これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の小旅行

駿河諸島鎮守府滑走路

時刻はマルヨンマルマル

 

朝ぼらけの中、2人の人影があった

提督と加古である

2人共ラフな格好で、軍の関係者だと悟られないようにしていた

「それで?どこに行くんだ?」

提督は加古に尋ねる

行先は加古に決めてもらうように言っておいたのだ

「ふっふーん!ないしょだよ。っときたね!」

運ばれて来たのは彩雲

以前にもちょくちょく本土に行くとき使っていたものだ

 

 

 

余談ではあるが、なぜジェット機を使わないのかと思う方もいるだろう

答えは簡単で、用地確保の関係と深海棲艦の関係だ

プロペラ機とジェット機では着陸時に必要な距離が段違いだ

その関係で、各基地の用地確保を減らすためにプロペラ機が採用されている

それだけなら現代機を使えばいい話なのだが、そこで立ちふさがるのが深海棲艦である

いまだに原因は不明ではあるが、現代兵器は役に立たない

だが、大戦期の武器は通用することから設計図や保存機などをかき集めて再び製造している

といっても民間向けには下せないため民間機が飛ぶ場合は軍に連絡、護衛機を飛ばしてもらうことになっている

 

 

 

妖精さんがすでに乗っており、こちらに向かってグッドサインを出している

普段は小さい妖精さんも大きくなっている

・・・こっちもどんな原理かはいまだに不明だ

 

操縦席から妖精さん、加古、提督の順に乗り込んだ

あっという間に離陸し、ぐんぐん上昇していく

それと同時に寒さの度合いも上がっていく

乗る前に来た飛行服と着用したマフラーに顔をうずめてふと、周りを見てびっくりした

 

あたり一面を護衛機が埋め尽くしていたからだ

 

少し過剰じゃないかと思ったとき、違和感に気が付いた

どうやら向かっている方向は北を向いているみたいだ

東に行くにも、西に行くにも撃墜や不時着時のリスクを避けるため一回東へと進路を取るそこから伊豆諸島を北へ向かう

今回はそのまままっすぐ突っ切っている

しかも、スピードを落とす気配がない

これはそんなに遠くないところを目指しているのだろう

ここまであれこれ考えたが、行き先は決まっているのだ

あきらめたように座席にもたれかかり、目をつぶろうとしたとき機体が大きく旋回を始めていた

すでに、本土が眼下にあり着陸態勢に入っていることがわかった

「は?もう?」

思わず声が出てしまい、腕時計を見る

出発してから20分程度

提督は少し嫌な予感がした

 

 

 

 

 

「いやーついたね~!」

「・・・おう。」

ここはどこかというと静浜基地

聞きなれない人も多いだろう

深海棲艦との戦争が始まる前までは航空自衛隊の初等教育訓練基地だからだ

しかし、基地の歴史はちゃんとあり人によっては聞いたことがある部隊がある

 

日本海軍藤枝基地所属芙蓉部隊

 

夜間空襲を主戦術とした部隊の発祥の地がこの静浜基地の前身である

 

といっても途中から岩川基地に異動になってしまいあまり知られてはいない

芙蓉とは富士山をさし、基地から今もだが、きれいに見えたためその名がつけられたという

 

 

 

 

さて、ここで提督が微妙そうな顔をしている理由

それは・・・

 

「ここ俺の実家の近所なんだけど?」

「うん。知ってる。」

「やっぱりか!!」

にんまりと笑った顔をした加古を小突く

「ここまでは決めたけどあとは提督にお任せするよ~。」

「はぁ!?まじで?こっからなんも決めとらんの?!」

あっさりあっけらかんに言われ困ってしまった

 

幸いにも土日ではないため、ホテルとかは何とかなるだろう

車とかも、基地の人に言えば一般車を貸してもらえるだろう

問題は行き先だ

まさかこのまま実家に行くわけにもいかない

時刻はマルナナマルマル

 

「・・・・・・!わかった決めた。」

提督は何かを思いついたように顔を上げると基地の人に車を出してもらうように頼んだ

「お~?どこ行くのさ?」

「カツオでも食べに行くぞ。」

 

基地を出て、道路を北に向かう

その途中で国道に出る

そこを左折しようとしたとき、加古がびっくりしていた

 

「え?漁港行くんじゃないの?」

「そうだけど?」

「じゃあ右じゃないのか?」

 

 

そう、静浜基地があるのはカツオやマグロの水揚げで有名な焼津市

焼津港があるのはここから東側に当たるため、右折しなければならなはず

加古はそれを疑問に思ったのだろう

「そうだな。だけど今回はこっちだ。」

国道を西に走り始めた

まだ朝早い時間のため、車も少なく渋滞が起きていないためすいすい進む

「今回向かうのは御前崎港だ。」

「御前崎港?」

「そ、カツオの水揚げで有名な焼津港だけど実はその多くが冷凍物なんだ。今回はせっかくだから生の方を食べいくぞ。」

遠洋漁業の拠点港であるため、冷凍物が上がることが多い

もちろん生も上がることには上がるが、少な目である

理由は漁場の関係である

カツオの近海での水揚げは現在の時期は鹿児島から遠州灘まで

そのため、ここから漁場に一番近いのが御前崎港となる

「へぇ~。でも生のカツオだと高知のほうが・・・。」

「それは言っちゃいけないお約束。」

 

 

 

 

 

「おお~。」

国道をずっとまっすぐ進み、着いたのは食事処と魚市場が合体した施設

観光バスが多く停車しており、一般客は若干少ないようだ

途中休み休み来たため、時刻はヒトマルマルマル

平日ながらそこそこの賑わいを見せている

建物の中に入ると威勢のいい店主の声や客の声が聞こえる

ショーケースにはカツオ以外にも様々な魚が並べられていたり、乾物やパックで切り身にしたものなどがあちこちの店でたくさん並んでいる

「すごいなていt・・・みっちゃん!」

加古は思わず言いかけたのに気が付いて、ごまかす

「何か土産に買ってくか?」

「だね~・・・。お!これとかつまみに・・・。」

早速乾物に食いつき目星をつけていく様子に苦笑した

 

 

 

 

一時間ほど見て回り、買い物を終えた後は隣のフードコートで・・・

そう思ったがかなりいっぱいになっており、店の方は行列ができていた

「あっちゃあ・・・」

「これは無理だねぇ~・・・」

生シラスありますや本日水揚げの生のカツオ入荷など貼られているのをちらっと加古は見ていた

「・・・しょんないでこっちの弁当屋にするか。」

提督は向かい側の海鮮弁当屋を見た

こちらもシラスこそないが、新鮮な生のカツオを使っている

「次に行くとこで食べればちょうどいいかもな。」

「え?どこに行くきなのさ?」

 

加古が好きそうなところだ

 

そういうと、カツオとマグロの海鮮丼を買うと車に戻り出発した

先ほどの道を途中まで戻り、大きな鳥居の交差点で左折

さらに少し込み入ったところを行き、駐車場に車を止めた

 

 

「どこ?ここ?」

加古はきょろきょろしていた

「こっちこっち。」

提督についていくとそこには湖・・・ではなくそこそこの広さの池が広がっていた

池の奥は森林に囲まれており、なんとも神秘的な雰囲気だ

木陰のテーブル付きベンチに先ほど買った海鮮丼弁当を置く

「鎮守府のとことはまた違った静かさだねぇ~・・・・・・。」

「だろ?休みの日だと子供連れがたくさんいるんだけどな。」

「あ、これうっま!」

加古は早速カツオの海鮮丼を開けて食べている

提督はくすくすと笑いながら自身のも開けて食べはじめた

 

半分ほど食べたくらいだろうか

「みっちゃんそっちのもくれよ~。あたしのもあげるからさ。」

「はいはい。」

「こっちもうまいねぇ・・・なんかこれ飲みたくなってきた。」

クイっとお猪口を飲む動作をする

「ちょっ!このタイミングで言うなよ・・・。ホテル行く途中で買っていくか。」

「やっりー!ごちそうさん!」

「はや!」

 

 

 

弁当を食べ終えると一旦車にゴミを置きに行った

戻る途中である物を加古が近くの商店で見つけた

秋祭りにもあったさくら棒だ

「相変わらず長いねぇ~・・・。」

しみじみと店先に置いてあるさくら棒を持った

「デザート代わりに食うか。」

 

 

1m近いピンク色の棒を持って再び池の岸に戻る

途中で、神社にも参拝をしておいた

二人は隣の摂社の護国神社を参拝してから、隣の主祭の池宮神社に参拝した

先ほど座ったところは日の当たるようになっていたため、移動して木陰に移る

視点が変わり、今度は二人で池を一望できる状態だ

5月の後半のため、日差しは強くなりつつある

日向にいれば熱く軽く汗ばむだろうが、木陰にいると少し離れた海からの潮風が心地よい

ふと、水音がしたのに気が付いた

池にいる鯉がこちらによって来たのだ

提督は先ほど買ったさくら棒を半分に割り、片方を加古に渡すと池に近寄る

そして、少しちぎって水面に落とすと、鯉たちはぱちゃぱちゃと争うように食べ始めた

「ほれほれ~。」

加古も提督に乗ってやり始めた

「昔ここに来たころよくやったんだよなぁ。みんなくれるから人影を見ると寄ってくるんだ。さ、そろそろやめるか。」

ある程度餌をやったところでベンチに戻り、食べた

 

 

 

「静かだねぇ~・・・。」

聞こえてくるのは海からの風が木々を揺らす音と池の鯉たちがたまに跳ねる水音のみ

トスっと肩に重さを感じる

横を見れば加古がすでに夢の中に旅立っていた

それを見た提督も笑いかけ、くぁとあくびをすると腰掛に持たれて寝始めた

 

 

 

 

「んっ・・・。」

先に起きたのは提督だった

加古は肩からももの方に移動しており、だらしない顔で寝っ転がっている

全くと小さく苦笑しながらつぶやき、揺り起こそうとしたときだった

「・・・・・・?」

ふと時計を見る

時刻はヒトゴーヒトゴー

提督は顎に手をやった

何か妙な違和感を感じたのだ

加古を起こさないように少し体をよじり、スマホを取り出す

そして、あるところに電話をかけると4~5コール目くらいで出てきた

 

 

 

『はいもしもし!』

「あ?明石かい?」

『耳本提督ですか?どうかされましたか?』

「いやなんとなくいやな予感というかなんというか・・・。今どこにいる?」

『今ですか?呉の方にいますけど・・・。』

 

・・・それにしては静かすぎる

 

「そう?それにしちゃいつも聞こえる機械の音とかしないけど?」

『・・・あー。今点検してまして・・・。それよりも加古さんと今日はデートなんですよね?いいんですか?』

「ああ・・・。今ちょうどねt・・・おいちょっと待て。どうしてそれを知っている?」

 

案の定だ

揺さぶりをかけてみると相手がぼろをあっさり出した

 

『え?てっ提督から伺い・・・』

「嘘だな。柏崎のやつにも言ってないし、そもそも今日の休暇に関してはうちの鎮守府内の者しか知らないはずだ。うちに来て何をしている?」

『ぐ・・・。わかりました・・・。』

 

畳みかけるように質問攻めをする

明石はあっさりと折れた

ここでしらばっくれても、どうせ鎮守府でいずれは合うし話してしまった方が得策と考えたのだろう

 

「なるほどな・・・。よし!あk」ピリリリリ

『あっちょっとすみません。予備の携帯の方にも電話・・・げっ。』

 

今までの経緯を聞いて話を続けようとしたとき、電子音が電話の向こうからした

 

「なんかあったのか?」

『吹雪さんから電話が・・・・・・。ちょっと出ますね。』

『はいもしもし明石です・・・。はい・・・。はい・・・。なんでそろいもそろって・・・ああいえこっちの話です。』

 

しばらく話したのち、再び明石が電話口に戻って来た

 

「吹雪ちゃんはなんだって?」

『・・・耳本提督と同じですよ。いやな予感がしたから電話しましたって・・・どんだけシンクロしてるんですかあなたたちは・・・・・・。』

 

深いため息が聞こえた

 

「えー・・・。で、設計図をこっちに。」

 

ちょっと笑みが出たが、会話の途中だったことを思い出し、切れた会話を続ける

 

『だめです。皆さんから固く止められてるんですから!』

「そっか~・・・。今度新しい機械を入れようかなぁって思ってたんだけど・・・。」

『え?!そr・・・いやダメです!』

「え~・・・。改修資材生産施設なんだけどなぁ?」

『詳しく。』

 

 

改修資材

一般的にネジと言われているが、あくまでそれは識別章にネジが使われているだけである

実物はネジのラベルが張られた箱である

この中には工具やら部品やらが詰まっているのだが、使えるのは工作艦の明石のみとなかなか使い道が限られたものだ

しかし、この改修資材を使って艦娘の装備品を改修した場合その武装を強化することができる

さらに、改修を重ねていけば初期の能力の倍の能力まで引き上げることができる夢のようなアイテムだ

 

ところが、これには難点がある

現在生産しているのは横須賀の大本営直轄工場のみ

しかも、大半は研究所へと送られまだ改修方法がわかっていない装備品の研究に回される

その関係上、一般の提督に回る量は少なく、少し難しめな任務がこなせる提督に少量が定期的に支給されるものとなっている

 

当然明石のところも例外ではない

 

工廠がほかの鎮守府より大きいとはいえ、カウントとしては普通の鎮守府と何ら変わりない

工廠などの技術作業がメインの呉第二ではほんの少しの支給しかされない

柏崎の提督としては戦闘がメインではないから別に気にしてはいない

 

が、明石は違う

工廠に携わる者としての、研究心は人並み・・・それ以上かもしれない

そんな彼女を阻むのが、研究時に使う改修資材の不足だ

これがなければ、研究もくそもない

 

「最近本土も時折とはいえ空襲を受けるだろ?それで、ほかのところでも生産を開始して横須賀が生産できなくてもほかのところが生産していれば供給できるし、いい加減供給量を上げたいって話が上がっててな?うちが手を上げようか迷っているんだけど・・・。」

『・・・・・・いくつ支給していただけますか?』

 

しばらくの沈黙ののち、覚悟を決めたのか話をつづけた

 

「日間10個、月極めで300個でどうだ?」

『!?乗った!』

 

間髪入れず、即答だった

 

「成立だな。じゃあ設計図よろしくね~。あと吹雪ちゃんと話して'変更点'あるかもだからそれも対応してくれる?」

『えっ・・・それは・・・。』

「開発資材も同数つけちゃおうかなぁ~?」

『何なりとお申し付けください!』

「ありがとさーん。それじゃあね~。」

 

買収が終了したところで、電話を切った

明石は盛り上がっていたが、こちらは比較的静かに話していたため加古はいまだにスヤスヤと寝ている

 

時刻はもうヒトゴーヨンゴー

 

そろそろ行かなければ酒屋も閉まってしまう

「おーい起きろー。」

「ん~・・・うーん・・・。あー・・・・・・寝ちゃった?」

「おお寝てた寝てた。気持ちよかったら?」

むくりと起き上がり、背伸びをした

「そうだね~。また来たいねぇ。」

提督とさ!そうニカッとわらった

「機会があったらだな~。」

「ふっふ~ん!まだまだ券はあるもんね~!」

「おいおい・・・俺があんまり抜けるのほかのやつに負担掛けることになるから勘弁してくれよ?」

「うぐっ・・・。こうなったら負担を減らしてまた来れるように。」

「ほれ!ちゃっちゃと乗った乗った。酒屋がしまっちゃうぞ!初亀買ってやるから。」

「やりい!」

会話もそこそこに、車に乗り込んでホテルへと向かった

 

 

 

 

こののち、夜通し飲んで結局もう一日泊まらなくちゃならなくなったのはまた別のお話し




注釈もりもりのせいでめちゃくちゃ長くなっちゃいました・・・(´・ω・`)
というわけでこちらのお話に関してはここで終わりとなります

ローソン突撃してまいりましたが・・・
アクキー少な!マグカップねぇし!ゼリーとおにぎりは?
そんな状態でした・・・(´・ω・`)
でも古鷹さんと綾波、敷波確保できたからそれだけでかなりの収穫です。はい。
ツイッターの方では全然手に入れなれなかったり、逆に余裕で全部手に入ったりと様々みたいですが・・・

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