提督が手を伸ばしたのは一番右封筒
開けて見て見れば大佐への昇進と書かれていた
「しかし、それでは・・・・・・。」
「大将。私の言いたいことがわかりますね?」
提督がじっと大将の目を見る
それに対して、察したのだろう
一粒の汗がほほをつたった
「・・・・・・。はぁ・・・。頭が痛いわい・・・。何とか上をやり込めればいいんじゃろ・・・・・・。」
「私は佐官で十分です。将官は・・・まだ無理です。」
お誘いはありがたいですけどねと申し訳なさそうに笑った
灰皿の上に置かれたたばこが燃え尽きているを見ると、新しく取り出して火をつけた
一息吸って、再び灰皿に置くとハンカチで額とほほを拭いた
その顔は苦々しいを通り越して、あきらめの境地に達していた
「しかし、来年付って・・・・・・。」
「・・・今日付けにすると今日発行した書類全部だめになりますよ?」
「あっ・・・・・・。」
各鎮守府は大規模作戦終了後のためこぞって遠征に出している
そのため、書類の量が多いのだ
今回の騒動をおさめる忙しさが、大将の判断力を奪っているのだろう
「わかったわかった!何とかするわい!・・・ああもうどうしてこうなるんじゃ。」
やけっぱちになりながら頭を掻きむしった
内心申し訳ないと思いつつ、表情に出さずに席を立った
「じゃあお願いします。」
「何を言っとる。まだまだ話はあるんじゃよ?」
「えっ?・・・まだありましたっけ?」
提督は身に覚えがなく、怪訝な顔をして首をひねりながら座った
「その前に文月ちゃん。これを会計部に持って行ってくれるかの?あとこれで好きなものを食べてきなさい。」
「は~い。」
ニコニコと微笑みながら文月は出て行った
大将も同じくニコニコと笑っていたが、扉が閉まると表情が消えた
「他でもないこれのことじゃ。」
「・・・・・・それは。」
大将が指を指したのは左手薬指の指輪
大将がつけているのは文月とのものだ
そして、それを指された提督はバツが悪そうな顔をした
「今までは瑞鶴の件があったからこそ強くは言えんかったがな?その前提がなくなったからこそ言わせてもらうぞ。」
「・・・・・・。」
「勿論、お前さんが言いたいことはわかる。いくら瑞鶴が生きていたといえ、殺しかけたのに間違いはない。だから資格はない。そう言いたいんじゃろ?」
「・・・・・・。」
「じゃがな?元をただせば・・・だ。あの時、お前さんに指揮権を預けると言ったのはわしらだという事を忘れとらんか?」
「それは・・・・・・。」
提督は目が泳いだ
「正直に言おう、わしはお前さんが大なり小なり失敗するとおもっとった。それを理由に作戦指揮部に進む道を絶とうとしたんじゃ。」
「えっ・・・・・・?」
大将の意外な言葉に提督は驚きを隠せなかった
「お前さんはな・・・・・・。海軍の中でも一番心優しいと言っても過言ではないかもしれないんじゃ。」
大将は煙草を再び、くわえて息を吸った
紫煙を吐き出し、話を続ける
「その優しさは作戦の立案、指揮を行うにあたって最大の障害でもあるんじゃよ・・・・・・。」
「私は優しくなんて・・・・・・。」
「ならば聞こう。君は瑞鶴の囮作戦しか方法がないとわかった時、少し迷ったじゃろう?」
「・・・・・・っ!」
それを言われ、ぐっと口を開きかけたが何も言わずにうなだれた
「最終的にお前さんは選択を間違えないとは思っていた。じゃが、作戦指揮を行うにあたってわずかな指示の遅れが全滅の可能性をはらむ中で・・・・・・無情な指示をすぐに出すことが君にはできないとみていたんじゃ。」
「・・・・・・。」
「作戦の指揮、立案には情もいる。・・・じゃが情を入れすぎるとそれですべてが台無しになってしまう事もあるんじゃよ・・・・・・。それは艦娘だろうと人であろうと変わらない。」
「・・・・・・。」
大将は立ち上がると部屋の隅からある物を持ってきた
将棋の駒一式だった
「作戦指揮を行うときは、人間だろうが艦娘だろうが駒としてみなければならない。歩を守るために王を危険にすることは敗北へまっしぐらだ。そして全員が王だったら何もできない。」
将棋をよくやるお前さんならわかるじゃろう
そういって駒を出して、指をさす
「お前さんは瑞鶴が撃沈された時のことをずっと自分のせいだと抱え込んでいたのう?わしらが任せたうえ、あいつが暴走したのだからお前さんが気に病む事は一切ないのに。」
「最悪私が志垣を殴ってでもいれば・・・・・・。」
「そんなことしたらお前さんの首が物理的に飛ぶわい。」
大将はシュッと首を切るしぐさをした
「軍人にやさしさは重りとなる・・・。わしもそう思っておったんじゃが・・・駿河諸島へ行ったお前さんの働きを見て変わったなぁ・・・・・・。」
大将は厳しい顔を少し崩した
「え?」
「艦娘の様子をつぶさに見てはあの子の様子がおかしい、あそこは何か違法なことしているんじゃないか?この施設はこうすればもっと休める・・・誰かを思いやって周りを見る、意見を出す。君が本当に相手を思っている証拠じゃよ。」
「・・・・・・。」
「お前さんが動いたおかげで助かった子がいる、もっと動けるようになった子もいる。休めなかった子が休めるようなった子も・・・・・・。なぜ失いかけたことばかりを見るんじゃ?」
「それを忘れたら・・・・・・。」
「忘れると見続けることは別物じゃ。」
大将は再び目線を逸らそうとした提督の顔をがっと掴むと目を合わせた
「何よりもあの子たちが可哀想じゃぁないか・・・・・・。みんなの気持ちに気づいているのに背を向け続けるのは・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「お前さんの中で答えは出ているんじゃろう?それがたとえ一人を選ぶことになったとしても・・・・・・仲たがいをするような奴らか?」
「いえ!そんなことは・・・・・・あっ。」
提督は即座に否定の言葉を上げた瞬間、口をふさいだ
1人がすでに心の中で決まっているという事を肯定したも同然だからだ
以前は酒に酔っていて漏れたことだったが、素面で口に出したのは初めてだった
「認めたなぁ・・・。それでいいんじゃよそれで。」
提督はうつむいて再び座った
「思いを伝えた後のことなんてなーんとでもなるじゃろう。普段のお前さんらしくもなくずっと頭の中で堂々巡りをしとるからじゃ。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。ま、ここまでにしておこうかの。じゃが、結論は早くに出してやるといい。」
膝を叩いて、立ち上がると提督の前に青色の箱を置いた
「・・・は?」
「いやな?お前さんは多分あっとるじゃろうが、衣笠という海軍病院勤めの子なんじゃが、加古から医療面の人員補充の要請があったから今日一緒に連れて行ってもらおうと・・・・・・。」
「それはわかりました。・・・でこれは?」
「そういうわけじゃ。それじゃあの。」
ほら行った行ったと手を払うしぐさをされてしまった
これ以上長居するとさらにぼろが出かねないので荷物をまとめて退出した
去り際に
「大将。ありがとうございます。」
そう言って扉を閉めた
「・・・・・・。ばれとったか。」
そう言って大将は腰の方に手をやり、後ろから白い封筒を取り出した
「あいつにここは似合わんからの・・・・・・。」
封筒の中身は辞令だった
書いてある内容は・・・
耳本中佐を中将へと任命する
また、任地を大本営作戦指揮部へと変更、及び同部部長とする
他が茶封筒なのに対し、白い封筒からして察しが付くだろう
「さって・・・・・・。なんて言い訳をしようか考えんと・・・・・・。」
辞令を暖炉に放り込むと、火をつけて机へと向かった
外に出て衣笠が待機しているだろうロビーへ向かう途中、文月とばったり会った
手には間宮の包みが見える
「あ、耳本さんもうかえるの~?」
「ああ、まだまだ忙しいからねぇ。」
「そっか~。じゃあ皐月ちゃんと望月ちゃんによろしくねぇ~。」
「ああ、伝えとくよ。」
そう言ってすれ違った
「・・・。望月ちゃんも皐月ちゃんもいい子だから選んでほしいなぁって。」
「!」
「でも、決まっているならしょうがないよね。」
すれ違いざま小さな声でそういった
驚いて振り向くと文月は歩みを止めて表情がこちらから見えない程度に顔を向けてつづけた
「そろそろ耳本さんは自分を優先しても文月はいいとおもうよ~。」
そう言い残し正面に顔を向けて走り去っていった
実は焦らしがもう少し続きます(;´Д`)
そしてさらっと衣笠さんが加入しましたですはい
本当はメンテ突入と同時に投稿したかったのですがちょっと遅れてこんな時間に投稿になりました
まさかの秋イベが前編で冬イベが後編と言う予想外のイベ状況に作者は頭を抱えている有様です・・・(;´Д`)
いくら着任から一年目でハイスピードとはいえ育成しきれていない子があちらこちらにいる状態・・・
急ピッチでレベリングの最中です
と言うかよくよく考えたら艦これ一期としては冬イベがラストですしレイテ持ってきても全然不思議じゃなかったなぁと今更納得してます・・・
因みに個人的予想はレイテの時系列無視の2分割じゃないかなぁとか思ってたり・・・
秋イベが
前段 エンガノ岬海戦
後段 スリガオ海峡戦(もしE4まであるなら志摩艦隊合流のIF海戦)
冬イベが
前段 16戦隊の輸送、シブヤン海海戦
後段 サマール海戦からのIFの最終決戦
なんて予想をしていたり・・・
今日のメンテで決戦前夜ボイスがどの子に来るかで予想ができそうですね
割と前段ラストにエンガノが結構あり得そうだなぁって思ってます
涼月の実装が決まってはいるもののレイテ沖海戦時に涼月はドック入りしているため一切の参加をしていないんですね
それを考えると姉妹艦である秋月、初月の二人が戦没しているエンガノの報酬(もしくは掘り)じゃないかと・・・
こんだけ予想してもおもっくそはずれてる可能性が高いですので話半分に見ていただければ幸いですw