これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の取材 その1

どもぉ!青葉です!

今回は駿河諸島鎮守府にお呼ばれされてきました!

国内でも有数の旅館と名高いここの旅館の1泊2日の無料券をいただけるなんてついてますねぇ。

この間の此処の記事の原稿料は相当でしたし、また新しいネタがあるといいな!

 

 

そう思っていた時が私にもありました。

目の前にはにこにこと愛想のよさそうな此処の司令官と、その両脇を艦娘が固めている。

一見するととても歓迎されているのに思えるが・・・

 

目が全く笑っていない!

何か失礼なことをしただろうかと必死に記憶をさらってみたが、思い当たることはなかった。

「さてさて駿河諸島鎮守府にようこそ青葉君。私がここの司令耳本だ。こっちは総秘書艦の吹雪でこっちが補給部長の時雨だ。」

「よろしくお願いします。」

「よろしく。」

それぞれ紹介をされ挨拶を2人に返す。

こんな形で圧迫面接みたいなを受けることなんて・・・・。

待てよ

はたと青葉は気づいた。

「今回お話をしたい件なんだがね。」

私はこの三人の写真を撮って・・・

「これはうちの許可を取ったかね?」

無許可で掲載した。

威圧するかのようにテーブルにたたきつけられた新聞の三面記事。

取材をしていないためほとんど妄想で書いた文面。

見れば3人とも笑みは崩していない。

いわゆるアルカイックスマイルで、こめかみには青筋が浮かんでいる。

落ち着くのだ青葉

そう。言い訳を何とか考えるのだ。

「言い訳なんてした日にゃあ兵糧攻めにしてやるからな?」

・・・そういえばここは日本の心臓ともいわれる補給拠点。

うちの司令官にくれぐれも機嫌を損ねないように言われていました。

 

 

 

詰んだ。

 

 

 

将棋に例えるなら全部駒を取られた状態。

敗軍の将ができること

それは

 

「すみませんでした!!!」

 

無様に、なりふり構わず命乞いをし、わずかな望みを託すことしかできなかった。

 

 

 

 

「で?なんでまたこんなことを?」

ひたすらに土下座を繰り返す青葉に土下座をやめさせ、ため息をつき再度説明を求める。

「その・・・。私たちは各鎮守府の取材をして記事にしたり、特集を組んだりしているのですがこちらの鎮守府だけ取材の許可が下りないので・・・・。」

取材許可願いなんて書類がだいぶ前にあったのを思い出す。

あの時は取材を受けるような余裕がないくらいの繁忙期だったため、すべて不許可にしていた。

「私はまだ配属されて間もないので採用されそうな記事が書けなくて・・・」

「で、うちの記事を出せば採用はほぼ確実。ちょうどいいところに盗撮ではあるがネタも転がっていたと。」

「はい・・・。」

ため息をつきながら立ち上がり机へと向かいあるところへと電話を掛ける。

 

『はい!青葉新聞です!』

『駿河諸島鎮守府の耳本だけど局長いる?』

『あ!私です!記事について何かありましたか?』

『どうもこうも取材許可を出してないんだ。』

『やっぱりそうでしたか~。大丈夫ですよ。まだ試し刷りを大本営の一部に渡しただけですから。あの子にはきっちりとお灸をすえますので・・・』

『ああいや今ここにいる。実は・・・』

この先は声を潜め周りに聞こえないようにする。

青葉の顔色はすでに青を通り越して真っ白になっている。

それもそうだ。自身の趣味としてだが記者の道が絶たれる話を目の前でされているのだ。

それだけならましかもしれない。

下手をすれば解体処分なんてこともありうるのだ。

もっと言えば自身を好いてくれている司令官に責任の一端が行くかもしれないのだ。

 

司令官に及ぶ被害だけは避けねば

 

受話器を置き、再びソファーに腰を掛ける。

「というわけでだ。青葉君」

「ひゃい!・・・あの!お願いします!」

「あーうんそれについてだけどさ」

「司令官に責任はないんです!どうか青葉の身一つで!」

「え?ちょっと?」

「解体していただいても結構ですから!司令官にだけは!!」

「ちょっとちょっと!」

「後生ですから!!!あの人にだけは何もしないでください!!!!」

「話を聞かんか!!!!!」ゴン

 

 

 

「というわけであの記事を差し替えるからそのための記事を書きなさいな。あの写真だってこっちに落ち度がないかといったらないと言い切れないからね。」

「・・・・・へ?」

何とかなだめすかし(チョップを頭に見舞い)、落ち着いたところでことの顛末を話した。

お灸をすえるつもりでわざと小出しにしていたが、どうやら緊張のあまりとんでもない方向へと思考が飛んでしまったようだ。

「いいん・・・ですか?」

「さっきも言ったとおりだ。あの出来事は消せるものではないけど、流石に新聞に載せられるのは許可できない。だったら代替の案を出してやるのがこちらの最大の譲歩だ。」

「あ、ありがとうございます!」

「それからもう一つ。趣味に熱心なのはいいが今回みたいのだけはやめなさい。一時はいいかもしれないが君の周りの人に迷惑や心配をかけてはいけないよ。」

特にといったのち小指を立てた。

「はい!」

ってちがいますよ!と赤い顔をして否定した。

 

明日の取材開始時刻を話し合い、まとまったところで青葉を旅館への案内を吹雪と時雨に頼み、俺は再び机の上の電話を取る。

 

『はい、こちら内浦鎮守府の海野ですが?』

『もしもし。駿河諸島鎮守府の耳本ですが』ガタン

『失礼しました!なにかありましたでしょうか!』

先ほどまでの少し緩めの声が一転。はきはきとした返事に代わる。

相手のほうが階級が上なのに敬語を使われることはもうすでに慣れっこなので気にせず話を進める。

『実はそちらの所属艦娘、青葉についてお話が』

『うちの秘書艦が何か粗相を?!それとも盗撮でもしましたか?!』

流石はというかなんというか読めてはいるみたいだ。

『ええまぁそうですね。それについてお話が』

『大変申し訳ございません!!どうか平にご容赦ください!!!』

『いえそのですね』

『青葉の粗相は監督者である私の責任です!!どうか彼女の処罰を軽くはしてやってくださいませんか?!私の首でも構いません!ですから彼女だけは何とかしてやってはくださいませんか?!!』

『ですからこちらでもう話がまとまってまして!』

『なんと!今すぐ向かいますので何とか執行だけはお待ちください!!!』キヌガサ!スグニスルガショトウニイクゾ!!

『話を聞け!!!!!!!』

 

夫婦とはこうまで似るものなのだろうか・・・?


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