これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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前回のあらすじ

時雨の帰還と磯風の着任
涼月の亡失?


駿河諸島鎮守府と亡失? その2

涼月は駿河諸島西方45キロ地点にて、輸送船団を守るため殿を務め亡失したものとみなす

 

亡失した涼月は新たに建造された者をトラック泊地へと派遣する

ついては、トラックへの航路を駿河諸島経由ではなく南方の諸泊地を経由する

 

また、当時僚艦だった磯風は索敵を怠ったものとして減給10分の1を3か月間とする

 

 

「以上が大本営からの回答だ。」

 

 

提督が目の前にいる磯風に告げた

提督の表情は不服そうなのに対し、磯風は納得した表情だった

 

これでは磯風に責任を押し付けているようなものだ

 

「そういう顔をするな司令。誰かが責任をとらねばなるまい。」

「わかっちゃいるけーがね?うん・・・・・・。」

 

それでも表情はやはり納得いかないという顔だった

不備があるのは軍の哨戒網や航路の選定だからだ

 

「いつまでもこの問題を引きずっては涼月にも悪い。こうなってしまった以上、私は全身全霊で任務をこなすのが最大の供養だろう。」

 

 

涼月が行方知れずになってから1週間が経過していた

各泊地や基地は落ち着きを取り戻し、駿河諸島も日常へと戻り始めていた

 

提督もこれ以上この話題について掘り下げるのはやめた

もし、処罰が解体処分などだったら食ってかかるところだが、この処罰を見る限り形式的なものに近いことが分かる

とはいえ不満であることに変わりはないのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ改めて、君が担当する業務の説明なんだけど・・・・・・。」

「けど?」

 

提督は言いにくそうに磯風を見る

それに対して磯風は首を傾げた

 

「ちょっと問題があってね。」

 

具体的に言うと、輸送船の座礁事故が発生していた

座礁自体はそれほどきつくもなく、沈没や重油の流出が起こったなどの重大な事故ではない

 

 

問題なのは外国船籍ということ

 

 

折の悪いことにロシア船籍というおまけつき

ここら辺の不規則な海流の流れが分からず、夜間に座礁してしまったようだ

明け方までに抜け出そうとしていたらしいが、日が昇ってしまったため、あきらめて救援要請を出してきたのだ

 

 

しかし、なぜロシア船籍の船がこの海域を航行していたのか

 

 

もしかすると何か偵察のために来ていたのかもしれない

その危険を考えて、阿武隈以外にも白兵戦が行える深雪、長波の護衛を付け、偵察機をローテーションで飛ばし、戻ってきていたゴーヤには海中からの護衛を頼みこむ万全の態勢で向かった

そして、通常の巡回は皐月と川内が代行している

 

 

 

 

早い話、警邏関係の仕事を教えられる人も手が空いていて普通に鎮守府を案内できる人もいないのだ

 

 

 

「そんなわけで今日は俺が島内の案内をするよ。」

「それはありがたいが仕事はいいのか?」

 

磯風はちらりと机の上にある二つのタワーを見やる

 

「ああ、急ぎのは片付けてあるからね。それじゃ吹雪ちゃん行ってくるね。」

「はい!わかりました!」

 

 

隣の机で鼻歌交じりに書類を片づける吹雪に声をかけるとニコッと笑った

 

 

余談だが、最近はやっているアニメの主題歌らしい

まるで本人が歌っているかのようで、時々夕張が聞きたいと頼み込むらしい

ここ最近よく聞くため、提督自身もいつの間にか口ずさんでいることが多い

 

 

 

 

 

 

磯風を連れて鎮守府内を案内して回るが、拡張に次ぐ拡張ですべての紹介を一日でするのは至難の業だ

そこで、主要なところだけに限定し案内する

10時に執務室を出たが、最後の案内場所である農園にたどり着くころにはすでに暗くなり始めた17時の終業時間だった

 

 

 

 

「最後にここが農園だけど・・・・・・。」

「あら。提督?何か用かしら?」

 

17時の終業時間に合わせて作業を切り上げてきたのだろう

道具の入った青いバケツ片手にル級がビニールハウスから出てきた

 

「・・・・・・。まさかこんなに間近で見ることになるとは。」

「その子は新人さんかしら?」

 

磯風は表情こそ変えないものの、動揺しているのが声の様子から分かった

ル級は磯風を一瞥した

 

「磯風だ。よろしく頼む。」

「ル級よ。普段はここで農作業しているからよろしく頼むわ。たまに蠅がわくこともあるからその時はよろしく。」

「この間は赤い蠅だったかな?」

「いいえ。赤と青だったわね。深雪が見事なジャーマンを決めてくれたわ。」

「さすがは深雪教官だな。」

 

磯風が納得したように小さく頷く

 

「ところで提督。最近この子以外に新しい子を入れたのかしら?」

「長波のことか?」

「いいえ。違うわ。」

 

ル級は首を振る

 

「最近ふらっと現れては作業を手伝ってくれるのよ。最初はほかのところの子かと思ったのだけれど、一週間連続で来てくれるのよ。」

「・・・・・・ほう。」

 

提督は少し目をそらして考える

ル級はさらに続ける

 

「手際がものすごくよくてね。最近リ級が別のことを始めちゃって大変になってきたところなのよ。」

「そういえば最近鉱床の妖精さんと話してるらしいね。」

「そうなのよ。・・・・・・まぁ好きなことを見つけたのならそれはいい事だけれども。」

 

 

ル級はどことなく寂しそうな顔をしている

が、慌ててそれは置いといてと話を戻した

 

 

「特にかぼちゃの手入れとかはすごいのよ。即戦力として申し分ないわ。」

「・・・・・・。うーん。」

「かぼちゃ・・・・・・。」

 

提督と磯風は何か引っかかるという顔をした

 

「?」

 

その反応に、ル級が不思議そうな顔で二人の顔を交互に見る

 

「ル級・・・・・・。まさかとは思うがその子は銀髪で・・・・・・。」

「鉢巻きをしていなかったか?黒い鉢巻き。」

 

提督と磯風の話を聞いてル級は驚いた

 

「そうそう!何よ!まだ紹介していなかったのね?今日は時雨と来たからてっきり私は鎮守府の新人さんかと・・・・・・。ってあれ・・・・・・?」

 

 

腕組みをして、目をつぶって頷いた

再び顔を上げると提督と磯風が遠くで走っているのが見えた

 

 

 

「えー・・・・・・。まぁいいわ。お風呂入ってリ級とビールで晩酌しましょ。」

 

 

 

 

 

 

「しぐれぇええええ!」

「どっどうしたんだい!?」

 

艦娘寮の時雨の部屋の扉を力任せに開く

あまりの勢いに、いつも冷静な時雨も動揺していた

 

「涼月!ここにいるんだろ!出てこい!」

 

同じく、冷静沈着な磯風も声を荒上げて声を張り上げた

 

 

 

 

「あっあの・・・・・・。何か・・・・・・御用でしょうか・・・・・・。」

 

観念したのか、おずおずと奥の部屋から銀色の髪に黒い鉢巻きをした子が出てきた

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど。」

 

テーブルの上にパサっと紙を放る

2人の剣幕におびえながら、涼月が差し出してきた大将からの手紙だ

封蝋が2重にされていることから、よほどのことだろうと覚悟をして開けた

 

 

 

 

 

ここにいる涼月はトラック泊地に仮着任予定で、一週間ほど前に磯風とともに輸送船団を組んでここへ向かっていて、先ほど亡失認定された涼月本人である

 

 

ではなぜ亡失認定された涼月がここにいるのか

 

 

 

結論から言ってしまえば、大将の計画だった

 

 

 

もともと自衛力を高めるために要請していた人員補充が、炭鉱の発見によって満足にできなかったことが今回の発端だった

正規空母は無理でも、せめて防空駆逐艦を1人くらいは着任させておきたい

 

しかし、普通に着任させてはどうやっても角が立つ

そうこうしているうちに、自身の昇進(左遷)の話が出てきてしまった

そこで、逆にこの状況を利用してしまえと考えた

 

 

 

涼月には事前に話を通しておき、磯風とともに小さい無人の輸送船団を組む

そして、大湊で保護されているほっぽちゃんに配下の深海棲艦で水雷戦隊を組んでもらい、駿河諸島の哨戒網の外で沈まない程度に襲ってもらう

磯風と別れ、少ししたら鉢巻きを落としておき、後発の話を通してある時雨と合流する

そして、ばれないように時雨が戻るついでに輸送していた嗜好品が詰まったドラム缶の中の一つに潜んで駿河諸島へと向かう

時雨が駿河諸島についたのを見計らって、水雷戦隊が磯風を開放する

 

 

 

これで涼月はあたかも撃沈されたことになる

後は、大本営で亡失認定と登録抹消された後に、現れれば必然的に邂逅したという処理で済ませられる

邂逅した艦は、原則その鎮守府が保有することが定められており、提督の不正行為や汚職でもない限りは大本営側が異動させることはできない

 

普段であればとんでもない綱渡りの作戦だが、現在の状況であればもし発覚しても大将は現場を離れてしまっているため知らぬ存ぜぬを通しても不利益が少ない

 

時雨が復帰早々に用事があるからというのは、涼月を自室でかくまうためのものであり、運んできた古い漁船を島の開拓されていないところに係留するためだったらしい

 

 

 

「磯風、涼月すまない。」

 

提督は深々と頭を下げた

 

「なぜ司令が謝る必要があるんだ?」

「本来であれば涼月は、こんな芝居を打たなくてもよかったんだがうちの事情で磯風にも悲しい思いをさせてしまった。」

「軍内部の政争に巻き込んでしまったということか?」

「そうだ。」

 

磯風は軽く息を吐いて、提督に近づいた

 

「それは仕方のない事だろう。中央の連中(頭でっかち)というのはそういうものだ。」

「だが、その一端を俺が持っていることに変わりはない。」

 

ふふっと笑う声がして提督は思わず顔を上げた

みれば、磯風が微笑んでいた

 

「噂通りの方だな。深雪教官がほれ込んだのもわかる。」

「そうですね。ここなら私も安心して勤められそうです。」

 

涼月が同調する

 

「そうだな・・・・・・。深雪教官には及ばないが警邏として、司令の護衛として全力を尽くすつもりだ。それを見ていてほしい。」

「涼月も、艦隊の皆さん。もちろん提督もお護り致します。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時雨もすまなかったな。」

 

とりあえず涼月を寮の空いている部屋に案内し、時雨の部屋の前に戻ってくると提督は頭を下げた

時刻はフタフタマルマル

時雨の部屋の電気が廊下にこぼれている

 

 

 

「気にしないでいいよ?こういうのは仕方ない事じゃないか。」

「一番危険かつ汚れ役を担ってくれてありがとうな。」

 

そっと頭をなでる

時雨はにこっと笑い心地よさそうにした

 

「ありがとう。いい夢が今日は見れそうだよ。・・・・・・おやすみ。提督。」

「ああ。また明日。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やーっとついたけどさぁ・・・・・・。もうやってないよねぇ?」

 

港に降り立った一人の艦娘がボリボリと頭を掻く

本土と比べれば南方であるとはいえ、季節はすでに冬

海風は冷たく吹き荒れているため、ぶるりと体を震わせた

 

「さっむぅ・・・・・・。大将が旅館の一室をとってくれてあるっていうし早く入ろ・・・・・・。挨拶はまた明日でもいいしね~。」

 

足早に旅館のほうへと歩みを進める

 

「早く原稿仕上げてここで遊びたいなぁ。」




そんなわけで磯風と涼月が着任です(=゚ω゚)ノ

遅れましたが、皆さん冬イベお疲れ様でした
満足が行く結果なった方も、ならなかった方も次回のイベントに向けて頑張っていきましょう!

うちは最終的にE1で延々とまるゆ堀に徹してました
吹雪ちゃんの運カンストを目指して・・・!(あと45)

磯風改乙、浜風改乙を無事改装してやれやれと思ったら今度は朝潮型改二と立て続けでびっくりしてます(白目)
朝潮型は霰が濃厚となっているのでレベルを調べてみると

Lv31

あのですね・・・それ以外の朝潮型は全員70は行っているんです
この間サンタグラ来たからないかなー・・・なんて高を括ってたらこのざまです
そして畳みかけるように来る次のアプデ日が4月6日・・・

リランカへとつげきぃ(震)

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