これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府のヘッドハント その2

そこには陽炎型のかっちりとした制服に白手袋、黒髪には13号電探を模したヘアピンをつけた子が立っていた

 

 

 

 

「親潮君・・・だったかな?」

「はい!あの。今お時間よろしいですか?」

 

そう言って親潮はメモ帳を取り出した

今回質問攻めにあったといったが、そのうち一番前の席を取り一番質問を投げかけた子だった

そのため、提督は覚えていたのだ

 

 

 

「実はまだお話ししたいことやお聞きしたいことが・・・・・・。」

「ああ、大丈夫だよ。・・・・・・。」

 

そういって二人は話し始めた

それを見ていた深雪は何も言わなかったが、面白くなさそうな顔をした

最初は割って入ろうと思っていたのだろう

しかし、小難しく込み入った話についていけず、あきらめて手元のコーヒーをすすった

砂安は話し始めたのを見て、席を立ち何かを注文すると戻って来た

戻ってくると深雪は完全に手持ち無沙汰な様子でちらちらと提督の方を見ながらあきらめたようにため息をついた

そして、砂安の方に話を振る

 

「中将は何を食べに来たんだ?」

「ん?ああ、雷にプリンでもと思ってな。」

「ほほぉう・・・。何かやらかしたと見た!」

 

深雪はいいネタを見つけたといたずらっぽい笑みを浮かべた

 

「あー・・・そうだな・・・・・・。」

「ずいぶん歯切れが悪いけどまずいことだったかい?」

 

深雪が問うと砂安はバツが悪そうにほほを軽く掻いた

 

「睦月型改二が誰になったかは知っているか?」

「いいや。みっちゃんからも望月からも聞いてないけど?」

「文月で決定だそうだ。・・・それでな?NDK?NDK?をやられてな・・・。」

 

深雪はその光景を思い浮かべた

そして次に起こるであろう惨状と割って入る二人の姿が思い浮かんだ

 

「ああ・・・。もうなんとなくわかったぜ。それで物で釣ろうってわけだな?」

「恥ずかしい話だがな・・・。ただあのバカ大将深打や夏木の前でもやりやがってな。」

 

わしよりひどくはないがどや顔で自慢してて・・・そう続けた

それに対し深雪は表情を曇らせた

 

「え?夏木の前でもやったのか?」

 

なぜ二人の表情が曇ったのか

それは夏木の麾下にある五月雨に関係している

改二には大なり小なり艤装の内部をいじる必要がある

そのため、全員一度定期健診の際艤装内部のチェックをする

 

 

 

しかし、五月雨の艤装にある問題が見つかった

問題といっても現状運用するにあたっては問題は特になかったのだ

問題は改装をする余裕がないという事だった

改装すると艤装内部の機器が増える

五月雨にはそれを入れる余裕が艤装内にあまりなかったのだ

これはすべての五月雨型に共通しており、妖精さんは頭を抱えた

結果として、艤装を新規開発するか追加の機器が小型化できるかのどちらかをクリアしないと改二は夢のまた夢となっている

 

早い話しばらくは無理という事だ

これを聞いた時、提督や深打が夏木のやけ酒に付き合って大変だったとこぼしていたのを深雪は聞いたことがあった

 

 

「そいつは・・・。」

「目が明らかに据わっててな・・・。ちょっと怖かった・・・。」

 

その顔を思い出したのか、ぶるっとがたいのいい体を震わせた

 

 

 

 

「こんなところかな?」

「ありがとうございます!耳本中佐!」

「いいえ。どういたしまして。」

 

そんなことを話していたらどうやら終わったらしい

深雪は残ったコーヒーを飲むと席を立つ準備を始めた

砂安も立ち上がり、椅子をもとの場所へと返しに行った

 

「・・・そうだ!親潮君ちょっといいかい?」

「何でしょうか?」

 

帰ろうとしていた親潮を提督は呼び止めた

 

「親潮君うちに来ない?」

「「はぁ?!」」

「えっ?!本当ですか?!」

 

提督がこの一言を言うと反応は真っ向から違うものだった

親潮は顔を輝かせ、走り寄って来た

が、それを後ろで見ていた二人は首がねじ切れんばかりの勢いで提督の方を見た

 

「おいおいおいおい・・・・・・。ちょっともが!」

「どうかしたのか?」

「いやいやいや何でもない。」

 

口を出そうとした深雪を砂安は制止した

そして、とりあえず何でもないといい深雪に小声で話しかける

 

(深雪ちょっとここは言わずにおいておこう。)

(えっ?なんでだ?あいつは・・・。)

(この間宮券2枚あげるからさ。頼んだぞ。)

そう言って深雪の後ろで見えないようにチケットを握らせた

 

「そういえばプリンの準備がもうできているだろうからな。わしはこれで失礼する。気をつけてな耳本君、深雪。」

 

声の調子を整えると、カウンターで商品を受け取りそそくさと退出しようとした

 

「わっ!あぶn・・・・・・中将!すみません!」

「っと!どうしt・・・おお~。みっちゃんと深雪ちゃん、それに親潮ちゃんだ。元気にしてた?」

 

出入り口で、砂安は深打と夏木にぶつかりそうになった

一瞬びっくりした顔をしたが怪しげに微笑むと両手を広げ、二人に話しかけた

 

「ちょっと二人とも済まないが来てくれないか?急ぎの用事なんだ。」

「えっ?はっはい!」

「承知しました。それじゃあまたね~。」

 

砂安は二人の両肩をつかんで一緒に出て行ってしまった

 

「何だったんだ・・・?」

「さっさぁ・・・。っとそれよりも耳本中佐・・・・・・。お誘いは大変ありがたいんですが・・・・・・・。」

 

嵐のように過ぎ去った3人に、提督はあっけにとられた

一方、親潮は先ほどのキラキラとした顔が一転

曇らせて言いづらそうにつづけた

 

「実は許可が下りないかもしれないんです・・・・・・。」

 

親潮はまだ実装や発見されてから時間がそんなに立っていない

通常海域での発見もいまだに報告されていない

提督はなるほどと思った

確かに、まだ貴重な駆逐艦の異動を許可するのはあまりないだろう

 

「ああ、それなら大丈夫。一人だけの条件で大将の認証印預かってるからさ。」

 

そういって、書類と印鑑を見せる

すると、再び明るい顔に戻り目をキラキラさせた

 

「本当ですか?!それではぜひお願いします。」

 

親潮は書類を受け取ると、先ほどメモをしていたボールペンですらすらと書き始めた

 

 

 

 

「あっあー・・・・・・。知らないっと。」

深雪は二人に聞こえないようにぼそっとつぶやき、砂安にもらった間宮券を財布にこっそりとしまった

 

 

その後、書類の間違いがないことを確認し封筒へとしまった

預かった許可印も押し、割印で封をすると今後の説明をした

大きな荷物等は後日船便で持ってきてくれるため、簡単な手荷物をもって一時間後に飛行場に集合という事になった

 

 

 

 

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

 

気まずい

そういった雰囲気が二人の間に流れていた

いつもなら深雪が雑談を振ってにぎやかに行くのだが、今日はだんまりとしている

 

(会話ぶった切って親潮と話したの怒ってるのかなぁ・・・。)

ちらりと横目で見ると真顔でこちらに気づいてない様子だ

 

(やばいなぁ・・・。あの顔は怒ってるか考え事してるかの2択だからなぁ・・・。)

特に深雪に関係するようなことは今までになかった

が、怒らせるようなことはしている

 

提督は考えた

何か物で・・・・・・はこれから親潮が合流するから無理

後日外出・・・・・・は最近外出し過ぎてる(提督基準)から無理

休暇など・・・・・・は普通に取らせてるから意味がない

 

(もうなるようになれ・・・。)

 

「深雪・・・・・・。」

「・・・ん?どうした?司令官。」

 

いたって普通の返事だが、一瞬間があった

やはり機嫌がよくなさそうだ

 

「その、ごめんな?」

 

そう言って頭を撫でる

 

「えっ!?」

 

深雪はびっくりした顔をする

 

「さっき会話ぶった切っちゃってさ。」

「えっ?ああ!え?あ、そっち?そっちかぁ!」

 

深雪はわたわたと慌てていたが、すぐに平静さを取り戻した

 

「?何かまずいことでも・・・。」

「ああー・・・。いや!みっちゃんは気にしなくていいぜ!それじゃあ今度久しぶりに飲もうぜ!それでチャラにしてやるから!」

「おっおう・・・?」

 

(怒ってなかった・・・?)

代償の飲み会痛いが、機嫌が何はともあれ戻ってよかった

そう思う事にした

因みに深雪の場合は酒をガンガンに勧めてくるタイプだ

そのため、ペースを崩しやすいのでなるべくなら避けているのだ

・・・この間望月を贄にしてえらい目に遭ったが

 

 

「失礼します。」

「おお!その様子じゃと決まったのじゃな?」

 

大将はほっとした顔をした

文月を膝にのせて

 

「・・・・・・こちらに置きますね。」

 

目いっぱい軽蔑した視線を送ると、執務机の前にあるいつものローテーブルに置く

その隣に、一緒に許可印も置いた

 

「いやー。見つかってよかったのう!これでしばらくは安心できる!!」

文月を降ろすと、書類を受け取りに来た

提督も、直接渡すため再度封筒を取ろうとした時だった

 

「大将!すみませんが明日から作戦日まで休暇をいただきたく思いまして!!」

 

ものすごい勢いで扉があくと、先ほど別れた砂安が現れた

 

「おっおお・・・。わかった・・・・・・。後で・・・。」

「今お願いします!どうしても急いでおりまして!!」

 

深々と頭を下げられては大将もダメと言えなかった

 

「仕方ないのぉ・・・。」

「大将すみません!作戦日まで休暇を!」

「すみません!私も!」

 

仕方なしに、書類のチェックをしようと執務机に戻った時、深打と夏木まで大将室に入飛び込んできた

 

「あの・・・。申し訳ないのですが待ち合わせの時間がありますので・・・・・・。」

「・・・・・・そうじゃな。その書類は人事の方にもう回しておいてくれるかの?わしがチェックするまでもないと思うし・・・。」

眉間を少し揉むと頼んだといって書類整理に戻った

 

 

 

 

 

「あっ!司令!」

「すまんすまん!ちょっとトラブってな!」

 

そう言って親潮が先に乗っている二式大艇に乗り込む

それと同時に、離陸体制に入ったのでベルトを締める

 

安定したところで、親潮が提督の隣に座っている人物を見て驚いた顔をした

「・・・・・・深雪さん!お久しぶりです!」

「・・・おう。さっきもいたけどな。」

 

深雪は渋い顔をして答える

 

「すみません!ちょっと周りが見えなくなってまして・・・。」

「あー・・・。そんなことだろうと思ったよ・・・・・・。」

「あれ?二人とも知り合い?」

 

提督は驚いた顔をする

確か深雪曰く、知り合いは大本営の役付きか転属してたはず・・・

 

「じつは中将に止められてたんだがこいつは・・・」

 

 

 

 

 

 

「失礼します!!!大将!あなたいったい何をやっているのですか?!」

「んぁ?なんじゃ騒々しい・・・。」

 

文月の膝の上で昼寝をしていた大将を起こしたのは会計部のネームプレートを付けた中尉の男だった

せっかくの至福のひと時を邪魔され、不機嫌そうに大将は体を起こす

 

「それどころじゃないですよ!!!これはいったいどういう事ですか?!」

 

男はある一枚の書類を大将の前に突きつける

書類にはすべての印が押され、人事部の認証済みの判が押されていた

 

「あー・・・・・・。あー!!!!!!」

 

大将は大声で叫びをあげた

 

 

 

 

 

 

 

「こいつ大本営の会計部部長だぜ?」




ついに夏イベが始まりますね!
個人的には最新の情報で狭霧が来るというのでモチベがうなぎのぼりです
といってもすぐに攻略せずに2,3日待ちますが・・・(´・ω・`)
コミケにも突撃をかまさないとならないですし・・・

ここまでためにためた資材を使い尽くす気で堀作業に没頭することにもなりそうですし更新頻度は若干下がる可能性がありますがご了承ください(ちょっと前から下がってますが)

皆様の健闘を祈ります

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