これははたして鎮守府か?   作:バリカツオ

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駿河諸島鎮守府の後始末と一歩 その1

「こちらが修繕、修復の目録になります。」

「ご苦労だったのう。・・・ひぇ。おっそろしい金額になったもんじゃ。」

 

 

 

大本営 大将室

 

 

 

目の前の大将は、冊子の最後のページをチラッと捲り、数字を確認すると目をつぶって天井を見上げた

冊子の厚さは10cmくらい

意外とそこまで厚くないと思った方は、目録と言うのを失念しているはずだ

そこに書いてあるのはあくまでどれが破損していて修理が必要なのか、あるいは新規の購入になるのか

それだけが書かれている

 

細かい理由や何が原因でどのような状況なのかという具体的なことが記載された書類はまた別にある

おまけで冊子には金額の見積もりを乗せており、大将はそれを見て小さな悲鳴を上げている

 

 

 

「まぁこの処理にあたるのは会計関係じゃしな。うん・・・。後で戻ってくるし・・・・・・。」

 

いやじゃなぁと言いながらソファーの後ろにある自分の執務机に座ったまま少し乱暴におく

代わりに、机の上にあった煙草を手繰り寄せた

煙草に火をつけ、紫煙をゆっくりと吐き出すとよし!と自身を鼓舞するように声を上げる

 

 

 

 

「とりあえず面倒くさい机の上のことはあとで行くぞ。人員補充に関することから聞こうかの。」

「ええ。事前に申し上げた通り、人員の補充をお願いしたいのです。」

 

そういって、一枚の書類をファイルから取り出す

 

「最優先艦種が空母系と防空駆逐。その他人員を4~6名か・・・・・・。理由は?」

「まず空母系なんですが、現状うちにいる空母は龍驤のみです。前回の空襲の際、基地航空隊を指揮する龍驤が鎮守府にいなかったので鳳翔さんにお願いをしました。しかし・・・・・・。」

「大変だったと。」

「はい。」

 

 

鳳翔は前線を離れてからそこそこの時が経っている

勿論、訓練も欠かさず行ってはいるがあくまで行っていたのは普通の海上での発着艦訓練

基地航空隊の指揮はやった事が無かった

やったことないなりに頑張ってやってはくれたが、今後のことを考えると龍驤が不在の際にも対応ができるようにしたい

 

しかし、鳳翔はあくまでもうちの炊事を主な任務としている

その合間を縫って通常の訓練に基地航空隊の指揮の訓練までは組み込めない

そういった関係から増員は必要なことだった

 

 

「なるほど・・・・・・。となると欲しいのは2隻かの?」

「ええ。24時間体制にしなければならないですし、3人いれば休みの調整等もスムーズですので。」

「あいわかった。空母関係に関してはわしが選定を行おう。幸いにも人員はたくさんおるからなぁ。」

 

そういって文月に目配せをした

 

「・・・え?そんなにいましたっけ?前に親潮連れて行った時も空母系の子は見なかったような・・・・・・。」

「それはな?おお、ありがとうな文月ちゃん。」

 

ニコニコと文月が持ってきたのは段ボールの箱だった

机の横の床において開くとびっしり黒い背表紙が並んでいた

 

「何ですかこれ・・・。」

「これは転属希望の一覧表じゃよ。」

「これが噂の・・・・・・こんなにあるんですね。」

 

初めてみたと、しげしげと冊子を見る

転属には様々な理由がある

提督と仲良くなる子もいれば、あくまで上司と部下のままの関係を望んだりと様々だ

気の合うもの同士もいれば、犬猿の仲で業務に支障が出る場合もある

上記の理由以外にもあったりするが、理由を問わず艦娘側から転属を大本営に申し出ることができる

その申し出が必ず認められるわけではないし、転属させなければ支障が出る場合は最優先で処理される

 

実は一番多いのは艦娘側のなんとなくと言った理由のないものだったりする

上司と部下の関係で、ある程度の規模の鎮守府にいると新天地で新しくやりたいという者がそこそこいたりする

または、気の合う提督探し・・・悪くいってしまうと婿探しと言う場合は理由が書かれていない場合がある

(ぶっちゃけ婿探しが実は全体の約20%を占めるという眉唾もののデータがある)

 

因みにこの台帳を閲覧できるのは、大将クラスでないと常時の閲覧は不可能だ

 

 

 

 

 

「これとこれじゃな。」

 

大将がとったのはその中でも厚い二つの冊子だった

 

「これが君のところに転属の願いを出している子たちだ。」

「へぇ~これがうt・・・えっ?」

 

提督が最初に手に取っていた冊子を段ボール箱に戻し、大将から冊子を受け取って捲り始めた

その時に言われたことを聞き流そうとして、とんでもないことを言われた

 

「え?これ全部・・・・・・?」

 

自慢ではないが自分の鎮守府は不人気だと思っていた

花形の戦闘は皆無で、もっぱら事務作業

残業多めでしかも勤務地は離島と敬遠されるだろうなと言う要素しかない

 

「わしもびっくりしたんじゃが、観艦式での指揮を見て一気に来たんじゃ。」

 

中々やるじゃないかと茶化すように言った

ざっと見たところ、一冊当たり50人分くらいの情報がある

 

それが二つ分

 

気の遠くなりそうな作業になりそうだ

中には、その艦娘の履歴書や過去2年分の訓練状況、賞罰、特記事項に訓練生時代の素行、成績などその子のすべての情報が書かれている

それを約100人分

目を通して数人を選ばなければならない仕事である

 

 

 

 

 

「あー・・・ほんとですね。うちへの転属理由が戦闘関連が多い・・・・・・。」

 

ぺらぺらと捲っていくとその艦娘の直筆の転属理由書も添付されている

 

あなたのもとで是非戦いたい!や運命の人を見つけた!

 

など少し勘違いしているんじゃないか・・・?

というようなものが多数あった

(勿論、面談をするまでもなく今回は残念ながらという返事を送る予定だ)

 

 

 

「まぁそういった子はそっちで事前に面談をするなり好きにして構わんからの。」

「・・・・・・他人事ですねぇ。」

「他人事だもーん。」

 

 

 

思わず冊子を投げつけたくなったが、ぐっとこらえて文月にコピーしてもらうように頼んだ

流石に持ち出し禁止の機密情報だ

ここで100人分の情報に目を通していたらいつ帰れるかわかったもんじゃない

 

 

 

「全く・・・・・・。ところで防空駆逐艦なんですが・・・。」

「そうじゃったなぁ・・・・・・。うー・・・・・・。」

 

大将は腕組みをして苦々しい顔をした

 

「これについてはちょっと時間をもらえんか?流石に二つ返事で用意できる子たちではないからなぁ・・・・・・。」

「ですよねぇ。あくまでいたらいいなぁ程度ですので無理のない程度にお願いします。」

「わかったわい。・・・・・・でーだ。あー・・・うん。」

 

大将の歯切れが悪くなる

提督も何となく察してはいた

ローテーブルの上に3つの細長い茶封筒

提督が入室した時からある

 

「これなんじゃがな?」

「・・・・・・。」

 

恐らくは右から順に大佐、少将、中将への任命状だろう

どれも今日付けの

 

「お断りします・・・・・・といいたいんですけどね?」

「それは勘弁してくれんかのう・・・。」

「なんでまたこのタイミングなんですか?」

 

 

 

大将は昇進についての理由を上げ始めた

 

まず、過去の作戦の不当評価の是正

カレー洋解放作戦での功績がまるまる提督の物だとわかったためである

勲章ものの働きであり、さらには普通科への理不尽な降格への補てんというわけだ

 

そして、駿河諸島鎮守府自体のランク付けの見直し

もともと、鎮守府とわかりやすく言ってはいるが実際本当の鎮守府と言うのは少ない

正式名称を直すと鎮守府ではないところがたくさんあったりする

監視府、警備府、鎮守府と3つのランク

さらに細かく分かれているのだが、ここでは説明は省く

 

そして、駿河諸島の成り立ちはと言うともとは監視府だ

志垣元軍令部長に半ば島流しで任命されたが、以前も言ったように地下資源の発見により、重要拠点である鎮守府へと昇格している

が、あくまでそれは表向きの扱いであり実際の登記には監視府というちぐはぐな状態で今日まで放置されてきた

放置された理由はほかでもない元軍令部長の指示だった

 

しかし、その軍令部長がいなくなった今、国内の最重要と言っても過言ではないこの鎮守府がちぐはぐなままでは困るというわけだ

鎮守府にするならば最低でも大佐、一般的には中将が担うはずなのだ

それが中佐のままではいくらなんでもという事である

 

「そして、3つ目。君を駿河諸島と八丈島の2つの拠点をまとめてもらおうという案が出とるんじゃ。」

「無理です。」

「お願いじゃからもう少し話を聞いとくれ・・・・・・。」

「いや・・・今は親潮のおかげで仕事量が減っていて、八丈島の業務量が少ないとはいえですよ?2つ兼任はさすがに無理です。」

 

きっぱりと言い放つ

 

「それはわしでもわかるわい。だからこそもう少し話を聞いてくれ。瑞鶴と翔鶴の問題でもあるんじゃ。」

「・・・・・・!」

 

翔鶴の話が出ると提督は反応した

翔鶴は現在、多少は回復したとはいえ精神的にはまだまだ参っている

 

あっちこっちで将官をケガさせたり、大将に刃を向けたり、友軍を裏切ったり・・・はては無実の提督を一時は重体にまでした

 

その行為すべてが間違いであったという事がわかった今、彼女はその罪の重さでつぶれかけていた

一時は提督自身が面談を行い、

「気にしていない。君は悪くない。」

そういって少しでも和らげようとも考えた

 

しかし、それをしたとして想定されるのが良くて半狂乱の土下座、悪くてその場での自傷行為・・・最悪の事態自害も・・・

 

そんなことが容易に想像できる

回復を早めるためには、一刻も早く駿河諸島から離れて静養した方がいいのだ

 

 

そんな翔鶴を阻むのが、仮にも犯罪者と言う枷だ

 

 

いくら同情されるとはいえ、国を裏切った背信行為についての罪は消えない

裁判が始まるまでの温情措置として留置場ではなく、駿河諸島預かりになっているのだ

 

 

 

「実は、瑞鶴の艤装なんじゃがコアの部分と艤装の接続面がどうも経年劣化でおかしくなっていることが分かったんじゃ。」

「そこは修理ができないところなんじゃ・・・。」

 

以前にもいったように、コアの部分はデリケートで余り弄るのはよくないこととされている

ちゃんと整備されている艤装ならまだ踏み切れるが、瑞鶴の艤装は大破状態で長期間の放置

前例もなく、それだけリスクが跳ね上がっている

 

「そうじゃ。さすがに5年半もの間大破状態での放置はまずかったようでな。コアの部分を弄らないと無理なんじゃと。幸いにも現在それ以外の部分は修理しているから何もしなければ問題はないんじゃ。・・・じゃが、海に出るにはコアの部分に手を入れねばならん・・・・・・あとはわかるな?」

「なるほど。それで瑞鶴を半分引退させて、八丈島の提督代理に据えようというわけですか。」

 

 

そういうと、その通りと大将は頷いた

大本営としては、このまま瑞鶴の腕を手放すのは非常にもったいない

5年半前とは言え、最強の一角を担った艦娘

海に出れないというのなら、かつての経験を活かして提督代理としてなら勤まるかもしれないというわけだ

自分は名を貸すだけであり、実務を行うのは瑞鶴

自分へのデメリットと言えば、重大な事故があった時の尻拭いと月一回程度のペラペラの書類が数枚追加されるくらいだろう

 

 

 

そして、メリットはほかにもある

仮に瑞鶴が、自身の代わりとして八丈島へ着任した場合だ

八丈島は駿河諸島鎮守府の管轄となる

という事は、そこに翔鶴を移動させても問題がない状態になる

そうなれば後は、大沢元帥をオブサーバー、観察者として来てもらえれば3人が昔のように暮らすことができる

3人で一緒にいた方がはるかに回復は早いだろう

 

 

 

 

 

「しかしそれには将官にならなければならない・・・・・・。」

「・・・そうなんじゃよ。」

 

当然、鎮守府と監視府の両方のトップを兼任している者は何人かいる

しかし、当然のことながらその者たちは将官・・・つまりは少将や中将、大将などである

 

提督は軽いため息をついて、机の上の封筒を見つめる

しかし、あまり時間を置かず頷いて顔を上げた

 

 

 

「・・・・・・わかりました。じゃあこちらをいただきましょう。来年付で。」




想像以上に長くなってきていたのでここで分割です(´・ω・`)
次の話は多分早めだとは思います・・・(多分)

改二の子は満潮改二で間違いなさそうですね
そして、一番不気味なのが決戦ボイス・・・
これはレイテのスリガオが単体で来るのか・・・?

そう半分決めつけて朝雲、山雲の育成に大騒ぎな毎日です(´・ω・`)
今月の設計図もうちの鎮守府で最長のお預けを食らっていた山城さん(Lv97)に使用がほぼ内定している状態です
(満潮改二が設計図必須だったら11月の設計図を回す予定・・・)

そして何よりも・・・


雑誌で秋イベは比較的小規模って言ってたけど小規模じゃなくて中規模じゃね・・・・・・?(;´Д`)

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