これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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前回のあらすじ いつもの風景とべーイや思惑と発覚

※初めてかもしれないけどR-15くらいあるかも


駿河諸島鎮守府とレイテ沖海戦 後編

「司令官はおるか!!おるな!」

 

龍驤が扉を吹き飛ばしてはいってきた

入って来るや否やそのまま提督の腕をひっつかむと走り出した

 

「ちょいちょいちょい!!一体どうした!」

「どうしたもこうしたもあらへんわ!事情は付いたら話すから今は黙ってついてきてぇや!」

「あーわかったから!引っ張るな!服が伸びる!!つーか転げるわ!!!」

 

腕を離してもらい、肩を回してから渋々龍驤の後を駆け足でついていった

 

 

 

ついた先は基地航空隊の滑走路

なのだが、夜中だというのに戦闘機や爆撃機が次々と着陸してきており、物々しい空気が漂っている

工程表では夜間着陸はここまでなかったはず

何よりも、いつも笑顔な妖精さんたちの表情がこわばっているのが拍車をかけていた

 

 

 

管制塔の中の室内は想像を絶していた

飛龍、大鷹どころか今は店で忙しいはずの鳳翔や入ったばかりのガンビア・ベイまでもが決しては広くない室内でバタバタと動き回っていた

 

 

 

「なんじゃこりゃぁ!」

「なんだもあらへんわ!みんな陸との通信が付かなくて臨時の退避を行ってるんや!」

「陸と連絡が付かない?そんな馬鹿な・・・・・・昼の時点では」

 

そういいながらポケットのスマホを操作し、大本営につなぐ

が、聞こえてくるのは無機質で間延びした音だけだった

 

 

「・・・・・・!」

 

横須賀鎮守府、陸軍省、海軍省と順番にかけていくが、聞こえるのは同じ音ばかり

 

どうすればいいんだ

何が起きているんだ

 

そんな言葉が頭の中を駆け回る

が、時間は待ってくれなかった

視界の端に突如赤い光が上がった

 

緊急信号である

それも一つや二つではない

赤い信号弾が空を埋め尽くし、不気味に赤黒く空を染めている

 

 

「吹雪!試験信号を大本営、横須賀、小田原、下田、清水、焼津、御前崎、八丈島、浜松、名古屋、舞鶴、呉に送れ!」

「飛龍は阿武隈を起こしてここに連れてきてくれ!状況説明は任せた!」

「大鷹は川内と一緒に宿泊の艦娘を至急起こせ!非常事態宣言を出す!」

「ガンビア・ベイ!君はこの近隣に無線で輸送船は行動禁止、護衛艦は対潜警戒せよと平文でいいから周囲に流せ!」

「鳳翔!すまないが空いてる滑走路から護衛の戦闘機を念のために出してくれ!船団に何かあっては困る!」

 

『了解!』

 

 

 

 

 

「司令官!試験信号の反応が返ってきました!帰ってきたのは御前崎、浜松、名古屋、舞鶴、呉です!八丈島はノイズが多くしっかりとした聞き取りができません。」

「わかった。ありがとう」

 

地図を見ながら思案する

連絡が付かないのはここから東方面

試しに、八丈島から少し南に行った青ヶ島の通信基地に連絡を取ってみるとあっさりと連絡が付いた

これにより鎮守府から北東一体が通信不能となっているのが分かった

 

「阿武隈ただいま参りました!」

「起こしてすまん。今宿泊組の臨時部隊を編制中だ。その指揮を執ってもらいたい」

「了解です!」

 

現在付近の輸送船団は西日本方面への回航船団が4つ、東日本方面が2つ

フィリピン方面へ出立予定が21つ、南方方面が15つ、こちらへ入港予定が9つ

そして、停泊中が5つ

 

「まず連絡が付いた西日本方面はこのまま浜松基地の指示のもとそれぞれのもとに回航が決まった。東日本方面と比較的規模が小さい入港予定3つは御前崎へ、南方方面は父島、母島、硫黄島の各基地への分散して退避を要請した」

「ということは残り27船団を・・・・・・」

「とりあえず受け入れる。ドックを開放してでも入れるぞ。今夕張が停泊中の船を詰めてドックの中にある護衛艦を進水させているはずだ」

 

進水式はまだ先だったが、こうなっては仕方がない

もし何か異常が見つかれば艦の放棄も視野に入れている

 

「了解です!一水戦旗艦は伊達じゃないというところをお見せします!」

 

不安そうな顔を一瞬見せたが、覚悟を決めてくれたようだ

 

「頼む」

 

状況ははっきり言って芳しくない

沖堤防を活用したとしても5つほどの船団は溢れるだろう

フィリピンへの輸送船団は現地到着までは大本営との定期交信で偽装航路を毎回設定しながら向かう

半数はすでに指示は受けているが、受けていてもその先が分からないもしくは中途半端に受け取っていて確認が済んでないなどの理由で引き返してきた船団だ

島と島の間のところに停泊してもらうしかないが、下手をすると座礁してしまう可能性もはらんでいる

できればやりたくない

かといってとりあえず中途半端な指示や作戦が伝わっているかわからない現地司令部に交信を取りながら従えとも言えず、退避を了承せざる得なかった

さらに本来ならば先ほどの指示は暗号文で出さねばならなかったが、電波状況が悪く途切れ途切れの状態では混乱を招きかねない

平文で指示を出した以上傍受されているのを前提に動かねばならないし、沖での停泊などもってのほかだ

そしてすでに湾内には、最初の船団が入港を始めている

 

伝達も考えれば猶予は長くはない

 

 

 

「お困りのようね」

「瑞鶴?!来てたのか!」

 

艦娘の装いではなく、しっかりとした提督の装いだったがどこかすす汚れているように見える

後ろに控えているサラトガも服の裾があちこち破け、埃っぽい印象を受ける

 

「敵と会敵したのか?すぐにドックの手配を」

「必要ないわ。今は人員が足りないんでしょ?うちの子たちも使ってちょうだい」

「すまんが助かる」

 

吹雪に目配せをして電話をさせ、親潮がサラトガを連れて行った

 

 

「これが報告書よ。おそらく敵の増援だったんでしょうけど」

「了解した。読んでる間に吹雪からこちらの現状を聞いてくれ」

 

 

八丈島、駿河諸島の中間付近で北北東方面へ進撃中の空母4隻を含む連合艦隊を発見

薄暮時の発見だったため、夜戦まで行い全艦撃沈に成功した

 

 

 

「・・・・・・にわかに信じがたい報告だな」

「ええ。私も耳を疑ったわ。今の現状も含めて」

 

闇夜で電探が使えない状態とはいえ敵機動部隊をここまで見過ごしていたのは危ないところだった

 

「うん?待てよ?瑞鶴そっちの港に船団5つを受けれる余裕はあるか?」

「もちろんよ。うちはまだ無制限封鎖を発動していないから問題ないわ」

「助かる!そっちの第二艦隊の子たちにはバケツの使用許可書を発行するからすぐに向かってくれ!」

 

 

 

 

とりあえずの危機は去った

そして次の問題は大本営との連絡手段だ

いくら何でも未だに気が付いていないということはあり得ない

うまく事が運んでいるならばあと1時間もすれば大本営が陸路でこちらと通信が取れる基地に到達するだろう

 

しかし、伏魔殿ともいわれる大本営

とても一枚岩になるとは思い難い

最悪かつ一番ありうる状態は会議が踊ってしまっているケース

孤立している状況の打破ではなく、責任追及と押し付け合いに邁進している可能性だ

こちらから連絡を取ろうにも、恐らくは無制限封鎖無警告攻撃が許可されていて危険度が高い

大将がうまく音頭を取れればいいが、大将は別の場所で幽閉されているだろう

中将では影響力がまだまだ弱く、音頭を期待するのは難しい

 

大きなため息をつくと、目の前の電話が鳴った

淡い期待で視線を向けるが、内線を示すランプが無情にもついていた

 

 

 

「もしもし?」

『司令官か?悪いけどちょっちこっちにまた来てもらえるか?』

「どこかからか通信が来たのか?」

 

再度少し期待する

 

『フィリピン方面からの通信なんや・・・・・・悪いけど。』

 

声色なのか長い付き合いなのか

察したように連絡先を告げられた

 

 

 

 

 

管制塔につくと、書類を渡された

 

一通り目を通すと、エンガノ岬沖での敵機動部隊の誘引に成功さらに一部部隊を打撃を与える大戦果を挙げたうえで前線基地の拡張に成功

満を持して主力艦隊がサマール沖へと突撃し敵を撃滅しながら進撃

レイテ湾へも突入を決行、首魁である護衛棲水姫の部隊を発見

敵艦隊はスリガオ方面やエンガノ岬方面に分散、誘引されており五分の戦いに持ち込め、前衛艦隊を殲滅し本隊に痛打を与えるまで追い込んだ

 

そして、報告書はそこで終わっていた

龍驤に続きを出すように目配せすると非常に渋い顔をして短い文が書かれた紙をよこした

 

 

「敵の首魁を討ち取るため西村艦隊との夜間再突撃の指示を請う連合艦隊副艦長門・・・・・・は?」

 

突拍子もないことに間抜けな声が漏れ出る

 

「その長門はうちらが知っとる長門や」

 

やれやれと首を振りながらソファーに身を投げ出して寝っ転がった

 

「こっから大本営を通じて西村艦隊を中心とする支援艦隊と連絡を取る予定やったけどそれが無理になったからうちらが音頭をとれっちゅうこっちゃ」

「・・・・・・長門はうちっちの立場をわかっていっとるんかいな」

 

反対側のソファーに腰を掛けて海溝のようなため息をついた

 

寝っ転がったままポケットから煙草を取り出して吸い始めると、机の上を滑らせながら箱を此方によこした

胸ポケットを触ると、おいてきたことを思い出した

龍驤がこちらに火のついた方を向けたので、煙草を取り出して火をもらった

 

「わかっとると思うで?わかっててこれをよこしたんや。向こうの武蔵を黙らせたうえでな。ベイ!」

「はっはい!どうぞ・・・・・・」

「・・・・・・なるほどな」

 

ガンビア・ベイからもらった書類を見て納得した

支援艦隊の編成表だったが、そこに書かれていたのは

 

時雨(駿河諸島鎮守府所属)

 

「こいつはしょんないわ」

 

火をつけたばかりの煙草を一気に吸うと口いっぱいに苦みが広がり、のどを焼くような苦しさが襲った

大きく紫煙を吐くと濛々とした煙が目の前を覆う

 

 

 

もし、一時的とはいえこのタイミングで指揮を執ることになればフィリピン南部の作戦の大筋も決めることになる

それは大本営の面子を丸々潰して、手柄だけかっさらう形になる

ただでさえ睨まれてるうちには野心がありますと宣言するようなものだ

 

だから提督のスタンスであれば引き受けることはない

佐世保(彩雲)(柏崎)に回して中央への足掛かりにでもしてもらおうと考えていた

 

その引継ぎまでの時間で犠牲になるのは本隊を待つ支援艦隊だ

 

 

 

 

 

あの子に繰り返させるものか

 

 

 

 

 

「連合艦隊旗艦と支援艦隊旗艦につなげ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もしもし?山城かい?

・・・・・・ほらね?やっぱり受けたでしょ?

え?

・・・・・・ふふふ

心配無用さ

僕の・・・・・・僕らの提督だよ?

彼の指示なら負けないさ

 

そうだねぇ・・・・・・彼女の言葉を借りるけど

 

 

今度は

 

 

 

 

 

 

絶対、大丈夫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室に入ると、ちょうど吹雪が隣接の秘書艦室の方から出てきた

 

「あっ!お疲れ様です。今お茶を入れてきますね!」

 

うんと言って椅子に思いっきりもたれかかり、頭を上に向けた

 

「親潮さんは仮眠のために秘書艦室へ案内しておきました」

 

お茶を机の上に置きながら言った

隣の机に戻ろうとした吹雪の手をつかんだ

不思議そうな顔でこちらを振り返ったので、膝の上を軽くたたく

少し顔を赤らめると、膝の上にゆっくりと腰を掛ける

やわらかく、軽く温かい重みが膝に伝わってきた

手を伸ばしてこちらに抱き寄せた

抵抗せずに、ゆっくりゆっくりともたれかかってきた

背がくっつき、心音が感じられるようになると頭を戻し、ひじ掛けに頬杖をついて静かになった海を見る

 

 

 

「5年たつんだよなぁはぇえもんだ」

「最初はこういうことになるとは思わなかったですけどね」

「全くだわ」

 

肺が空っぽになるくらいため息をつく

息を吸うと、吹雪の香りが鼻をくすぐった

 

「なぁ吹雪ちゃん」

「なんですか?」

 

さっきまでは早鐘のようだった心臓もゆっくり刻み始めた

 

「俺は抱え込む覚悟を決めたよ」

「・・・・・・」

「下で誰かが動いてくれるのを見るのはもうできそうにない」

「・・・・・・」

「ついてきてくれるかい?」

 

もぞもぞと動く気配がした

顔を向けようとしたが、勇気がなくそのまま海を見ているふりを続けた

窓ガラスには吹雪が耳打ちしようとしているのがうっすらと映っている

 

 

 

 

 

「嫌だといったらどうします?」

 

 

 

 

 

少し予想してなかった答えに思わず振り向くと、当然吹雪の顔が目の前にあった

 

 

が、表情を確認する間もなく吹雪の緑色の瞳しか見えなくなった

 

 

同時に口に柔らかい感触が伝わってくる

 

 

 

何かが弾ける音がした

 

 

 

右手を後頭部にやると、離れようとした吹雪を抱きよせ再び重ねる

 

貪るように吹雪の中に入れながら強く抱きしめた

 

舌を奥の方に入れかき回し、唾液と理性をかき混ぜる

 

時折チュッチュパという水音混じりのリップの音が欲を掻き立て、音のたびに自身がゆっくりと起き上がっていった

 

 

 

息を整えるために一度離れる

上気したほほとうるんだ緑の瞳、口からはだらしなくあでやかな舌がのぞいて端から筋が垂れている

 

掻き立てられていた欲がたまりにたまり鎌首を持ち上げようとしたところで、キィと小さい音がどこからか聞こえた

 

かき混ざりドロドロに溶けていた理性が急速に固まった

 

固まった理性が持ち上がった鎌首と自分自身を押さえつけていると、吹雪が抱き着いてきた

吹雪が息を整えるたびに女性の豊かなふくらみが体にあたり、そのたびに欲を殴りつけて抑え込む

 

 

 

「剣さんだからこそ・・・・・・ここまでついてきたんです。たとえサボ島の先だって一緒なら・・・・・・行ってあげますよ」

 

 

ゆっくりと離れると微笑んだ吹雪の顔があった

 

 

どこかまだ迷いがあったのだろう

吹雪が膝から降りると、立ち上がって両手でほほを叩いた

仁王立ちし笑って声を出す

 

「大本営の顔面に挑戦状をぶん投げた!こっから忙しいぞ!」

「はい!」

 

 

 

元気な返事に提督は満足そうに頷いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あわわわ・・・・・・!吹雪さんも司令も大胆な・・・・・・!まさかバレて・・・・・・ないわよね?)




毎度おなじみお久しぶりでございます(;´∀`)
これにてレイテ沖海戦編は終了・・・ではなくもう少しだけ続くんじゃ・・・
あとしれっと提督の下の名前発表があったり

最後の投稿からすでに秋(?)イベ、春のミニイベも終わり落ち着いてきたころじゃないかなぁと
秋イベでは思い出せば南方作戦だと聞いてじゃあ後段はセイロン沖やな!と早合点して結果ソロモンの史実艦を結構使っちゃうという大失態(何とかなりました)

そして何かとうちにとっては不吉な『ミニ』イベではながもんタッチがまぁ出ない出ないで最終的に資源が燃料弾薬がラスダンだけで15万吹き飛ぶという凄惨な出来事が・・・(ちゃんと甲とりました)

まぁそんな些細な事よりも3月も終わるというのに・・・


なんで吹雪ちゃんの三越グラないねん!!
なんでなん?!と心穏やかではございません

それはそうと読者の皆様はコロナの方は大丈夫でしょうか?
志村さんの事は本当に残念なことだったと作者も思っています
偉大なスターが見送りも家族に看取られることもなくというのは寂しくも怖いなと・・・
手洗いうがい、体調管理と不要不急の外出は控えましょう

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