これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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※前回のあらすじ 締め出された


駿河諸島鎮守府の清閑 その2

「ううん・・・・・・。」

 

提督の目の前の甘そうなパフェとは正反対の苦い顔をした親潮がうなり声をあげる

それを横目に提督は苦笑いをしてパフェを食べ始めた

 

 

 

張り紙を見た後、廊下にいた白衣姿の加古を捕まえて話を聞けばあっけらかんと答えた

 

「3人とも休暇取ってないでしょ?だからあの3人にいっといた。」

 

吹雪は何か用事ができたって言って本土へ行っちゃったからね

2人もよい休暇を~

 

 

のんびりとした声色で工廠の方へと歩いて行ってしまった

 

 

 

かくして急に舞い込んできた休日だが、こうしてよこされると困ってしまうものである

本土に行ってもいいが1人で何をするか詰まる

親潮連れてどこかに行くかも考えたが、突然のこと過ぎてどこに行ったらいいものか

 

とりあえず間宮に入って今後のことを考えることにしたわけだが

 

 

 

 

「とりあえず食べるさ。おいしくなくなっちゃうよ?」

「すみません・・・・・・。でもどうすれば・・・・・・。」

 

しょんぼりとしてスプーンを手に取る

 

「まぁわかるけどねぇ。俺も吹雪ちゃんもしょっちゅうこうなるし。」

「そうなんですか?」

「突然休み押し付けられるからどうしようかいつもここで考えるんだ。」

 

 

突然押し付けられるのが嫌なら、自分たちで自主的に休め

そういわれたら何も言えない

 

「今まではどうしていたんです?」

「俺はいつもここでのんびり寝たりして過ごすかなぁ。下手に外に出て戻ってこれないとまずいし、実家に帰るといろいろうるさいし。」

「うるさい・・・・・・とは?」

 

提督は気まずそうにほほを掻く

 

「別に親子仲が悪いんじゃなくてさ。もう帰るのかい?仮病使ってもうちょっといなさいよ!って言われたりね。今は特に・・・別件がね。」

 

歯切れ悪くいったところを聞きたそうだったが、聞かれる前に話を続ける

 

「吹雪ちゃんは知り合いのところや妹さんのところに顔出しに行ったり、自分と同じくここで過ごしてることが多いかな。」

「でも突然訪ねてしまっていいのですか?」

「大丈夫大丈夫。海軍のデータベースに行けばその子が休みかどうかわかるから。親潮も誰か調べる?」

 

そういって、ポケットからスマホを取り出そうとした

そして、はたと気が付いた

 

スマホがないのである

執務室に置きっぱなしになってしまったのだろう

 

「?どうかなさいましたか?」

「いや・・・・・・ところで親潮は誰か調べたい人はいるのかい?」

「陽炎姉さんや不知火姉さん、黒潮さんですかね。それぞれ違う場所にいますが・・・・・・。」

「了解。じゃあちゃっちゃとこれ食べていこっか。」

 

 

 

「望月いるか?」

「んあー?みっちゃんどったの?」

 

渉外のプレートがかかった部屋を開けると、望月がだらしなくソファーの上で寝っ転がっていた

 

「おいおい。もっとしっかりしろや・・・・・・。」

「今は休憩中だもんねー。それともこっちでも・・・・・・。」

 

そういいながらスカートに手を伸ばすがやめなさいと言って軽く頭をはたく

 

「ちぇー。で?ほんとにどうしたの?」

「ちっとパソコン借りるな。」

 

その一言を聞くと今まで見たこともないスピードで起き上がり、パソコンの前に座った

あまりの豹変ぶりに提督と親潮は顔を見合わせた

 

「どっどうしたんだ?」

「え?いやぁ。ちょっとね。セキュリティを強めにしてあるから司令官でもあんまり触ってほしくないなって。」

「そっか。そういうことならしょんないわなぁ。」

 

提督と親潮はパソコンの画面側に回った

 

「で、何を調べるのさ。」

「全艦娘の予定表を出してもらえるかい?」

「え?それなら執務室・・・・・・ああ。そういえば古鷹や時雨がいってたなぁ。りょーかい。ついでだから外泊許可のも出すね。」

 

ささっと打ち込んで画面に出す

 

「えっと陽炎姉さんは・・・・・・。あっ長距離の遠征。」

 

提督は親潮に席を譲らせ、望月を部屋の隅に連れてきた

 

 

 

「部屋まで閉め出されたんだけどなんとかならん?」

「えー・・・。大方執務室の抜け道がありそうだから封鎖されたんじゃない?どっちにしろ3人とも用事でここにもういないしねぇ。」

「スマホが閉じ込め食らってるから結構困るんだよ。何か連絡あったらまずいし・・・。」

「それはなんとかなるっしょー。緊急のはこっちにもくるし呼びいくからさぁ。」

 

「司令!望月さん!ありがとうございました!」

 

 

どうやら親潮は調べ終わったらしく、こちらに顔を向けていた

 

「了解。空いてそうな人見つかった?」

「はいっ!黒潮さんが明日休みで外泊届けも出していないので少し連絡を取ってみます!」

 

それではと言って退出していった

 

 

「じゃああたしの部屋で寝泊まりするかい?」

「さぁ!俺も旅館に行かないとな!それじゃ!」

 

提督は脱兎のごとく部屋を後にした

後ろからまてー!という声と足音が5分くらいしたのは聞かなかったことにした

 

 

 

 

榛名に話をと思ったが、忙しいらしく話は難しいといわれてしまった

大鷹が何とかつかまり、少しだけ話ができた

どうやら、遠征隊の宿泊は落ち着いたが今度は正月休みの振り替えを貰ってきている人が多くホテルも旅館も満室とのこと

手が足りないため、提督専用室は開けてあることを言うと大鷹も足早に仕事に戻っていってしまった

 

「明日はどうするかなぁ・・・・・・。」

 

炬燵に電源を入れ、部屋に寝転がる

眠気はあまりなく、時折転がりながら考える

と、視界の端にあるものが映り込む

実家から送ってもらった荷物たちだ

 

何かあるかな

 

そう思って手を伸ばす

が、炬燵から出なくては届きそうにない

あとでいいやと再び潜り込むとなかったはずの眠気が増してきた

 

 

 

 

「司令。突然すみません。開けていただいてもよろしいでしょうか?」

「・・・・・・ん?」

 

まどろみから目を覚まし、とっさに時計を見る

ヒトハチサンマル

夕食の時間の頃合いだ

 

「ちょっとまってね。今行くよ。」

 

扉を開ければ、声の主の親潮が気まずそうに立っていた

 

「どったの?まぁとりあえず中に入るさ。」

「すみません。失礼します・・・・・・。」

 

 

 

「ははぁつまり俺とおんなじってわけかぁ・・・・・・。」

 

親潮を反対側に座らせ、お茶を出して話を聞く

黒潮は、明日の休暇は何をしようか考えておらず2つ返事で会うことを了承してくれたらしい

問題は、会計部の部屋が閉め出された時、部屋の中に自室のカギを置いており自室からも締め出されたことだ

 

スマホで古鷹、時雨、阿武隈に連絡を取り、阿武隈がカギを持っていることが分かったが、単冠湾の方へといってしまっており、すぐに戻れないとのこと

電話口で、向こう側の阿武隈の様子が分かるほど謝罪された

 

艦娘寮の他の部屋のマスターキーは執務室

仕方なく、ホテルや旅館の空き部屋をと思ったが満員御礼

 

「そこで申し訳ないのですが明日までこちらに泊めていただくのは・・・・・・。」

「いいよ。親潮がいいなら別にかまわんけーが。」

「ありがとうございます!」

 

 

その後夕食を済ませ、部屋に戻ってくると先に風呂に入ると親潮に断って露天風呂に向かう

 

 

寒さに体を震わせながら源泉の近くへと近寄る

明日は暖気が流れ込むから暖かいと聞いてはいるが、まだ南の方にあるのだろう

 

「失礼します・・・・・・。」

「そんな気はしてた。って大丈夫かいな・・・・・・。」

 

生真面目な親潮の事だ

お背中をお流ししますと言って入ってくる可能性が十分想像できた

そう言い聞かせ、横を向くと湯に入ったばかりなのにすでに真っ赤になった親潮がいた

 

「だっ大丈夫です!!お気になさらず!!」

 

若干声が上ずっているのを聞いて提督は吹き出した

 

「いやぁ・・・・・・吹雪ちゃんと会った時のことを思い出すなぁ。」

「え?吹雪さんですか?」

 

緊張が少しはほぐれたらしく、どもりが消えた

 

「初期艦として着任したばかりのころは親潮みたいな感じだったのよ。」

 

今のように、自然体ではなく緊張からくる力みも入ってたけどね

そう付け加えた

 

何もなく、あるのは小屋一軒

風呂はドラム缶風呂だし、部屋の仕切りはなくて2人布団を並べて寝た

午前に少しだけの書類を精査して午後は食料調達の釣りや探索

そんな生活が吹雪を自然体にして行った

 

「もちろん親潮は親潮だからね。」

 

親潮の顔が少し曇りかけたのを見てフォローを入れる

 

「無理をせんでも自分らしくいればいいのよ。無理をしないようにね。」

 

立ち上がって洗い場へと行く

頭を洗っていると、後ろに気配がした

 

シャンプーを流すと、そっと背中をこする感触が伝わる

 

「私が・・・あたしがしたいだけですので気にしないでください。」

「ほんとにそれでええのかい?」

「あら。司令が好きなようにしろといったのでしたまでです。」

 

提督はそうかとだけ返事した

それ以外無粋だろう

そう思い飲み込んだ

 

 

 

 

 

 

時間は少し戻ってヒトハチマルマル

 

吹雪は佐世保第二鎮守府に来ていた

正門前では、姉妹である叢雲が立って待っていた

 

「こんばんは叢雲ちゃん。」

「悪いわね。突然呼び出したりなんかしちゃって。」

「ちょうど急な休みをもらって私も困ってたから気にしないで。」

「・・・・・・あんたまさか。」

 

吹雪はやばいと感じとり、叢雲に中に入ろうと進めた

叢雲ももういいわと半分呆れた返事を返した

 

 

 

「それで?相談ってなぁに?」

「そのことなんだけどね。少しだけ待ってもらえる?」

 

秘書艦室に入ると、吹雪は荷物を降ろしソファーに腰を掛けた

叢雲は、自身の机の上の電話を取り誰かを呼び出し始めた

 

「?」

 

頭に疑問符を浮かべる吹雪を他所に、手短に会話を終えるとお茶とお茶菓子を用意して戻ってきた

お盆には、お茶が3つ

吹雪、叢雲自身そして叢雲の隣にお茶を置くと叢雲もソファーに腰かけた

 

「ごめんなさいね。今日相談があるのは私じゃないの。」

 

口を開くと同時にノックの音が聞こえる

それにどうぞと返事を返した

 

「失礼します。霞ただいま参りました!」

「お疲れ様。こっちに来なさい。」

 

全員が席に着いたのを皮切りに叢雲が話し始めた

 

「今回あなたを呼び出したのは霞が相談したいことがあるからなの。」

「霞さんが?」

 

叢雲に促され霞が口を開く

 

「突然お呼び立てしてしまい申し訳ありません。実は・・・・・・。」

「あ、ごめんなさい。その前に・・・・・・。霞さんの普段の話し方で大丈夫ですよ。」

「それはありがたいわ。単刀直入に言わせてもらうとあってほしい子がいるのよ。」

「あってほしい子?」

「ええ。長門を徒弟に持ち演習では武蔵を打ち負かしたある駆逐艦に会いたいってやつがいるの。」

「それって・・・・・・。」

 

自分のことを言われているのが吹雪には分かった

叢雲が続きを話し始めた

 

「まだその子はレベルが低くてね。教練途中なのだけど・・・・・・。」

「どこで嗅ぎつけたのかうちの秘書艦がその駆逐艦と同期の姉妹の事を知って私に間接的に頼んできたってわけ。」

 

おそらく、まだ教練の途中の子は秘書艦と話す機会や接点が少なく頼みづらかった

そこで、練度が高く付き合いがあり彩雲とケッコンしている霞に頼み込んだのだろう

それを察した吹雪は笑いを少しこぼした

 

「なっ何笑ってんのよ!」

「ううん。叢雲ちゃんと少し似てるなぁって。」

「へ?あたし?」

 

振られると思ってなかった叢雲はきょとんとした顔をした

 

「うん。普段ツンツンしてるけどほんt」

「あーあー!!!それで?!受けるの受けないの?!!」

 

叢雲は気恥ずかしくなったのだろう

大声で吹雪の声をかき消し、話を戻した

 

「うん。いいよ。明日一日だけでもいいのなら見てみるね。」

「ありがとうございます!」

 

霞は立ち上がり深々と頭を下げた

 

「それじゃ。今日は叢雲ちゃんの部屋に泊まろうかなぁ?」

「なんでよ!ちゃんと部屋取っといてあるのに!」

「たまにはいいじゃない。それともいや?」

「いっいやじゃ・・・・・・ないけどぉ・・・・・・。」

 

そのやり取りを見ていた霞は叢雲が形無しになるされるのを見てこういったとか

 

 

 

 

「あそこまで叢雲を形無しにするのは本気の司令官以来だわ。」




驚異の54時間メンテ!
皆様は禁断症状は出ていませんでしょうか?

作者はすでに出ています(白目)
フブキチャンドコ・・・

本来であればメンテの初日か中日に投稿予定でしたがここまでずれ込んでしまいました・・・
メンテ終了まであと6時間ほど・・・
その間の暇つぶしにでもなれば幸いです

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