本土でのシステムトラブルはいまだ復旧のめどが立っていないらしく、平常より少し少ないくらいの仕事量を今日はこなす。
夏木から電話があり、本土の連中は護衛艦で向かうから船上でパーティーということになった。
夏木はすでにこちらにいるため、港で待ち合わせることになった。
秘書艦もつれていくから祭りにでもと誘われ吹雪に聞くと
「楽しそうですね!みんな元気かな?」
と喜んでいたのでOKを出し、電話を切った。
執務は他の鎮守府の終業と同じくらいに終わらせ、吹雪に待ち合わせ場所を伝え、別れた。
「やっほー。みっちゃん。」
「おう。福引の時以来だな。」
港に行くとすでに夏木がおり、手を振っていた。
その時、かすかだが汽笛の音がした。
「来たみたいだな。」
妖精さんがわらわらと管制室から出てきて接岸準備を行い始めた。
おそらく今回は佐世保にいる
佐世保らから瀬戸内海へと行き、呉を経由して大本営、その後伊豆諸島沿いにこちらへと向かったのだろう。
「みっちゃんおひさ~。」
接岸が終わり、最初に降りてきたのは先ほどちらっとだが名前を出した
背丈は俺と同じくらいで、そこそこ・・・かなりのイケメンだ。
横須賀、呉、舞鶴、佐世保は規模が大きすぎるため、第二、第三の予備機能を備えた鎮守府がある。
エリート街道をまっしぐらで、イケメン、そこそこ高身長
当然性格も明るく気さく
見合いの中に放り込んだらすぐにバーゲンセールのごとく取り合い必死だろう。
だが悲しいかな。
天は人に二物を与えず
とはいったものだ
「おう・・・。叢雲君も久しぶりだな・・・。」
叢雲がリード持っておりつながっている先が彩雲の首へと結ばれていた。
「久しぶりね。耳元中佐。」
「・・・吹雪ちゃんは地下鉄駅前にいるからいっといで。」
「わかったわ。それじゃあ耳元中佐に迷惑をかけるんじゃないわよ。」
リードをこともあろうに俺に持たせて待ち合わせ場所へと向かった。
「えー!みっちゃんさじ加減できる?これとかこれとか」(モザイク品の山)
「・・・ちょっと頭冷やしてこいや」ドゴ
リードを離し、ドロップキックで海へと突き落とす
大体わかるだろうが彼はMだ。
ここまで残念なMというのは小説や漫画ではよくある話だが現実に見た時にはびっくりしたものだ。
あっこういうのもいいかもとかそんな声を聴かないようにすると人影が見えた。
「みっちゃん久しぶりだろ。」
「みっちゃんおひさ~。」
船のタラップから何の音だろうと覗き込んだのだろうが音の発信源を見て察したようだ。
柏崎大佐、呉第二鎮守府所属
「久しぶりだね。システムトラブルは大丈夫?」
「いやー。ちょっとやばいだろ。」
「ほんとに最悪です。せっかくのご主人様とのお祭りデートがパーになっちゃいました。」
そういう二人には目にうっすらとだがクマが見える。
呉は技術関連の処理が多めであり、明石工房は柏崎の管轄である。
さらにシステム関連もやっているため、明石の処理やらシステムの復旧やらでそれどころではなくなってしまったのだろう。
久しぶりの友人に情けない恰好は見せられない
そんな努力だろうか。
コンシーラーやファンデーションでごまかしているのがわかる。
「あいつが満足して上がってくるまで結構時間あるから船で寝たほうがいいんじゃないか?」
「そういうわけにもいかないだろ。常識的に考えて・・・。お前だって普段はこんなんだろ?」
「まぁ・・・。それはその・・・。」
漣を送り出したのち、提案したが断られた。
それどころか痛いところを突かれ二の句が継げずあきらめた。
「それよりあいつも待っているから船内に行くだろ。夏木の奴も行っちまってるだろ。」
あたりを見回せばだれもおらず、いたのはそこそこ身長のあるひょろながとガタイがいい面長の男だけだった(海には窒息プレイ中のイケメンドM)
「はや!」
「いくだろ」
柏崎に案内され船内を歩き、パーティー会場へとつくと、少し小柄な男が夏木と話し込んでいた。
大本営作戦指揮部のトップであり当然俺の同期の深打少将だ。
「あっ耳本君久しぶり~。」
夏木との会話を切りこちらを向いて手を振る。
「おう。深打も久しぶり。電はもう向かったのか?」
断っておくが大湊の電とは違う。
「うん。今頃吹雪ちゃんたちと合流しているころじゃないかな?」
「私たちも始めましょ。海でプレイ中の奴を引き上げないと。」
だなと言って柏崎がどこから取り出したのか碇を担いで甲板へと向かった。
「では!久しぶりの再会を祝して!」
「「「「「かんぱーい」」」」」
体に碇を巻き付けたまま
柏崎曰く
「察しろだろ」
「アッハイ」
久しぶりに全員そろって会うのはいつ以来だろうか。
「ところで深雪教艦と望月教艦がどこかの鎮守府に転勤したのよね。」
「え?」
「みっちゃん知らないのか?常識的に考えて知っているものだと」
「てっきり知っているものだと思ったんだけどね。みっちゃんあの二人のお気に入りだから。」
口々に言われ一瞬戸惑ったが納得した。
転勤の情報は艦娘によって重要度が左右される。
大本営の教艦ともなれば行き先を誰にも言えないだろう。
「耳本君のところに案外いるかもね。」
そういったとき周りはナイナイといった感じで首を振った。
「それはないだろ。いたら今頃使用済みの食器を狙っているだろ。」
ちらりと食器を受け取りに来た人を見ると望月ではなかった。
変装しようにも取りに来たのは高身長の男性。
二人か三人がかりなら変装できるだろうが同士を集めなければならない。
「深雪教艦は悪乗りしなければ基本いい人だし、望月教艦もターゲットにならなければ基本無害だしね。」
・・・・うちにいるんだよねぇ。
「いっそ嫁にでも貰ったら?」
「それは・・・・」
「・・・そういえば柏崎君、明石君ともケッコンしたんだよね~?」
幸い深打が助け舟を出してくれて何とかなった。
「ああ。常識的に考えて重婚をするつもりはなかったが・・・明石に迫られだろ?それでな・・・漣にも明石にも悪いと思っているだろ。」
「えー?ちゃんと責任取るって宣言したんでしょ?気に病むよりしっかりと二人を見てらほうがいいと思うけど。」
柏崎は漣、明石
夏木は五月雨で深打はまだだったはず
二人とも大本営勤務のため詳細は伏せられているのだろう。
「・・・・夕張が最近な?」
「「「「あっ」」」」
これ芋づる方式に増えていくパターンや
解決策はないため話題を変えた。
宴もたけなわ
もとっくに過ぎ床には酒瓶があちこちに転がっている
それと同時に人も転がっている
つい先ほどまで夏木は五月雨と涼風、白露型についてのかわいさを彩雲に語り、
柏崎は最初こそ静観していたが、だんだんとウイスキーが回ってきたのか自身の嫁艦についての良さを語りに首を突っ込み、そのまま寝つぶれるまで話していた。
深打は酒に弱いため早々に寝つぶれていた。
一人お猪口に残った日本酒をあおると甲板へと向かった。
甲板に出ると酒で火照った体には心地の良い風と祭りばやしが聞こえる。
最近やたら吸うようになってきたたばこを取り出し火をつける。
携帯灰皿に一本目を落とし、二本目を咥えたところで火が差し出された。
見れば先ほどまで寝つぶれていたはずの深打だった。
「となりいい?」
「酔いは大丈夫か?」
「うん。耳本君に教えてもらったチェイサーをやっていたからだいぶ楽だよ。」
顔色も悪くなく、吐く気配がないことに安心した。
「今度さ。」
「うん?」
「電とケッコンするんだ。」
「それはめでたいじゃないか。なんでさっき言わなかったんだ?」
「みっちゃんはまだあの事気にしているの?」
「・・・・・・・」
「あれは大本営が悪いし、みっちゃんに責任はない。」
「それでも俺はだめだ。」
「ここの子たちはみんな待っているよ?」
「それでもだ。・・・お前やっぱり来る時のんだろ?」
見れば顔が白くなって息が浅くなっている。
おそらくチェイサーの水と間違えて柏崎のウオッカでもあおったのだろう。(柏崎はなぜか度の強い酒が好みのようだ)
「・・・・ぎもぢわ」
「まてまてまて!海だ海!」
魚に餌やり中・・・
「全く・・・こういうのは今日はないと思ったんだけどな。」
「ごめん・・・。」
「で?式上げるのか?」
「うん。日取りとかはまだだけど。」
「みっちゃーん。ふうちゃーん!」
ぬらりと扉の陰から出てきたのは美女(酒瓶担いだ)・・・もとい夏木だった。
「なぁおい。この展開って。」
「なっちゃん顔が白いねー。」
「みつけ・・・・うぐ・・・・ぎm」
「知ってた。」
そういって海に顔を向けさせ餌やりを行う。
いつもと同じ終わり方で解散と相成った。
「これがみっちゃんの使った食器一式だね?ありがとう。これは取っといてね。」
「ありがとうございました!」
望月を甘く見てはいけない
改めまして新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
早くこのシリーズ終わらせねば・・・。
そして終わった後で登場人物をまとめなくては・・・。
最終夜は・・・誰かもうお分かりですよね?