これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の決起 その3

「あー・・・暇だな。」

解熱剤が効いているため頭痛はしない。

時計をちらりと見るとヒトヒトゴーマル

もうすぐ昼食だ。

食べに出てもいいが別に食欲があるわけでもない。

本は持ってきていないし、寝るのは朝のあの時から寝ていたため眠気はない。

仕方なくスマホを少しいじりながら考えていると、遠くでチャイムが鳴った。

「こんな時に仕事したら今度こそやばいしなぁ。」

隣の島の鎮守府を見てつぶやく

でも島の開発計画くらいなら・・・

引き出しから紙を出し、思いついている限りのことを書き留め始めた。

 

宿泊棟隣接牧場 観光と糧食調達

温泉街の再整備と新店の設置 観光と退役艦娘の雇用創出

農園の規模 宿泊棟のある島に果樹園を一部設置 観光と糧食調達

 

軽く書きだしていると、机の上に置いたスマホが鳴った。

川内からのメールで内容は休業案が通ったとのこと。

取りあえずほっと胸をなでおろした。

文面の最初に残念ながらとついていたがそれは見なかったことにした。

負担軽減策については、後日必ず提案するとのことだそうだ。

深雪、望月は大本営所属の時の同僚と話したいとのことで一泊

龍驤も同期に会いに行くということで一泊

古鷹は話すこと話したから今度は俺とお話ししたいと言って今日の晩に戻ってくると書かれていた。

 

膝が震えてきた

 

「あーとーはっと・・・・・・!」

「提督?」

「おひゃぁぁぁあ!」

後ろから急に話しかけられ、スマホを落としそうになる。

落とさず済んだが、声の主からは怪しまれた。

「どうしたの?・・・あ。また仕事しようとしてたの?」

「ちちちちがうよー。そんなことするわけないじゃないの時雨君・・・多分。」

「どれどれ・・・。ねぇ提督。僕ちょっと疑問があるんだけどさ。」

紙を見てやっぱりといった顔をしたが、怒ることはしなかった。

「ん?なに?」

「これって鎮守府のやることかな?」

「・・・・・・気にしなくていいんじゃない?」

そう思ったこともあったが、正直言って開発するのが楽しかったから半分ノリでやってた。

ぶっちゃけそのせいで仕事がわずかばかり(そこそこ)増えてたりするのだが

「まぁそれは置いておいて、お昼作ったから持ってきたよ。」

部屋のこたつにはうどんが2つ置かれていた。

 

 

 

 

「ご馳走様でした。」

「お粗末様でした。」

器を洗おうと立とうとしたが時雨に休んでてと言われ、再び暇な時間となる。

ちなみに梅おろしうどんで胃にやさしく作ってくれてあった。

ちらりとスマホを見て、先ほどの件をどう時雨に伝えようか迷う。

会議の結果とかは正直どうでもいいのだ。

それより厄介というかなんというか・・・。

「提督?」

「ん?」

いつの間にか戻ってきた時雨に顔を覗き込まれていた。

「さっきから表情がその・・・二転三転しているんだけど・・・。」

「ああ。いやその・・・。」

「ひょっとして会議決裂したの?」

「ちがうちがう!まって!休業案通ったから!」

それじゃあ艤装をとってこなきゃと立ち上がろうとしてたので慌てて引き留める。

 

 

 

 

「そっか。よかったというべきなのか残念と思うべきなのかわからないけど・・・。」

「間違いなく良かったというべきです。」

こんな時に内戦なんておっぱじめようものなら日本が滅びかねない。

「じゃあ提督は何でそんなに浮かばれない顔をしているんだい?」

「・・・・・・時雨はさ。」

「うん?」

「前の提督のことはどう思っている?」

「・・・・・・それは今聞きたい?」

表情がこわばった

思い出したくもない記憶だろう。

頷くとしばらく考えたのち口を開いた

「もうどうでもいい存在だよ。思い出しはするけどね。」

珍しく目をそらし、下を向いた。

 

 

時雨の前の提督はすでに処刑されこの世にはいない

 

 

罪状は艦娘の売買

他にも運営状況は大破での進軍、轟沈が後を絶たない状態であった。

だが不審な点がいくつかある。

こういった鎮守府はたいてい艦娘への給料の支払いが法外なレベルで低かったり、性奴隷みたいな尊厳を踏みにじったことしているものだがここはそれをしていなかった。

しかも人身売買であったかくなっているはずの懐は空っぽもいいところだった。

借金やギャンブルなどを疑ったがそういった形跡はなし

 

捜査が強制的に打ち切られたなど、不審な点が多かった

 

結果軍法裁判の一審で銃殺刑となった

しかし、上告もせず受け入れた。

 

なぜこんなことをいまさら掘り返すのかというと須下中将のパイプを探っていた川内からの報告書でこの事件の根底がひっくり返るような事実が出てきたのだ。

 

「そうか。・・・今更かもしれないが前の提督の再審があるかもしれない。」

「・・・・そう。」

「杉蓋と骨田」

「・・・!。その人たちがどうかしたの?」

「骨田か。」

二人の名前を言った際、骨田の時明らかに顔が変わった。

「俺のことぼろくそに言った後龍驤に手を出して逮捕。後日軍法裁判になるとさ。」

「へぇ・・・。そうなんだ。」

「・・・その二人から提督が脅されていた証拠が見つかった。」

タカ派の調査を行っていた際、二人の手記から一人の提督を脅し艦娘の売買や戦果の横取りを行っていたことが発覚した。

 

脅しの種は一時期大本営に出向したケッコンした艦娘の身柄

出向から戻った後は艦娘の売買の件で脅されていた。

 

また、今までわからなかった艦娘の売買代金も二人へと流れており、しまいには提督の鎮守府の予算までもを横領

その穴埋めをするために提督は自身の給料を全額あてて何とか回していた。

 

「おそらく名誉回復がなされるだろう。」

「・・・・。知ってたんだ。」

「え?」

「全部知ってたんだ。知ってて・・・助けられなかった。」

 

前の提督が逮捕される3日前

いつものごとく大破進撃を命じられある子が沈んだ

その子は提督が赴任したての頃に着任した子で、提督とケッコンもしていた。

その子は僕たちと違って裏で提督への不満を言うことがなかった。

ケッコンして寵愛されているから僕たちと違うんだ

そう思っていたがあっけなく進撃し沈んだ。

報告時も提督は表情一つ変えずそうかと、一言だけでおしまいだった

あまりのそっけなさに怒りが湧いた僕はその晩、提督へ抗議の意味合いも込めて指令室へと行ったんだ。

すると扉の向こうからすすり泣きが聞こえた。

聞き耳を立てると沈んだその子の名前を呼びながら泣いていたのだ。

さらには、その前に沈んでいった子たちの名前を一人ずつ言ってひたすら謝っていた。

俺が骨田に逆らえないばっかりに

むせび泣きながらそうこぼしていた。

 

「・・・大破進撃は戦果の獲得のため無理やり出されていたそうだ。」

「うん。一回その子に聞いてみたけど昔はそんなことはなかったって言ってた。」

そばに来ると時雨は顔を提督の胸に押し付けた

「艦の時も・・・艦娘になってからも・・・僕は何一つ守れなかった。」

「・・・」

「あの時・・・・・ああすればよかったんじゃないかって・・・思うことばかり。」

「・・・・・・」

「提督と吹雪が倒れた時も、もう少し顔をよく見ていればよかった。咳に注意しておけばよかった。終業時に執務室に顔を出せばよかったって・・・。」

徐々に胸が熱くなる。

「また僕は見ているだけだった・・・。」

時雨は震えてシャツを握りしめる。

「足らればの話だ。俺も吹雪も体調を顧みなかったことは悪かったな・・・。」

そっと背中をなでてやると呼吸が落ち着き始めた。

「実は前の提督の再審請求について考えていてな。お前に言おうかどうしようか迷っていてな。」

「・・・ひょっとして。」

顔をあげると悲壮な顔をしていたので慌てて続ける。

「お前のせいじゃない。俺がお前に切り出せなかったのが悪いんだ。」

スマホを操作し、パソコンへのリモートアクセスを行う。

「これが再審請求書だ。後日俺が治ったら書面にしたためる。」

軍法会議の再審請求は被告が死亡している場合は関係者のみに限られる。

たとえ実行犯であったとしても上司からの圧力、脅迫で行っていた場合は情状酌量の余地がある。

本来の判決は減給と2~3階級の降格処分が妥当だろう。

銃殺刑を実行してしまっているため、元の階級への復級と遺族への補償が行われるだろう。

 

「それとな・・・。こんなものも見つかったんだ。」

時雨を離し、入口へと向かった。

扉を開けると、分厚い封筒が一つ置いてあった。

中には日記帳が一冊と小さな封筒が出てきた。

「これは?」

「提督の手記と・・・書置きだな。」

手記の中身はなぜ脅されることになったのかという経緯と後悔の日々が綴られたもの

そして送金口座などの証拠品

書置きにはこれを見つけた人へあてて書かれていた。

 

 

 

 

この手記はなんとしてでも骨田達に見つかるわけにはいかない

どうか見つけた人はこれを世に公開し奴らを地獄へと叩き落してほしい

そして、もし余力があったら時雨に最後までひどい提督を装えなくて済まないと伝えてほしい。

あの子には僚艦や随伴艦を見捨てるように指示をしたことがあった。

その上先ほどおそらくだが、毎夜の懺悔を見られてしまった。

時雨は優しい子だ。

このままだと怒りの矛先をどこに向けていいかわからなくなってしまうだろう。

 

我妻も含めてこのことを知った者を骨田は遅かれ早かれ絶対始末するだろう。

それだったら最後にせめて・・・。せめて愛する妻と沈めさせられた子たちの敵をとりたい。

どうか力を貸してください。

 

 

 

「・・・ばれてたんだ。」

「案外ちゃんと見ているってことだ。」

苦笑して涙を拭いた。

「さて!なかなか言えなかったつっかえもとれたし。風呂入ってくるよ。」

丸一日以上体を洗っていないし、ついでだから着替えも済ませてしまおう。

「わかった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

こたつから出て脱衣所に行く

タオルがあるのを確認し、服を脱ぐ。

「・・・なんかむなしくなるな。」

自身の腹をみてまだ20後半に行ってないのに寸胴腹が気になってきた。

出ていないが引っ込んでもいない

ちょっとつまめる当たり、昔より太ってきているのだろう。

 

 

 

「はぁ~・・・・」

湯船につかりながら首を回すとゴキゴキといかにも凝ってますという音がした。

 

「・・・・こないよね?」 ザバァ

以前ここの風呂を使ったときしれっと吹雪が一緒に入ってきたのを思い出した。

足早に一旦上がると入口の鍵を閉めた。

・・・ないと言い切れないのが悲しいかな。

 

「これで安心っと。」

「なにがだい?」

「誰も入って・・・来てる?」

後ろを向くと今回はちゃんとタオルを巻いた時雨さん

入口を見るが中から明らかに閉まっている。

ではこの時雨さんはどこから入ってきたのかな?

「露天風呂の方も個別出入り口があるんだね。」

ファッキン!

妖精さんからもっとよく話を聞いておけばよかった

 

「声に出てた?」

「なんとなくそう思っているのかなぁって思って。」

「そうかそうか。じゃあ時雨君はこちらからお帰り。」

「どうしてだい?吹雪とも入ったんでしょ?」

「・・・あれは不可抗力というか俺の注意力散漫だったのが原因です。」

「じゃあ一緒に入ってくれたら古鷹の説教の弁明をしてあげるけどどうだい?」

 

古鷹の説教が短くなる?

 

時雨からの口添えがあれば確実に短くなる

しかも条件は風呂に入るだけ

 

「って危ない危ない。ほら帰った帰った。」

こんな取引乗るわけがないだろ

むすっとした顔の時雨を追い出し、再度湯船につかる。

休まるような休まらないような・・・。




ほんとは1月24日を目指して書いていたんですけどね・・・遅筆ですいません(時雨さんの戦没日)

E-2乙で攻略してから資源回復を行っている作者です
E-1丙で精神をごっそりと削られながらも無事しおい、ユー、ニム、磯風、瑞穂、水無月、浜風、谷風、鹿島の持っていないメンツ全員を掘り終えました・・・。
最後まで出なかったのが磯風で・・・
磯風掘ってたら2人目のしおいちゃんと鹿島さんがでたり、半ばあきらめていたニムが先に出てくるし、谷風は5人浜風は6人浦風4人、嫁は3人、瑞穂は5人・・・・ect
燃料が1万吹っ飛び、68の五十鈴が79まで上がるという・・・ほかのみんなも10前後レベルが上がりました(※丙です)
E-2で堀の予定でしたが・・・
ちょっと気力が折れているので先に乙で割ってE-3攻略後のしました・・・。
おのれヲ級改め・・・!

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