これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の家具

若葉との話から数日後

晴れて部屋が用意でき、若葉も書類が出来たとのことで呼び出してすり合わせを行っていた

 

 

 

「・・・ラストのこれもOKっと!はい。お疲れ様でした。」

「ああ。お疲れ様だ。」

 

提督は確認した書類をまとめると、封筒に入れた

立ち上がって決済済みの中に放り込むと、机の上から鍵を持って戻った

 

「はい。これが新しい部屋の鍵だよ。」

「助かる。・・・・・・。」

 

若葉は鍵をじっと見つめた

その表情は何となく釈然としないといったものだ

 

「・・・なぁ提督。一ついいか?」

「お?何だ?」

 

そんな若葉の表情を読み取って、そのまま待っていた提督が返事を返した

 

「所属するのが決まったところでこんなことを言うもなんだが・・・・・・。本当にいいのか?」

「というと?」

「・・・未遂とはいえあんなことしでかしているのに咎もなく、しかも味方かどうか確定していないものを迎えていいのかと言っている。」

 

若葉は表情を崩さず、まっすぐに提督の目を見た

その顔は、いつもと変わらないポーカーフェイスのようにも見える

しかし、ちらりと前髪に隠れて見え辛いが汗が見えた

 

「んー・・・。」

 

顎に手をやり、少し考えたのち吹雪のいる方を向いた

吹雪は、目が合うと一枚の書類を渡してきた

提督はありがとうと言って受け取った

そしてそのまま若葉に見せる

 

「これは?」

「花見の事件の報告書のコピーだよ。ほんとは見せるのはまずいけど・・・。」

「・・・!これって!」

 

書いてある顛末を見て驚いた

 

「そういう事でうちにしか所属できないようにしてあるからね。それとだ。」

 

提督はとんとんと人差し指でおでこをたたいた

若葉は疑問に思いながら額に手をやる

そして、提督が言わんとすることがわかったのかため息をついた

 

「ちなみに一応罰はあるからね?」

「そっそうか・・・。いったいどのような・・・・・・。」

 

緊張の面持ちに代わる

やはり怖いのだろう

死刑を宣告されてもおかしくはない

 

「一週間みっちり残業上限無視で働いてもらおうかなぁって思ってるよ。」

「・・・・・・は?」

 

 

空気が凍り付いた

 

 

凍り付いたというよりも間の抜けた空気になったというのが正しいだろう

 

「あとその間給料は半額でやってもらうからね?」

「・・・・・・え?それだけか?一か月とかじゃなく?え?給料あり?え?え?」

 

クールな若葉らしさはどこへやら

若葉はここに来てからというものの、クールな雰囲気をどこかに落としてきているふるまいしかしていない

 

「いや~・・・一か月もやったら多分やばいことになると思うよ・・・?」

「それでも軽すぎないか?!別に罰を受けたいわけじゃないがこれはいくら何でも!」

 

若葉はソファーが倒れんばかりの勢いで立ち上がった

提督はどうどうとなだめ、座らせた

 

「まぁとりあえず軽いと思ったら言ってくれ?な?」

「あっああ・・・。」

 

釈然としない雰囲気で再度座る

 

「それで、どこに配属になるんだ?補給部か生産部か?」

 

以前の返却された手帳を見ながら言う

ここの鎮守府の情報が書いてあるのだろう

他の鎮守府よりややこしい

 

「ああ、生産部に行ってもらおうかなぁって思ってるよ。近々ちょっと忙しくなるからね。」

「了解した。」

 

手帳を閉じ、うなづく

 

「・・・・・・一つ聞いてもいいか?」

「ん?何だ?」

 

手帳を懐に戻し、マニュアルを見ていた若葉に問いかける

 

「各地でだが、将官が襲われる事件がここ数か月で起きているんだ。幸い軽傷者しか出ていないと聞いているんだが何かしらないか?疑っているようで申し訳ないんだが・・・。」

「ふむ。」

 

マニュアルを読む手を一旦止め、再び手帳を取り出した

そして、提督に紙をもらい書き写した

 

「残念だが私の元居たグループや近しいものにはいないが・・・情報だけなら回ってきている。写しで悪いが私が知っているのはこれくらいだ。」

 

提督はお礼を言い受け取った

 

『提督?いらっしゃいますか?』コンコン

「大丈夫だよ~!入っといで。」

「失礼します。」

 

入って来たのは古鷹だった

手には大きな模造紙らしきものと小脇に分厚い冊子を抱えていた

 

「どうしたの?何か提案?」

「それじゃあ私はこれで・・・。」

 

若葉は邪魔になるといけないと思ったのだろう

マニュアルを持って、退出しようとした

 

「あ、待って!若葉ちゃん!若葉ちゃんにも関係あることだから。」

「?」

 

再び、元の場所に戻ると古鷹は吹雪に向かい合うように長机の前に立った

そして手に持っていた物を広げた

「・・・これは。」

「この鎮守府の改装案です。いろいろ手狭になって来たのでこの間提督と吹雪ちゃんが出かけている間に制作しました!」

 

古鷹の広げた一枚目の図面には二階建ての建屋が書かれており、執務室や提督の私室が今よりさらに大きめにとられていた

もう一枚の図面はこの三階建ての建屋の再設計されたものだった

 

「そういえば確かに今の建屋でも手狭になってはきたねぇ・・・。」

 

現在の三階建ての建屋自体も狭くはない

現在多くを占めているのは応接室だ

一見すると無駄なように思えるが、ここでは事情が違う

ここの鎮守府以外の者たちも使うのだ

例えば、ほかの鎮守府の提督や艦娘同士が来て会談になる場合も使用される

そのおかげで、毎日のように使用されている

隣のホテルの方にもあるのも合わせれば部屋数はもっとあるのだが、それを使用してもかなり逼迫している

また、設計時はもう三部屋あったのだが、書類の保存の関係で途中で改装し書庫になってしまっている部屋もある

 

「それに!提督の私室はいくらなんでも狭すぎます!」

「あー・・・。まぁ・・・ねぇ?」

「そんなに狭いのか?」

「「せまいです!(ですね・・・。)」」

 

古鷹と吹雪が口調こそ違うもの声をはもらせた

 

「これですよ!若葉ちゃん!」

 

そう言って(元)隠し扉を開けた

 

「・・・・・・これは・・・・・・たしかに・・・狭すぎるな・・・。」

 

若葉も唖然とした

 

「というわけで!新しくすることを大将にも許可を取り付けてあります。」

「おっおう・・・。手際いいね?・・・ところで俺の部屋広すぎない?三部屋も要らんと思うけど・・・。」

 

図面を見て私室の所を指さす

 

「あ、一部屋は宿直室です。」

 

 

 

 

「「え?宿直室?」」

今度は提督と吹雪が声をはもらせた

 

「はい!提督がちゃんと就寝しているかみんなで見張ることにしました!」

「いやいやいや!ちゃんと寝るから!」

「そういって何回夜に仕事してました?」

 

それを聞いた瞬間、すっと提督は目を逸らす

古鷹は吹雪の方に視線を移すと吹雪も目線を逸らした

 

「ですから希望者を募って交代で番をさせていただきます。」

 

そう言って鎮守府建屋建て替えの決裁書を渡してきた

よく見ると、吹雪と提督以外の印はすべてそろっていた

 

「あとは提督と吹雪ちゃんの印鑑だけですのでお願いしますね。」

 

有無を言わさないオーラを提督と吹雪に向ける

 

「はっはーい・・・。それじゃあ明日にでも・・・。」

「 い ま 印鑑をくださいね?」

「えっいやその。」

「 な に か ? 」

「「アッハイ。」」

 

圧力に負け、おかしいところがないかの確認だけをして印鑑を押し、書類を古鷹に渡した

 

「ありがとうございました。それで一つだけ実はまだ設計が終わってないところがありまして・・・。」

 

模造紙を裏返した

すると、一つの部屋の図面になっていた

 

「提督の執務室に関しては提督ご自身が決めた方がいいかなぁと思いまして・・・。」

古鷹は抱えていた冊子を横に置く

 

 

「執務室設置可能家具一覧表 全国明石協会最新版」

 

 

「へぇ~・・・。こんなのあるんだ。」

「私も初めてみました。」

 

吹雪と提督は不思議そうな顔をしている

 

「なんだ?二人は知らないのか?」

 

若葉は驚いた顔をした

かつては普通の鎮守府にいたから見たことがあるのだろう

 

「ちらっと聞いたことはあるんだけどね。へぇ~・・・色々なものがあるもんだ・・・・・・。」

 

分厚い冊子をぺらぺらと捲っていく

机にもさまざまのものがあり、一般的な机から高級感あふれるマホガニー製の机

艦娘がプロデュースしたものなど様々

窓枠に壁かけのインテリア、壁紙に絨毯を上げればきりがない

 

「へぇ~カウンターバーって・・・おもっくそ酒飲む気満々じゃないの。・・・んん?」

 

提督はあるページで止まった

 

「なに?これ?」

 

それは豪奢なシステムキッチンだった

他の三人は何を提督が不思議思っているのがわからなかったがページを見て納得した

 

 

 

「なんでシステムキッチンが机の一覧にあるの」

 

 

 

料理好きな提督の皆さん!お待たせいたしました!

本格的なシステムキッチンです!

調理器具一式はもちろん様々な珍しい器具も取り揃えました!

元となりましたとある泊地の提督の物には劣りますがハイクラスで最高の使い心地です!

 

「ええ・・・。」

「これは確かブルネイの提督じゃなかったか?」

若葉が顎に手を当て、思い出したように言う

「ああ。確か通称ブルネイのセガールだっけ?料理がプロ級で提督自身もかなりの武人ってことからそんなあだ名があるとか。」

「でも、あちらの場合は補給の管轄が微妙に違ったから直接会ったことはないですよね。」

「だねぇ。しかもあちらさんの提督噂によると相当な益荒男ぶりらしいし・・・。」

 

なんでも一週間のうち六日はベットで戯れていたらしい

それも一回だけじゃなくって最高で10回いたしたとかはたまた12回だ27回だなんて情報が青葉新聞で見たことがある(もちろんゴシップ系)

 

「そっそうですか・・・。」

 

微妙な空気になったの感じ取ったのか若葉が口を開いた

 

「しかし、料理は絶品らしいからな。噂では豪快な人らしいからあってみると楽しいかもしれないぞ。」

「ま、頭の隅っこに置いときますか。」

 

そして、次のページに移った時もっと驚いた

 

 

 

「風呂?」

「風呂ですね。」

「風呂だな。」

「どう見ても風呂です・・・。」

4人全員が写真を見て固まった

そこには、両面開きで机の区分に岩風呂とヒノキ造りの風呂が並んでいた

 

 

提督さん!お疲れではありませんか?

そんなあなたにおすすめなのがこの商品!

執務の合間にちょっと私室に戻って至福のひと時

はたまた、私室に戻るのがめんどくさい方は執務室にも設置可能

ボタン一つで普通の机とお風呂がコンバート可能!

お気に入りの艦娘とのひと時はいかがですか?(別途水着も販売中)

元大本営勤務の明石一押しの一品です!

 

 

「これはひどい。」

 

真顔で提督は冊子を閉じた

 

「元大本営の明石さんって確か転属しましたよね?」

「だなぁ。少し前に転属した時は明石以外にも大淀や間宮、伊良湖の運営補助役全員がまとめてどっかに転属したせいで担当の将官が別だったのにもかかわらず巻き込まれてえらい目に遭ったってぼやいてたなぁ(文月に膝枕されながら)」

 

 

あの時はさすがの大将の目にもクマができてた事を思い出す

 

 

「あ、それなら聞いたことあります!青葉に聞いたんですけどそれから少ししてケッコン関係の書類が回線がパンクしそうなペースで来たとか・・・。」

「ああ!それでも大将引っ張りまわされたって言ってたわ!しかも砂安中将まで巻き添えで数日間残業の毎日だったって言ってたねぇ。」

 

少しざまぁと思ったのはここだけの話

 

「結果として今は新しい所属艦が着任のたびに結んでいるらしいです。」

「何それ怖い。」

 

ブルネイのセガールさんより益荒男じゃないか

その場にいる全員が思った

そして、提督は二人がそれぞれ大将と中将の地位にあることを思い出し頭が痛くなった

 

(ひょっとして大本営以外の鎮守府や泊地の中将や大将は益荒男じゃないと務まらないのか?)

ひそかにそう思った

 

 

 

「という変な商品の発祥にはやばい鎮守府の噂しか無いじゃんか・・・。何なの?このカタログは・・・。いろんな意味でやばい鎮守府の総括みたいなものじゃん・・・。」

 

 

 

二つとも益荒男ぶりの噂しか出てこない

というより、後者の鎮守府に至っては裏で提督はロリペドだゲーハーでなどと心無い噂等もあるので信憑性は低め・・・

と思ったが、昔はメイド服が正装で今はまた別のきわどい服が正装になっている

そんな青葉からの情報もあるらしいので、もはやどれが本当なのかわからない

 

 

 

「もういつものレイアウトでいいよ・・・。そのうちもっとひどいものが出てきそうだし・・・。」

 

そう言って古鷹に冊子を返した

 

「そっそうですか・・・。わかりました。後日、大まかな工期や日程などの書類を持ってきますね。それでは失礼します。あ、若葉ちゃんは私と来てくれる?これからの話があるから・・・。」

「了解した。それじゃあ提督。失礼する。」

 

二人は退出していった

 

 

 

 

 

途中でカタログを閉じた提督は知らない

駿河諸島鎮守府発祥の商品がいくつかあることなど

 

 

 

 

隠し扉

 

あの部屋にこっそり出入りしたいなぁ・・・

そう思ったことはありませんか?

そんな提督さんor艦娘さんにおすすめの一品!

この商品は提督の残業が日本で一番多い鎮守府で発案されました!

ステルス性は一級品です

ただし!悪用は厳禁です!




若葉についてちょっと残ったのがあったのでそれ+ツイッターでよく絡ませていただいてる方々の小説の提督さんをちらっと紹介・・・

片方はzero-45様が連載されてます「大本営第二特務課の日常」
もう片方は昔このハーメルンで連載されてましたが、現在は別の小説投稿サイト「暁」にて連載を続けているごません様の「提督はBarにいる。」
上記二作品の作者様より許可をいただき、提督さんをお借りしました

(本編では怒られそうな紹介の仕方だけど許していただけると信じてます(;'∀'))

二作品ともとても面白い作品ですのでぜひぜひ見に行っていただけると幸いです

私から端的に申し上げますと二作品とも飯テロ作に近いです!(片方はいろんな意味で)

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