「みっちゃん。ひまー。」
「じゃあお前が運転するか?」
「それはパスで。」
ガタゴトと護送車を俺は運転している。
隣の深雪はすることがなく、俺も構っていないため暇そうにスマホをいじっている。
向かっている先は大本営
・・・から少し行ったところにある無機質なコンクリ製の建物
「耳本さんに深雪ちゃんお疲れさま~。」
車をバックで入れ、建物の中に入ると文月が出迎えてくれた。
「文月~。大将とはどうなのさ?」
「うふふ。秘密~。」
いかにもほほえましそうな会話を目の前で繰り広げているが、実は今回は艤装を展開している。
「望月ちゃんは元気~?」
「おう!元気だぜ!」
「セクハラをどうにか文月から言ってもらえんかな?」
「それは~・・・。無理かな~。」
やんわりとほほ笑んでごまかされた。
文月に案内された部屋には大将がソファーに腰を掛けていた。
「文月お疲れさま。耳本君に深雪ちゃんも遠路はるばるご苦労だったね。」
「いえ・・・。ところで大将。今回の件、本当に同席されるのですか?」
「もちろんだとも。しっかりこの目で見たいのでな。」
今日行うと事はある者達の取り調べ。
深雪に事前に報告書をもっていってもらって、長い間検討されていたことが今回実現した。
取調室
外観同様ただその一言しか書かれていない無機質なプレートの鉄扉を開けるとそこには
「キサマラ・・・!」
「・・・・メンドイ。」
重巡リ級と戦艦ル級が後ろ手で縛られ座らされていた。
先日のシャングリラ殲滅作戦の残党だったこの二人は、うちの方へと進軍してきたため迎撃。
取り巻きの艦は撃沈したが、この2人は喋れるということが偵察で分かったため捕縛し、情報を引き出すことにした。
「とその前に深雪。あれお願いね。」
「はいよ!」
深雪は二つの黒いチョーカーを出すと二人の首つけた
「!ナニヲする!」
「リ級あなた声が・・・。」
「ル級様も。」
明石工房謹製の深海翻訳機
正確には翻訳ではなく聞き取りやすくしているだけなのだが、便宜上翻訳機とした。
ほっぽちゃんにも支給している
「さて聞き取りやすくなったところで質問だ。きm「北方海域」・・・え?」
「私たちの所属は北方海域。北方棲姫直属6番隊の隊長だったわ。」
「ル級様!!」
「こっちのリ級は私の部隊の副官。」
「え?ああ・・・。え?」
「私たちが本隊と別行動したのは西方へと逃れるため。増援要請も兼ねた任務だったわ。最もあなたたちに迎撃されて失敗したけどね。」
あっけらかんと情報をぺらぺらとしゃべった。
「ええ・・・。どうしよ。」
「・・・わしもどうリアクションしたらいいのやら・・・。」
思わず大将の顔を見たが大将自身もどうしたらいいのかわからず呆けていた。
「あら?ずいぶんあっさり信じているわね?」
「いやだって・・・。」
隣のリ級が大口を開けたまま青い顔で固まっているのだ。
それに気が付いたル級が顔の前でおーいと言いながら手のひらを振る。
「何で全部言っちゃうんですか!?」
気を取り戻したリ級が詰め寄る。
びっくりしたようにル級が飛び跳ねた。
「これじゃ私たち完全に用なしですし!万に一つ釈放されたって帰れないですし!どうするんですかこのタコ!」
「タコはひどくない!?」
「タコじゃなきゃなんなんです?!ブタですか?ナスですか?!」
「ちょ!怒るわよ!」
何やら漫才が始まりそうだったので咳払いをすると、静かになった。
「あなたのことは北方棲姫様より聞いたことがあるわ。」
「ほっぽちゃんから?」
「ええ。友人の電が時折駿河諸島の提督の話をしていたと言っていたわ。」
「もしかしてそれを知っていたので?」
「知っていたから話したんじゃない。外の会話から自分がいる場所がわかったからね。」
鎮守府の地下に一応牢屋が設けてある。
使ったことは数回だが、深海棲艦を入れたのは初めてだった。
「防音処理しとけばよかったかなぁ・・・。」
「とりあえず私が言えるのはこれくらいよ。直属ったって6番目で優先順位は低いし、なにより私たちは特例で配置されたようなものだからね。」
「!!!」ガッ!
「リ級痛いって!」
「なんでもっと情報持っているフリしないんですか!」
「いやよ!めんどくさいじゃない!艤装取り上げられてる時点でほとんど詰んでるし、下手にのらりくらりして拷問なんていやよ!」
「話しちゃったら私ら完全に実験体か始末されちゃうじゃないですか!やっぱタコじゃないですか!」
「タコタコタコタコうるさいわよ!上司を能無し扱いってどうなの!?」
「事実を言ったまでです!!」
完全に喧嘩を始めてしまった。
もうどうしたらいいのかわからない。
完全にこちらの予想に斜め上・・・斜め上?斜め下だろうか?
とにかくとんでもないところにワープしてしまった
取りあえず
「・・・深雪スペシャルかましたれ。」
「わかったぜ。」
ゴキャ!メキャ!!ベキベキベキ!!!
「「すいませんでした。」」 チーン
うなだれる二人を前にため息をつく
「大将。ある程度情報は聞けたので後は今後の話になってしまいますがよろしいでしょうか?」
「ああ。なんというか・・・・・・うむ。わしも頭を冷やしてくる・・・。」
文月行くよと言って頭を抱えながら退出していった。
「はぁ・・・。」
「あの・・・・。」
「どうした?」
リ級がおずおずと話しかけてきた。
「私たちはいったい・・・。」
「・・・・・・まぁ実験体かな。」
「!・・・そう・・・ですか。」
「陸上で畑でもしてもらいながら。」
「え?」
しょんぼりとした感じだったリ級が再度顔をあげた。
「うちっちとこで監察付きだが陸で暮らしてもらう。もちろんさっき言ったように畑仕事でもしてもらいながら。」
「それって・・・・。」
「戦わなくてもいいのかしら?」
「そうなるな。」
ル級は無表情だったが隣のリ級は少し安堵した顔をした。
「・・・ひょっとして。」
「私たち二人は正直言って戦闘は嫌いよ。」
「深海棲艦にもそう思うやつがいるとは・・・。」
深海棲艦のランク的にル級やリ級などは会話可能だが交渉等はできない上、非常に好戦的で嫌戦の者はいないとされていた。
「ここからは私の推論よ。」
ル級曰く
深海棲艦は憎悪の象徴
艦娘は希望の象徴
だが、深海棲艦の中にも希望があるし、艦娘の中にも憎悪がある。
そして、その比率が個々によって異なるということだ。
ル級やリ級、ほっぽちゃんはその比率がトントンに近いらしい。
「正直言って私はどっか誰も来ないようなところで小人数で気ままに暮らしたいと思ってるわ。北方棲姫様も近しい考えだったの。だから特別に直属部隊にいたわ。」
「西方の勢力も似たような考えを持つ嫌戦派です。北方棲姫様曰く西方の勢力は当分動くことはないとのことで私たちを逃がすため、西方への進撃を命じたんです。」
大将を帰してしまったのは失敗かもしれない(余計な仕事が増えた。)
結局調書をまとめて提出、ル級とリ級を再度護送車に乗せて鎮守府へと戻ったのは夜がだいぶ更けたころだった。
「みっちゃん。」
「深雪か。」
執務室は暗く、半月の明かりで相手の顔が若干見えるくらいだ。
「まだここにいたんだ。前いいか?」
うなずくと向かいのソファーに腰を掛けた。
「昼間のことまだ気にしているのか?」
「・・・まぁ。」
「西方作戦での教官のことは仕方なかった。」
「・・・」
「何があったのかは知らないけどタカ派が絡んでるってのはわかった。」
うつむいて何も言わずにいると目の前に少し赤みがかった深雪の顔が入ってきた。
「ほら。しっかりする!明日に響くよ?」
ほほをぺとぺちたたかれると不思議とおかしくて笑いが出た。
「よしよし。笑った笑った!じゃあ飲もうか。」
「なんで!?」
ついさっきまでの空気が逃げてしまった
しかも目の前に取り出している酒はウィスキー
ウィスキーは蒸留酒のため腐りにくいことから遠洋航海の際には重宝される
そしてそれを好む艦娘も多いという
「俺それだけは無理ですから!それだけは勘弁してください!」
「ええー!・・・教艦の言うことは?」
「ぜっt・・・明日に差し支えるってさっき言ったじゃないですか!」
「じゃあハイボールで。」
「それもウィスキーじゃないですか!」
じりじりと壁際に追い詰められていく
せめてもの救いは隠し扉があること
隠し扉を知っているものが増えてしまうが背に腹は代えられぬ
「逃げるが勝ちだおらぁ!」
「え?!誰?みっちゃん?」
「は?」
隠し扉をくぐり部屋に入ると誰かベットに寝ていた
「おま・・・。人のベットで・・・。」
「・・・てへぺろ?」
幸いこれからしようとしていたところらしく見ずには済んだ。
「へ~こんなことろに隠し扉なんてあったんだ。」
「!望月後は任せた!」
「え?みっちゃん?どうしたの急に?」
慌てて部屋を出て、近くにあった花瓶をドアノブにたたきつける。
「なんだったんだろ?」
「あれ?もっちーじゃん。みっちゃんは?」
隠し扉を潜り抜けて提督を探すが見当たらない
「今そこから・・・ガチャン・・・出てったけど。」
「・・・・壊されちゃったな。なぁもっちー?」ガチャガチャ
望月がさした扉はドアノブが回らずあかなくなっていた。
「ん~。どうした?」
「せっかくだから飲もうか。」
「お断りします(゜ω゜)」
「まぁまぁそういわず」
「あたし飲めないからさ~。」
「まぁまぁそういわず」
「・・・ちょっと飲んだ?」
「うん。」
「・・・」
「・・・」
そっとそばの壁をたたいてみるが隠し扉なんて都合のよいものはない
深雪の背にはこの部屋唯一の脱出口
窓に近いのは深雪
つまり
「・・・・覚えてろ耳本ぉ!!!」
イベントは新規艦は松風と潜水艦みたいですね
潜水艦は助かるんですけどドロップぽいのが難点ですかね
山風みたいに攻略中に来ればいいんですけど・・・
水無月と磯風、卯月もドロップしないかなぁ・・・