「テイトクサンテイトクサン」
今日も今日とて書類整理をしていると、袖をかすかに引っ張られる感覚があった。
見ると妖精さんが一生懸命そでを引っ張っている。
「おやおつかれさん。なんか報告かい?」
ほっこりしながら声をかけると姿勢を正し敬礼をした。
「ゴチュウモンノタテモノガデキタノデス!」
そろそろできるころ合いだと思ったが今日だったとは。
書類の残量を見ると今日処理しなければならないのは回ってきそうにない。今やっているのも月締めの決算書をやりやすくするためのものだ。
「そっか~相変わらず早いね。」
そっと頭を撫でてあげると気持ちよさそうに目を細めた。
「報酬については工廠に運ばせるよ。輸送船が入ってくるのがちょうど明日だからみんなに伝えてくれる?」
「リョウカイデス。サッソクシサツイクデス!」
「そうだな。ちょっと待ってくれ吹雪を呼ぶから。」
内線で吹雪に駅で落ち合うことを伝え妖精さんと一緒に向かった。
「コッチナノデス!」
駅から出て5、6分でホテルに着くがそこから妖精さんに、右に行くように指示された。
以前来たときは、閑散期に当たったため土産物屋や食事処などはガラガラだったが、今日はそこそこの賑わいを見せている。
「ツギヲヒダリデス!」
曲がると派手な飾りはないが、玄関口は広く、3階建てで大正時代を思わせる外観となっていた。
奥には従業員らし着物を着た一人が、こちらに気付いて深々と礼をしている。
「・・・・すごいですね・・・・・・」
「こっちもホテルと一緒で飲まれちゃうよ・・・・・」
「提督お疲れ様です。」
従業員と思ったのは榛名だった。
なんでも着物も妖精さんが用意してくれたものらしい。
「和服の着付けまで妖精さんがやってくれたんですよ。」
「そっか。それにしても上品な着物だね。よく似合ってるよ。」
「ありがとうございます!」
「早く行きましょう司令官。」
吹雪がせかしたわけは、妖精さんはもうどんどんと進もうと中に入ってしまっている。
「ちょ!まって!」
「ここが宴会場で同じ大規模のものが5つあります。小さい宴会場は・・・」
旅館の中を榛名に案内してもらいながら、妖精さんに手直しがいる場所があれば伝えていく。
といっても物品の入れ替えくらいだから特に重要なことはなくあっという間に3階についた。
「ここには特別室が5つと提督さんのお部屋があります。」
「あれ?そんなの設計図にあったっけ?」
「イツモオカシヤオモシロイコトヲテイキョウシテクレルオレイデス!」
なんとうれしいことか。
案内された部屋は二つあり、一つが広さが10畳ほどで広すぎず狭すぎずのちょうどいいサイズだった。
装飾は他の客室と明確に差があり、気合を入れて作ってくれたのをひしひしと感じる。
窓からの景色はオーシャンビュー・・・あんまりここじゃ珍しくないかもしれないがいつもと違った方向だと変わるものだ。妖精さん曰くぎりぎり八丈島の小島が見えるはずといっていた。
もう一部屋は6畳ほどで窓の景色は森林だった。
うっそうと暗いわけではなく海側と比べると若干薄暗く昼寝をするにはもってこいの部屋だった。
しかも、露天風呂までついていた。そこまで広くはないが足を延ばしても2人くらいは入れそうだ。
「ここはいつも開けておきますのでお疲れになったときにどうぞ。」
妖精さんや榛名の厚意を無駄にしないためにも、気分転換にたまに来るとしよう。
「さて、次は提督肝いりで作ったお風呂なんですが・・・・多すぎません?」
「サスガノワタシタチデモビックリシタデス」
風呂は全部で4つ。一つは地下にある総ヒノキ張りで一番広く作られている。
2つ目は一階にある内湯が総ヒノキ張りで露天が岩風呂として森林に面しているため鳥のさえずりを聞きながら入ることができる。
3つ目は2つ目の隣にある個室の風呂。
それぞれ露天と内湯が選べるようになっている。
そして俺が一番口を出したのがこれから行く4階にある風呂だ。
「内風呂はヒノキばかりじゃ飽きるから石造りにしてある。そして露天は!」
扉をあけ放つと一面の海というわけではなく港やさっき通ってきた道を一望でき鎮守府側の島まで見える。
反対は、この島ができたときの火山が見える。今は死火山となっているため上ることもできるが山道はまだ整備していない。
「あれ?」
整備事業も始めなきゃなと考え始めたところで湯気でよく見えなかったが、人影が見えた。
そういえば榛名が見学している人もいるといっていたが脱衣所には誰かが入っている雰囲気はなかった。
「ていt」
ぴしゃ!
「・・・・・」
「司令官?どうかしましたか?」
「・・・・・・・・・ここの設計妖精は?」
「ワタシデス!」
「提督さん急に閉めてどうしたの?」ガラッ
「なんで混浴になってるんだ!!!」
古鷹が入ってくると同時に妖精さんに対して怒った。
幸い巻いていてくれて助かったが一瞬女風呂に来てしまったのではないかと焦った。
細かい実況?するわけないだろ!
「ダイジョウブデス!ジカンデクギッテアル。ダイジョウブ!」
「古鷹どうしたんだい?」ガラッ
「そおぃ!!!!」
よりによって俺に気付いてなかった時雨は古鷹に隠れて見えなかったがおそらくタオルを巻いてなかった。
慌てて廊下まで出ると龍驤がびっくりした顔をしていた。
「なんや!?提督はんか。なんかえらい顔色しとるけど大丈夫か?」
「はぁーはぁ・・はぁーー・・・・。ちょっと・・・想定外のことがあってな?」
「混浴のこと視察の時に聞いとらんかったんか?」
「オモシロソウナノデイイマセンデシタ!」
「このやろう!」
もういろいろとつかれたため外のソファーで待っていると古鷹と時雨が加わったメンバーで来た。
「提督?さっきはごめんね?」
「提督さん大丈夫ですか?」
心配そうに顔を覗き込んでくるが先ほどのことを思い出しそうになり目を若干そらして大丈夫と答えた。
「見苦しいもの見せちゃったかな?」
「時雨隠さずに遭遇しちゃったんか?」
「うん。まぁ提督なら大丈夫かなって。」
勘弁してほしい。いやそのね?違うんですよ?彼女らは女性だ。それなりに膨らみというものも出ているのであって。私は男であって。男には反応したりするものがありましてね?
「というか俺の性別わかってる?」
「「「「「男?」」」」」
「君らは?」
「「「「「艦娘?」」」」」
「いやいやいや!女性でしょ!」
「でも提督ならそんな邪な目で見ないでしょ?」
「そりゃそうだけどさぁ!俺だってねぇ!・・・・はぁもういいや」
どっと疲れが押し寄せたのか戻って仕事をする気力も失せてしまった。
「司令官?肩を貸しましょうか?」
吹雪の申し出に甘え、そのまま部屋に泊まることにした。
「そういや吹雪ちゃん」
「なんでしょうか?司令官?」
部屋にテーブルを出したのち休んでいると吹雪がお茶を淹れてくれた。
淹れ方は俺好みのを出してくれて、リラックスできるが・・・。
「いろいろやってくれるのはうれしいけど自分の部屋に行かなくていいの?」
「いやですね司令官。ここに泊まるんですよ。」
「Pardon?」
思わず英国で生まれた子みたいになった。
「ですから私は今日、司令官の部屋に泊まります。」
「oh・・・じゃなくて!」
どうしてこうなった
E-4輸送でまさかのお祈りをすることになるとは・・・。
支援艦隊のコストが重すぎて辛い・・・。
E-4のゲージ削りが怖くてできない(笑)