これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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前回のあらすじ
時雨の出向と長波サマ着任、深雪様の照れ隠死


駿河諸島鎮守府の作戦支援 その3

長波の第二段階目改装で必要とする特殊資材についての報告書

 

1、艤装に既存データ以上の改装を行うため改装設計図を必要とする

2、12.7㎝連装砲の最終系となるD型を製造するにあたり駆逐艦を含めた戦闘データである戦闘詳報を必要とする

 

 

 

戦闘詳報とは、提督たちに上がってくる戦闘報告書のことではない

報告書に書かれているのは、あくまでも戦闘の経過と戦果についてである

詳報は、そこに艤装の稼働率や砲撃、雷撃の諸元、双方の具体的な損害などの技術的なデータが入ったもののことをさす

報告書だけでも一級の軍機であり厳重に鎮守内で保管されている

詳報に至っては、各整備室や工廠から直接大本営に送られ、管理されている

 

今回、改装で必要ということだったがどうやって調達したのか

 

 

 

それは、ちょうど前線から下がって、大本営に向かう艦隊の艤装から失敬したのだ

 

 

本来であれば、軍機漏洩で懲戒処分ものであるが、改二改装や新武装の研究、開発という大義名分のもと夕張と妖精さんがやり込めたらしい

 

 

 

「というか相談してくれませんかねぇ?大将に言うの俺なんだけど?メロンさん?」

 

じとっとした目線を目の前の夕張に送る

 

「いやその・・・どうしても急ぎだったから・・・ね?」

「・・・・・・。」

「・・・・・・すみません。」

「よろしい。」

 

無言の圧力に夕張は居たたまれなくなって頭を下げる

 

とはいえ、各場所の妖精に根回しをしてうちが一番最初に試験改装するようにした関係上、仕方のないことではある

 

「んで。ずいぶんとまぁぶっ飛んだ性能だねぇ・・・。長波に限ってのことだけど。」

 

提督は12.7㎝連装砲D型の資料を上に持ってくる

 

「長波のほかにも、陽炎型の親潮でもパラメーターの上昇が確認されています。おそらくは夕雲型でも上昇が確認できるかと思います。」

「ほう・・・。ということは・・・・・・。」

「お察しの通り・・・量産性が非常に悪いです。」

「こちらが改修工廠でD型砲を作る際の必要物品です。」

 

そういって渡されたリストを見る

 

「・・・。これはえげつないねぇ・・・・・・。」

 

戦闘詳報が必須な他、新型砲熕兵装資材まで使う必要がある

また、強化に関してもD型には及ばないが、量産性が低めのC型砲を多く使う

 

特に厄介となるのが戦闘詳報についてだ

幸いにも、今回は原本データを入手できたためしばらくはこれを使いまわせる

 

しかし、もって一か月というところだろう

 

ずっと使いまわせないのは、妖精さんの存在がある

というのも、妖精さん達が一番嫌うのがルーチンワークだ

建造や開発などで、狙ったものが出せない原因の一つでもある

一度建造や開発ができたのに、もう一度やると同じものができることが少ない

 

原因は妖精さん達の飽きっぽいところだ

楽しいことに率先してやってくれるが、一度つまらないと判断すると途中で放り投げてしまう

対処法としては、一度建造や開発した詳細なデータは破棄

改修などに使うデータも最初から組みなおしたり、最新のものに交換するなどの必要がある

 

 

 

戦闘詳報の安定した入手手段はここでは難しい

当たり前だが、ここで戦闘は少ない

はぐれた駆逐級、時々軽巡級が迷い込んでくるくらいで、とても質のいいデータにはならない

お世辞にも使えるデータとはいいがたい

 

 

 

「戦闘詳報が使いまわせる今のうちに集中的に量産の態勢に入ることを具申します。」

「うん。お願いするよ。使えなくなったらいつでも相談してね。」

「わかりました!じゃあさっそく作業に入りますね!」

 

夕張が嬉々とした顔で退出していった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もしもし?』

「大将ですか?耳本です。」

『おお。何かあったかの?』

 

提督は長波改二についての事情を伝えた

 

『なるほどのう。戦闘詳報については何とかなるわい。』

「どうするんですか?」

『なぁに。柏崎に伝えて一回情報を引き出したら壊れるように設定すればいいじゃろ。そうすれば漏洩も使いまわしすぎの心配もない。』

 

コストが割高になる、手間がかかるなどのマイナス点があるが、漏洩や妖精さん達が放り投げて、低品質の武装が生産されるリスクを考えればトレードオフで収まる範疇だろう

 

『それと、そっちにはトラック泊地から移送されてくる戦闘詳報の保管を頼む。』

「うちでいいんですか?」

『トラックは大きすぎるからのう。今後需要が見込まれるものはそっちが保管するほうが都合がいいんじゃ。』

 

提督は電話を肩で挟むと、ノートパソコンを手繰り寄せた

保管場所として最も楽なのは地下階だ

しかし、すでに地下5階までランク分けされているが帳簿などの保管庫になっている

となれば増設しかない

 

「盗難防止にうちを使うのは勘弁してもらえませんかね・・・・・・。」

『仕方ないじゃろうて。あそこは前線に近いのに大規模な拠点なんじゃから。いつ何時漏洩があるのかわからん。』

 

最前線はクェゼリン環礁になっているが、南方方面の東側を取り仕切っているのはトラック泊地だ

そのトラック泊地も、何かと空襲の被害や近海で海戦がおこなわれたりと落ち着かない

どさくさに紛れて盗まれたりしたら大変なことになるのは想像に難くない

 

「・・・・・・。妖精さんに増設の打診をしておきます。」

『助かるわい。それと、例の作戦。そろそろ終わりそうじゃから受け入れの準備を頼むぞ?』

 

例の件とは海上護衛のことだ

本土-駿河諸島間の臨時輸送作戦では、護衛船団が組まれている

本土から一度八丈島へと向かい、その後駿河諸島へと入港

積み荷を積んだら本土へと向かうルートには、護衛空母と海防艦が護衛の任務についている

海防艦では力不足ではないかと思う人もいるだろう

しかし、本土に近い関係から哨戒艦隊や哨戒機によって発見され対処されるためまずいない

 

 

水上型は

 

 

 

先述の通り、駿河諸島にくるのはせいぜいはぐれた駆逐級、ごくまれに軽巡級が出てくるのみ

 

 

 

では海の中にいる深海棲艦

つまり潜水艦はどうかというと、結構な数がいることが分かっている

今までも、本土と駿河諸島間の航路で出現し、輸送艦隊を襲われたことが何度もある

 

通常の航路より安全とはいえ、潜水艦に関してはどこも同じではあるが安全の確約はできない

そこで、少しでも安全性を確保し、輸送艦の喪失を防ごうと、いつもより多く護衛を付けることになった

 

ところが、困ったことに護衛につける艦娘が足りない

正確には、対潜に特化した駆逐艦、軽巡達である

先ほど言った通り、これ以上の輸送船を失うわけにはいかない

対潜に特化した駆逐艦や軽巡は南方方面の船団護衛についてしまっている

本土に残っている子たちの練度では、潜水艦の先制攻撃を許す恐れが高い

 

 

 

 

そこで海防艦の出番だ

 

海防艦は攻撃力はあまりないし、防御力に至っては全くない

それどころか低速艦で、一見するといいところはない

 

 

が、対潜能力に関しては駆逐艦や軽巡を凌ぐ

運用コストは駆逐艦より安く、南方の激戦地には出撃していないため人数の確保も容易

これほどまでにぴったりな子たちはいないということで、採用された

 

そして、駿河諸島鎮守府に着任予定の一人が海防艦の子たちを率いて、船団護衛の指揮を執っている

 

 

 

「やっとですか!これで龍驤に少しは休みを取らせられる・・・・・・。」

『もう一人のあいつに関してはすまんがもう少し時間がかかるんじゃ。許してくれ。』

 

大将曰く、どうやら栗田艦隊のほうに組み込まれており、大本営に戻ってくるのはだいぶ先になりそうな見立てらしい

 

とはいえ、現状駿河諸島鎮守府の航空隊をまわしているのは基本的には龍驤1人

今は鳳翔さんにも手伝ってもらってはいるが、航空隊部門は圧倒的に人不足だ

こんなことなら多少無理してでももう一人の正規空母の着任予定を取り下げなければよかったかもしれないと後悔していたりする

 

『彼女の改装は最終段階までこちらで行っているから安心して運用していいぞい。』

「ありがとうございます。」

 

提督はお礼を言うと、そろそろ時間ですのでと言って切ろうとした

 

『ああ、あともう一つ。・・・・・・家一軒分の土地はあるかの?』

「ありますけど・・・・・・それが何か?」

『ん。了解じゃ。それじゃあの。』

 

提督は、ツーツーという音が聞こえたのを確認すると、受話器を置いた

島内の地図を見て、候補地に丸を付けながらため息をついた

 

おそらく、今回の独断行動の責をとった際の準備だろう

 

 

 

タカ派はあの事件以降瓦解が始まっている

その反面、腐った膿を出し、再編の動きが始まっている

 

それに対して、ハト派は多数派に転じたことで動きが怪しくなった

以前にもまして、ハト派内の争いが激しさを増し始めたのだ

タカ派とハト派という派閥はあるが、その中でもより考えが近い者たちが集まって会派を双方形成している

 

 

どこの会派が探りを入れ始めたのか

 

 

それが重要である

 

桐月大将のグループにはある特徴がある

かつて鎮守府や基地等に着任し、指揮を執ったことのある将校の大半が属している

また、艦娘を嫁に迎えているのが多いことも特徴の一つだ

 

では、桐月派が主流なのかというとそういうわけではない

いわゆる、制服組という前線に出ず任官時からずっと大本営にいる者たちは、また別の会派をいくつか形成している

また、上層部へと上り詰められる者の中で、制服組と現場のたたき上げのどちらが多いかは言わずもがなである

 

また、厄介なことにハト派が掲げているのはあくまでも戦線に拡大の是非でしばらくは現状維持というもの

 

桐月派が尽力している艦娘の人権に関しては、また別の話になる

もちろん、タカ派の中でも艦娘の人権に関して賛成派もいるが、大半は無関心や反対派が多い

それどころか、過激な部類では不要論を唱える会派もいる

 

 

今大将が抜ければ、艦娘の人権についての話はしばらく後退するだろう

 

 

 

「・・・・・・。」

 

作戦終了後に開かれる会議で、大将の進退が決まるだろう

仮に無事成功した場合での予想は、これまでの功績に加え、率先して働きかけ作戦を成功に導いたとして元帥への昇格審査がおこなわれるだろう

 

 

一見すれば元帥への昇格はよさげに見える

 

 

しかし、元帥というのは名誉職であり、昇格後は相談役として一歩引いたところからしかものを言えなくなってしまう

 

根回しをしようにもタカ派を切り崩すのは不可能に近い

また、ハト派内でも人権論に反対派は居るため、審議にかけられたら防ぎようがない

 

 

 

「若葉。」

「呼んだか?」

 

にょきっと机の下から出てきた

 

「・・・・・・ええ?そっから?」

「川内が上からなら分けたほうがいいと思ったんだが。」

 

下から這い出てくると、ぱんぱんとスカートについたごみを払う

 

若葉は、川内と一緒に長波改二についての根回しに動いていた

しかし、時雨が抜けた穴を川内が埋めることになり、一緒に戻ってきた

 

「ここの派閥の調査を頼めるか?」

 

渡したのは人権について反対の立場をとっていて、ハト派最大の派閥の資料だ

 

「ふむ。了解した。」

 

パラパラとめくり、内容をざっくりと把握したようだ

小脇に抱えるとまた机の下にもぐり始めた

 

「普通の入り口から出なさい!」




またしても軍政回(;´∀`)
不穏な空気がさらに色濃くなり始めましたはい

ローソンコラボに三越コラボはいかがでしたでしょうか?
作者は無事タぺ、クリアファイル、ゼリーと目を付けていたものはすべて入手できました
(三越はスルー)
一方メンテで実装された4航戦任務に白目をむきながらクリアしました
イベントあるからね!武蔵改二で設計図2枚確保したいしね!
そういいながらEOを5-5まで割っちゃったんです・・・
こうならないように気を付けましょう!(特に3-5以降のEO)

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