これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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今回はしっとり(風味)の過去話を少しだけ・・・。



駿河諸島鎮守府の秋祭り 第二夜

「本日は榛名がお相手いたします。」

最低限の仕事(間食休憩はもちろんあります)を済ませさっさと自室に引っ込もうとすると部屋の前にはこれまたきれいな浴衣を着た榛名が陣取っていた。

青地に白梅は目立ちすぎず地味すぎず

なんともチョイスがうまいなと思った。

「ひょっとしてこれから毎日誰かしらいんのか?」

「おそらくいると思いますよ。さぁ行きましょう!」

 

 

昨日来たばっかりだが今日はまた違った様相を見せていた。

今日は神輿が出ているのだ。

こちらのほうには山がある。

ちょうどいいので山頂に神社を造営した。(祭りといえば神社だ。大本営から補助金まで下りたからおそらく立ててほしかったのだろう)

小さなものだがちゃんと神主さん(兼任のため本来は本土にいる)もいるちゃんとした神社だ。

昨日と人の量は変わってはいないが、道の真ん中を神輿が通るため、少々通りにくい。

「提督。」

榛名が手を差し出してきた。

黙って手を取り人込みをかき分け、神輿を横目に見ながら進む。

みこしに乗ってはしゃいでいるのは涼風と谷風だろうか。

法被を着た吹雪型の姿もちらほら見える。

 

 

 

人込みを抜け神社の参道へと来た。

いずれ待っていれば神輿はここへ来る。

が思ったほどまだ人がいないところを見ると先に参拝をしてしまったほうが楽そうだ。

鳥居の前で一例

手水で清め、拝殿に一礼し、賽銭を投げ込み鈴を鳴らす。

二礼二拍手一礼

一般的な参拝を済ませ再び神輿を見るのに一番よさげなポイントを探す。

「提督。あそこはどうでしょう?」

参道の曲がり角に設置してあるベンチ。

そこならちょうど道に面しているため座りながら見れるだろう。

そのとき、ちらりと視界の端にあるものが映った。

「榛名は席とっといてくれ。ちょっと買い物に行ってくる。」

「はい!お待ちしております。」

 

 

 

 

「お待たせ~。人があんまいないからすぐ買えたよ。」

「ありがとうございます!・・・?提督これは?」

綿あめ、焼きそば、たこ焼き

お祭りの定番品だが榛名が疑問に思ったのはそれではない。

アメリカンドックに見えるがソースがぬってあり、魚肉ソーセージや青のり、紅ショウガが表面についている

「これはどんどん焼きと言ってな。俺も実際に見るのは初めてなんだが母親が話していたのを思い出して買ったんだ。」

山形の内陸部の定番らしいが実際に見たのは初めてだ。

味はシンプルにおいしい。

この一言に尽きるだろう。

「ん!おいしいです。提督ありがとうございます。」

「お礼はいいよ。こっちこそいつもホテルのほうありがとうな。」

「いいえ。・・・前線に出れませんし、ここで新しく見つけたこともあります。」

 

 

榛名は戦闘ができない。

正確にはできるのだが、一回の戦闘で疲労困憊してしまうのだ。

通常艦娘は兵器の部分である艤装に砲撃時の演算を任せている。

だが連戦が続くと艤装内の演算機能の効率が落ちてくる。(そこにつながっているオレンジや赤のランプが点灯することを赤疲労やオレンジ疲労と呼ぶ)

そこで自身が多少の肩代わりをすることにより、効率の低下を防ぐのだ。

当然オレンジや赤の状態では肩代わりするタスクが増えるため命中率や回避率に影響してくる。

榛名の場合艤装内の演算機能が原因は不明だがある時を境に使えなくなっている。

そのためすべてを自身で行わなければならないのだが当然膨大な演算を行うと頭がショートしてしまう。

それでも経験や感覚で何とか1戦だけはできるのだがそれ以上は絶対にできない。

しかも回復までに丸1日を要してしまう。

これでは前線にいることは不可能だ。

幸運にも榛名の前提督は俺の知り合いだった。

本来であれば解体するべきところを何とか食い止めたが残念なことに榛名はそこの鎮守府を離れることになった。

 

 

 

「前の提督さんには感謝してます。必死になって私を解体せずに済む方法を見つけてくれたんですから。おかげ様で新しい考え方や素敵な仲間に出会えたんですもの。」

遠い目をして微笑んだ。

「それにこんなに素敵な人と出会うきっかけをくれたのです。これ以上の感謝はありません。逆にこんなに幸せになってしまっていいのでしょうか。」

腕に組みつき幸せそうな顔をした。

「あついねぇ!お二人さん!!」

どぎまぎしていると大声で茶化され、前を向くといつの間にか神輿は目の前へときており声の主は神輿の上で両手の扇子を振っていた。

「よっしゃ!二人の恋路を祈っていっちょやりますか!」

そおーれわっしょいわっしょいといった掛け声とともに神輿を持ち上げては左右に揺らし鈴を鳴らす。

ゴールを前にして盛り上がりは最高潮になる。

「じゃあなぁ!お二人さん!今度は前夜祭でうちの提督と会おうぜ!」

嵐のように過ぎ去り、人も移動していったところで我に返る

「いきましょうか!」

「ああ。」

帰り道にしだれかかる榛名を鎮守府までエスコートし、別れた。

 

「幸せもんは俺のほうだなぁ・・・。」

しばらく気持ちを落ち着けるため部屋には戻らず、普段はあまり吸わないたばこを取り出し火をつけ、紫煙とともに吐き出した。




しっとりになっているのかこれはw?
次のお相手は慌てないでがボイスにある艦娘です。

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