イナズマイレブン!北のサッカープレイヤー   作:リンク切り

9 / 14
新必殺技炸裂!日本vsオーストラリア! #08

 

 

 

 

 

二日後。

 

待ちに待ったフットボールフロンティアインターナショナル、FFIの開会式が始まった。

アジア予選は、日本の東京にあるフロンティアスタジアムで行われる。

他8カ国がここに集まってくるのだが、俺に言わせるなら外国に行きたかったな。

日本でサッカーなんて、世界大会って感じしないじゃないか。

 

開会式には、アジア地区予選出場国の8カ国のチームが揃っていた。

この開会式が終わった後、1ブロック目、つまり、俺達とビッグウェイブズの試合が始まる。

俺達イナズマジャパンのメンバーは、スタジアムに通じる道で待機していた。

ここで、俺たちが呼ばれるのを待つ。

ここららスタジアムの中が見えるのだが、こんな大きな会場に観客が超満員だった。

 

「お、大きな会場ッス!」

 

「それに、テレビの中継もいっぱい来てるな!」

 

「浮かれている場合じゃないぞ。この開会式が終わったすぐ後に、俺たちの試合が始まるんだ。」

 

風丸が、はしゃぐメンバーをなだめる。

まあ、壁山とはしゃいでいたもう1人は俺なんだが。

すんません風丸さん。

 

「この二日間、個人練習はできたが合同練習は結局全くできなかったな。チームの全体の動きが確認できなかったのには、不安が残るが・・・・」

 

「鬼道!そんな難しい顔してないで、楽しもうぜ!」

 

「・・・ああ、そうだな。」

 

えっ、あれって難しい顔してるのか?

ゴーグルがあって俺には全く表情が読めないんだが。

 

『いよいよ選手の入場です!!』

 

「「「ワァァアアアアッ!!!!」」」

 

実況の言葉に、会場に来ていた観客が一斉に沸く。

 

『オーストラリア、中国、カタール、サウジアラビア、ウズベキスタン、タイ、韓国、そして我らが日本の計8カ国によるアジア予選!さあ果たして、この予選大会を征して決勝大会までの切符を手に入れるのはいずれの国になるのか!?』

 

「日本代表、イナズマジャパン様。お願いします。」

 

「よし。お前達、準備はできているな?」

 

「「「はい!」」」

 

「では、行って来い。」

 

「よしみんな!いくぞ!」

 

俺達は、皆で気合を入れあってグラウンドに出て行く。

整列を組んで、こう歩いて行くのは運動会や体育大会を思い出すな。

この会場のグラウンドは、学校のグラウンドよりも遥かに大きい。

 

『おおっと!イナズマジャパンのメンバーが入場して来ました!!』

 

「俺達、本当に日本代表なんだな・・・・」

 

「何言ってんだよ、自覚なかったのか?」

 

「そんなことはない、けど、こんなに観客がいたんじゃ、さすがに意識しちゃうよな。」

 

『アジア地区予選は全てこのスタジアムで行われます。そして、本大会の決勝戦に進めるのは、この中から一チームだけ。アジア代表の栄誉を手に入れるのはどのチームになるのでしょうか。』

 

グラウンドをぐるりと一周回って、俺達イナズマジャパンは右から二番目の列へと並んだ。

 

『では改めて、FFI世界大会全試合を通してのルールをお伝えしたいと思います!!』

 

俺達全8チームのプレイヤーが全員グラウンドに揃った後、実況が大声をあげた。

 

『まず、参加可能な条件ですが、15歳以下の少年または少女という規定になっています!

代表選手は控え選手5人、スタンディングメンバー11人の計16人まで。

所属チームのメンバーは他の国籍のプレイヤーでも参加可能です。

試合時間は前半30分後半30分の三十分ハーフ。

ワンプレイ毎の交代人数に制限はありません。

そして、一試合ごとに控えを含めたチームメンバーの交代の人数も制限ありません。』

 

そして、開会式はあっという間に終わり、一回戦が始まる。

 

「キャプテン・エンドウ。そして、イナズマジャパン。今日は、お互いのベストを尽くそう。

 

「ああ!よろしくな。最高のプレーにしようぜ!」

 

円堂と、ビッグウェイブズキャプテン、ニース・ドルフィンが挨拶を交わす。

ドルフィンって、名前かよ。

イケメンのサーファーで、海外にもファンがたくさんいるらしい。

イケメンは俺たちのために全員死すべしだと思うんだ。

スカしたイケメン野郎なんかに負けるかよ。

 

「こういう怒りは、ピッチ上のプレイでぶつけてやるか。」

 

俺は静かに闘志を燃やしていた。

理由はともかく、アツくなるのは問題ない。

さあ、この試合、絶対に勝つぞ!

 

 

 

 

 

「では、スタンディングメンバーを発表する。」

 

よし、来たか。

さすがに俺は入ってるだろ。

 

「フォワード。豪炎寺、清川、基山。ミッドフィルダー。鬼道、吹雪、八神。ディフェンダー。木暮、倉掛、風丸、壁山。そしてゴールキーパー兼ゲームキャプテンは、円堂。」

 

「「「はいっ!」」」

 

「なっ!?俺が控えだと!?チッ、わかってねえなあ。」

 

「・・・・ベンチ、か・・・・」

 

不動や緑川はメンバーにご不満のようだ。

俺にとっては大満足でしかないが。

 

「お前達も、重要な戦力だ。いつ交代してもいいように準備しておけよ。」

 

「「はい!」」

 

円堂の呼びかけに応えたのは虎丸と立向居だけだった。

久遠監督はフォーメーションの指示を出さなかったため、鬼道が指示を出してポジションにつく。

ちなみに、今回の俺達とビッグウェイブズのフォーメーションだ。

 

 

 

 

 

ビッグウェイブズ

 

GK ジンベエ

DF クラーケン、タートル、ビーチ、ウォーター

MF サーフィン、ドルフィン、アングラー、シュリンプ

FW ジョーズ、リーフ

 

 

 

イナズマジャパン

 

FW 豪炎寺、俺、ヒロト

MF 吹雪、鬼道、玲奈

DF クララ、木暮、壁山、風丸

GK 円堂

 

ベンチ

緑川、不動、立向居、虎丸、飛鷹

 

 

 

とりあえず、ビッグウェイブズのチームにいるメンバーの名前おかしくね?

全員海に関する名前かと思ったらリーフ、何だお前は。

そして同じくフォワードのジョーズって奴怖すぎだろ。

サメじゃねえか。

とりあえず、チームキャプテンのドルフィンに気をつけてればいいかな。

その他のメンバーがどう動くのか俺達は知らないし。

 

そして俺達イナズマジャパンだが、フォワードが俺を含めて3人とも全員火属性なんだがそれは大丈夫なのか?

相手は海の男達って言ってたし、相性は最悪な気がするんだが・・・・

 

『さあ、間も無くアジア予選の開幕試合、開始です!』

 

ピーッ

 

ホイッスルが鳴り、ボールはイナズマジャパンからだ。

俺は試合が開始してすぐにヒロトにボールを渡す。

そしてヒロトは、バックパスで鬼道へとボールを回した。

俺達フォワードの3人は前線へと上がる。

 

「よし、上がるぞ!」

 

鬼道の掛け声で、ミッドフィルダーもビッグウェイブズへ攻め入る。

 

「よし、始めるぞ。オレ達のサッカーを。」

 

「?」

 

ドルフィンが何か呟いた気がしたのだが、そんなことを気にする暇はない。

もう試合は始まっているのだ。

 

「行くぞ!ボックスロックディフェンス!」

 

「何っ!?」

 

ボールを持っていた鬼道に、ニースを含めたビッグウェイブズの4人の選手が集まった。

その4人は、鬼道の左右前後に適度な間隔をあけてマークをつける。

鬼道はボールをキープしながらどうにか抜け出そうと模索するが、ビッグウェイブズの陣形は崩れない。

鬼道の体勢が一瞬揺らいだ時、4人の選手は鬼道からボールを掠め取った。

 

『出たぁー!!これがビッグウェイブズの必殺タクティクス、ボックスロック・ディフェンス!一度囲まれたら出ることのできない、鉄壁の戦術です!!』

 

相手が蹴ったボールは、右サイドのディフェンスへ溢れる。

しかし、そこにいた木暮と風丸は互いに衝突してしまった。

2人のミスで、ボールはそのまま転がっていってしまう。

それを拾ったのは、ビッグウェイブズのフォワード、ジョーズだった。

 

「食らえ!メガロドン!!」

 

ジョーズの背後に大海とサメが現れてイナズマジャパンゴールへと迫る。

うん、俺も何言ってるかわからん。

でも現れたんだよ、サメが。

普通にこれは怖いだろ、円堂も。

と思ったのだが、あいつは冷静に必殺技を繰り出した。

 

「はぁぁああっ!!正義の鉄拳!!!」

 

僅かに拮抗したかに見えたが、そんな事は全くなくメガロドンがゴールへと突き刺さった。

やっぱり、正義の鉄拳じゃ世界には通用しないのだろう。

どうせならムゲンザハンドの立向居にゴールを任せたほうがいいと思うのだが・・・・

 

「ぐわっ!?」

 

『ゴール!先制したのは、ビッグウェイブズです!!』

 

前半数分で、俺達はもう失点してしまった。

この調子でいくと、負けるのは必至だ。

まずは、何とかしてあの必殺タクティクスを打ち破る事が重要なのだが・・・・・

あの鬼道が取られたのだ、打ち破るのは簡単じゃないだろう。

 

「この失点。ポジショニングの練習をしておけば、防げたかもしれない。久遠監督は一体何を考えている?」

 

「凄いな!」

 

「えっ?」

 

「やっぱり、こんな凄いシュートや技を持っている奴がいるんだ!燃えてきたぜ!」

 

「強いほど燃えるなんて、キャプテンらしいッス。」

 

「まだまだ一点!皆!取り返していくぞ!」

 

「「「おう!!」」」

 

ボールは再び、俺たちからだ。

今度は、俺がそのままボールをドリブルしながら持ち込む。

 

「ボックスロック・ディフェンス!」

 

鬼道の時と同じように、俺の周りに4人のマークがついた。

中に入ってみると、割と圧迫感がある。

よし、どうにかこのタクティクスの突破口を切り開けるといいんだが・・・・

一応、鬼道と同じように左右に動いてみるが、やはりディフェンスがしっかりしていて抜け出す事ができない。

ならばとパスを狙ってみるが、ヒロトや吹雪へのパスコースに4人のうち1人が立つ事で簡単に塞がれる。

どうする、前後左右が囲まれて抜け出すこともパスも通じない。

ならば、上か!

俺は、デススピアーを打ち出す時の要領で空中へと飛び上がる。

だが、予備動作を見ていたのか一瞬先に上に上がっていたドルフィンに上からボールを奪われる。

 

『おおっと!清川もボックスロック・ディフェンスを破る事はできません!』

 

うるせえよ実況!!

今回はジョーズを警戒してか、風丸と木暮がジョーズのマークついていた。

 

「リーフ!」

 

それを見たドルフィンは、逆サイドのリーフへとボールを回した。

しかし、そこに走り込んできたのはクララだった。

ボールを受け取った直後のリーフに、クララが必殺技で迫る。

 

「フローズンスティール!」

 

『イナズマジャパン、倉掛の必殺技で難を逃れました!』

 

「上がるぞ!」

 

ボールを奪取したのを見た鬼道が、俺たちに指示を回す。

ボールはクララから吹雪、吹雪から豪炎寺へと送られる。

 

「ボックスロック・ディフェンス!」

 

しかし、またもや必殺タクティクス。

豪炎寺は、今度は完全に囲まれる前にパスを出す。

そうすることで、ボールを取られてはいない。

でも豪炎寺はボックスロック・ディフェンスを突破したかもしれないが、ボールをもらった俺はどうすればいいんだ。

 

「ボックスロック・ディフェンス!」

 

今度は、逆側にいたメンバーがボックスロック・ディフェンスを仕掛けてくる。

結局、豪炎寺のようにボックスロック・ディフェンスを失敗させる事はできても攻略したとは言えない。

ボールをもって敵陣地へと辿り着かなければ、試合には勝てない。

俺はまたもや、ボックスロック・ディフェンスの術中にはまってしまった。

 

前後左右、そして上空も塞がれているのなら、逃げ道はもはや下にしかない。

勿論、下に逃げ道なんてないのだが。

箱の中に閉じ込められた虫の気持ちがわかった気分だ。

くそ、何かいい手は無いか・・・・?

 

俺は、ビッグウェイブズにボールを取られないようにしてうまく立ち回る。

どうしたらこの箱の中から抜け出せる?

ボールをキープしているだけじゃ、何も始まらない。

かと言って、ボールを取られればまた円堂がゴールを許してしまうかもしれない。

時間が過ぎれば、有利になるのは先制点を取っているビッグウェイブズの方だ。

何か、何か無いか!?

何か攻略の糸口は・・・・

 

俺はボックスロック・ディフェンスの猛攻を避けながら、選手の隙を探す。

だが、やはり代表のメンバーはそれぞれが上手く、とても隙なんてできそうに無い。

くそ、このままじゃただの平行線だ、俺はどうすれば・・・・・

 

「くそ、なぜ取れない!?」

 

「ん?」

 

そこまで考えて、俺は違和感に気付いた。

僅か()()、ボールが取れないだけでビッグウェイブズのメンバーが焦り始めたのだ。

 

『これは凄い!ボックスロック・ディフェンスを受けたはずの清川は、なんとその狭いスペースの中で軽やかにボールをキープしている!!』

 

そうだ、このままボールをキープし続ければ、いつしか陣形を崩す事ができるかもしれない。

だが、時間をそんなに使ってしまうのは流石に勿体無い。

俺は、慎重に相手を刺激する言葉を選んで挑発した。

 

「おいおい、どうしたよ?代表選手が4人で寄ってたかって、1人からボールを奪えないのか?」

 

「くっ・・・・お前ら!もっと激しく行け!」

 

ニヤニヤと言い放つ俺に、ディフェンスに参加していないドルフィンはやはり焦って指示を出す。

まあまあ、そんなカッカするなよな。

 

「オーストラリアのトップはこの程度かよ。期待して損した気分だぜ。おい聞いてんのか、イソギンチャク野郎がよ。」

 

「何を手こずっている!?ボールはまだか!?」

 

ドルフィンが叫ぶが、4人は俺からボールを奪う事はできない。

そして、ついにボックスロック・ディフェンスに綻びが生じる。

激しくボールを奪いに来たからか、焦ったからかは知らないがこのチャンスを逃すわけにはいかない。

俺は、その隙間に体を入れ込んで今度は俺がビッグウェイブズをマークをするかのように動く。

 

「何っ!?」

 

そして、ボールをキープしながらボックスロック・ディフェンスを抜け出した。

 

『なんと!清川が2回目にして鉄壁の必殺タクティクス、ボックスロック・ディフェンスを打ち崩しましたっっ!!』

 

「くそ!行かせるな!」

 

俺はそのまま敵陣内へと上がる。

 

「いいぞ!耀姫(ようき)ー!」

 

ボックスロック・ディフェンスは、強力な分1人に4人がマークについて人数を多く使ってしまう。

ディフェンダー数人を残して全員が上がってしまっているのだ。

つまり、ゴール前までがガラ空きだって事だ。

 

「行け、豪炎寺!」

 

俺は、完璧な位置に移動してボールを待つ豪炎寺にパスを出した。

このままシュートが入れば、流れを変える事ができる。

パスは無事豪炎寺まで渡り、最高のシュートチャンスが訪れた。

 

「爆熱!ストーム!!」

 

豪炎寺が蹴り飛ばした炎を纏うシュートは、狙い通りにゴールへと吸い込まれていく。

ゴールキーパーのジンベイは、右手を突き出して必殺技を出した。

 

「グレートバリアリーフ!」

 

叫ぶと突然ゴールの正面に大きな海の断片が出現した。

その海水に飲み込まれたしまったボールは、勢いを殺しながらジンベイの右手におさまった。

 

『なんと!ビッグウェイブズゴールキーパー、ジーンベイカー、豪炎寺の渾身の必殺技をあっさりと止めてしまいました!』

 

「おい馬鹿!決めろよ豪炎寺!」

 

「・・・・すまない。」

 

豪炎寺も、ここで点を入れる事ができなかった事で大きなチャンスを逃してしまったのはわかっているのだろう。

悔しそうな顔をして素直に謝る豪炎寺。

いや、そんなこと言われたら、なんか俺が悪いみたいじゃん?

 

「ウォーター!」

 

ゴールキーパーがディフェンダーへとパスを回す。

しかし、そのボールは俺たちと上がって来ていたヒロトが奪った。

 

「流星ブレード!」

 

「グレートバリアリーフ!」

 

ボックスロック・ディフェンスを完全に攻略したとは言えない今、ボールがゴール前にあるうちにシュートを決めておきたい。

ヒロトのナイスシュートをだったが、これもまたグレートバリアリーフに防がれてしまった。

 

『ウォーターマンへのパスをカットした基山でしたが、これもゴールならず!』

 

「ごめん、耀姫(ようき)くん・・・・入れられなかった・・・・・」

 

「気にすんなって。でも、次は決めろよ。」

 

なんでお前まで謝ってくるんだよ。

止められたボールは、ディフェンダー、ミッドフィルダー、フォワードと繋がって、俺たちはカウンターを受ける。

 

「まずい、止めろ!」

 

ボールをキープしているジョーズの前を塞いだのは玲奈だ。

 

「抜かせない!」

 

玲奈のブロックでボールはビッグウェイブズの手から奪還した。

その瞬間、俺に2人のマークが付いた。

くそ、ボックスロック・ディフェンスを破った俺に、ボールを渡さないつもりか・・・・!!

そしてボールは玲奈から鬼道の元へと回される。

 

「一回破ったくらいで、いい気になるなよ!ボックスロック・ディフェンス!」

 

再び必殺の、ボックスロック・ディフェンスだ。

その瞬間、俺をマークしていた2人の選手が急に俺を置いて前線に上がり始めた。

俺以外には打ち破る事ができないと考え、ボールが来るのを敵陣地で待つつもりなのか。

そしてその読みは多分当たりだ。

鬼道に破る事ができるのか・・・・?

俺が抜け出した方法は、部屋の中での特訓でボールをキープする能力を上げて来た俺だからこそできた芸当だ。

だが、俺と同じ特訓をしていない鬼道には、ボックスロック・ディフェンスの中でボールをキープするのは不可能かもしれない。

と、そこまで考えて、俺は自分の考えが間違っていたことに気づく。

あれ・・・・?

鬼道、俺と同じ特訓してんじゃん!

むしろ、全員部屋の中で特訓をしていたはずだ。

そうか!久遠監督はこの必殺タクティクスを見通して、練習禁止なんていうとんでも指示を出したのか!

 

「鬼道!部屋の中の特訓を思い出せ!」

 

「何!?」

 

俺は、箱の中に閉じ込められている鬼道に叫んだ。

視界の端に見えていた久遠監督が少し口元を緩めた気がした。

 

「部屋の中の特訓・・・・そうか!」

 

鬼道は、俺の言葉を聞いて何かに気が付いたようだ。

鬼道は箱の中で、俺と同じようにボールをキープしてボックスロック・ディフェンスを防ぐ。

 

「!?これは!」

 

何か掴めたのか、鬼道はさっきまでの動きと見違えるほどの動きを始める。

まるで踊るようにボールをキープする鬼道は、ボックスロック・ディフェンスを打ち破った。

 

「豪炎寺!」

 

相手の選手と選手の開いた隙間を狙って、鬼道が豪炎寺へとパスを出す。

豪炎寺はパスを受けそのまま上がるが、ビッグウェイブズはまたもやボックスロック・ディフェンスの構えだ。

 

「いくぞ!ボックスロック・ディフェンス!」

 

豪炎寺も、4人のプレイヤーに囲まれ、箱の中に閉じ込められてしまう。

 

「豪炎寺!特訓を思い出せ!ボックスロック・ディフェンスはただの4枚の壁だ!」

 

豪炎寺は小さくうなづいた後、俺たちと同じようにボックスロック・ディフェンスを打ち崩した。

 

「何だと!?」

 

耀姫(ようき)!」

 

俺は豪炎寺が囲まれた直後に、前線へ上がってパスを待っていた。

先ほども言った通り、ボックスロックディフェンスを使うとディフェンスが薄くなる。

ボールは簡単にゴール前にいる俺まで通った。

鬼道と豪炎寺が、ビッグウェイブズの必殺タクティクスを破ってここまで繋いだボール。

ここで決めないわけには行かない!

それに、ここで決まらなければ俺のメンツが丸つぶれだ。

 

「はぁぁぁあああ!!デス!!スピアー!!!」

 

俺の持つ、必殺シュート技の一つ、デススピアー。

赤黒いオーラに染まった俺のシュートがゴールへ向かう。

 

「グレートバリアリーフ!」

 

またもやゴールの目の前に大きな海水の壁が出来上がる。

デススピアーは、その水と衝突した。

 

「いっけぇぇぇえええ!!」

 

ギュルギュルと高速回転をするデススピアーは、海水の中をまるでドリルかのように穿って突き抜けた。

 

「なんだと!?」

 

『ゴール!!清川が放った一槍のシュートが大波を押しのけゴールへと突き刺さりました!!局面を変えたのはまたしても清川だぁーっ!』

 

よし!

これで同点だ!

俺たちが喜んでいる中、豪炎寺だけが少し考え事をしていた。

 

「あの回転・・・・なるほど。試してみる価値はありそうだな。」

 

「ん?どうした?豪炎寺?」

 

「ああ、いや。ナイスシュート!」

 

「おう。豪炎寺もナイスパス。」

 

ピッピー!

 

前半終了のホイッスルが鳴る。

こうして俺達は、一対一の同点で前半を終えた。

 

 

 

 

 

休んでいた俺達に、監督が声をかける。

 

「基山、交代だ。虎丸。後半、頭から行くぞ。」

 

「はい。」

 

「えっ!?わ、わかりました!皆さんの邪魔にならないようなプレーを心がけます!」

 

緊張したような声を上げるから緊張してガチガチなのかと思ったら、そんなことはないようだ。

どうやら、プレーが出来るのが素直に嬉しいだけのようだ。

 

「後半の指示を伝える。」

 

「「「はい!」」」

 

全員、監督の指示の意図がわかって信じる事ができるようになったのか、普段よりも大きな声が揃う。

 

「清川は基山の位置について、虎丸は清川のいた場所から一歩下がったポジションに付け。前にボールを繋げろ。」

 

「そ、そんな大事な役目、俺でいいんでしょうか・・・・?」

 

「お前がやるんだ。」

 

「はい!」

 

「吹雪、八神。お前達は中盤底に下がって相手の攻撃の芽を摘め。」

 

「「はい。」」

 

それだけ言うと、久遠監督は定位置に戻る。

監督は渋い顔をしてまた黙りこくってしまった。

 

「ボックスロックディフェンスを攻略したのに、監督は嬉しそうじゃないな。」

 

「まさか、まだ何かあるというのか・・・・?」

 

「まあまあ、気にしててもしょうがねえ。後半も気合い入れていくぜ!」

 

「「「おう!」」」

 

 

 

 

 

『ビッグウェイブズはリーフとシュリンプ、ビーチを下げて新たにメンバーを入れるようです!ロベルト監督の意図はどこにあるのか!?』

 

ビッグウェイブズもメンバー交代か。

ボックスロック・ディフェンスを諦めたのか、あるいは強化してこようとしているのか。

新たに入ったメンバーがどう動くのか気になるな。

 

『対するイナズマジャパンは、基山に変わって宇都宮が入ったようです。フットボールフロンティアに出場経験のない宇都宮ですが、どんなプレーを見せてくれるのでしょうか。』

 

ピーッ

 

後半開始のホイッスルが鳴り、試合が再開される。

ボールはビッグウェイブズからだ。

 

『後半開始!さて、先にスコアを追い越すのはどちらのチームだ!?』

 

新たに入ったフォワードと、前半で点を入れたジョーズが攻め上がる。

 

「そいつをよこせ!」

 

一番最初に俺と豪炎寺がボールを奪いにかかる。

 

「そう簡単にはボールを渡してたまるか!」

 

しかし俺達はワンツーパスでうまくかわされてしまった。

まあ、こんなにすぐに奪えるとは思っていない。

俺達は攻め上がるビッグウェイブズを無視して敵陣内へと上がる。

シュートしやすい位置に待機して、ボールが来るのを待つ。

それが、俺たちの役目だからな。

 

「もらったっ!」

 

『おおっと!入ったばかりの宇都宮、ナイスプレーでボールを奪取した!』

 

あのワンツーパスを簡単に取っただと!?

流石だな、これまで1、2とストーリーに出てこなかった癖に急に代表候補に上がってきただけはあるな。

無銘メンバー同士、俺も負けちゃいられない。

 

「こっちだ!」

 

俺が叫ぶと、すぐさまビッグウェイブズのメンバー2人が俺をマークした。

くそ、デススピアーでグレートバリアリーフを破った事で警戒されているのか?

さっきっからマークされっぱなしでつまんねえ!

 

『ビッグウェイブズ、清川をぴったりとマーク!これではパスは通りません!』

 

「豪炎寺さん!」

 

虎丸は奪ったボールを豪炎寺へとパスした。

ボールを受け取った豪炎寺は、そのままドリブルで攻め上がる。

 

「グレイブストーン!」

 

「何っ!?」

 

豪炎寺は、入ったばかりのビッグウェイブズメンバーの必殺技で吹き飛ばされた。

ボールを手に入れたそのミッドフィールダーは、イナズマジャパン陣内へと駆け上がる。

 

『ビッグウェイブズはボックスロック・ディフェンスが通用しないと見ると、今度は個人技でのディフェンスに切り替えてきました!』

 

「チッ、往生際が悪い!止めろ吹雪!」

 

「うん・・・・!!」

 

俺が吹雪に指示を出すと、吹雪は一言答えてからディフェンスする。

 

「カンガルー・キック!」

 

しかし、その選手はまた必殺技で対抗する。

実況の言う通り、本当に個人技に移り変わったな。

前半であんなにチームプレイをしていたのに、これが同じチームなのかというほどの変わり様だ。

っていうかカンガルーって。

最早海関係なくなっちゃったよ。

 

『倉掛が抜かれてジョーズがフリーだ!止められるか、円堂!?』

 

クララが抜かれ、ジョーズにパスが回りシュートチャンスに繋がってしまう。

 

「行くぞ!メガロドン!」

 

「・・・・止める!」

 

円堂は何故か目を瞑り、必殺技の体勢に入った。

な、何してるんだ!?

 

「今だ!正義の鉄拳!」

 

ボールが届く寸前、カッと目を見開いてボールに拳をぶつける。

前半の時よりも力の篭った拳が、シュートを押し返す。

 

『止めた!キーパー円堂、1度は負けたものの、今度は完璧にシュートを跳ね返した!』

 

もしかして、やっぱりサメが襲ってくるのは怖かったのかな?

あんなの俺だって怖い。

そして、ボールが向かったのは風丸の方向だ。

ボールをトラップした風丸は、そのまま上がる。

 

「いただく!」

 

風丸に、ビッグウェイブズの選手が迫る。

 

「負けるかっ!」

 

風丸も負けじと走り抜ける。

すると、風丸の周りに豪風が吹き荒れ、ビッグウェイブズの選手を吹き飛ばした。

 

「あれは何だ!?必殺技じゃないみたいだが・・・・」

 

これからは、風丸のあの動きにも要注目だな。

新しい必殺技の予感がする。

風丸はかなり前線に出てから玲名にパスを出す。

右サイドだから俺のシュートチャンスだ!と、いつもならそうなる。

だが、俺にはさっきからマークが付いていてまともに動けない。

 

「ナイスナイス!行けー!玲奈!」

 

だからもう、いっその事俺は応援役に徹しよう。

マークが1人ならともかく、2人じゃ抜け出すのは難しい。

玲奈は俺の指示通り本来は俺がいるべきフォワードの位置まで上がる。

右サイドは、俺にマークが2人ついているからディフェンスも手薄なんだよな。

 

「はぁっ!!」

 

「グレートバリアリーフ!」

 

そのままいつもの素早い動きでディフェンスを抜き去った玲奈はシュートを打つ。

 

『おおっと八神、ここは簡単にキャッチされてしまいました!』

 

しかし、グレートバリアリーフによってあっさりと止められてしまう。

まあそりゃあ普通のシュートだからな。

玲奈って、何か必殺技持ってなかったっけ?

ディフェンスもオフェンスも、シュートの時にすら必殺技を使わないなんて。

 

「ウォーター!」

 

玲奈のシュートを止められたイナズマジャパンはカウンターを受けてしまう。

玲奈が上がりすぎていたことが裏目に出た。

右サイドにスペースが出来てしまっていたようだ。

そこに付け込まれてしまった。

 

「行かせない!」

 

「カンガルーキック!」

 

「ぐわっ!?」

 

真ん中にいた鬼道が進路を塞ぐが、またしてもあの技によって突破されてしまう。

ビッグウェイブズとかいうチーム名なら海の技で統一しろよ!

イミワカンナイ!

 

そしてボールはジョーズに渡る。

またメガロドンか???

でも円堂はもうメガロドンを止められる。

シュートを打たれても大丈夫だ。

 

「旋風陣!」

 

木暮が、旋風陣でジョーズのボールを奪う。

ナイス木暮!

 

『ここで木暮がボールを奪取!イナズマジャパンが攻め上がります!』

 

「鬼道!」

 

「虎丸!」

 

そして俺達の攻撃だ。

ボールはダイレクトパスが繋がり、虎丸の元へ。

虎丸は鮮やかなプレーでビッグウェイブズのディフェンダーを抜き去った。

 

「豪炎寺さん!」

 

ゴール前で、いよいよシュートができそう、という所で虎丸は豪炎寺へとパスを出した。

まあ、わかってたけどな。

今回は豪炎寺もパスを受けやすい位置にいたしボールも繋げやすかったからパスが出てもおかしくはない。

おかしくはないのだが、普通はしない。

 

「はあああああ!!!爆熱!スクリュー!!」

 

豪炎寺も、パスが来るのを薄々予感していたのだろう。

完璧なタイミングでボールを受け、シュートを打ち放った。

豪炎寺の新必殺技の、爆熱ストームの進化系のような技だ。

爆熱ストームに捻りがかかって回転することで突破力が上がっているようだ。

 

「グレートバリアリーフ!」

 

もう本日何度目かわからないグレートバリアリーフ。

豪炎寺の新必殺技、爆熱スクリューは、その大波をまるでスクリューのように押しのけてゴールへと突き刺さる。

 

『ゴール!!豪炎寺の新必殺技が炸裂!イナズマジャパンが逆転です!!』

 

よし、これで一安心だな。

残り時間もあとはロスタイムくらいだろうし、守りきれるはずだ。

もしもここで点を入れられても同点ですむ。

俺達は嬉々としてポジションに戻った。

 

「清川!」

 

「ん?」

 

俺がポジションにつくと、試合が始まる前に久遠監督が俺のことを呼んだ。

何だろ、交代か?

まあ、あれだけガッチガチにマークされてたら下がるしかないか。

俺はそう思って、ベンチの近くまで向かう。

しかし、久遠監督が言った言葉は、俺の予想していたものと違っていた。

 

「清川、なぜ動かない。」

 

「えっ?それは、マークが固くて満足に動けないので・・・・」

 

「お前はそんな事で諦めるのか。マークくらい自分で外してみせろ。」

 

「でも、一人ならともかく、二人もいるんじゃ・・・・」

 

「ならばベンチへ下がれ。そんな事では、お前を入れていても意味がない。」

 

「はい!スンマセン!!次からはしっかり動きます!!!」

 

俺はびしっと敬礼をして、いそいそとポジションに戻った。

ひぇー、おっかねえ!

ボックスロックディフェンスを破ったのも、ジャパン内で初ゴールを決めたのも俺なのに!

まあでも、全く動こうとしなかった俺も悪いか。

でも、俺一人のマークのために二人減ったら一人いない分有利になるかなって思ったんだよ。

 

ピーッ!

 

『試合再開です!試合時間は残りわずか。このまま逃げきれるか、イナズマジャパン!?』

 

「行くぞ!お前ら!!」

 

「「「おう!!」」」

 

『おおっと!ここでビッグウェイブズは守りを捨てて全員攻撃を始めました!!なんという大胆な戦術だ!!』

 

「くそ、捨て身ってわけかよ!?」

 

俺達も止めにかかるが、もう後が無いビッグウェイブズに押され気味だ。

そのままディフェンスまで追い詰められてしまった。

 

「行かせるかよ!」

 

ここでまたもや木暮がナイスプレー。

ジョーズからスライディングでボールを奪った。

そして、ダメ押しだとばかりに俺達はビッグウェイブズ陣内へ駆け上がる。

全員攻撃の反動で、ビッグウェイブズの守備はガラ空きだ。

あからさまな攻撃のチャンス。

ボールは虎丸に回り、絶好のシュートチャンスだ。

 

「あと、お願いします。」

 

そんなタイミングで、虎丸は俺へとバックパスを出した。

そんな予感はしていたが、このタイミングでもシュートを打たないなんて・・・・

一体、何がお前の心を閉ざしているんだ?

 

ピッピッピーッ!

 

俺がボールを受け取ると、試合終了のホイッスルが鳴った。

いや、終わり方なんだよこれ。

虎丸がシュートしないなら、せめて俺がシュートを打ちたかった。

 

最後の終わり方はちょっとアレだったが、まあ俺たちの勝ちだ。

FFIの初戦、俺達はビッグウェイブズに勝利した。

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。