これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府と観艦式 その1

勇ましい軍歌

展示品を囲む人々

飛び交う声

 

横須賀鎮守府 観艦式会場

 

その様子を提督と吹雪達は建物の中から見ていた

提督は普段の略式の格好ではない

靴は白い革靴

普段は略している肩章、短刀、軍帽をかぶり、白手袋をはめていた

 

一方の艦娘側も服装は普段と変わりないが、軍帽をかぶっていた

また、後ろの艤装には各艦の認識旗と各鎮守府の旗印を掲揚していた

 

「はぁ・・・やっぱり勝ち取ってよかったぁ・・・・・・。」

 

うっとりとした顔をしているのは金髪ツインテールをした艦娘

そう、皐月である

 

「山風には悪いことしたかなぁ・・・・・・。」

 

答えるかのようにつぶやいたのは時雨

 

結局、この二人が壮絶(?)な争いを制し観艦式のメンバーとしてここに来ていた

二人はまだ旗の掲揚が終わってないらしく、妖精さんと相談しながらつけていた

 

その時、ノックの音が部屋に響く

 

「げっ・・・誰だろ?」

 

提督は苦々しい顔をする

それもそうだ

こういった機会は特に社交界的な意味合いを持つ

下手をすれば民間で、海軍につてのある者が訪ねてくる可能性だってある

一人や二人ならいいが、以前みたいにもみくちゃにされては敵わない

ただでさえ、将官が狙われる事件が起きている

 

「そういう顔はお客さんの前ではせぇへんようにな。」

「・・・・・・善処します。」

「・・・・・・。」スヤァ

「ええ加減起きんかい。」

 

提督と龍驤が話している真横で提督の方によっかさってスヤスヤと眠っている加古を龍驤はペシンと叩いた

 

「いてっ・・・・・・。」

 

むくりと起き上がると頭をぼりぼりと掻いた

が、時計をちらりと見てまだなのを確認すると夢の中に戻っていった

一連の動作を見て龍驤はダメだこりゃと言ってあきらめた

 

「・・・・・・・。」

「川内?」

「!」

 

何やら考え事をしている川内に声をかけるとビクッと肩を震わせた

 

「すまないが応対を頼めるかい?」

「あっ!了解!」

 

慌てて川内は立ち上がりドアへと駆け寄る

 

コンコン

 

「はい!遅れてすみません!」

 

再度ノックの音に川内が声を少し張って返事をする

 

「ただいま戻りました。」

 

どうやら吹雪だったみたいだ

吹雪はこのあとある海上行進の後のプログラムの一つを務めることになっている

その打ち合わせで席をはずしていたのだ

 

「ども!耳本さん!」

「おや、青ちゃんか。」

 

吹雪の後ろには青葉新聞社の青葉編集長がいた

 

「内浦の子は今回は観艦式に参加しないそうなので私が代わりに来たんです!」

「そっかそっか。そういえば今回は名前無かったねぇ。」

 

参加基地一覧表を頭の中で思い浮かべてた

 

「それにしても・・・。」

 

青葉は次の句を告げることはなかったがニコニコととてもいい笑顔をしていた

それに対して提督は頭の上に?マークを浮かべた

何も言わずにただニコニコと微笑みながら見つめられて、提督も合わせて笑いはするものの内心ではどうしたのと思っていた

そんな時間がたっぷり10秒過ぎたころだった

 

「ちょっと・・・。」トス

「ん?ああ!皐月さん!お久しぶりです。今日はいったいどのようなご用向きで?」

「ご用向きって・・・僕の司令官に用があって来たんだろ?」

「ああ!そうでs・・・僕の?まさか・・・!」

「そ、この春から僕はこっちに転属したんだ。」

 

その言葉に顔色こそ変えなかったが手に持っていたペンがミシリと悲鳴を上げる

 

「あ!そういえば青葉さんは取材いいんですか?」

 

あわや勃発かと思われたその時、吹雪が青葉に本来の目的を言う

 

「おっと!いけないいけない・・・・・・。」

 

慌てた様子で手帳を開いた

 

「観艦式の行進まで30分ほどありますのでぜひお願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『ご来場の皆様にお知らせいたします。まもなく艦娘達の海上行進が行われます。チケットをお持ちでない方はスクリーンをご用意しております。正面口にお越しください。』

 

軍楽隊の行進曲『軍艦』が流れ始めると再び放送が始まった

 

『まずは東京湾、相模湾など首都近海を防衛する横須賀鎮守府の艦隊です!水上打撃連合艦隊、機動連合艦隊、輸送連合艦隊の順で行進してきます!』

 

その後、艦隊が通過する間に陣形や参加している艦の紹介等が行われた

そして、4大鎮守府の残り3つが行進、さらに地方の拠点基地と紹介が進んだ

 

『さぁ!続きましては駿河諸島鎮守府の艦隊です!駆逐艦吹雪を先頭に軽巡川内、重巡加古、軽空母龍驤、駆逐艦時雨、同じく駆逐艦皐月の順の行進です!駆逐艦吹雪の先頭の護衛艦に乗艦しているのは駿河諸島鎮守府司令官耳本中佐です!』

 

 

 

と言った放送が終わるとちょうど最初の観閲艦に到達した

きちっとしたリハーサルのおかげだろう

そう言った言葉は飲み込み敬礼をする

1人1人の顔がぼんやりとだが見える距離を通過していく

ある人は手を振り、またある人は敬礼を返している、はたまたある人はニコニコと微笑みながら楽しそうに見ている

共通しているのはどの人も楽しんでみていることだ

提督は自然と微笑みを返していた

それは、後続の吹雪達も同じだった

 

 

 

 

『駿河諸島鎮守府では日本の石油、鉄鋼などの資源輸送の経由地となっており、我々の今日の生活の下支えを担っている鎮守府です。本来であれば通常業務に差支えが出るため例年参加を見送っておりました。しかし、今回記念すべきこの式のため参列してくれました!また、旗艦である駆逐艦吹雪はこののちのパフォーマンスにも出演予定です!ぜひご覧ください!』

 

 

 

 

観閲艦をすべて通過すると、提督の乗った護衛艦は桟橋へ

吹雪達はずらりと並んだ艦隊たちの列へと並んでいった

 

 

提督たちは正面口の掲揚台の集合していた

掲揚台の横にはステージが設けられており、そこには大本営の上層部のメンバーと来賓のリボンのついた人たちが着席していた

やがて行進が終わると、最後の基地の提督がこちらに戻ったのを確認したのち再び放送が再開された

 

『国旗掲揚並びに国歌斉唱。』

 

再び楽団が演奏をはじめ、君が代とともに掲揚されていく

 

 

『軍令部長志垣より皆様へご挨拶。』

 

先ほどの厳かな雰囲気は消え、再び喧騒が会場に戻って来た

挨拶を聞く人もいれば展示品や建物見学へ行く人などでばらけて行った

 

ステージの演台に登壇した志垣軍令部長は国旗、来賓、上層部へと礼をし、挨拶を読み始めた

背が高く細身で容姿は渋い筋の通った顔

なまじ、顔がいいため国民からの覚えもいい

ぼんやりと聞いていると、ある違和感を覚えた

来賓の紹介で各放送局、新聞、雑誌などのトップがいたのだ

普通は名代だけのはず

今回の観艦式は記念会でも特別な理由もない

 

そんなことを頭の中で考えていると拍手が巻き起こる

どうやら挨拶は終わったみたいであり、提督もとりあえず拍手をする

 

 

 

 

 

 

 

 

重い足取りで控室に戻ると吹雪以外のメンツがそろっていた

 

「お疲れ様。はいタオル。」

「おお。ありがとう。」

 

いくら涼しめの夏服を着ていたとしても外は8月の夏の盛り

暑さで、帽子の中は蒸れていた

 

「吹雪のが始まるよ~。」

 

見れば設置されたテレビで中継をやっている真っ最中だった

 

 

『さぁそれでは次のパフォーマンスに移りましょう!駿河諸島鎮守府所属の駆逐艦吹雪です!』

 

海上には訓練で使われる人型の的がいくつか設置されていた

 

『彼女の得意なことは射撃です!おっとそれもただの射撃ではありません!艦娘で射撃が苦手という子はほぼいませんからね?』

 

画面の隅っこのワイプに写されている会場から笑い声が混ざる

 

『彼女の場合は精密射撃。それも前に超が付くレベルです!吹雪さん?まず的に一回打ってもらっていいですか?』

 

アナウンスに吹雪はコクリとうなずくといつも使っている10cm高角砲を撃つ

何事もなく頭の真ん中に着弾し、オレンジ色に染まる

 

『はい。今彼女が発射したのは普段演習に使われているペイント弾です!こちらは発射速度や着弾地点などで色が変わります。ためにしもう一度当てた場合はどうなるかをお見せいたしましょう。吹雪さーん!』

 

その声に反応して再び吹雪が真ん中に命中させる

すると今度は赤色へと変色する

 

『ありがとうございます!このように赤色に変色します。赤色は大破の判定で戦闘不能をあらわします。補足ですがオレンジ色が中破で今回は出ませんでしたが黄色が小破になります。これらは午後に行われる演習大会の際にも使います。観戦の際の目安として覚えていただければより一層楽しめるとおもますよ!』

 

演習ね・・・

うちには関係のないことだと提督は聞き流す

 

『さて、当然ですがこれで終わりではございません!先ほどのは重巡洋艦の装甲を模した的でしたが・・・今度はこちらです!』

 

どこからともなくスタッフの腕章をした艦娘達が的を交換する

先ほどの的より一回り大きいもの

 

『こちらは戦艦級を想定したものです!会場でご覧の皆様にわかりやすく見本をご用意いたしました。』

 

言い忘れていたが、会場の大勢は先ほどのスクリーンが設置されたところで観覧している

一部は護衛艦上から見ているのだろうが、中継ではどこから見ているのかわからない

 

『さて、こちらは駆逐艦の主砲ではダメージが通りません。通らなかった場合は緑色になってしまいますが・・・。吹雪さん用意ができ次第どうぞ。』

 

吹雪は深めに息を吸うと高角砲を斉射した

またしても頭の真ん中

それも今度は一発で赤色に染まった

それを見て会場は歓声に包まれる

 

『はい!彼女にかかればこの通りです!おそらくわからなかった方も多いと思いますので解説させていただきます。カメラさん!的を目いっぱいに写してください!』

 

スクリーンに映し出されていたのは的の頭部分

その色は的の真ん中の部分は赤く、そこを中心に赤からオレンジ、オレンジから黄色、黄色から緑と綺麗に変色していた

 

『実は彼女は今の一瞬のうちに二発この的に打ち込んでいるんです!先ほど試しで撃ってもらった的がこちらに届きましたので比較するとわかると思いますが・・・。』

 

ステージにカメラが向けられると先ほどまで海の上にあった的があった

こちらは赤色のみで、色のコントラストがない

 

『このように貫通し、重大な損害が出たと判断された場合は赤色に変色します。重巡と戦艦では装甲が違うためこのように違いが出ます。吹雪さん!』

 

事前の打ち合わせだろう

今度は体の中心に一発だけ撃つ

すると今度は黄色に染まった

そして、もう一発を的の隅っこに当てると緑色に染まった

 

『試しで撃っていただきましたが、このように装甲がはるかに硬い場合は頭部や心臓に当たるところを撃たない限りは有効な色に変化しません。それでも一発のみなら小破判定が限界です・・・・・・が。』

 

アナウンスの声が終わると同時に吹雪は体の中心に撃ち込む

すると頭部と同じコントラストに変色した

これには会場も大きな歓声と拍手に包まれた

 

『これを彼女は一瞬のうちに行えるのです!・・・・・・さてそれでは準備体操も終わりましたので参りましょう!』

 

どよどよと会場が騒がしくなった

 

『これから吹雪さんにはこの戦艦級の的を6つすべて大破判定まで持ち込んでいただきます!しかも、今度はランダムに移動するという条件付きです!』

 

スタッフが下の自走装置をいじっている様子が映し出された

まもなく、吹雪の周りを6隻の的が不規則に動き回り始めた

 

『さぁそれでは参りましょう!制限時間は5分!レディー・・・GO!』

 

 

 

 

 

 

 

結果は成功

1分の余裕を残し、すべての的にヘッドショットを一発で決めた

会場は歓喜の渦に包まれ、万雷の拍手が巻き起こった

 

提督は満足げに微笑んで画面の吹雪にお疲れ様とつぶやいた

 

「初めて見たけどすごいねぇ・・・。艦娘の教艦も十分務まるレベルだよ・・・・・・。」

 

皐月が舌を巻いていた

 

「吹雪は提督からコツを教わってるからね!私もやってるけどなかなか難しいもんだよねぇ・・・・・・。」

 

川内がため息交じりに言った

 

「それよりも迎えに行った方がいいんじゃない?鎮守府からの引き抜きとかの声かけられそうだし・・・。」

 

時雨に言われ、それもそうだと思い帽子を深くかぶり出口へと向かった

すると聞き覚えのあるいやな声とノックがした

 

「耳本中佐はいらっしゃいますか?」




さてさてついにイベントも残り一日・・・
皆様はいかがでしたでしょうか?
自分は新艦は漏れなく着任し、欧州艦もある程度着任させられました(プリンツ?リべ?ザラ?・・・知らんな)
そしてイベント明けには昨年秋イベで血反吐を吐きながら入手したサラトガ改二(多分)の実装を楽しみに待っています

皆様の堀、もしくは攻略が上手くいくことを心よりお祈り申し上げます

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