これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の疑問

「はぁ・・・・・・。」

 

提督は執務室の椅子で頭を抱えていた

原因は大本営から帰還する機内での深雪の一言だった

 

大本営の会計部と言っても様々な業務がある

各鎮守府の予算の処理と大本営内の予算処理という大きく分けるとこの二つだ

しかし、ここからさらにさまざまな分岐がある

 

予算の処理といっても、給料などの支払いを処理するところもあれば、備品などの予算の処理を行うところもある

他にも、各鎮守府などの臨時予算をつけるところや大本営からの任務に対しての報奨金の支給を行うところなどあげたらきりがない

 

その結果として似通った業務を行っている場所もあったりする

が、鎮守府や警備府などの量が膨大過ぎて少しでも似たような業務をまとめると慣れるまでそこの部署の効率が落ちるのだ

また、会計関連はミスが許されず銀行みたいにたった一円の間違いでもすべての修正が終わるまでは業務を終えることができない

 

以上の観点から非効率で人件費はかかる物の、会計部の括りの中でいくつもの部署を作り処理してきた

問題ではあるのだが、とりあえず目先の処理が現在は優先されるため、組織のスリム化は当分先の話になるだろう

 

親潮は会計部の中の総まとめ役

いわゆる各部署から上がってくるすべての合算を行う部署のトップであり、会計部のナンバー2に当たる

普段、提督がお世話になっている部署はまた違うところであり、会計部の代表を務めている子とは顔見知りではあったが、ナンバー2の親潮とは間接的なかかわりしかなかった

そのため、大本営の要の一つを引っこ抜く事が起きてしまったのだ

 

 

「やっぱり親潮には悪いけど・・・・・・。」

 

一人呟きながら電話に手を伸ばす

 

『あのお調子者にはしばらくお灸が必要だ。』

 

砂安の言葉がよみがえる

 

提督が、鎮守府に着いたとき砂安、深打、夏木の3名が滑走路にまで出迎えに来たのだ

3人は示しを合わせて、大将室に突撃してきたのは書類を見させないためで、有給申請をしたのは親潮が抜けたことによる肩代わりの仕事や選定に巻き込まれないためであった

 

『たまには大将にもお灸が必要だよ。』

『五月雨ちゃんの改二が難しいのにあの野郎。』(地獄に落ちろくそ野郎。)

 

深打と夏木の言葉も頭の中で浮かぶ

・・・若干一名裏も表もやさぐれていたが、中将の情報で五月雨の艤装関係で何か進展があったとのこと

これを聞いた夏木は先ほどまで大荒れだった機嫌が直ったらしい

 

「やっぱりこっちで連絡を・・・・・・。」

 

スマホを取り出し、電源をつける

余りの怖さにここについてから一時間くらい電源を入れてなかった

しばらく起動画面が表示され、ホーム画面が見えた瞬間

 

スマホが狂ったのかと見間違うほど震えた

着信、メールを合わせると100件をゆうに超えている

というより今現在もメールが来ており、定期的にスマホのバイブ音がする

とりあえず、メールをさかのぼり最後のまともな文章を読む

見てみるとこれから夏のボーナスや作戦関連の決裁などの仕事に親潮の力は不可欠

よってもう1月だけでもいいから待ってくれないだろうかと言った旨の文章だった

 

提督はだよなぁとつぶやきながらスクロールさせながらスマホを取り、大将に電話をしようとした

 

 

が、最後の方に

 

『後生だからお願いだ!文月が改二になったお祝いで2人で旅行をしたいんじゃ!頼む!』

 

「・・・・・・。」

 

提督は思い出していた

NDKをかまされたのは何も砂安や深打だけではない

提督とて例外ではなかった

特に提督は望月に来る!そういって大将と意地の張り合いをしてたがために砂安よりもさらに煽る言葉を浴びせられた

 

提督はスマホをしまい、パソコンのメールの返信画面を出すと一言

 

『頑張ってください。』

 

その一言だけ返信した

そして、そのNDKの惨状があるL○NEにはプギャーの腹立つ顔文字の写真を大将に送ると電源を落とした

 

 

 

余談だが、このほぼ同時刻

大将室からはどこぞの閣下のような畜生め!という叫び声が聞こえたとか聞こえなかったとか

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼する。」

 

提督が調子に乗った罰だと思いながら仕事に戻ろうとした時、書類束を片手に若葉が入って来た

 

「これで一週間分のタスクは終了だ・・・・・・。」

 

見れば若葉のほほは若干こけ、目の下にはクマができている

前かがみで、膝が小刻みに揺れているところを見ると眠気もピークを迎えている様子だ

ちらりと時計を見るとすでにヒトキュウマルマル

本来ならば若葉に科してある業務時間はあと5時間あるのだが、すでに限界のようだ

 

「お疲れさん。どうだ?もう少し延長するか?」

「えっ延長か・・・それもわr」

「ええ・・・・・・。」

 

冗談のつもりで言ったが若葉は気が途切れたのか膝をついてこうべを垂れてしまった

そっと近寄るとくうくうと寝息を立てていることがわかった

 

 

 

 

「はっ!!」ガバッ

「おお。大丈夫か?」

時刻はマルヒトマルマル

本来ならば提督が残っていると注意されるような時間だが、こんなこともあろうかと若葉のことを説明して、ちゃんと許可をもらっていた

 

 

※普通はこんな許可はいりません

 

 

 

 

「すまない。どうやら少し寝てしまったようだ。あと5時間と完遂できなかった懲罰分で・・・。」

「ん?もう大丈夫よ?さっきもらった分で仕事は終わってるし、そもそも通常の就業時間過ぎてたからもう終わりでいいよ?」

 

本当は少し修正しなければならないところがあったのだが、すでに提督が手を入れて回してしまっていた

 

「一週間やったがまだ続けるかい?」

 

少し意地悪な質問をしてみる

 

「いや・・・・・・。うん・・・・・・それも悪くない。」

「・・・・・・え?本気?」

 

少し顔を崩しているが、どうにも本気にしか見えなかった

不安を覚えた提督は怖くなって聞き返した

 

「冗談だ。さすがの私でも辛い。」

 

そういって提督が掛けたタオルケットをたたみ始めた

 

「明日・・・というより今日から2日休んだ後は通常の勤務形態でいいからな。後、銀行の処理が間に合わないからここに1週間分の給料入れといたよ。月末までの生活費にしてくれ。」

 

少し厚めの封筒を若葉に差し出す

 

「・・・・・・。多すぎないか?」

「勤務時間がほぼ24時間に近ければそりゃあそうなるさ。仕事効率とかは落ちてるだろうけどあくまで罰だからな。」

「そうか。なら有り難く受け取らせてもらう。」

 

そういって自身の上着の中にしまい込んだ

 

「・・・・・・。提督。少し話・・・というより質問に答えてくれないだろうか?」

 

そのまま退出すると思ったのだが、若葉は振り返って提督に言った

 

「答えられる範囲ならいいけど・・・・・・今日はもう寝た方がいいんじゃないか?」

「なに。少し寝させてもらったから大丈夫だ。それよりも・・・・・・提督。あなたはいったい何者なんだ?」

「・・・?何者って・・・何が?」

 

若葉の質問の意味が分からず聞き返した

 

「提督は普通科の出身になっているが、同期は特別科の出身だ。これはなぜだ?」

 

 

普通科と特別科というのは海軍の学校での振り分けである

 

普通科は適正関係なく試験に通りさえすれば入れ、卒業後は小さな警備府や監視府に配属となり、どんなに出世しても小さな鎮守府の提督が限界だ

 

特別科というのは妖精さんとの親和性、艦隊の指揮能力、艦娘からの初対面での好感度などが一部秀でていたりする者たち

いわゆる提督の適性が高い者が振り分けられる

こちらは卒業後は小さいながらも鎮守府や大本営に配属となり、出世すれば大将や中将、または重要な幹部ポストに就くことになる

 

「それは・・・・・・。」

「提督。私はあなたを信頼に値するべき人間だと思っている。」

 

若葉はまっすぐな瞳で提督を見た

 

「提督にとらえられてからこの鎮守府の様子や所属するメンバーをみて私の価値観はすべてひっくり返されたといっても過言ではない。休みは不定期ではあるが人並みに貰え、給料も適正な支払いが行われている。労働時間だって多少他の鎮守府より多いとはいえ、過度な労働時間ではない。」

 

小声で提督と吹雪は労働時間を守っていないがと言った

 

「所属している者たちへの福利厚生関係もちゃんとしている。だからこそ気になっているんだ。あなたへの噂が。」

 

そういって若葉はいつもの手帳を取り出して、一ページを破いた

以前、提督に関する情報をまとめたページだった

それを机に叩きつけるようにして見せる

提督はそれをじっと見つめた

 

「特別科から普通科に移動になることはまずない。・・・あるとしたらそれは組織関係に対する不都合なことがあった場合だろう。」

 

提督は静かに若葉の目を見た

 

「空母瑞鶴。カレー洋解放作戦時に轟沈。大沢大将麾下であり、当時は新人の教官も務めていた人だ。」

「・・・・・・。」

「提督。聞かせてはいただけないだろうか?ひょっとしてあなたは・・・・・・。」

「すまんが、それについては答えられない。」

 

提督は若葉の推論を聞く前にさえぎった

 

「・・・そうか。」

「・・・・・・すまん。」

「いや・・・・・・。話してくれなくともあなたが信頼できる人柄であることは確かだ。・・・・・・もし。だがもし話してくれたら・・・・・・。全力で力になろう。」

「・・・・・・ありがとな。」

 

提督は寂しげに笑って小声で言った

 

 

 

「さっ!俺は明日があるからねるぞ。」

「む。提督、もう一つ話したいことがあるのだが。」

 

若葉は時計をちらりと見て、少し早口に言った

 

「お?なんだ?さすがにさっきみたいなことに・・・。」

「いやそういうわけではないから安心してくれ。」

 

そういうとジャケットを脱ぎ、ネクタイを外した。

そしてワイシャツを・・・

 

「って何してんの?!」

「何って・・・・・・。一晩を共する準備だが・・・・・・。」

 

さらりととんでもない発言を若葉はした

 

「いやいやいやいや。どうしてそうなるのさ。どこがどうなってそうなるのさ?」

 

思わず某瑞雲キチの姉のセリフになる

 

「艦娘との同意があれば一晩を共することができると聞いたのだが・・・?」

「俺の同意ぃ!俺の意見はどこに行ったのさ!・・・・・・。まてよ?ひょっとして山風みたいなことか?」

 

ここまで恥じらいもなく言っているという事はそちらの可能性もある

なにより、まさか出会って間もない提督に体を許すなんてことをするはずが

 

「いやこっちだが。」

「そのサインはやめなさい!女子がしちゃいけません!!」

 

握りこぶしに親指を入れるサインを慌ててやめさせた

 

「というかどうしてそうなるのよ?まだ若葉と出会って浅いのにさ?」

「それは・・・・・・。何といえばいいのだろうな?うーん・・・・・・。」

 

若葉も首を傾げわからないといった雰囲気だった

 

「とにかくそれくらい信頼を寄せているという事と思ってもらえると・・・。」

「なるほどね。気持ちだけで大丈夫だからね~。」

 

提督は早口で断りを入れ、服を着るように促す

その最中、目と耳を全力で2つの入り口に向ける

 

 

「夜伽の!!」

「時間と!!」

「「聞いて!!!!」」

 

2つの扉が同時に開いた

 

開いたというよりも吹き飛んだのだが

 

元凶は金髪ツインテと茶髪ダル眼鏡姉妹だ

皐月はローション、望月は近藤さん(穴あき)を手に持っている

 

「・・・・・・畜生め!」

 

結局朝まで3人から夜戦を躱さなくてはならなくなった提督であった




ちょっと遅れました(;´・ω・)
主にツイッター方向で発狂していましたが、もろもろイベントの進行関係で失敗してましてこちらに手がなかなか回りませんでした・・・

五月雨に関しては声優さんが復帰なさったという事で前の話からねじ込んでいました
初期艦に改二はよ(真顔)

若葉の分類は変態姉妹に追加となりましたw
某所でキャラ設定をどうしようかとつぶやいたら変態属性を切望している西の方がいらっしゃいましたので・・・

どうしてうちのやどかり艦はこうなるんだ?(すっとぼけ)

自分の方はE-3まではとりあえず甲でE-4はめんどくさいのと報酬の関係から乙に・・・
そしてE-5で甲に挑んでいる真っ最中です
E-5以降はもう乙でいいかな・・・
特にE-7は丙も視野に入ってる有様ですはい
堀が多すぎるんです・・・

因みに新艦の堀は
狭霧 1回目
天霧 30回前後
松輪 2回目
というわけのわからない強運で掘れてます

・・・そのせいかわかりませんが海風掘りにE-2Qを100週前後したり(しかも中断)
E-3輸送攻略だけで燃、弾合計5万+バケツ150近くを溶かしたりするあほなことをやらかしてました(白目)

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