これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の序列と四歩

吹雪と別れ、執務室を片づけに一度戻る

机の上の書類を片づけ、飲み物を飲んだコップなどは給湯室で洗う

 

それらを終えて部屋を出ようとした時、あることを思い出す

 

 

 

机そばまで来てしゃがむと、下の段のカギを開ける

中からはこの前みた青い箱の山

ケッコン指輪だ

 

提督は部屋の隅に置かれた段ボールの中から片手で持てる位のサイズを持ってくると、一つ一つ丁寧に入れて行く

 

 

これはあの時、これはあの子が来たとき

 

 

そんなことを思いながら箱詰めしていくが、詰めていくたびに、どんどんと手の速度が遅くなっていく

そして、色がこの中ではかなり褪せている3つの箱が残った

 

「・・・・・・。」

 

とりあえず同じくらい褪せている2つの箱を取り出し、机の上に置いた

じっと見つめ、かぶりを振った

最後に残ったのは先ほどのよりさらに褪せている

が、吹雪に渡したものよりは褪せていない

 

 

 

「・・・・・・川内。」

 

 

 

提督はゆっくりと掴むと箱を見つめ、ぽつりとつぶやいた

 

 

「なぁに?提督。」

 

「・・・・・・。」

 

 

そんな川内の返事をする姿が声とともに脳裏にうかぶ

じっと箱を見つめた

が、振り切ったように軽く息を吐くと箱に入れようと立ち上がった

 

「おっとっと!随分と積極的だね・・・。」

「・・・・・・へ?」

 

 

 

立ち上がった先には茶褐色の瞳がドアップでぼんやりと映った

 

 

提督は理解が追い付かず、口から間抜けた声が漏れる

 

 

 

 

少しの間硬直し、よろよろと後ろに後ずさるとそのまま椅子にすとんと座った

 

 

先ほどの返事は自身の脳裏に浮かんだ声ではなく、本当に自分に向けて返された返事という事を理解した

返事を返した川内は机の上に腰を下ろし、腰をひねってこちらを向き、ニコニコと笑っている

 

 

 

 

 

「えっ!えっ!?」

「それにしてもやっと答えだしたんだよね?おめでとう。」

 

 

 

提督は予想外のことに言葉が出なくなっており、言葉が上手く出てこない

その様子を見て川内は困ったように笑った

 

 

「さっき提督が執務室に入るの見えたからさ?気になったんだ。」

 

 

机の上に置かれた指輪の箱を指先でいじりながら話す

 

 

「そっか・・・・・・。」

 

 

提督は何とか落ち着きを取り戻し、相槌を打つが何を言ったらいいのかわからず会話がそこで途切れてしまった

 

しばらくの沈黙ののち、川内が切り出す

 

 

 

「提督はさ。瑞鶴のことずっと気にしてたんだよね?」

「・・・・・・ああ。」

「実はあの事件が起こる前に大将と元帥から聞いたんだ。」

「それで少し様子が変だったのか。」

 

観艦式の時や普段の時にどこかうわの空だったりしたことがあったことを思い出す

 

「最初に聞かされたのは大本営の裏の戦果報告書の内容。」

「信じた?」

 

川内は微笑んで首を振った

 

「まさか。長い付き合いだもの。気にしてたのは何が提督が嫌がっているのか。そうしないと助け舟が出せないもの。」

 

それを聞いた提督はそっかと力なく同じ返事をする

川内はそれをとがめることなく続けた

 

「そんなはずはない。・・・・・・そう言ったら本当のことを話してくれたよ。」

「そっか。」

「で、提督を助けに行く前にみんなに聞いたんだ。あの話についてどう思ったか。」

「ちょっと怖いな。」

 

 

 

「誰も信じなかったよ。最近着任したばっかの親潮や若葉すら。」

 

提督はほんとかいなと少し笑って下を向いた

 

 

「みーんな。何かの間違いだ、何か事情があった、提督の本心ではない。このどれかを口々に言ってたよ。」

 

提督の笑いを理解しているのだろう

エイッと言いながら提督の顎を持ち上げた

 

 

 

「だからさ。一歩前に進んでくれたのなら・・・・・・もう一歩前に進まない?」

 

 

一度提督の顔から手を離し、ギシっという音を立てて机から降りる

そして、床板をゆっくりときしませながら提督の横に立つ

 

「吹雪と同じ所・・・・・・とまでは言わないからさ。駄目かな?」

 

今度は肘掛けに置かれた提督の手に自身の手を重ねる

その手を提督はじっと見つめた

 

 

 

 

『やっぱり何でもない。ごめんね、呼び止めて。』

『・・・・・了解。早めに寝てね?』

 

 

 

「・・・・・・この前。」

「ん?」

「この前俺が呼び止めた時に・・・・・・何でもないって言ったとき・・・・・・あの間は。」

「あー・・・・・・。そうねぇ。・・・・・・うーん。」

 

川内は気まずそうに後ろの頭をぽりぽりと照れくさそうに掻いた

 

「一瞬欲が出ちゃったんだ。」

「欲?」

「そ、ここでもしかして積極的に行けば私がもらえるんじゃないかって。」

 

提督が持っていた指輪の箱を手に取った

そしてそれを見つめながら寂しそうな顔をした

 

「うぬぼれだけどあの時提督は私か吹雪で迷っていた。このまま流せば吹雪に行くのは明らか。でも・・・・・・ここでもし積極的にアプローチをすれば逆転の目があるって思っちゃったの。」

「・・・・・・じゃあなんで・・・・・・・・・・・・。」

「もう!そこまで言わせるの?」

 

川内は少し不機嫌そうに口をとがらせる

 

「提督自身が流されずに答えを出して欲しかったの!・・・・・・私が言い寄るより・・・・・・提督の意思で選んでほしいって気持ちが勝ったからあの時はあのまま引いたの。」

「・・・・・・。」

「あ、でも読みが外れてしばらくうじうじしてたらアプローチするつもりだったけどね?」

 

 

 

内心そうならなくてよかったと提督は心の中で汗を流した

 

 

 

「本当ならこのまま祝福する側に回りたかったんだけどね・・・・・・。もうぶっちゃけちゃうとやっぱり駄目だった!」

 

川内は少しほほを赤らめてつづける

 

「次点でもいい。だから私と・・・・・・ムグッ」

「それ以上は待った!」

 

提督は川内の口を手でふさいだ

川内は驚いた顔をする

 

「それを川内から言わせるわけにいかない。・・・・・・吹雪いるよね?」

 

提督は真剣なまなざしで川内をしっかりとみる

そして、正面の扉に少し声を張る

 

「・・・・・・気づいてました?」

 

吹雪が苦笑いしながら入ってきた

提督は何年の付き合いだと思ってるんだと返すと吹雪はそうですよねと返した

 

「司令官の決定に私は口出しはしません。事情は分かっていますから。・・・・・・ただ。」

 

吹雪は微笑んですっぱりと言う

が、そのあと少し言いにくそうに小さくつづけた

 

「その・・・・・・こんなことを言うのはあれなんですが・・・・・・その。」

「・・・・・・吹雪。」

 

提督は椅子から立ち上がり、吹雪のそばまで行く

そして、少しかがむと唇をそのまま合わせた

 

 

 

 

 

「提督もやるねぇ。」

 

川内がからからと笑うとやっぱり敵わないわけだと言った

 

「こっこれでいい?」

「えっ!あっ!!はっ!!!はい!!!!」

 

吹雪は今で見たどんな色よりも真っ赤な色をしていた

対する提督も、告白した時よりも顔を赤くしていた

 

 

「じゃあ改めて・・・・・・。」

 

軽い咳ばらいをし、指輪の入った箱を川内に差し出した

 

「ジュウコンな上こんな風に優柔不断なところがありますがケッコンしてください。」

「そういうところが好きなの。こちらこそよろしくね。」

 

夜戦も待ってるよ

笑いながら箱を受け取った

提督は考えとくと言って笑い返す

 

 

 

 

 

「さてっと・・・・・・。」

「「?」」

 

川内は大事そうに指輪の入った箱をしまうと、窓辺に歩いていった

そして、がらりと窓を開ける

 

「もう入ってきてもいいって伝えて。」

「!」

 

窓の外にいたのはカ号観測機だった

人がのれるように大型化されていない艤装に搭載されているものだ

 

妖精さんはにっこりと笑って勢いの良い敬礼し、闇の中に消えて行った

 

「え・・・ここでカ号が運用できる子って・・・。」

 

思い当たるのは一人しかいない

 

「邪魔するでー。」

「はやっ!」

 

カ号が消えて30秒もしないうちに飛ばしていた張本人が出てくる

 

「そら下で待機しとったしなぁ。」

 

吹雪に結婚おめでとさんと言うと提督のそばまでやってくる

 

「ジュウコンOKならうちも・・・ええよな?」

「えっ?!いや・・・その・・・龍驤?」

「え え ん よ な ?」

「アッハイ」

 

ニコニコと威圧感ある笑顔を龍驤に向けられた

押し切られた形で提督は机の上に置いてあった片方を渡す

 

「結局一番にも二番にもなれんかったけど・・・。まぁええか!ところで司令官・・・覚悟した方がええで?」

「えっ?何が・・・?」

 

 

 

 

 

「ジュウコン」

「OKと」

「ききまして!」

 

提督が言い終わるや否や

それぞれ順番に旧隠し扉、天井、机の下から

一体どうやって体をおさめていたのだろうか

鎮守府にいる全員が一斉に飛び出してきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、提督は鎮守府にいる全員とケッコンし、鎮守府の恋模様については多少の序列が付いたもののひとまず一段落となった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談ではあるが、全員吹雪への告白から、先ほどのキスまでしっかりとみており、それを告げられた提督は恥ずかしさに2~3日ひきこもったとか




と言うわけで今度こそケッコン関係のお話は一段落ですはい(=゚ω゚)ノ
1人取り残されている子が実はいるんですがその子は追々チラッとですが描写を入れる予定です



無事、栗田艦隊以外の参加した子たちをある程度のとこまでの引き上げが終わりましたはい
第3艦隊での編成や特別に7隻編成できるようにするなどかなり運営もこだわっているみたいですし情報に注視していきましょう(=゚ω゚)ノ

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