東方供杯録   作:落着

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誘いと攫いに供する三三杯目

 本日は繰り返される宴会の一回目から十六日たった六回目の宴会の日だ。本日こそは宴会に参加しようと涼介は思っていたが前日に紫が現れ、本日紫の友人が来るから店を開けておいてほしいと頼まれ宴会への参加は見送りとなった。仕方ないと思いながら朝の眩しい日差しの中店を開けて、準備をしているとカランカランと鈴が鳴り来客を伝える。開店したばかりの時間に誰か来るとは珍しいと視線を向ければ、元気印の黒白魔法使いの魔理沙がいる。

 

「おはよう、魔理沙。今朝は早いね」

「よっす、涼介!」

「今朝はどうしたのかな?」

「お前があまりにも宴会に来ないから誘いに来たんだぜ」

「ははは、間が悪いね」

「なんだよ、今日も欠席かよ」

 

 魔理沙はそう言いながらカウンター席に座り、上体をだらしなく倒しダランと脱力する。残念そうな魔理沙の様子に涼介は悪い事をしたなと思うも、すでに先約がある為にどうしようもない。苦笑いを浮かべながら魔理沙の机に突っ伏した頭を眺める。

 

「先約があってね」

「なんだよ、その先約ってさぁ」

 

 涼介の言葉に魔理沙は顔をあげると不満そうに口をとがらせる。相変わらず魔理沙は感情表現が豊かで見ていて気持ちがいいなと涼介は笑みの種類を変えて応える。

 

「紫さんの友人が今日の夜間営業の時間に来るらしいんだよね」

「ちぇ、私たちとの宴会より胡散臭い隙間妖怪を取るのかよ」

「胡散臭くないと思うんだけどなぁ」

「そんな事言っているのは幽々子と涼介くらいなもんだ」

「藍さんや橙だって同じように言うさ」

「従者が主人を悪く言うはずないぜ」

「それは確かに」

「だろ?」

 

 魔理沙がニッと笑みを浮かべる。魔理沙のコロコロと変わる表情は見ていて飽きが来ない。裏表がない魔理沙の様子は妖怪達とのやり取りとはまた違った趣があると涼介は魔理沙を見つめながら考える。

 

「と言うわけで今日も欠席なのさ。でも次は参加したいね」

「本当かどうか怪しいもんだな」

「今日も参加するつもりでお酒を用意していたんだよ、ほら」

 

 涼介はそう言うと、宴会に持っていくように用意していた落酒を見せる。魔理沙がそれを見ると顔に笑みが浮かぶ。連続する宴会で参っていたアリスやパチュリーとの違いについつい苦笑いが涼介の顔に浮かぶ。若さとは恐ろしいと舌を巻く。

 

「お、落酒じゃないか!」

「知っているんだね、魔理沙も」

「話には聞いていたけどまだ飲んだことは無いっ!」

「それは楽しみが増えていいね」

「涼介、一本くれよ。今日の宴会に持っていくからさ」

「ダメだよ。これは私が行くときに持っていく分なのだから」

「ちぇ、見せるだけ見せて御預け何ていけずだぞ」

「宴会の時は最初に呑ませてあげるから」

「ふふ、なら仕方ないな。大人な私は我慢してやるか」

 

 魔理沙の背伸びした様子が微笑ましく、涼介はクスクスと笑う。魔理沙が涼介に笑われて不満げな視線を涼介に向ける。涼介も気が付くと、言い訳する様に口を開く。

 

「そう睨まないでくれよ」

「子ども扱いする涼介がいけないんだからな」

「ならとっておきの一本も持っていくさ」

「とっておき?」

 

 魔理沙の声に期待が混ざる。涼介は魔理沙に向けてニヤリと笑ってみせる。棚の奥に隠す様に入れてある一本の瓶を取り出し涼介は魔理沙に見せる。

 

「落酒・宵?」

「以前の物より酒精を強くしてあるんだよ。これなら天狗だって酔いつぶせるさ」

「おいおい、私が飲むにはちと強すぎないか?」

「だから少しだけ飲めばいいさ。これはこれで美味しかったよ」

「相変わらずのザルさ加減だな」

「ちょっとだけさ」

「のらりくらりしているな」

「そうかな?」

「そうさ」

 

 涼介がわざとらしく聞き返して見せれば、魔理沙が即答する。二人が顔を見合わせ、笑い声をあげる。笑いが収まると魔理沙が涼介にまた言葉をかける。

 

「仕方ない、それなら宴会用の持ち帰れるつまみでもお願いして今日は退散するかな」

「そっか。なら何がいいだろうか?」

「うーん、まだ時間があるから冷めても美味しい物が良いなぁ」

「ふむ、チョコとかでいいかな」

「歓迎だぜ、辛口の酒の時にちょうどいいってもんさ」

「酒飲みめ」

「大酒のみは大物の証拠ってね」

「はははは」

「だから、微笑ましい物を見る目をやめろよぉ」

 

 魔理沙はむくれた顔を帽子で隠す。涼介の視線を遮り、帽子の裏から不満を垂れる。涼介は酒と一緒に持っていくために昨日から用意しておいた生チョコを取り出しカットする。カットをしながら涼介は魔理沙に話しかける。

 

「最近宴会がかなり多いみたいだけれど大体は魔理沙が幹事をしているよね」

「ん?まぁな。たまにレミリアが咲夜に命じたりしているが、大体私だな」

「魔理沙はどうしてそんなに宴会をやろうと思ったんだい?」

「どうしてって、まぁやりたいからだよ」

 

 魔理沙は特に考える事なく、帽子の端から顔をひょっこりとだして普段通りにそう応える。何かに影響を受けている様子は涼介が見る限りでは見られない。本当に魔理沙は宴会をしたいからしているだけなのか、パチュリーの言う様に何かしらの能力の影響下なのか分からない。

 

「そんなもんか。肝臓は傷めない様にほどほどにしなよ」

「次回に涼介が良い物を持ってきてくれるし、せいぜい労わるさ」

「あんまりひどいと霖之助に言っておくからね」

「お、おいおい!それは狡いだろ!!」

「自制すればいいのさ」

「ぬぬぬ」

 

 隠れていた帽子から完全に魔理沙が出てきて、席から立ち上がると涼介に抗議する。涼介が立ち上がった魔理沙の鼻先を言葉と共に軽くついて文字通り出鼻をくじいて席へ戻すと、魔理沙が鼻先を抑えて唸り声を出す。

 

「さて、魔理沙。おつまみだよ」

「まったく今度来たときは酔いつぶしてやる」

「飲ませるのは良くないんだよ」

「それは幻想郷では当てはまらないね」

「だろうね」

「へへ、良い土産が出来たぜ」

 

 魔理沙はチョコの入った容器を見ながら笑いを漏らすと立ち上がる。

 

「代価はツケておいてくれよ」

「代価は良いよ」

「およ、気前良いな?」

「もともと持っていくために用意していたからね。代わりに持って行ってもらうだけさ」

「ツケを頼んでおいて言うのもあれだけれど香林といい涼介と言い時たま心配になるな」

「魔理沙程じゃないさ」

 

 魔理沙は魔法を学ぶ上で親と喧嘩し家を出ている。たった一人、魔法の森で魔法を学びながら暮らしている。涼介は魔理沙の境遇を知っており、ツケの清算は基本的に魔理沙への頼みごとをすることが多いので、どちらにしろ魔理沙から代価をもらうつもりはない。魔理沙も涼介のそういった心遣いを察しているのか頻繁に店を利用し甘えることを良しとしない。涼介としては心配なので利用回数を増やしてほしいと思っているが中々に難しい距離感と言える。

 

「私は問題なくやれているさ」

「それならいいさ。でもいつでも来ていいからね」

「私はいつでも来たい時に来るさ。宴会を開きたい時に開くようにな」

「そっか。それじゃあみんなによろしくね」

「任せとけって。今度はちゃんと来いよ」

 

 魔理沙はそう言って扉から出ていき去っていく。涼介は嵐の様だったなと思いながら、他の魔法使い二人と比べて笑みを浮かべる。これから時間が昼に近づくと増える客に備えるために、涼介はランチの下準備を始める。

 

 

 

 

 昼時を過ぎ客足も遠のき涼介は一息つく。ハルは運動不足を解消する様に散歩に出ている。もしかしたらこのまま神社の宴会に一人で参加してくるかもしれないと、過去二回知らぬ間に参加していたハルを思う。

 

「まったく、一人で参加してくるなんて薄情な」

 

 涼介はいないハルに愚痴をこぼしながら、一息入れるために淹れた熱い珈琲で舌を火傷しない様にすする。口に広がる苦味と鼻を通る芳香に涼介は人心地付いた気分になる。

 

「はぁぁ……疲れた」

 

 カウンターの椅子に座りながら、朝に見た魔理沙の様に涼介は身体を机の上に投げ出す。アンニュイな感じがルナサみたいだと涼介は馬鹿な事を考えながら笑みを浮かべる。そういえば最近宴会で演奏するせいで騒霊姉妹にも会えていないなと考えが回る。なんだかんだと色々考えるが要は皆が宴会に行き寂しいのだと自覚すると、涼介は存外子供染みている自分に笑みがもれる。カランカランと鈴が鳴り来客を告げる。

 

「涼介さん、遊びにってあれ?涼介さん?涼介さん、涼介さんいないの!?」

 

 カウンターの中で突っ伏す涼介に聞こえてくる声は霊夢の声だ。少しだけ聞こえてくる声に焦燥が混じっているように感じられる。カウンターで突っ伏している涼介が入り口から見えない為、霊夢が涼介に呼びかけながら店内に入ってくる。そろそろ顔を霊夢に見せねばと涼介が思うのと霊夢がカウンターの中を覗き込むのが重なる。霊夢の視線と突っ伏している涼介の視線が合う。

 

「いるなら返事位しなさいよ」

「ごめんごめん。ちょっとだけ休憩していたんだ」

「それにしても声を出すくらいしてもいいでしょ」

「ははは、そうだね。心までだらけていたみたいだ」

「もう、本当に呑気ね」

「いつも通りで安心するでしょ?」

「どうして霖之助さんといい、涼介さんといいこうもやる気がないのかしら」

「霖之助と比べられるのは心外だな」

「ならしゃんとしなさい」

「そうだね」

 

 涼介は身体を起こして一度ググッと伸びをする。霊夢は涼介の様子を見ながら苦笑いを浮かべる。意識を切り替えようと少しだけ冷め、適温となった珈琲を涼介は飲み干す。苦味とカフェインの摂取によるプラシーボ効果で気分が引き締まる感覚を涼介は覚える。

 

「こんにちは、霊夢。よく来たね」

「もう、何事もなかったみたいに……こんにちは、涼介さん。遊びに来たわ」

「最近神社で宴会が多いみたいで大変だね」

「もう本当よ。魔理沙も何を考えているのかしら」

 

 カウンターに座りながら話をする霊夢の声には呆れとわずかな疲れがにじみ出ている。この様子だと霊夢も異変の事に気が付いてはいないのだろうかと涼介は思う。

 

「今日もするんだよね?」

「そうよ……はぁ、今年は春が短かったからってやり過ぎよ」

「ははは、確かに今年の春は太く短くだったね」

「といかなんでうち(博麗神社)でやるのよ」

「ほら、集まりやすいんじゃないかな?」

「とか言って涼介さんは全然参加しないじゃない」

「私は飛べないからね」

「不便ね、修行しないの?」

「霊夢に言われると不思議な心地だね。紫さんが嘆いていたよ」

「知らないわよ」

「そうかい。まぁ、でも私が修行してもたかが知れているよ」

「そうなの?」

「私の伸びしろは能力方面にとられているから、これ以上霊力方面に伸びることは無いと藍さんに言われているからね」

「不便ね」

「不便で済むところが霊夢らしいなぁ」

 

 霊夢らしい感想に涼介は笑みを浮かべる。霊夢はカウンター席に座り頬杖をつきながら不満げな視線を向けてくる。涼介は霊夢を見ているとふと湧いてくる疑問があり口にする。

 

「今日は宴会があるのにここにきて大丈夫なの?」

「準備は半人前とかメイドに任せてきわ。散々人の家を使っているんだから準備位してもらっても罰は当たらないわよ」

「なるほど。休憩に来たのか」

「そうよ」

「宴会があるなら食事はいらないかな?」

「んー……そうねぇ。せっかくだけど今日は遠慮しておこうかしら」

「なら軽く摘まめるものと飲み物を出すよ」

 

 霊夢の返答を聞く前に涼介は準備を始める。霊夢は涼介の様子に止めようと一度口を開くも、諦め言葉になる前にため息に変わる。霊夢は涼介の後姿を眺めながら静かに待つ。

 

「はい、サービスのオレンジジュースとクッキーだよ」

「珈琲じゃないのね」

「お酒を飲む前にはオレンジジュースが良いらしいよ。外でそんな話を聞いた気がするし」

「曖昧ね」

「悪い事は無いからいいんじゃないかな?」

「ふふ、そうね」

 

 霊夢が一口ジュースを口に運ぶ。飲み物のお供についてきたクッキーを小さな口でぱくつく。

 

「そう言えば涼介さんは全然宴会に来ないわよね。異変の後は私が文句を言っても来るのに」

「私も行こう行こうとは思うのだけれどね、中々間が悪くていけないんだよ」

「そう。今日は何があるの?」

「紫さんのお友達が来るらしくてね。それで店を開けておくのさ」

「紫がねぇ……」

「何か引っかかる物言いだね」

「紫も宴会に来ないのよ」

「一回も?」

「そう、一回もよ」

「それは……珍しいね」

「気味が悪いわ。いっつも邪魔な時に出てきて、邪魔な時に居ないんだから」

「それは……仲がよさそうで何よりだよ」

「涼介さんは一回頭をお医者さんに見てもらった方がいいわよ」

「きっと馬鹿につける薬は無いって言われるよ」

「なるほど、見せるだけ無駄ね」

「そこは否定の言葉が欲しかったね」

「自分で言ったじゃないの」

「医者に見せるっていう時の常套句じゃないか」

「知らないわね」

 

 霊夢がつんと視線を涼介から逸らし手元のジュースに向ける。普段通りの涼介の様子に霊夢が俯いた口元に笑みを浮かべる。涼介から見えない様にこっそりと微笑む。

 

「それにしても安心したわ」

「何かあったのかい?」

「何となく変な予感がしたのよ」

「変な予感?」

「そうよ。だから様子を見に来たの」

「ふぅん、嫌な予感ではないんだね?」

「そうね……変な予感であって嫌な予感ではないわね」

「そっか、なんなんだろうね」

「別の事だったのかしら?うーん……」

「まぁ、そのうち分かるさ」

「楽観的ね」

「いつも通りさ」

 

 あきれ顔の霊夢と笑顔の涼介が見合う。霊夢は涼介の様子に処置なしとため息をつくとジュースを飲みきると立ち上がる。

 

「あぁ、霊夢。代価はいらないよ」

「またそうやって……」

「最初にサービスと言って出しただろう」

「むぅ」

「心配してきてくれた霊夢への心ばかりのお礼さ」

 

 涼介がそう言うと霊夢は少しだけ口をとがらせるも、諦めて涼介の言い分を聞きいれる。霊夢は扉の前まで行くと一度店内の涼介に向かって振り返る。

 

「また来るわね」

「いつでもおいで」

 

 霊夢は涼介の返答に嬉しそうな笑みを浮かべると扉の鈴を鳴らして帰っていく。涼介は霊夢が帰っていった扉を見ながら思い出したことを呟く。

 

「異変について話すのを忘れていたなぁ」

 

 また次回、自分が宴会に参加した時に話せばいいかと涼介は結論を出すと食器の片付けに戻る。

 

 

 

 

 宴会の誘いも断り、紫の友人以外今日も誰もこないかもしれないと思いながらも涼介は夜間営業を開始する。客がこないからと店を閉めていたら、店を開ける習慣がなくなりそうだとそんな馬鹿げた事を考える。

 

「紫さんも急に今日店を開けて欲しいと言うんだからなぁ。宴会ではだめだったんだろうか?ダメだったんだろうなぁ」

 

 昨日の営業後の店内にいつの間にか来ており、要件を伝えると涼介の落酒を一本持って去っていった。こういった我儘を言ってもらえるのが親しくなれた証拠のようでついつい涼介は言う事を聞いてしまう。案外こういったところを見透かされて頼まれているかもしれないな、と笑みが浮かぶ。

 

「さて、お客さんが来るのを待つだけか」

 

 一人の店内が少しだけ寂しくてついつい声が出てしまう。レティは寝てしまっているし、ハルも店の片隅で眠りに落ちる直前なのか瞼が閉じたり開いたりを繰り返している。ハルのその様子に眠いなら寝れば良いのにと思いながらも声はかけない。声をかけてせっかくの眠気が飛んでしまっては可哀想だからそのまま眠りに落ちるのを見守る。涼介もカウンター内の椅子に腰掛けぼっーとしながら来る客を待つ。

 しばらくしてハルも眠りに落ちてしまい、一人ただあてどなく涼介が時を過ごしていると不意にカランカランと鈴が鳴る音が響く。ハルの耳がピクリと動くが起きる様子は見られない。涼介が視線を扉へ向けると、小柄な、それこそレミリアやフランと変わらないくらいの十歳程度の少女のような見た目の人物が扉から入ってくる。

 

「客がいないみたいだけど営業しているのかい?」

 

 少女に見えるがその頭から生えている二本の角が彼女を妖怪であると主張している。腕などについている鉄の輪から伸びた鎖をジャラジャラと鳴らしながら店内へと入り、涼介に問いかけてくる。

 

「はい、ご安心ください。営業しております。どうやら神社で宴会があるそうで、開店休業状態なのです」

「へぇ、そうなのかい?時に店主よ?」

「何でしょうか、お客様?」

「あんたはその宴会には行こうとは思わないのかい?」

「そうですね。行きたいとは思いますが、最近は特に回数が多いみたいですからまた次の機会にでもと思い、本日は欠席させてもらっております」

「ふぅん、そうかい。そういやあんた、なんてぇだい?私は伊吹萃香って名前だよ」

「私は白木涼介といいます。紫さんのご友人の方でよろしかったでしょうか?」

「あぁ、確かに私は紫の友人だよ」

 

 萃香と名乗った少女が涼介の目の前のカウンターに座る。近くに来たことで涼介は彼女から酒気を感じる。離れているのに感じる強い酒気に目の前の萃香がかなり酒を飲んでいると涼介は知る。しかし、それでも普通に話が出来ているので酒に強い天狗の様な妖怪なのだろうと当たりをつける。来店すれば客は客だと割り切り、それも紫の友人とのことなので萃香に注文を取ろうと涼介は声をかける。

 

「それではお客様、ご注文はどういたしましょうか?」

「そうさねぇ……」

 

 注文を問い掛けられた萃香が言葉をためるように焦らす。萃香の視線がジッと涼介を見据える。涼介は萃香の視線に少しだけ寒気を感じ、警戒感を掻き立てられる。萃香も涼介が警戒と寒気を感じたことを察したのか笑みを深める。紫に見つめられた時を思い出し涼介は緊張する。萃香が次の言葉を音にする。

 

「私はちょいとお前さんを攫いに来たのさ」

「ハル!」

 

 涼介が萃香の言葉を聞くとハルを呼び起こす。ハルがびくりと身体を震わし、目を覚ます。萃香はそれに対して動きを見せることは無く、不気味に沈黙している。ハルが涼介の焦燥を含む声に警戒を呼び起こされたのか牙をむき出しにして萃香を見据える。ハルが動きを見せる前に涼介がさらに声を上げる。

 

「霊夢を!」

 

 ハルが言葉の内容に困惑したように涼介へ視線を向ける。

 

「早く!!」

 

 涼介の声に叱咤されるようにハルが裏口の扉の下についている小さな出入り口から外へと出ていく。萃香はその様子に何をするでなくニヤニヤとしている。ハルの姿が見えなくなると萃香は口を開く。

 

「自分じゃなくて妖獣の方を逃がすとは変わっているねぇ」

「私より足が速いですから」

 

 涼介はいまだ妖力を発する事のない萃香の力を落す様に能力を使う。萃香は何かしらの干渉をされたことに気が付いたのか、さらに笑みを深める。

 

「私相手に時間稼ぎが出来ると思ってんのかい?」

「さぁ、それをこれから試してみるのでは?」

「言うねぇ、言うねぇ……好きだぜ、そういうヤツ」

 

 あっはっはと萃香が愉快気に笑い声をあげる。萃香が腕を持ち上げ、人差し指を伸ばし誘う様にくいくいと振る。とたん涼介は何かに引っ張られるように身体が浮かび、カウンターの上の物を身体ではねながらフロアへと投げ出される。ガシャンガシャンと飾りをかねる瓶やグラス、カップが割れる音が店内に響く。

 

「さぁ試してみろよ、人間」

 

 萃香を飛び越え、彼女の後ろにあるフロアのテーブル席の机に涼介の身体が叩き付けられる。ぶつかる際の衝撃などを能力で落とし涼介は無傷であるが、机の方はそうはいかずに天板が割れ身体が床に落ちる。涼介はすぐさま身体を起こすと座席に座る萃香に向けて跳びかかる。時間を稼ぐつもりではあるが、できうる限りの抵抗をしようと足掻く。

 

「私相手に自分から近づく……面白いね、あんた」

 

 身体を涼介に向けるだけで萃香は立ち上がる様子を見せない。片足を反対側の膝の上に乗せ、上体を預けるようにカウンターに背を付けて待ち構える萃香。動かない萃香に涼介が掴みかかる。涼介は能力を使用しようと意識を向ける直前、自分の胸元に何かが触れている感触を覚える。

 

「ほい」

 

 萃香の軽い声と共に涼介の身体が後ろに向かって吹き飛ぶ。萃香の体勢から身体を押されたと涼介は気が付くも、直後に身体が背後の壁にぶつかり思考が止まる。

 

「かはっ」

 

 涼介の肺が押された圧力と激突した壁に圧迫され空気が吐き出される。身体が床へと再びずり落ちる。涼介は胸部に痛みを覚える。能力が自動で身体を守ろうと咄嗟に威力を落しているのに痛みを感じることへ驚愕する。痛覚を落とし、身体を起こす。痛みから察するに折れてはいないようだと涼介は身体を動かす。

 

「へぇ、立ち上がるのかい。どんな能力を持っているんだろうねぇ」

 

 萃香が楽しげに涼介に語りかける。腰につけている瓢箪を手に取ると、ふたを開け中身を煽る様に飲む。ぷはぁと煽った後に、息を吐くと口元を腕で豪快に拭いニヤッと笑う。

 

「さっきから妖力もうまく練れないし器用だね」

「本当にちゃんと効いているか不安ですね」

「そうかい?ちゃんと効いているよ」

「効いていてこの馬鹿力ですか」

 

 涼介が苦笑い気味に萃香へ言葉を返す。会話で時間が伸ばせるならばという思惑もある。萃香はそれを察しているのかどうか分からない態度で涼介に言葉を返す。

 

「当り前さ。私はなんたって鬼だからね」

「鬼?鬼って言うとあの赤い鬼?」

「赤いのも青いのもいるけどその鬼さ」

「幻想郷で初めて見ましたね」

「仕方ないさ」

「数が少ないのですか?」

「みんな引きこもっちまったのさ」

 

 萃香の今までずっと愉快気にしていた雰囲気に少しだけ寂しさが混ざる。しかし、萃香はすぐさまその雰囲気を霧散させるとまた笑みを涼介に向ける。

 

「まぁ、そんな事より今はこの時を楽しもうじゃないか」

「楽しいのは貴女だけだと思いますけどね」

「そうかい?そいつは寂しいね」

「全然寂しそうに聞こえないですよ」

「かっかっか、どうだろうねぇ」

 

 萃香は笑い声をあげると椅子から立ち上がり、肩の凝りを解す様にぐるぐると回す。妖力は発せられていないのに涼介は背筋に冷たい物を感じる。目の前の小さな少女に涼介は威圧される。

 

「さて、そろそろ真面目にやるかい」

「勘弁してほしいですね」

「くっくっく、腑抜けた事を言いながら目が死んじゃいねぇな」

「ははは、どうでしょうねぇ」

「あんた面白いねぇ……そのギラギラした目、好きだよ」

 

 萃香はそういうと散歩するような気軽さで涼介に向けて足を踏み出す。先ほど、身体を引かれたことから萃香が何かしらの能力を持っていると涼介は察している。ゆえに、涼介は逃走を選択肢から排除する。だからといって涼介はどうすればいいのか答えを見いだせない。近づかないと闘えないが、今までのやりとりで萃香に近づくのも危険だと理解させられている。じりじりと萃香が涼介に近づく。

 

「考えがまとまらないみたいだね」

「待ったは効きますか?」

「いいや、聞けないねぇ」

 

 萃香が涼介の腕の圏内に入る。足元の割れた天板を掬う様に足で蹴り上げ萃香の視界を塞ぐ。体勢を下げて、小柄な萃香を掬う様にタックルを仕掛ける。萃香が埃を払う様に割れた天板に手を当てると、天板が破砕し粉々になる。晴れた萃香の視界の中に肩から突っ込む涼介の姿が見える。ニヤリと笑って涼介の突撃を萃香は待ち構える。

 

「ふっ!」

「おぉ?」

 

 涼介は萃香を持ち上げる際に萃香の重量を落す事で軽々と持ち上げる。萃香は予想していたよりもずっと軽々と持ち上げられたことに意外そうな声を出す。そのままラグビーでトライする様に涼介は萃香を床に叩き付ける。

 

「おぉ、すごいな」

「そいつはどうも」

 

 床に叩き付けられた萃香が褒めるように涼介に声をかける。涼介は世辞だと思い軽く流す。

 

「これでも密をあげて少しは重くしていたのにコイツはおどろいた」

「ミツ?」

 

 萃香が涼介の返答を気にすることなく本当に楽しそうな声を出す。涼介は萃香の言っていることが分からず僅かに言葉を反芻する。萃香に馬乗りをするような形となる。

 

「よいしょっと」

 

 萃香が軽い口調と声で何でもない様に身体を起こし、逆に涼介が簡単に床へ押さえつけられる。

 

「さぁ、つかまえた。ここからどうする?」

 

 萃香が床に押さえつけられた涼介へ目を細めながら見下ろし言葉をかける。涼介が逃れようと身体に力を入れて抵抗するもそれ以上の萃香の力でねじ伏せられてしまう。

 

「これで終わりならちっと期待はず、れ、だ――」

「藍さんに言わせれば油断大敵ですよ」

 

 涼介の上に馬乗りの体勢で涼介を抑える萃香の意識が、涼介の能力によって落とされる。馬乗りで触れていた故に意識を落された萃香の身体が、涼介の身体の上に倒れ込む。涼介は体の上に乗る萃香の身体を脇によけながら、体を起こす。逃げようと抵抗していたのも本気であるが、本命ではなく意識を落す事を初めからずっと狙っていた。眠る萃香の脇でしゃがみ込みながら覗き見る。

 

「一体なぜ、私を攫おうとしたのだろうね」

「誰も異変を解決しようとしないからさ」

「え――」

 

 眠る萃香を見ながら語りかけた言葉に涼介の背後から返答がある。それは萃香の声であり、疑問の声と共に振り返る。しかし、涼介の声が言い切られる前にすさまじい力で身体が横に向かってはね飛ばされる。

 

「つぅ!!」

 

 自動で能力が発動するも、それを超えてくる威力に涼介の口から苦痛の声が漏れ出る。カウンターの椅子を押しのけ壁に再び身体をぶつける。身体が止まり、視界を先ほどまでいた場所に戻す。視線の先には涼介を背後から張り飛ばしたのであろう平手を振り切った萃香がいるだけで、意識を落したはずの萃香の姿が見当たらない。

 

「まぼろし?」

「残念、はずれ」

 

 クツクツと意地悪そうに萃香が喉を鳴らす。涼介が張り飛ばされた左腕の状態を確認する。痛みはあるが動かすことに支障がないため、二の腕にひびが入っていると察すると被害の確認が出来たと二の腕の痛覚も落とす。

 

「期待外れと言ったのは取り消すよ。あんたやっぱり面白いよ」

「それは光栄なのかな?」

「あぁ、誇りなよ。私を一人倒したんだ」

 

 萃香が首をコキリと鳴らして見せる。楽しげな雰囲気は変わらないが瞳の中に真剣さが宿る。少しは目の前の妖怪に認められたらしいと考えながら涼介は口元に笑みを浮かべる。

 

「この状況で笑えるのかい」

「少なくとも私の努力が実を結んでいると実感できたのでつい、ね」

「そいつは良かったね」

「そうですね。さっきので、終わっていれば最高でしたね」

「残念だったね。まだまだ付き合ってもらうよ」

 

 そして再び萃香が散歩する様に無造作に近づいてくる。涼介は苦笑いを浮かべながら立ち上がろうと手を地面に着く。地面に着いた手の感触に涼介はふと口元を綻ばせる。

 

「まだ笑うかい、鬼を前にして」

「そうですね。抗うと決めているので、心配をかけないと約束しているので」

「ほぅ、約束を守るのは大事だね」

「えぇ、だから諦め顔はしたくないんです」

「だから笑うのかい……良い覚悟だ。嘘をつかない為に頑張って見せろ!!」

 

 萃香が叫ぶと同時に足を踏みしめる。涼介はすぐさま身体を動かし始める。あの筋力で踏み切られたら目で追えないと、萃香が動きに踏み切る前にと身体を動かす。

 

「よっと」

 

 涼介の動き出しと同時に萃香が踏みしめた足で床を蹴る。バキッと床板が割れる音と共に軽い声を出した萃香が涼介の目の前に現れる。涼介は萃香が先ほどから余裕を見せて真正面から向かってくることから、横や背後からくることは無いと正面からくると踏んでいた。だから、涼介は手に持った物を萃香が動き出す前にすでに正面に向けて放り投げようと動き出していた。萃香が現れるのと、涼介が手に持つ物を投げつけるのが重なる。

 

「あ、テメ――」

「鬼は外」

「いっちちちち!!」

 

 涼介が投げた、飾りをかねた瓶が割れた時に床にまかれた煎り豆に対し萃香が非難の声を上げる。涼介は萃香の言葉を遮り、節分の常套句をおくる。煎り豆のぶつかった箇所は火傷をしたように赤く染まり、萃香が赤くなった肌を撫でるように擦る。目の前で隙を見せる萃香に向かい涼介が腕を伸ばして萃香の首を掴み、重量を落して持ち上げ背後のカウンターの上に叩き付ける。意識の隙を突かれた萃香が目を白黒させているのも確認せずに涼介はすぐさま意識を落そうと能力を使う。

 

「このガキャ――」

「寝てろ!!」

 

 萃香は原理の分からない意識を奪う涼介の能力を警戒し首を掴む右腕に両手を伸ばす。涼介が萃香の言葉を遮り自らを鼓舞する様に気合を込めて言葉を叫ぶ。意識が落ちる前に萃香の両腕が涼介の右手首を掴む。

 

 

――ボキッ

 

 

 涼介の手首の折れる音が響く。涼介の腕をつかむ萃香の手から力が抜けて落ち、だらんと机の上に垂れる。手首をへし折られても、萃香の首を掴む指を離していない涼介の能力が萃香の意識を落す。骨を断たせて意識を断つ形となった。先ほどの反省から今意識を奪った萃香を掴みながら周囲を見渡す。

 

「もう、いないか」

 

 涼介の声に安堵が混ざる。しかし、涼介の安堵は続かない。店の中の空間から笑い声が聞こえてくる。音の発生源があるとかではなく、周囲の空間全てから笑い声が響く。

 

「あぁ、なんでもありかよ」

『そうでもないさ』

 

 明確な返事があると涼介の心はさらに重くなる。これは本格的にハルに任せて耐えるしかないかと思うも次の光景でその望みも絶たれる。

 

『二回も起これば偶然ではなく実力だわな。こりゃあ紫も認めるわけだ』

 

 声が響いたと思ったらフロアの一点に何かが集まり始めたのか霧の様な物が見える。それは次第に濃くなって次の瞬間には萃香が現れる。涼介は視線を今なお指でつかんでいる萃香に向ける。いまだに手の中で意識のない萃香もおり目の前にも萃香がいる。その事から導き出される結論は一つだ。

 

「分身、もしくは分裂」

「まぁ、分裂のが近いかね」

「だからハルを逃がしたのですね」

「あぁ、絶対に間に合わないとだけ言っておくよ。それ以上はあんたに敬意を表して手出ししないさ、約束するよ」

「どうしてだろうね。貴女の事を全然知らないのに嘘をついている気がしない」

「当り前さ。鬼は嘘をつかないんだよ。嘘をつくのは人間だけさ」

「へぇ……面白い妖怪だね」

「鬼を面白いと称する人間がいるなんて長生きしてみるもんだね」

 

 萃香が楽しげに笑いを漏らす。涼介が意識の無い萃香から指を離せば周囲の空間に溶ける様に消えていく。萃香のその様子に涼介が何か痛ましい物でも見るように顔をしかめる。

 

「どうしたんだい、変な顔をして?」

「ちょっと嫌な記憶を思い出してね」

「ほぉん?」

「こっちの話ですよ」

「そうかい。それなら攫った後に話を聞こうか」

「最悪ですね」

「そう嫌がるなよ、酒ならあるさ」

 

 涼介が腕の感じを確かめる。手首は折れているが痛みをなくせば指は握れる。しかし、使い物にはなりそうにないとため息が出そうになる。胸骨と左の二の腕のヒビ、右手首の骨折で相手は無傷。絶望的だと思考は言うが、諦められないと感情が叫ぶ。せめて心までは屈さぬようにと顔に笑みを張り付ける。

 

「まだ笑うかい。あんたの事が気に入ってしまったよ。当初の目的関係なく攫いたくなっちまったよ」

「あぁ、もう本当に最悪です」

「嬉しそうな顔して言いやがって。それじゃあ第三ラウンド始めようか」

 

 萃香が再び涼介に向かい歩き出す。そこにはもう一部の隙も見い出せない。

 

 

 

 

 荒れ果てた店内で壁を背もたれに涼介が座っている。動きを見せない涼介の目の前に堂々たる姿で萃香が立ちふさがっている。

 

「まさか、あそこからさらに四人も意識を落されるとは思わなかったよ」

「て、徹底、しすぎ、だろ」

 

 闘いの中で涼介の能力はある程度萃香に把握されてしまっている。さらに、痛覚を無視してむかってくる涼介を屈服させるために萃香は涼介の四肢の関節を砕いている。両肩、両肘、両ひざ、両股関節を徹底的に砕かれている。

 

「さぁ、これで私の勝ちかね」

 

 涼介が静かに萃香を見つめる。その視線はまだ死んでいない。涼介の周りを浮いていた人魂も萃香を不意打ちで一人気絶させた後に、萃香の腰の瓢箪に囚われてしまった。それでもあきらめを見せない涼介に萃香は愉快な気持ちを抱く。

 

「まだあきらめないか。約束を守ろうとする心意気は好きだが、今回はここまでだね」

 

 萃香がそう言うと、彼女の右腕の腕輪から延びる先端に丸い球の付いた鎖が意思を持ったように動き始める。

 

「それ、は?」

「鬼の宝さ。私の能力を込めて作られたどこまでも伸びる鎖」

「鬼、のたか、ら」

「そうさ。私ら()をぐうの音も出ない程負かした相手に渡す宝さ」

 

 萃香がカラカラと笑う間も鎖は伸びて涼介をとらえるように巻き付く。

 

「さて、抵抗されても大変だから能力を使えなくさせてもらおうか」

 

 涼介は萃香の言葉の後に身体の奥を探られる様な、何かが自分の根源に干渉するような気持ち悪さを覚える。能力を使う気が起きなくなる。痛みが戻ってくる。そして、感情への抑制が減ると目の前の妖怪の強さにあこがれてしまっている自分に涼介は気が付く。それでも負けたくないと思ってしまった。

 

「今アンタの能力を、能力を使おうとする意思を疎ませた。これが能力に干渉する感覚さ、覚えておくといい」

「づぅぅ……まだだ、もっと……」

「いつでもかかってきな。飯食ってる時でも、酒飲んでる時でも、寝てるときだっていつでもきな」

「ぜった、い負か、す」

「受けて立ってやるよ」

 

 睨みつけてくる涼介に萃香が嬉しそうに口元を釣り上げる。

 

「あん?」

 

 萃香が怪訝そうな声を上げる。涼介の胸元から寒気が漏れ出る。キラキラと店内に氷が形成される。萃香が涼介の能力を封じたためにレティは気がつけたのだ。氷が鋭利な刃物を形成して萃香に向かって射出される。萃香は興がそがれたような顔をするもレティの氷を防ぐ様子を見せない。

 

「れ、てぃ」

「まったく楽しい喧嘩をした後に水、いや氷を差しやがって……大人しく寝てろよ」

 

 萃香が指をくるくると振る様に動かすと氷が端から散っていき、萃香に届く前には消えてしまう。そして、萃香は涼介の胸元の服を破りレティの結晶を掴む。

 

「まぁ、気分がいいから許してやるよ」

 

 萃香が結晶に向かってそう呟くとレティの結晶も先ほどの氷の様に周囲に溶けるように消えていく。萃香が涼介に再び視線を向けニッと笑いかける。

 

「それじゃあ行こうか、涼介」

 

 涼介の意識が薄まる様に散っていく。


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