遅くなってごめんなさい。
どうも皆さん、鹿島忍アワーのお時間です。
・・・世の中に溢れている不思議な話。そういうのって意外と身近なところにあるものなんですよ・・・
おや、岳羽さんどうしました?
え?ノっからないで止めてくれって?いやいや、たまには遊ばせてよ。
それに、怖くないって証明するんでしょう?
こほん。
では、私の体験した不思議な話をしましょうか。
この寮には部屋に備え付けのシャワー以外に共同のお風呂があるのはご存知ですね?
皆さんは、お風呂に入ってると誰かの視線を感じるってことありませんか?
…あれはついこの間。10日程前の事だったでしょうか。
部屋のシャワーの調子が悪くて一階のお風呂を借りたときの事です。
その日私は何時もよりも広いお風呂に気分を良くしていたためかついうっかりタオルを部屋に忘れてしまったのです。
しかし既に体を洗っている最中、備え付けの物を借りるべきかと頭を悩ませて視線をさ迷わせていると、扉の外に赤い人影が見えたんです。
――しめた!きっと明彦くんだな。
――悪いんだけどタオルを部屋に忘れたから取ってきて貰えないかな?
私がそう言うと彼は擦りガラス越しではありますが了承の意思を返してくれました。
そうして風呂を上がると脱衣かごにはタオルが…。
あぁ、よかった。明日の晩御飯は好きなものを作ってあげようなんてことを考えていたんです。
でもね?その時ふっ、と思い出したんです。
明彦君に今日は走りに行くから夜食を用意してくれないか?と言われていたのを。
もう私、ゾクーーッとしました。
急いで着替えてロビーを見渡しましたが誰もいませんでした。
血の気がサーッと引いていきました。
さっきの赤い服の人影は誰なのか、私の見間違えだったのか、あのタオルはどうしてかごに入っていたのか…。
・・・私、考えましたよ。
もしかすると此れは俗に言う、心霊現象なんじゃないかって。
本当のところは私にも分かりません。
ですが、その日以降私はあのお風呂は使っておりません…。
世の中にはどうも不思議な事ってあるようなんですよ・・・。
もし、下のお風呂を使う事があるなら・・・忘れ物はしない方がいいでしょうね。
・・・ま、それで何が起こるかはその時にならないと分かりませんがね。
これでお話はおしまい。どう?怖かった?
うん、割りと怖がってもらえたようで嬉しい限りだね。喋った甲斐があるというか。
え?ホントにあったことだよ。不気味だからお風呂を使ってないのもホント。
でも被害はないし、むしろタオルについては助かったからなぁ。
「不思議だよねぇ」
そう言って話を締め切った鹿島先輩だが、こちらの空気は最悪です。
ゆかりっちはただでさえ口数が減っていたのに完全に青い顔で口塞いでるし、他の面子も顔が青い。
まさかマジで怖い話のストックがあるとか思ってなかったし、何よりそれを聞いてガチでビビってる人がいるって認識してないのが余計に質が悪い。
俺と一緒になって煽った真田先輩も顔を青くしているが、あれは俺のとは違う。もっとヤバいタイプのそれだ…!
「じゃあ俺は洗い物の続きしてくるから、何かあったらまた呼んでね?」
そんな空気を察してか知らずか、場の空気を換えることなく上手いこと鹿島先輩は退場してしまった。
「ま、まぁ人には苦手なものの一つや二つあるもんだよな。ねぇ?真田先輩!」
「ん、あぁそうだな。誰にでもあr…」
「・・・変な慰めしないでくれる?」
真田先輩と二人して今の話を煙に巻こうとしたのだが、どうやら逆効果だったようだ。いやに低い声の否定が飛んできた。
「いーわよ!元から調べるつもりだったし、この際全部調べるわよ!」
そう言ってゆかりっちは威勢よく立ち上がるが、明らかに一時的な気持ちの高ぶりで…「ビビってねぇし!」と虚勢を張ってる子供と大差ない。
でも今止めると躍起になるに決まってるからなぁ。
「消えたE組の子の事も、赤い服の人影の事も!お互いコレから一週間いろんな人からテッテー的に話を聞いて回って、真実を突き止めるわよ!」
何故か俺まで巻き込まれるし、桐条先輩はさらっと流してるし…。運がなかったと諦めるしかない。
ところで有里さんや?隣で手を叩いて煽ってるけど自分も調査に駆り出されるってこと分かってるんだろうか…。
今回は風花救出、の前話でした。
ペルソナ3の小説を書くと決めたときに順平アワーは書こうと決めていたので満足です。
作中に出ている話は私の実体験です。
『鹿島忍アワー』
言わずと知れた『稲川淳二アワー』のパロディの『順平アワー』のオマージュ。
あの人の話を聞くパターンとそれに沿ってドラマが始まるパターンとあった気がするけど、ビビりの作者は詳しく知らない。
『不思議だよねぇ』
天然、というか霊を怖がりも信じても居ない人は割りとあっさりしている。
UFOとかとおんなじ不思議なもの扱いである。
『俺と一緒になって煽った』
途中参加のため、普通に怪談話をしてると思って聞いてた鹿島君を二人で煽った。
まさかガチの怪談話を持ってくるとは思っておらずいろんな意味で痛い目を見た。
『ビビってねぇし!』
色んな作品で見かける返しだが、やはり一番イメージ残ってるのは某フリーホラーゲームである。
映画化したり新作出たり小説化したり、その発展は止まらない。若干ファンとしては蛇足な感じがして白けてる節が…と、誰か来たようだ。
『ところで有里さんや?隣で~』
家の主人公は天然か、若干アホの娘が入ってるかもしれない。これも全部アホガールって奴の仕業なんだ…。