
「よい許そう。それよりも手を貸すのだ。我等に仇をなしたあの害虫を破壊する」
「はっ!!」
主の指示に起き上がり、構えるナーベ。正に仇敵と迫りくるルーン・ガストを睨みつける。
そしてモモンは打倒のための指示を出した。
「折れた角の根本に魔法を放て!! なるべく狭い一点を狙う魔法だ!!」
その指示に瞬時に答え、ナーベは炎の槍(フレア・ランス)を放つナーベ。狙い違わず放たれたその一撃は先程とは違い無効化されずに直撃した。
「やはりな!!」
それに続き、振動弾(ダム・ブラス)を放つモモン。本来は全身を耐魔法装甲で覆われているルーン・ガストだが、目の前のそれは命令を受け付けるよう一点だけそれを除外されている。
そしてそのポイントは折れて機能を失ってしまったが、受信用のアンテナのある位置以外に考えられない。
そう予測しての攻撃だったが、その狙いは見事に的中したようである。
(要は特定の部位に攻撃をしないとダメージを受けないギミックモンスターと同じだ!!)
「よし、どんどん攻撃をしかけるぞ」
「はい!!」
調子づいた二人は次々と魔法を放つ。たまに狙いを外したり、色々な魔法を試す中で、効果範囲の大き過ぎる魔法を使い無効化されてしまうこともあったが、順調に相手に損壊を与えていく。
しかしある程度それが進んだところで、二人は問題点に気づく。
「くっ、奥にダメージが届かないか」
どうやら耐魔法装甲の無い穴とも言える部分は細長い形状になっているらしい。そのため急所となる重要部位に届く前に魔法が無効化されてしまい、表層部分しか破壊できないのだ。
今は魔法の衝撃で足止めできているが、このままでは届く範囲に破壊できる箇所が無くなり、手詰まりになってしまう。
(飛行(フライ)が使えればな)
飛行出来れば、耐魔法装甲の無い部分に近づき、もっと奥まで効果を届かせることができる。そう考えるものの、現在使用できる魔法の中には含められておらず、無い袖は振る事ができない。
「ぎゃう」
そして攻めあぐんでいる状況で、ついに反撃を許してしまう。再びレーザーのような魔法を放たれる二人。
「くっ」
そこでモモンは召喚魔法を使いケルベロスを呼び出し、自分達を守る盾として使う。
「ぎゃうーー!!」
召喚者達の身代わりとなり攻撃を受け、悲鳴をあげるケルベロス。しかし高レベルのモンスターらしく、一撃で消滅まではしない。
そしてダメージがかさむ前にと反撃でケルベロスをけしかけようとする。ケルベロスの攻撃ならば倒せないまでも相手にダメージを与えられる筈だと。
しかしそこでモモンはふとあるひらめきを思いつく。それはケルベロスに直接攻撃させるよりも良い案に思えた。
「ケルベロスよ。我を乗せ、空に飛び上がれ!!」
召喚者の命に答え、モモンを乗せた状態で跳躍するケルベロス。それに狙いを定め再びレーザーを放つルーン・ガスト。そのタイミングでモモンは彼の背から飛び上がった。ケルベロスの跳躍と自身の跳躍を合わせることによる大ジャンプ。更にケルベロスを囮にすることで、自分が撃ち落される危険を減らしたのだ。
その策は見事、狙い通りに嵌る。レーザーを食らうケルベロスを背に、角のあった位置にまで近づくことに成功するモモン。
「うおおおおお!!!!」
目の前に見えるのは先程までの二人の攻撃によって生じたクレーターその一番奥深い場所、その位置を発動ポイントにして破裂(エクスプロード)を使用する。
「ぎゃううううううう」
末期の悲鳴をあげるルーン・ガスト。
ルーンガストは魔法は無効化出来る。魔法によって引き起こされた物理攻撃も魔力を消失させることで無力化できる。しかし魔法によって間接的に生じた純粋な物理現象までは無効化できない。内部で起きた破砕、破砕され勢いをつけて飛び散った部品によって引き起こされる連鎖崩壊。それによって、頭部が完全に崩壊したルーン・ガストは沈黙する。
そして全身を土のようなものに変化させ、文字通りその場に崩れ落ちる。
「ふう、まずは片方片付いたな」
「お見事でした!!」
ほっとするモモン。賞賛を込めて彼にひざまずくナーベ。
しかしこれで全てが終わった訳では無い。未だ対処すべき相手は残っているとガウリイの方に目をやる。そこではガウリイとレミーが戦い続けていたが、彼女の激しい攻撃を前にガウリイの方が少し押され気味であった。
それを見てモモンはまず、先に2発のレーザーを受け瀕死状態のケルベロスを消滅させることにする。
召喚したり創造した魔物、それらは自動で消えたりはしないが、代わりに召喚者の魔力を餌として与えないと存在を維持し続けられない。ゲームの仕様とこの世界の法則が折衷された結果、このような仕組みになっていた。動けない位のダメージ受け、魔力だけを消耗させてくれる邪魔者を片づけると、ガウリイに向かって叫ぶ。
「ガウリイ、魔法で援護する。合図したら飛び引け!!」
「モモンさーんによる支援、光栄と思いなさい!!」
「わかった!!」
そしてタイミングを見計らい、合図をかけた。
「引け!!」
その合図に答え、距離を取るガウリイ。そこでレミーの持つブラスト・ソードに向かって破裂(エクスプロード)を放つ。これで剣を破壊しようとしたのだ。
しかしレミーはその魔法を切り裂いて見せた。
「なっ!?」
ゲームには無かった現象に驚愕するモモン。しかし驚いている暇はなかった。攻撃されたことで、彼女は再び攻撃対象をモモンに向けたのだ。迫ってくる彼女に対し、モモンは再び魔法を放つ。
「くっ。ならば、現断(リアリティ・スラッシュ)!!」
これならと思い放った10位階魔法。流石にこの魔法を即座に切り裂くことはできず、しかしブラスト・ソードの方が切り裂かれることもなかった。
二つの刃が拮抗し、ぶつかり合う。
「至高の御方の攻撃を防ぐとは不敬な。死んで償いなさい!!」
「やめんか!!」
レミーを殺そうとするモモン。今の彼は余程親しくなった相手でもなければ殺人に忌避感などほとんど感じないが、ここでガウリイの心象を悪くしたくないと必死である。
「たあああ!!」
そうしてモモンとナーベが漫才を繰り広げている横で、ガウリイが飛び出した。
そして何を考えたのか彼はモモンの放った現断(リアリティ・スラッシュ)に向かって自らの剣を振り下ろす。その結果、光の刃と魔法の刃が重なり、刃は別のものへと変化した。
その姿を見てモモンは目を見開いた。
「ワ、ワールド・ブレイク!?」
変化した刃はワールド・チャンピオンのみが使える究極スキル、次元断切(ワールド・ブレイク)にそっくりな見た目だったのだ。
そして、流石のブラスト・ソードもその一撃は受けきれず、その刀身を消失させ、その瞬間にレミーは意識を失うのだった。
「おい、あんた、大丈夫か!?」
倒れたレミーに駆け寄るガウリイ。
そして彼女が正常な呼吸をしていることを確認し、ほっと一息つく。
「彼女は無事みたいだ。助かったよ。あんたのおかげだ」
「いや、礼はいい。それよりも教えてもらいたいことがある。ガウリイ、先程、彼女の持っていた剣を消滅させた一撃、あれは何をしたのだ。いや、そもそもお前の持っている剣は一体?」
「ああ、こいつは光の剣って言ってな。うちの実家に伝わる剣で一応伝説の剣らしいぜ」
(光の剣!! そのまんまの名前だけどかっこいい!!)
先程まではそんな余裕がなかったものの、光の刃を持つ剣と言うのはそれだけでアインズの厨二心をくすぐる一品であり、羨ましさを覚える品だった。
「んで、さっきやったのは。んー、難しいことは、よくわからんが、こいつには魔法を吸収してパワーアップさせる力があるんだ」
「えっ、何それ、反則」
ガウリイの言葉を聞いて思わず素になるアインズ。現断(リアリティ・スラッシュ)と次元断切(ワールド・ブレイク)は上位互換と下位互換とも呼べる関係であるが、だからと言って、現断(リアリティ・スラッシュ)を吸収して、次元断切(ワールド・ブレイク)そっくりになるまで強化してしまう等、ユグドラシルの感覚からすればまさしく反則アイテムである。
(これでもし、超位魔法を更に強化できたり、敵の攻撃を吸収して撃ち返したりできたりするとしたら……)
恐ろしい想像をし、この時モモンは光の剣をワールド・アイテムに匹敵する反則アイテムであると認識した。それにより、彼が魔王を倒したパーティーの一人であることに納得すると共に、改めて彼やその仲間を敵にしないようにしようと誓うのだった。
「しっかし、酷い状態だな」
「ああっ、そうだな」
全てが終わり改めて周囲を見回す一行。遺跡は滅茶苦茶、保管されていたアイテムはルーン・ガストに踏みつぶされた。つまり、収穫は無し。つまり骨折り損のくたびれ儲けである。
しかしそんな状況で普通は出てこない筈の感想をガウリイは呟いた。
「なんか、あんた、楽しそうじゃないか?」
「言葉を慎みなさい!!」
ガウリイの感想はモモンを見てのもの。
それに対し、即座に反応するナーベ。しかしモモン自身は別の感情を抱いていた。
(楽しい?そうだな、確かに楽しかったかもな)
さんざんな目にあったが、結果的には被害抜きで切り抜け、困難をクリアーした。そのことに彼は確かに達成感を覚えていたのだ。まあ、酷い目にあったと言う気持ちもあったし、流石に100%の満足とまでは言えないが。
(そう言えば、こいつとの敬語も忘れていたな)
ガウリイに対しては最初モモンは敬語で話していた。それは相手に対する敬意では無く、寧ろ他者に対する距離感から来るものである。それが慌てた状況で余裕が無く、ため口で話していたのだが、どうしてか、落ち着いた今となってもそれが少ししっくり来る感覚があったのだ。
(仲間と協力し、乗り越える感覚か……。いや、俺にとっての仲間はギルドのみんなだけだ)
モモンの達成感にはただ単に困難をクリアーしただけでなく、誰かと協力して成し遂げた。その事によって、無意識に彼に対し仲間意識を抱いていたのだが、彼に捕らわれた彼には未だ受け入れることは出来ないようである。
「さて、それでは、何時までもここに居ても仕方が無い。出るとするか」
「ああ、そうだな。リナも見つからなかったしな」
自身の感情を誤魔化すように帰還を提案する。
ガウリイの方も異論は無いらしく、頷くとレミーを抱きかかえた。
そして帰路の途中で今更になって感じた疲れにモモンは呟く。
「ふう、満足感はあったが、流石に疲れた。少しの間だけ冒険者は休業することにしよう」
こうしてモモンの冒険は一旦、幕を閉じるのであった。
レミー強過ぎじゃないと思う人が居るかもしれませんが、彼女は2巻でガウリイと互角に戦ったロッドの妹だったり、SFCのゲームで鍛えると最強キャラになることから潜在能力でならこの位強くても違和感無いかなあと思ってこんな感じにしました。
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