東方供杯録   作:落着

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刹那的な亡霊達に供する二四杯目

 その後、涼介たちは場所を居間へと移す。妖夢が幽々子に頼まれ、お茶とお茶請けの菓子を用意するために部屋を出ていく。妖夢が戻るまでの間に涼介は幽々子から様々な話を聞く。

 魂を抜かれてからまだ一日しか経過していないこと。幽々子の知り合いにお願いされしばらくの間——異変が終わるまで——涼介をここに置いておいてほしいと頼まれていること。今は春を集め、白玉楼にある西行妖という一度も咲いたことのない桜を咲かせようとしていること。最後の春を異変解決人が持っているため、異変を止めにきた解決人等に勝てば桜が咲くだろうということ。それまでは特にやる事がないこと。つまるところやる事がないので後は待つだけと言う事らしい。

 

「なるほど、それでは本当に後は暇つぶしなのですね、ゆゆさん」

「そうなのよぉ。最後の春を生前の涼介さんが持っていたらしいのだけれど、紫の所の式に回収を邪魔されちゃってね。涼介さんの事と合わせて後はお待ちくださいってお狐さんに頼まれちゃったの」

「へぇ、生前の私も春を集めていたのですね」

「どちらかと言うと犯人捜しをしていて、春を返してもらおうとしていたらしいわよ」

「全然覚えがないですね。まぁ、生前の事は生前に任せて今はのんびり待たせてもらいましょうか」

「それがいいわね。お花見は賑やかな方がいいもの、待ちどうしいわぁ」

「そうですね。……それでどうして妖夢はむくれているのだい?」

「むくれてなどおりません」

 

 居間で机を挟み幽々子と涼介は向かい合って座っている。幽々子の隣にお茶とお菓子を用意して戻ってきた妖夢が座っていた。涼介が妖夢に話しかけるとぷいと顔をそむける。その頬が僅かに膨らんでいるように見えるのは自分の気の所為ではないと涼介は思う。そして、真面目で素直な子だなぁと涼介は笑いを漏らす。

 

「どうして私を見て笑うのですか?」

 

 妖夢の視線が涼介に戻り、ジトッとした目を向けられる。

 

「ほらほら、妖夢お餅が膨らんでいるわよ」

 

 幽々子が妖夢の頬袋を指で、えいっとつく。ぷすっと音がして空気が抜けた。涼介がまた笑いを漏らし、妖夢の目つきがますます厳しくなる。

 

「ごめんごめんそう睨まないでくれよ。私が悪かった」

 

 涼介が降参と言うように手をあげると妖夢の視線が少しだけ和らぐ。

 

「ふふ、ごめんなさいね、妖夢。貴女に説明をお願いしていたのに私がしちゃって。でも、涼介さんお話が進むのですもの」

「べ、別にそういうことでは……ただ、涼介さんには色々知らないことを教えてほしいと頼まれていましたので私が説明したかったなと少し思ってしまっただけです」

 

 幽々子に謝られて、意地を張る事をやめたのか妖夢が小さな声でそう白状する。

 

「あぁ、そうだったわねぇ。そうねぇ……ならこうしましょう」

 

 幽々子がいい事でも思いついたとでもいうように両手を打ち合わせる。

 

「妖夢。貴女、涼介さんに指導しなさいな」

「指導ですか?」

「剣術や簡単な護身術に能力を使った戦闘方法。つまるところ自衛手段ね。お狐さんも言っていたわ、涼介さんは自衛の手段に乏しいと」

「ですが、元に戻られるのでしたらあまり意味は……」

「本当の亡霊ではなく根本はあくまで生霊よ。ここで覚えた事は元に戻っても忘れないと思うわよ。それに能力も今は強い状態でしょ?その状態で訓練すれば生身に戻った時にも多かれ少なかれプラスになると思うの。貴女も色々教えられて、彼も学べてとってもいい事だと思わない?」

「なるほど、それは確かにいい考えだと思いますが」

 

 妖夢はそう零すと涼介をうかがい見る。それに対し、涼介は一つ頷くと応える。

 

「私からもお願いしようかな、妖夢。私を鍛えてくれないか?」

「はい!この魂魄妖夢にお任せください、白木様!!」

「涼介」

「え?」

「涼介」

「あの……白木様?」

「友達でしょ、妖夢。だから涼介」

「いえ、ですが、あの」

「教えを受ける側なのに様付けされるのはこそばゆいよ。それとも妖夢は私と友達になるのは嫌かい?」

「え、そ、そそそんなことは」

「すみません!!お聞きしたいことがあります!!!」

 

 妖夢の言葉が最後まで紡がれることなく外から声が響く。少女の声で、どこか焦りの宿る声だ。

 

「この声は……たしか」

 

 妖夢が立ち上がり障子をあけて庭が見えるようになる。そこには赤い服に同じ色のキュロットを着ているリリカがいる。障子が開き、居間が見えるようになりリリカの視線が座った姿勢から振り返り顔を見せる涼介を見つけると驚きを示した直後安堵に代わる。

 

「貴女は確か、演奏家さんだったわね」

 

 幽々子がリリカを見とめるとそう呟く。桜が満開になった時の演奏をお願いしたのは幽々子本人なのだから知っているのは当然と言えるのだろう。

 

「確か、リリカさんでしたか?昨日お姉さんたちと打ち合わせをしたと思いますがどうされましたか?」

「あ、その、昨日姉さんたちが打ち合わせの後、妖夢さんに送られて帰る途中に、妖夢さんが急に飛び出していかれてそこで一悶着があったと聞きました。その妖夢さんの相手の方の背格好が私のお友達に似ていたそうで。それで心配になってお話を聞こうかと思いまして来たのですが、涼介さんの元気そうな姿を見ることが出来て勘違いだと解りました」

 

 リリカはそういうと居間に近づいてくる。

 

「確かに、昨日はルナサさん達を送っている途中で春の気配を感じて飛び出しましたが……まさか知り合いだったとは」

 

 リリカの話に妖夢が小さな声でつぶやく。居間の下座である庭側の席に座っていた涼介にはその小さなつぶやきが聞こえた。涼介は目の前の赤い服をきたリリカと言う少女が生前の自分の友人なのだと認識する。

 

「斬られていたと聞いたけど、どこにもそんな跡が無いみたいで安心したよ。顔色も良いみ……うそ」

 

 縁側までたどり着いたリリカの顔が蒼白となる。リリカは気が付く、涼介が霊であることに。

 

「え、死んじゃったの?」

「厳密には違うのですが、亡霊に近いそうです。今の私は」

 

 涼介のその返答にリリカが唖然とした表情を作る。

 

「ぼうれい?……亡霊って何も覚えてないの?」

「はい、生きていた時の事は何も」

 

 涼介はそのことを何でもないようにいい首をわずかに横に振る。

 

「本当に?」

 

 僅かに震える声でリリカは問い掛ける。

 

「はい、そんなに不便も感じてないですしお気になさらないでください。それに、どちらかと言えば解放感を感じるくらいです」

 

 リリカの顔が俯き表情が見えなくなる。

 

「思い出したいと思わないの?」

「思い出したいという強い感情は無いですね、多少気になるから知識として知りたい程度でしょうか?」

「どうして……そんな事言うのよ……」

「何故かと言われるとそうですね……特にないですね。ただそう思わないそれだけです」

「貴方は……貴方は!」

 

 リリカが顔を持ち上げる。その表情には怒りがありありと浮かんでいた。

 

「捨てるって言うの!?生きていた時の繋がりを!!貴方が抱いていた沢山の想いを!!全部、全部捨てるの!?涙するほど大切な人がいたんでしょ!?どうしてそんな風に捨てられるのよ!!!」

 

 リリカの言葉に涼介は目を見開く。そして、なるほどと納得する。自分はのうのうとすべて忘れているけど、残された者もいるということを。繋がりがあったということを。しかし、今の涼介は正しくそれを認識していなかった。

 

「そうだね、拾うことが出来るのに捨てるのは良くない」

 

 その言葉にリリカの表情が晴れる。分かってくれたと喜びが浮かぶ。しかし、その感情は次の言葉で裏切られる。

 

「えっと、リリカさん。私と貴女は以前友達だったというのは分かります。だから、もう一度友達になってくれませんか?」

 

 リリカの頭に違う、そうじゃない、そんな答えが欲しいんじゃない、と様々な否定の言葉が生まれる。

 

「また、ここから新しく始めませんか?」

 

 その言葉で、頭の中が沸騰する感覚がする。しかし、その熱が急速に冷めていく。リリカは混乱する。誰かに、自分の感情をいじられていると感じる。それはまるでルナサの音を聞かされた時の様だ。そして、リリカは目の前の涼介(亡霊)に安心感を覚えていることに気が付く。絆されそうになる感情に引きずられ、出そうになる言葉を咄嗟に飲み込む。だから、リリカは自分の理性に従う。

 

「……ならない……貴方とは友達にはならない!!私の友達は貴方じゃない!!」

「リリカさん?」

「返せ、涼介を!!私の(想い)を聞くことが出来た涼介を!!私と同じ痛みを知り、あの時涙した涼介を返せ!!お前なんて私の友達じゃない!!」

 

 理性に伴わない感情に負けない様に大声を上げる。しかし、周りが見るリリカの姿はひどく不自然だ。感情的に叫ぼうとしているのに、それに感情が載っていない。湧き出る怒りがすぐさま落ち着いていくのが解る。結果、ただ大声をあげて叫んでいるだけだ。その様は叫んでいる内容を加味しなければ発声練習のようでもある。だからこそ、周囲の反応は鈍い。奇妙な物を見るような目にリリカはひどい疎外感を覚える。これでは届かないとリリカは察する。

 

「もういい、私がどうにかする」

 

 このままではだめだと判断したリリカは涼介の霊体を連れて行こうとする。当てがあるわけではない。けれど、自分で涼介の記憶を取り戻すのだという思考が働き涼介に近づき連れて行こうと動く。しかし、リリカの手は涼介には届かない。

 

「リリカさん、それは困ります。涼介さんは白玉楼のお客人で、私の友達です。無理に連れ出すような行為は看過できません」

 

 妖夢が二人を遮る様に立ちはだかる。リリカが妖夢の姿に怯む。涼介さんと呼称する妖夢の様子に涼介は妖夢の背で隠された表情に笑みを浮かべる。

 

「退いてよ」

「退けません」

「退いて!!」

 

 妖夢とリリカ、二人が霊気と魔力を高め始める。そして水を差す様にパンパンと手を鳴らす音が響く。全員の視線が幽々子に集まる。

 

「はいはい、ちょっと落ち着きなさい」

 

 幽々子の言葉に妖夢が霊気を収める。しかし、リリカは止まらない。だから、幽々子は言葉を続ける。

 

「今は事情があってまだ貴女のお友達は返せないのよ。でも異変が終わる頃には生き返った元の状態で返せるわ。だから落ち着きなさい」

「異変はいつ終わるの?」

「異変を解決に来る子たちが最後の春を持ってくるそうよ。それがあればあの桜は咲き、花見をして異変は終わりよ」

 

 その言葉にリリカが魔力を高めるのをいったんとめる。高めた魔力はそのままではあるが、話は聞く様子を見せる。

 

「どうして、今ではだめなの?」

「それは部外者の貴女には話せません。だから、異変が終われば戻ってくる。それだけで我慢なさい」

「それが真実だという証拠は?」

「ないわ」

「それじゃあ信じられない。貴女達が、そこの半霊が涼介を亡霊にしたのにどうしてその言葉を信じられるというのよ?」

「それで聞き分けなさい。それに貴女ではどうしようもないわよ」

 

 なおも言い募ろうとするリリカの言葉を遮り幽々子が言葉を挟む。そして、幽々子から圧倒的な量の霊気が漏れる。リリカはそれにひるむ様に後退する。そのリリカの様子に涼介が口を出す。

 

「どうやら怒らせてしまったみたいだね。大丈夫、彼女の言っていることはきっと本当だよ。だから、異変が終わるころにはきっと生き返っているさ」

 

 リリカの魔力の高まりが収まる。しかし、涼介の言葉を信じたからではない。涼介はあの時自殺はしないと言っていたがそれは約束だからと言っていた。であるならばもともと死に惹かれてはいたのだ。だからこそ信じきれない。しかし、自分ではどうにもできないのも確かだとリリカは判断できてしまう。だから、リリカは一度引くことを決意する。

 

「わかった。今は帰る…………私、涼介のお店で演奏するのを楽しみにしてるから」

 

 リリカは最後に、彼の心に届いてほしいとその言葉に、音に想いを、気持ちを込める。昨日の夜の演奏の様に。けれど、涼介は首をかしげるだけで要領を得ない反応だ。それを見てリリカは本当に目の前にいるのが涼介の抜け殻(ただの亡霊)だと解らされてしまい悔しさがこみ上げてくる。力のない自分に情けなさを感じながら、リリカは逃げるように帰っていく。自分が春を手に入れて、この亡霊と交渉し、涼介を助けるのだと決意して。寂しげに去っていくリリカの後ろ姿を眺める涼介(亡霊)の視線に何かの感情が浮かぶことは無い。その視線は只々虚ろに揺れるばかりだ。

 

 

 

 

 その後、屋敷の間取りや部屋についての説明を聞き夕飯を食べ、自分の部屋としてあてがわれた部屋で涼介はぼーっとし、何をするでなく座っている。

 

「何故、あの()はあんなにも激していたのだろうか」

 

 こぼれ出る言葉は、日中言葉を交わした赤い服の少女の事だ。僅か、半日に足らない記憶の中でその出来事は印象に強く残った。独りになりやる事もないため暇に飽かせて考えているが答えは出ない。

 

「……考えても理解できないことは気にしない……」

 

 分からないと頭をひねっている涼介の口から自然と言葉が出る。涼介の脳裏に一瞬白髪でメガネをかけた男性の姿が浮かぶもすぐに消える。

 

「……残滓でも残っているのだろうか?中途半端な消し方だ」

 

 出るのは記憶を亡くした者への愚痴だ。どうせ消すなら綺麗に消してくれればいいのにと不満が浮かぶ。

 

「亡霊は眠るのも娯楽か……眠る気分じゃないな」

 

 涼介は立ち上がり庭へと出る。縁側に置かれた草履をはき庭の桜を眺める。その内の一本、西行妖と呼ばれていた桜に目が留まる。

 

「他の桜がこれだけ綺麗に咲いているのにあれだけ蕾のままなのだな」

 

 呟きが洩れる。玉砂利の庭をじゃりじゃりと音を立てながら近づいていく。

 

「あら、涼介さんも夜桜を見に来たのかしら?」

 

 大きな妖怪桜を見上げながら歩いている涼介に桜の根元から声がかかる。視線を下げるとその巨木の足元に幽々子がいて、手を振っている。

 

「そうだね……眠れないし、部屋にいると悶々としてしまうからね」

「ふふふ、何を悩んでいるのかしら?」

「その笑い方どうせ察しているんでしょ、ゆゆさん」

「あら、そんなことないわよ?」

「……そうですか」

 

 服の裾で幽々子は口元を隠し笑う。涼介は幽々子の振る舞いにため息をつくと幽々子の隣に並び立ち桜を見上げる。

 

「私の記憶はどうやって忘却させられているのでしょうか?」

 

 悶々と抱えていた物が涼介の口から漏れ出る。

 

「やっぱり気になるの?」

「どうなのでしょうか……ただ、お昼の紅い服の子の事が思い出されましてね」

「知ってどうするのかしら?」

「……きっとどうもしないと思います。思い出すということは何かを背負う事だから」

「背負うのは嫌なの?」

「目覚めてから妙にすっきりした心地がするのです。そして同時に大きな喪失感も感じています。きっと、この喪失感は自分にとって大事な物であり重荷であったのだと思います」

「だから、思い出してまた背負うのが怖いのかしら?」

「はは、そうですね。怖いのだと思います。忘れていた課題を思い出すことで焦燥感に駆られるみたいなものなのかな?きっと、思い出してつらい思いをするのが嫌で逃げているのだと思います……弱いなぁ」

 

 涼介から自重する様な笑いが思わず漏れ出る。リリカに対する申し訳なさと、彼女の想いから逃げだした後ろめたさが自身を責めているようだと感じる。幽々子が涼介の様子に笑みを深め、ぽつりと不意を衝くように言葉をかける。

 

「お狐さんが貴方に式を憑けて記憶が思い出せない様にしているのよ」

「……私に教えてよかったのですか?」

 

 幽々子が唐突に答えを示したことで、涼介の中に戸惑いが生まれる。

 

「だって、知ってもどうにもしないのでしょう?なら、教えるくらい問題ないでしょ」

「霊力のない私ではどうにもできない、の間違いかもしれませんね」

 

 幽々子の声、態度、表情から真意をくみ取ることが出来ない。幽々子は涼介のその様子を只々楽しげに笑っている。涼介は真意を読むことをあきらめ冗談めかして肩を竦める。

 

「ふふふ」

 

 涼介のその返しに今度こそ幽々子は本当に愉快だと笑い声を漏らす。腕で口元を隠し、クスクスと笑う。彼女の笑い声に連動して肩が揺れ、ゆったりとした服の裾もふりふりと振れる。涼介は敵わないなぁ、と内心でこぼすと視線を幽々子から西行妖に視線を変える。

 

「どうしてこの桜を咲かせようとしているのですか?」

「そうねぇ……この桜は私が亡霊として在りはじめた頃からずっとこの庭にあるの。でも、何年いや、八百年近く葉さえつけなかったの。でも、二百年前くらいかしら、春に葉が一枚ついたの。それから何年も何年も時間が経って春になるたび茂る葉が増えていってつい何年か前に蕾が一つ膨らんだの」

「気の長い話ですね」

「ふふ、私もそう思うわ。それでね、その蕾を見たときに思ったのよ。咲いているところが見てみたいなってね。でも、結局咲くことはなかったの。春が終われば蕾のまま他の葉と散ってしまうの。また春が来て蕾を一つとたくさんの葉をつけ春が終われば散ってしまう。きっと春が足りないのよ」

「だから春を集めたんですね」

「そう、今では蕾もこんなにたくさんついて後少しで花開きそう」

「お花見まで後少しですね」

「楽しみね〜」

「でも、三人だけで見るにはもったいないですね」

「あら、他にもいるわよ。演奏家さんはちょっと分からないけど異変の解決に来る子がいるわよ」

「それを入れて四人ですね」

「解決にくる子が一人とは決まってないわよ。それにまだ他にあてはあるの」

「それは?」

「桜の下に眠る人」

 

 幽々子の視線が西行妖の蕾からその根元へと移る。

 

「死体ってことですか?」

 

 桜の下には死体がある。そんな怪談話じみた言葉が涼介の知識の中から思い浮かべられる。

 

「富士見の娘、西行妖満開の時、幽明境を分かつ、その魂、白玉楼中で安らむ様、西行妖の花を封印しこれを持って結界とする。願うなら、二度と苦しみを味わうことの無い様、永久に転生することを忘れ」

 

 それに対し幽々子は何かの文章を読み上げるように言葉を紡ぐ。

 

「それは?」

「何年か前に見つけたのよ、書架から古い記述をね。西行妖の下には誰かが眠って封印をしているの。だから桜が咲けばその誰かが目覚めるのよ」

「へぇ、そんな人が」

 

 涼介は感心した風な声をだし西行妖の根元を見る。

 

「ふふふ、だからその人も加えてお花見としゃれ込みたいわね。……何を話そうかしら?」

 

 何を話そうかとこぼす幽々子の声がひどく寂しげに聞こえ涼介は思わず根元から視線を隣の幽々子へと向ける。幽々子の視線は西行妖の根元へと向けられているが、その視線はどこか違う場所でも見ているかのように虚ろだ。涼介は幽々子のその様子に繊細なガラス細工の様なイメージを抱く。触れてしまえばその途端脆く壊れてしまうそんな想像が頭をよぎる。

 

「それは……」

 

 咄嗟に出そうになった言葉を涼介は呑み込む。幽々子は涼介に声をかけられ視線を涼介に向ける。しかし、言葉がつながらない涼介の様子に首をかしげる。幽々子の仕草に先ほどまでの儚さは感じられない。涼介はそのことに安堵する。

 

 

きっと、(もしかしたら)ずっと寝ていたのでしょうから(ゆゆさんが亡霊になる前に眠っていたから)お腹を空かせているかもしれませんね(生前の話が聞けるかもしれませんね)

 

 

 呑み込んだ言葉とは別の言葉が涼介の口から紡がれる。何故それを呑み込んだのかは涼介にも分からない。千年もの間在りつづけた幽々子に覚えていない生前などもう関係ない、涼介は分からない感情にそう理由づけをし納得させる。

 

「それなら妖夢にはたくさん料理を作って貰わなくちゃね」

「妖夢の料理はおいしいですからね」

 

 二人で並んで言葉無く蕾の夜桜を眺める。妖夢が早朝に起きだし、二人を見つけるまで涼介と幽々子はずっと二人で並んで桜を眺めていた。

 

 

 

 

 リリカの訪問から幾日も過ぎた。その間、他に誰かが尋ねてくることは無く三人はのんびりと過ごしていた。涼介も最初はわからないことや困ることも多々あったが妖夢がそれを甲斐甲斐しく世話し、今では自分の住み慣れた家かと思うほどに、この屋敷での生活に慣れたと言える。その日の朝も客間で起きると自ら布団を干し始める。

 

「あぁ、もう涼介さんまた勝手に布団を干して……いつも、言っているじゃないですか。部屋に畳んで置いておいてくださいって」

 

 布団を干している涼介に向かって、縁側に立ちエプロンをかけた服装の妖夢が文句をいう。

 

「どうせ後で干すのだから良いじゃないか、誰が干したって。それに妖夢は朝食の準備をしているのだから遠慮はいらないよ」

「そう言うことではなくてですね、涼介さんはお客さんなのですからそういったことは私がやりますと言っているのです」

「ほら、あれだよ。罰の中で仕事を与えると言っただろう?これはそれだよ」

「そのことは引きずらないので無効になりました」

「むむ、随分と柔軟になったではないか」

「毎回毎回涼介さんの屁理屈に付き合っていれば誰でも柔軟になりますよ」

「やわらか妖夢」

「なんですかそれ?やめてください人を変な生き物にするの」

「ほら、その半霊とかマシュマロみたいにやわらかそうじゃないか。それをやわらか妖夢と名付けよう」

「ヤですよ。半霊も私なのですからこれも魂魄妖夢です」

「あだ名だよ、あだ名」

「ダメです、ダメダメ。許可しません」

「えぇぇぇ……」

「ほらご飯できましたから駄々こねてないで居間に来てくださいよ」

「ん、それは早く行かないとね。ゆゆさんに怒られてしまう」

 

 妖夢の催促を聞くと涼介は干した布団を一度伸ばして引っ張るとそそくさと妖夢に近づき、草履を脱いで縁側に上がる。その涼介の態度に妖夢が疲れた表情をする。

 

「なんで幽々子様に関することは素直に聞くのに私の注意は聞いてくれないんですか、まったくもう」

「貫禄の違いかな?」

「どうせ私はお子様ですよー」

「メンタルやわらか妖夢」

「増やさないでください!!」

 

 明け透けのないやり取りをしながら二人は今に向かう。すでに手馴れている会話。最初のころは涼介の冗談を妖夢が流せず、あわあわすることもあったが今ではサラッと受け流すこともできている。

 

「あらあら、今日も仲良しね、妬けちゃうわ」

 

 居間に入った瞬間、幽々子がコロコロと笑いながら感想を漏らす。妖夢がそれに大きなため息を漏らす。

 

「もう、幽々子様が二人に増えたみたいです」

「ふふふ、でもある意味では的を射ているのかしらね」

「ん?それはどういう意味だい、ゆゆさん」

「亡霊って何もかも忘れているからこそ種族的に刹那的と言うか悪ふざけが好きなのよ」

「ユユコサマノジョウダンニソンナシンジツガカクサレテイタンデスネー」

 

 幽々子の言い分に妖夢が棒読みで返事をする。まともに信じている様子が微塵もない。それほど過去にからかわれていたのだろうと涼介は二人の関係を察する。

 

「これは本当の話よ。亡霊は死んでいるから食事は娯楽だし、仕事もないし、記憶もないから何かしがらみがあるわけでもなし。それに亡霊になるには、何か手を加える以外は忘れたいことが有る霊が忘れようとした結果全てを忘れてしまうの。だから基本的に生前の記憶に興味もないの。だから、何もないからこそ目先の楽しみを求めてしまいがちなのよ」

「あぁ、心当たりあるなぁ。とりあえず今が楽しければそれで良いかなとは普通に思うね」

「へぇ、だから幽々子様も涼介さんも悪ふざけが好きなのですね……ん?それって……私が被害受けるだけじゃないですか!!」

 

 妖夢が驚愕に叫ぶ。

 

「それは違うよ、妖夢」

「そうよ、妖夢」

「「妖夢の反応が面白いからよ(だ)」」

「うわぁぁ!!なんでそこでかぶるんですか!?」

「ゆゆさんならこう言うかなって」「涼介さんならこう言いそうかなって」

「もういいです……ー私、ご飯とってきます」

 

 妖夢が肩を落として台所へ向かってとぼとぼ歩いていく。何となく隣を浮いている半霊も元気なく見えるのは涼介達の気の所為ではないだろう。

 

「からかいすぎましたかね」

「どうかしらね。貴方が来る前の妖夢なら真に受けすぎてダメだったかもしれないけど、貴方とのやり取りをしているうちに色々と学んだみたいだから大丈夫じゃないかしら」

「ゆゆさんと二人だけの時はダメだったのですね」

「ほら、あの子は根が真面目だから、主人の私が言うことを流すって言う発想自体が生まれなかったからね。その点貴方だと対等なお友達だから色々と違うのではないかしら。短い間で見違えるくらい妖夢は変わったわ」

 

 幽々子は妖夢が消えた襖を見て嬉しそうに笑う。

 

「ゆゆさんはなんというか、盆栽を育てているみたいだよなぁ」

「盆栽?」

「そう、盆栽。のんびりと時間をかけて成長を見守る。基本的に手を出さない。たぶん致命的なこと以外は正さないのじゃないのかな、ゆゆさんは?」

 

 幽々子は涼介の問いかけに応えずににこにこと笑っているだけだ。

 

「妖夢の成長をただ見ている。妖夢が勘違いや悩んでいても冗談めかしてガス抜きをするだけで、手助けはしない。ゆゆさんはさっき亡霊は刹那的と言ったけど、貴女は冗長的に感じるな」

「ふふ、そうね。私は亡霊だけど長く在り過ぎるからそういう楽しみ方も良い物と知っているのよ」

「なるほど、納得だね」

「納得はできても理解は貴方には無理ね」

「そうだね、私にはそれをするだけの積み重ねた物が無いね。ジャネーの法則と言うやつかな。きっと君にとっては妖夢が頑張る数年も私の数日と体感時間が変わらないのだろうね」

「あぁ、そう考えるとそうなるわね。なら私も刹那的な亡霊ね」

「どこまでいっても亡霊は刹那的と言うわけだね。それでは亡霊らしく今は目先の食事を楽しみますか、ゆゆさんや」

「そうね、涼介さん」

 

 二人が机を挟み笑いあう。妖夢が少しして半霊を人型に変え、二人分になって料理を運んでくる。

 

「また、二人でクスクスしてどんな悪戯を考えていたんですか?」

 

 妖夢が料理を並べながら苦笑いをして二人に聞く。その様子は、しょうがないなぁとでも言いたげだ。それに対して涼介が含み笑いをしながら応じる。

 

「なに、盆栽の話をしていただけさ」

「盆栽ですか?育てられるのでしたら、お庭に飾る場所を作りましょうか、幽々子様?」

 

 涼介の答えに妖夢が幽々子に庭の配置換えの是非を問う。幽々子は苦笑いすると答えを返す。

 

「いいのよ、作らなくて。まだまだ柔軟さが足りないわね、妖夢」

「はあ?」

 

 幽々子の答えに妖夢が首を傾げ気の抜けた声を出す。

 

「やわらか妖夢」

「あ、また言いましたね。今日のお稽古は厳しくしますからね」

 

 頬を今にも膨らませそうな妖夢が涼介に宣言する。それに対し涼介は盛大に顔をしかめる。そんな二人に幽々子が楽しげな笑いを零す。ここ最近ですっかり定着したいつもの光景だ。

 

 

 

 

「ちょっちょっちょ!よう、むさん!!」

「無駄口を開かないでしっかり防ぐ!!!」

 

 庭で涼介と妖夢が木刀を互いに持って試合をしている。と言っても妖夢の攻撃を涼介がひたすら凌いでいるだけなのだが、涼介はすでに一杯一杯なのか悲鳴を上げる。

 

「あ、今掠った!ちっていった、ちって!!」

「防ぐだけなんですから頑張ってくださいよ、もう」

 

 そう言って妖夢が木刀をふるう手を止め文句を漏らす。涼介はそれに対し掻いてもいない汗をぬぐう仕草をしてやれやれと首を振る。

 

「能力なしで何て妖夢が言うからだよ。無理無理、能力を使わなかったら私なんて雑魚中の雑魚さ」

 

 胸を張る様に言い切る涼介に妖夢はため息を漏らす。

 

「もう、体を鍛えるのもって……涼介さん亡霊でしたね」

「それは生き返った後にするよ。さて、朝のペナルティはこの辺りで、そろそろちゃんと稽古をしようか」

「なんで、怒られた側が罰を終わらせるのですか……はぁ、もういいですよ。それじゃあ行きますよ」

 

 二人が木刀を構え距離をあける。それを縁側にお茶とお菓子を脇に置いて観戦している幽々子が合図をする。ぱんっと手を叩く音がして、二人が互いに向かい動き出す。妖夢の動きは先ほどと比べ明らかに遅い。

 

「相変わらず、嫌な能力ですね」

「まぁ、自分でも陰険だと思うけどね」

 

 妖夢は両手で木刀を握り、涼介に向かって振る。涼介はそれに対し片手で受けるが、妖夢の木刀に押され涼介の木刀の峰が体にぶつかる。しかし、涼介はされるがままで、空いた片手を妖夢の頭部に向かって伸ばす。妖夢は近づく手を嫌がり距離を取る。

 

「ふっ!」

 

 涼介が短く息を吐き、妖夢を逃がすまいと後を追う。妖夢はそれを嫌がり木刀を振るうが、涼介は妖夢の肩の動きを見て大体の軌道の所に木刀を置き体に直接当たらない様にする。そのどれもが、涼介の木刀を押し込み涼介の体に涼介の木刀の峰が何度もぶつかる。妖夢の剣劇を自分の木刀で一度防いではいるが、それだってたかが知れた程度でしか威力を軽減していない。それでも涼介が一度も痛みに顔をしかめることは無い。カン、カン、と木刀同士がぶつかる乾いた音が石庭に何度も木霊する。

 

「ほい」

 

 涼介が妖夢の木刀を引く動作に合わせ、自身のもつ木刀を妖夢の顔目がけて放り投げる。妖夢はその予想外の行動に対して反射的に投げられた木刀を打ち払う。涼介はその動作の間に妖夢との距離を詰め、両手を妖夢の頭部に目がけて突き出す。

 

「くっ!」

 

 妖夢が木刀を振るい両手のうち右手を打ち払うも、左手が妖夢の頬に触れる。そこで両者の動きが止まる。

 

「はーい、涼介さんの勝ちね」

「はぁ、私の負けですね」

 

 幽々子の声が響く。妖夢が構えを解くが涼介は妖夢の頬に触れたままの手をプニプニと動かし妖夢の頬をもてあそぶ。

 

「やわらかみ゛ょん!!」

 

 妖夢の頬をいじりながらあだ名を言おうとする涼介のみぞおちに妖夢の木刀が刺さり、涼介の口から変わった悲鳴が洩れる。そして、そのまま後ろに倒れ込み地面に寝転がる。

 

「あぁ、やっと勝てた……はぁぁ、しんど」

 

 涼介が大の字になる様に庭に倒れこむ。

 

「もう、服が汚れちゃいますよ。それと刀は剣士の命です」

「妖夢、私は剣士じゃないよ」

「それは…そうですけど、ほいほい投げないでくださいよ」

「ほいほい投げてないさ。熟考の末だよ、妖夢。それにほら初めて勝ったじゃないか」

「む、そういわれるとそうですけど……うん、そうですね、おめでとうございます。後は私も能力を使うのでそれに対応して精度をあげていくだけですね」

「あぁ、相手の力を落せるなら、相手の能力も使えなく出来たらよかったのになぁ」

「相手の能力の内容によりますもんね」

「そうだね。技能系や身体向上系とは相性最悪だからなぁ」

「でも、飛べない涼介さんからすればこれしか戦う方法無いですからね」

「自分を強化して強くなるんじゃなくて、相手を自分と戦える土俵まで落とすとか陰険の極みだよなぁ」

 

 倒れたまま冥界の空を眺める涼介がため息をつく。能力を使った戦闘の訓練。使用方法は相手の霊力、魔力、妖力、筋力、速力など相手の力を落して殴り合う。泥臭く、そして相手の積み上げてきた物に泥を塗る唾棄されるべき戦い方だろう。それでさえ相手を自分より弱くは出来ない。力を落すのであって零にするわけではないのだ。しかし、飛べない様に地面へ落とし、地に足をつけて戦う。それだけで涼介にとっては大きい。闘いまで持ち込めるのだから。涼介が白玉楼で身に着けた自衛手段だ。

 

「でも、相手の能力に能力での干渉は不明瞭な所があるからなぁ」

「そうですね。私だと剣術を扱う程度の能力があるので落された上でも、斬撃を飛ばしたりと普通に技量で押し切れちゃいますしね」

「そこなんだよなぁ。一応相手に触れられれば意識を落せるからこっちは一度相手に触れれば勝ちなんだけど、そこまで持っていくのがまさに死にもの狂いなんだよなぁ」

「一回でも直接触れられたら敗けってかなり理不尽ですよ。それに涼介さん、痛みを感じる感覚を落すからこちらの攻撃で怯まないじゃないですか。相手をしているこちらとしてはやりにくいですよ」

「はっはー、やりにくいって時点でやりにくいだけで脅威ではないんだよなぁ……強くなるって大変だなぁ」

「はいはい、それでは今日は初めての勝利にご褒美としてここまでにしてあげますから起きてください」

「はい、師匠」

 

 その言葉に涼介はキビキビと起き上がり服を払う。分かりやすい涼介の行動に妖夢は苦笑する。

 

「明日から厳しくなりますからね」

 

 妖夢はそういうと木刀を一度振り、斬撃を飛ばしてみせる。涼介はそれを見ると大きく肩を落とす。

 

「はい……師匠」

 

 妖夢は涼介の様子にクスクスと笑いを漏らす。

 

「でも、よく思いつきましたね」

「何のこと?」

「相手の力を落す事ですよ」

「あぁ、それね。ゆゆさんが物の勢いを殺して見せてくれたことが有ってね、それで思いついたんだよ」

「幽々子様がですか?」

「うん、そうだよ。普段の生活の中で何気なく使っているところを見てね。でも今思うとあれは見せてくれたのかもしれないと感じるなぁ……」

 

 顔を動かし、涼介は幽々子を見るも聞こえていない為か嬉しそうに大福を食べている幽々子が視界に入るだけだ。妖夢も同様に幽々子を見るが苦笑いを浮かべる。

 

「たまたまかもしれませんね」

「そうかなぁ?ま、それでヒントを得たことは確かなのだから桜を咲かす手伝いでもして恩返しをしないとね」

「前も言っていましたが、弾幕ごっこもできないのにどうするおつもりなのですか?」

「人数が多いなら不意を衝いて一人くらい眠りに落せたらなぁとね」

「無理はなさらないでくださいね。怪我などされるのは嫌ですから」

「おや、心配してくれるのかい妖夢?」

「当り前ですよ、お友達なのですから」

 

 妖夢は屈託なく笑顔を浮かべる。

 

「……眩しいなぁ」

「ん?なんですか?小さくて聞こえませんでした」

「頑張らないとなぁと言ったのさ。私もあの桜が咲いたところを見てみたいからね」

 

 涼介は視線を幽々子から西行妖へと変え眺める。

 

「涼介さんも見てみたいのですか?」

「うん、そうだね。あんな大きな桜が咲くところを見られたら感動ものじゃないか」

「確かに迫力はありそうですよね」

「そうそう、それに咲くのに自分が頑張った達成感もあればその感動はきっと一入(ひとしお)だろうね。だから私も頑張ろうと思うのさ」

「じゃあ、涼介さんが頑張るなら私はもっと頑張らないとですね」

「どうして?」

「幽々子様の願いを叶えることは当たり前です。でも、そこに友人の願いもあるなら私も気合が入ります」

「……妖夢は本当にまっすぐだよね。そうだね、絶対三人で桜が咲くところを見ようか」

「ふふ、でも無茶だけは本当にダメですからね」

 

 嬉しさを含んだ弾んだ返事が妖夢から発される。涼介もそれに笑顔で返す。

 

「あぁ、約束する」

「はい、約束です」

 

 涼介と妖夢の二人は、春の陽気な日差しの中で西行妖を見上げ約束を交わす。幽々子は二人のその仲の良い様子に笑みをこぼし静かに眺める。しかし、穏やかな時間は長く続かない。解決人の、最後の春の到来は近い。それは西行妖の開花にせよ、落葉にせよ、春の到来は異変の終結を意味するのだから。


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