イナズマイレブン!北のサッカープレイヤー   作:リンク切り

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見てない間に予想以上に増えてる。


第四章 ついにアジア頂上決戦!世界への切符を手に入れろ!
ネオジャパン襲来!まさかのメンバー達! #12


 

 

 

 

 

「オーストラリア、カタール。二試合戦って、皆も世界の壁の高さを実感したと思う。」

 

早朝。

朝食の後、朝の練習の前に鬼道が俺たちを集めた。

何やら話があるらしいが・・・・

 

「アジア予選を勝ち抜き、予選大会を勝ち抜くにはより強力な必殺技が必要だ。そこで。新必殺技を考えてみないか?」

 

「新必殺技、か。」

 

鬼道は一つコクリとうなづくと、風丸へと顔を向ける。

 

「風丸。オーストラリアとの試合で、お前が相手選手を抜こうとしたときのことを覚えているか。」

 

「俺がビッグウェイブズ戦で?」

 

「ああ、あの時か!」

 

「必殺技でもないのに、一瞬、風がものすごい勢いで吹き荒れてたよな。」

 

「あの風に、さらなる磨きをかければ・・・・・強力な必殺技になるはずだ。」

 

「わかった。その必殺技を完成させれば良いんだな?」

 

「ああ。」

 

風丸の必殺技は、疾風ダッシュと・・・・ん、アレ!?

他に何かあったっけ?

やばいやばい、早く必殺技覚えてください、風丸くん。

 

「それから、吹雪と耀姫(ようき)。2人には連携必殺技のシュートを習得してもらいたい。」

 

「連携必殺技?」

 

「そうだ。スピードの吹雪、パワーの耀姫(ようき)。この2人が連携すれば、強力な必殺技になるはずだ。」

 

・・・・と、いってもな。

 

「鬼道。お前たちには言ってなかったかもしれないけど、俺たち2人のシュート技ならもうあるぞ。」

 

「・・・・そうなのか?」

 

「うん。白恋の時のだけど、あの技があったら初めからデザーム・・・・砂木沼君のドリルスマッシャーだって、怖くなかったはずだよ。」

 

「そうだな。調整は必要かもだけど、今やっても世界に通用するんじゃないか?」

 

「そんなにか・・・・」

 

「ああ。でも、シュート技は別に良くないか?俺のデススピアー、吹雪のウルフレジェンド。両方強力だし、今のところ困ってない。2人合わせる意味はないと思うが。」

 

「そうかもしれない。だが、攻撃の幅を広げると考えると、必殺技が幾つあっても損はない。」

 

まあ、その言い分はわかるけど。

攻撃の幅を広げたいんなら、俺と吹雪じゃダメだな。

もっと他のメンバーと組ませなくちゃ。

鬼道と俺は、近寄って必殺技の案を出し始めた。

 

「そうなるとメンバーを考え直す必要があるな。吹雪だと、誰を組ませたい?」

 

「・・・・風丸だな。スピードの吹雪にスピードの風丸。どんな事になるのか、興味がある。が・・・・」

 

「風丸は、新必殺技の案があるからなー。とりあえずは保留だな。」

 

「そういう事だ。耀姫(ようき)と相性がいいのは、やっぱり吹雪だと思ってたんだが、他となると・・・・」

 

「ところで。内緒にしてたんだが、俺の方はもう連携技の練習をしてるんだわ。」

 

「ほう?」

 

「ヒロト、玲奈。このメンバーとの三人技なんだが、俺が何をしたいかわかるか?」

 

「・・・・・まさか?」

 

「気がついたか?そそ。どうしても最終奥義スペースペンギンが使いたくてさ。まあ、まだ一回も成功はしていないんだが・・・・」

 

ボソボソと2人で意見を出し合い、結局は俺はスペースペンギンに集中、吹雪は風丸の必殺技が出来上がり次第組んでみるという結論が出た。

それから、円堂の必殺技の強化、あるいは新必殺技の編み出しも提案し、今日の練習は必殺技メインでする事になった。

どうやら久遠監督にも今日は必殺技の特訓に使うことの許可を取っているらしい。

行動の早いやつだな。

 

 

 

 

 

「風丸。新必殺技のイメージは掴めたか?。」

 

「ああ。一応イメージだけならできた。あとは練習あるのみだな。お前たちの方はどうだ?」

 

「さっぱりだ。なっかなか進まねー!」

 

「あはは、そっか。あのエイリア最強の必殺技だったんだろ?難しくて当然さ。」

 

「そうかー?もう全然で、自信なくなってきそうだわ。」

 

練習が終わり、その日の夕食。

俺と風丸は隣の席に座って、それぞれの必殺技の進み具合を話し合っていた。

隣には円堂がいて、円堂もまた、正義の鉄拳の進化について思い悩んでいるようだ。

 

「うーん、正義の鉄拳は究極奥義だから、まだまだ進化するはずなんだけどなぁ。」

 

「円堂も、今日は収穫なしか。」

 

「収穫ならあった!グーとパーはともかく、チョキでボールを止めると指が痛い!」

 

「お前はどんな特訓したんだ?」

 

どうやら円堂は、正義の鉄拳の出し方から考えているみたいだ。

円堂は、昨日俺が言ったことを綺麗さっぱり忘れているかのように振舞っていた。

よくそんな態度でいられるな、あんなにきつめに言ったのに。

円堂は気持ちの切り替えが早いな、本当に。

ちょっと言いすぎたかな、とも思ったんだけど、この調子なら大丈夫そうだ。

円堂は、色々試したがパンチングで垂直に力を加えるのが一番力が入ると言っていた。

まあ、常識で考えるとそうだよな、常識で考えると。

オメガザハンドとか、教えてあげたほうがいんかな?

 

結局、今日必殺技の進歩があったのは風丸だけだった。

 

 

 

 

 

⚽️

 

 

 

 

 

「フローズンスティール!」

 

「はっ!」

 

俺はフローズンスティールを飛び上がる事で避ける。

必殺技と言えども、フローズンスティールは当たらなければ必殺でもなんでもない。

ただ、早く鋭いスライディングタックルというだけだ。

まあ、それだけで必殺と呼んでも良いだけの強さがあるのだが。

 

「豪炎寺!」

 

「ああ!」

 

豪炎寺は、俺からボールを受け取りゴールへと上がる。

今日はなぜか、久遠監督は俺たちに「今日は自主練だ」とだけ言ってそのまま宿舎の中に入って行った。

俺は監督が休みたかっただけじゃないかと疑っているが。

必殺技の練習も大事だが、基礎の訓練もやはり大事だ。

ということで、円堂以外はしっかりとした模擬試合を行なっていた。

 

「爆熱ストーム!」

 

「ムゲン・ザ・ハンド!」

 

必殺技は拮抗したが、しかし最後には豪炎寺のシュートは立向居の腕の中にしっかりと収められていた。

 

「惜しかったな、豪炎寺ー!」

 

反対側のゴールから声援が飛ぶ。

人を励ます時間があったら、お前はちゃんと必殺技のことを考えろ。

 

「木暮!」

 

立向居が、木暮へパスを出した。

立向居が人を呼び捨てにしているのも、最近じゃ聞き慣れてきた。

最初の頃は耳慣れなかったんだけどさ。

立向居は、どうやら同学年の相手には敬語を使わないみたいだった。

まあ、考えて見れば当然なんだけどさ?

立向居は敬語キャラっていう俺の中でのイメージがついてたから、ちょっと驚いたっていう話。

 

「戻るぞ、耀姫(ようき)。」

 

シュートを止められたのを見て、豪炎寺が戻る。

俺はそれに答え、フィールドを駆けずり回った。

 

数分後、攻守が交代し、今度は俺達が守りに回った。

そして、円堂の守るゴール前。

ボールを持っているのは虎丸だ。

 

「タイガードライブ!」

 

デザートライオンとの試合で封印を解いた、虎丸渾身のシュートだ。

 

「行くぞ!」

 

円堂は、そのシュートを見据えて拳を振るう。

 

「あれ?」

 

しかし、円堂がシュートへパンチングすると、すぐにボールはタッチラインを超えて外へ出た。

これは必殺技のヒントが掴めた、というよりは、シュートの方に問題があったように見えた。

 

「どうしたんだ?虎丸。」

 

円堂も同じことを思ったようで、シュートを止めた後に虎丸に駆け寄った。

ここに監督がいれば、円堂もそんなことはしなかっただろう。

 

「えっ?な、なんでもないです、大丈夫です。」

 

「なんでもないってことはないだろう。さっきのシュート、昨日見た時と全然違うようだったけど。」

 

俺も、それは思った。

タイガードライブは、昨日の試合を見る限りでは体をひねって回し蹴りのような形でボールにキックを叩き込むシュートだったはずだ。

そのひねりがボールに伝わり、ボールは軽い弧を描きながら現れた虎と共にゴールへと駆ける。

しかし今回は、その曲がるシュートがそのまま外向きに回転してゴールを逸れていた。

しっかりと見ていれば、これがシュートミスだってことは俺たちならすぐわかる。

 

「虎丸。」

 

「ご、豪炎寺さん・・・・」

 

「足を見せてくれないか。」

 

「えっと、は、はい・・・・」

 

虎丸は、豪炎寺の無言の威圧に耐えきれず素直に従った。

練習用シューズと靴下を脱ぎ、裸足を見せる。

 

「わ、痛そうッス・・・・」

 

円堂の近くでディフェンスをしていた壁山が、虎丸の足を見てそう呟いた。

豪炎寺の読み通り、虎丸は怪我をしていた。

右足の親指の爪が赤くなり、少し血が滲んでいた。

 

「いつからだ?」

 

「えっと、デザートライオンの時の、タイガードライブの時・・・・」

 

昨日の、あの時か!

捻挫とかじゃなく軽い怪我だったから、気づかなかった。

指の爪なら、走ったりするくらいなら問題はなさそうだしさ。

オイオイ、虎丸ー!

こういう事はちゃんと言わないとダメだぜー!

 

「どうして黙ってたんだ。」

 

「・・・・すみません、少し痛い程度だったので、大丈夫かなって・・・・」

 

そう思って無理して練習してると、意外と怪我がひどくなったりするんだよなー。

突き指とか打撲とか、軽い怪我でも軽んじてちゃダメなんだよ、やっぱり。

今回の怪我は、本当に小さなものだったけど。

 

「誰か、マネージャーに怪我のことを伝えて救急箱か何かを持ってきてやってくれ。」

 

「うん、わかったよ。」

 

豪炎寺は吹雪をパシリに使って、虎丸の足を診る。

なんか、面倒見がいいな豪炎寺。

慕ってくれる後輩だからか知らないが、こういうのも新鮮だ。

 

「ボールを蹴るのはやめておいた方が良さそうだな。今日の練習は休め。」

 

「えっ、でも、こんな大切な時期に・・・・」

 

「もっと酷くなったらどうするんだ。決勝に出られなくなってもいいのか?」

 

「それは、嫌ですけど・・・・・」

 

「幸い、この程度の怪我なら1日2日で治るかもしれない。ボールを蹴らなければな。」

 

「・・・・わかりました。今日は見学します。」

 

虎丸が、渋々と頷いたことで、練習は再開となる。

 

「よーし、俺たちは練習に戻るぞー!」

 

「おう!」

 

吹雪が呼んできた音無に虎丸を預け、俺たちはまた練習を続けた。

 

「デススピアー!」

 

「おおおおお!!」

 

俺の放ったデススピアーを、円堂は正義の鉄拳で迎え撃つ。

しかし、その構えはいつものものではない。

裏拳でボールを止めようとしていた。

しかし・・・・

 

「ぐわっ!?」

 

これは失敗したようで、金の拳は俺のシュートに吹き飛ばされた。

新しい必殺技はまだまだ完成しなさそうだ。

 

「よし、もう一度だ!来い!」

 

円堂は起き上がり、グローブを着けた腕を叩いて音を鳴らした。

ホントタフだよな、お前は。

その瞬間。

轟音とともに、どこからともなく現れたボールが円堂の懐の中に飛んできた。

 

「ぐっ!?」

 

そこは円堂、突然のシュートにも臆さずガッチリとキャッチした。

いつもの如くシュートを止めたキーパーグローブから、摩擦で煙が上がっていた。

少林サッカーでこんなのあったよな。

 

「流石だ、円堂。素晴らしい反応速度だ。」

 

「お前は・・・・デザームか!?」

 

「デザーム・・・・?今の私は砂木沼 治。チーム『ネオジャパン』のキャプテンだ。」

 

「ネオジャパンだぁ?」

 

また胡散臭い奴が現れたな。

デザームは、侵略編2では中盤のボスキャラだったはず。

ゴールキーパーかと思えばフォワードに、フォワードかと思えばゴールキーパーになる訳わからん奴だ。

っていうかそれ俺もじゃないですかー。

誰が訳わからん奴だコラ!!キャラ被ってんじゃねぇよ!!!

砂木沼は、そんなことを思っていた俺をなぜか一瞥した。

 

「久しぶりね、円堂君。」

 

「瞳子監督!?」

 

おっ!おおっと、美人監督さんも出ました!

これはアツい展開になりそうな予感!

 

「あの人、誰ですか?」

 

「私たちの前の監督よ。地上最強のチームを集めて、エイリア学園と戦ったの。」

 

「・・・・・もう、サッカーからは身を引いたって聞いていたんですが・・・・・」

 

ああ、そうなの?

瞳子監督、あの後サッカーに関わってなかったんだ。

 

「どうして2人が?」

 

「2人?2人だけではない。」

 

シュシュシュシュシュ!

 

砂木沼の背後から、十数人のサッカープレイヤー達が姿を現した。

もう訳わかんねぇな。

お前らサッカーやってないで忍者でもやれよ。

 

「エイリアに、帝国に、オカルト中、木戸川・・・・世宇子中までいる・・・・」

 

「円堂。私はお前との決着をつけるために再び戻ってきたのだ。」

 

「私たちは、イナズマジャパンに挑戦します。真の、日本代表の座をかけて。」

 

「えぇ!?」

 

「なんだってー!?」

 

おお!?

来たねえ、単刀直入に!

良いね良いね、良いよ、こういう展開!

このタイミングで、自主練を言い渡していた久遠監督が現れた。

 

「久遠監督ですね?初めまして。吉良瞳子です。」

 

「君のことは、響木さんから聞いている。」

 

「ご存知ならそれなら話は早いですね。私は、ネオジャパンの監督として、正式にイナズマジャパンへ試合を申し込みます。そして、ネオジャパンが勝った時は、日本代表の座をいただきます。」

 

へえ、言うじゃん、監督さん。

この世界で会ったのは初めてだが、イメージ通りの人だな。

この久遠監督に対しても、物怖じなくずかずかと図太いセリフを吐いている。

 

「私たちの挑戦、受けていただきますか。」

 

「・・・・・良いでしょう。」

 

「「えぇっ!?」」

 

イナズマイレブンのストーリー進行上、こうなるとはわかっていたが。

こう、燃える展開だね!

かつてのライバル達と代表の座を争うなんて。

 

「ありがとうございます。では、試合は明日。このグラウンドで。」

 

おおっと、どんどん話が進んでいくぜ!

試合が明日となると、虎丸は欠場だな。

 

「イナズマジャパンよ。お前達にはわかるまい。代表選考にも呼ばれず、世界と戦うチャンスすら与えられなかった悔しさが!」

 

そして、デザーム、じゃなかった、砂木沼は俺、虎丸、飛鷹へと視線を向け。

 

「無名選手にすら負けた、この屈辱。」

 

誰が無名だ、誰が!

飛鷹は兎も角、俺と虎丸はそこそこ知名度はあったぞ!!

砂木沼は、今度はクララ、緑川、ヒロト、玲奈へと視線を向ける。

 

「かつての仲間に置いていかれた耐え難き敗北感。・・・・・決して忘れはしない!」

 

いや、そんなこと言われても。

デザーム様が落ちたのは俺たち関係ないですし。完全に逆恨みですし。おすし。

 

「このままでは終われない!日本代表の座は、我々ネオジャパンが必ず勝ち取る!!」

 

そう決め台詞、って言うか捨て台詞?を残して帰っていった。

急遽入った練習試合に、俺たちはてんやわんやだ。

 

「ネオジャパンなんて・・・・姉さんは何を考えてるんだ・・・・っ!!」

 

あっ、そっか。ヒロトは瞳子監督とは義理の姉弟なんだっけ。

あんな美人な姉がいるとか羨ましいよなー。

って言うかヒロトもイケメソだしよォ!!

まったく、っざけんなよ吉良一家!!!!!

 

「まあでも、面白そうじゃないか。ネオジャパンなんて、瞳子監督は、どんなチームに育てたのか、気にならないか、皆!」

 

「そうだな・・・・お前らしいよ、円堂。」

 

「砂木沼たちも、きっと特訓して強くなってるはずだ!俺たちも特訓して、あいつらに勝とう!」

 

「「おう!」」

 

返事をしたチームメイトたちは、全力で特訓の準備を始めだす。

特訓っつっても、何やんのかねえ。

返事をしなかった俺たちはその場に残っていた。

そのうちの1人だった不動は、早くも離脱を宣言する。

 

「元々今日は自主練だったんだ。俺は好きにやらせてもらう。」

 

「・・・・・」

 

飛鷹も黙ーってグラウンドを出て行った。

彼奴らは練習すらしないのかな??

昨日もこの2人はグラウンドにいなかったし。

2人して自主練の時は毎回どこ行ってるんだか。

 

「それにしても、久遠監督は随分あっさり試合の許可を出しましたね。」

 

「もしかして監督は、ネオジャパンにいい選手がいたら引き抜いて代表メンバーと入れ替えるつもりなんじゃ・・・・」

 

ま、普通に考えればそうだけどさ。

まさに弱肉強食。強い者が生き残り、弱いものは代表から蹴落とされる。

そんなの当たり前の事だ。今更ワーキャー言う事じゃない。

 

「よし。俺たちは明日の試合に向けて、スペースペンギンの完成を目指そう。今日こそは絶対完成させる!」

 

「うん。」

 

「ああ。」

 

今日中に完成しなければ、明日の試合に今日の練習は意味がなくなる。

なんとかしないとな、うん。

 

 

 

 

 

「「「スペースペンギン!」」」

 

俺とヒロト、2人が蹴飛ばしたボールは、ゴールを目指さず明後日の方向へと飛んでいく。

やっぱなんか足りてないんだろうなあ。

 

「ヒロト、玲奈。2人から見て、どこが悪いかわかるか?やっぱ、俺だけの問題?」

 

「・・・・いや。お前にも問題はあるが、私たちにも問題はある。」

 

「そうだね。元々はスーパーノヴァっていう必殺技からの派生なんだけど、その頃のメンバーは耀姫(ようき)くんとは体格が全然違った。一緒だと思ってやるんじゃ、成功するわけないからね。」

 

「つまりは、昔の感覚が抜け切れてない。って事か。」

 

って、アレ?

スーパーノヴァとかスペースペンギンとか、一緒に撃ってた奴今日会ったネオジャパンにいなかったか?

ほら、あの水色の髪の、ゴツイ奴。

 

「あと、耀姫(ようき)君は自分1人で撃とうとしすぎかな。」

 

「スンマセン。でも、それが俺の性分だからなー。」

 

「全員が全員に合わせる必要がある。特に、耀姫(ようき)とヒロトだ。同時に蹴るくらいだからな。」

 

だよなー。

吹雪とならこれ以上ない、ってくらいピッタリと息が合うんだけど。

俺とヒロトも、タイミングのズレはないはずなんだが。

やっぱパワーバランスか。

 

「じゃ、とりあえずさ。前のスペースペンギンの感覚を忘れるためにも、一回タイミングとかパワーとか考えず、全力で思いっきりやって見ないか?」

 

「それだと完成はしないが。」

 

「まあそうだけど、そこから調整していけばいいだけだろ?どのくらいのバランスで、どのタイミングにするかとか。」

 

「物は試しだ。やってみよう。」

 

いいこと言うじゃん、ヒロト。

そうそ。今なら失敗してもいいんだから。

 

「いくぞ!」

 

まずは俺とヒロト、2人が飛び上がる。

そして玲奈が力を溜め、口笛も吹かないままペンギンを呼び出す。

その後ボールを上に蹴り上げ、上空にいる俺たち2人が蹴りを叩き込む。

 

タイミングは合った。ただ、パワーのバランスがちぐはぐだ。

純粋なキック勝負で俺の蹴りの方が勝ったらしく、ゴールを大きく外して左側に飛んで行った。

 

「危ない!」

 

ボールの軌道の先には、走り込みをしていたクララがいた。

 

「!?」

 

もう避けられない、というタイミングでようやくクララは振り返る。

ボールはもう、眼前に迫っていた。

そして、

 

「っ!」

 

次の瞬間、ボールはガッチリとクララの腕の中に収まっていた。

 

「あ、えっ、は・・・・?」

 

もう1度、よーく目を凝らしてみる、が、一向に目の前の状況は変わらなかった。

クララがサッカーボールを腕に抱えている。

ただ、それだけの風景だった。

ボールを受け止めたクララは、トコトコとこちらへやって来てボールを渡す。

 

「はい。」

 

俺は呆然と、クララの差し出したボールを受け取った。

ちょっ、何かおかしくね???

 

「待って、待って!」

 

俺は、平然と走り込みに戻ろうとするクララを呼び止める。

何さらっといてるんだよ、ハンドクリームか。

 

「そんなの取って大丈夫だったのか!?」

 

俺の心配に、頷くだけで答えるクララ。

いやいや、そんなわけないだろう。

手を出させると、そこには少し血が滲んでいる程度の擦り傷しか無かった。

必殺技は成功しなかったとはいえ、俺とヒロト、二人のストライカーの本気シュートだぞ?

言ってしまえば、今朝のデザームのシュートよりも勢いは出ていた。

しかも、キーパーグローブもつけていないのに、だ。

 

「よく我慢出来るな。偉いぞ。」

 

思わず、頭を撫でる。

珠香とか、怪我すると泣いちゃうんだけどな。

 

「擦り傷とはいえ、当たると痛いだろ。マネージャーか誰かにサビオ貰ってこい。」

 

「・・・・」

 

喋るどころか微動だにしないクララ。

えっ、ちょっと、どうしたんですかクララさん。

頭撫でてる俺のが恥ずかしいんですけど・・・・

 

【挿絵表示】

 

 

「あ、えっと、サビオってのは絆創膏の事な。」

 

急に恥ずかしくなり、慌ててぱっと頭から手を離す。

と同時に、サビオは道民しかわかんないことを思い出して言い直す。

俺はクララの肩を押し、マネージャーたちの方へと向かわせた。

クララはちらっ、ちらっとこちらを振り返っていた。どうしたんだよ。

それにしても、クララにキーパーの才能があるかもしれないとか。

わかんないもんだな、色々と。

 

 

 

 


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