ゲームとは所詮“運ゲー”でしょう   作:人類種の天敵

3 / 11
今回はオリキャラ一杯で大型ボス戦。


監獄

 

 

レアもんが欲しければ先ずはレイドボスを潰しなさい………この世界の、というよりは太古から続くアイテムドロップシステムを採用しているゲームの常識だ。

つまりは、ボス級のモンスターを倒さなければレア銃やレア装備を手に入れるのは夢のまた夢であって………。

更にボス級モンスターを倒すには、それなりの実力やそれなりの装備、それなりの人数にそれなりの我慢が必要である。

 

レア装備を手に入れるためには半端な覚悟はお断りということだーーー!!

 

「………っていうわけで君、アウト」

 

「んなーーーッ!!俺が!俺がアウト!?嘘っしょ!?《バフォメット》さぁぁぁぁん!?」

 

「い、いやぁ《チョビ髭》。今回の主催者こいつだし、人数集める係は俺だけど、最終的な権限はこいつにあんだよなぁ……それにお前、前回の失敗があってこいつに相当嫌われてるわけだ」

 

「んなーーーッ!!確かに!確かに前回はRPGの弾頭を間違えるという小さなポカやらかしちまいましたけども!それでもそこは愛嬌でしょう!?こーんな殺伐とした世界でとても必要な癒し要素でしょうよぉ!?」

 

「クビ、帰れ」

 

「待ってぇぇぇぇぇぇぇぇ………………」

 

プレイヤー名通りアバターの口元にチョビ髭を生やした筋骨隆々のプレイヤーが逞しい2人組に脇を挟まれて部屋から追い出されていく。

その様を眺めながら手元のリストにバッテンを弾き、次の討伐メンバーを選定する。

 

「マジで〜、楽にレア装備が手に入るって聞いて〜、超やべーそりゃ俺も一枚噛まなあかんでしょ!っつーかぁ」

 

「アウト」

 

「広告で見てきてきました!武器はコルトガバメントです!あっ、他にもファイブセブンやUSPを使ってて……」

 

「装備的にアウトです」

 

「あ、どぅも!俺が使うのは何と言ってもRPGーー!!これしか使わない!貧弱な火力なんて……邪道!あ?何?何で腕掴んでんの?ちょ……痛………痛い痛い……ハラスメント警告……………」

 

「はぁぁ……テメェは最初にクビっつったろが………出てけゴミ」

 

「アンタヒデェなぁ!オイ!!」

 

今回の討伐で実力不十分な奴らに続々とアウトを繰り返していく。

ブーブー文句垂れるのは当然だが、今回討伐する相手が相手なだけに俺も遠慮容赦する気はない……この世界は弱肉強食なのだ。

 

「RPGをバカにしやがって〜!!呪ってやる〜!テメェが今後RPG撃つ時は火薬とか火薬とか火薬とか……………なんか湿ってて爆発しないんだからね!」

 

「ウルセェなお前まだいたのかよ!オイ!誰かアイツを殺せ!何のためにグロッケンの外のフィールドでこんなことしてると思う!?テメェみてぇなマヌケをブチ殺すためだよ!バーカ!」

 

「ゥギャァァァァ!!!マッハで蜂の巣ーー!!?」

 

討伐から外れた落伍者どもが見せしめを見て一斉に肩を落として部屋を出て行く。

リストにバッテンや合格のマルを書いていくと、次のプレイヤーで最後となった。

 

「あ、あの……お願いします」

 

最後のプレイヤーは、真っ黒のベストに黒いズボンを履いた、銀髪の髪をした女性プレイヤーだ。

 

「はいはい、ええと、プレイヤー名《サラ》さんね。メインアームは……《MK3A1》?……へぇ!随分とレアなもんを持ってんだ!……もしかして討伐経験者?」

 

リストに記入されたメインアーム欄の武器名を見て感嘆の息を吐く。

このMK3A1という武器、アメリカのパンコア社で開発されたフルオート射撃のできるショットガンで、《ジャックハンマー》の名で知られている物なのだが、軍の販売に失敗してしまい、残念ながらプロトタイプのみの開発に終わってしまったショットガンだ。

このショットガンが使う弾薬力セットはGGOの中でも極めて特殊なマガジンで、マガジン部に弾を詰めて地面に置くことで地雷のように使用できる設計らしい。

プロトタイプのみの開発や構造などの珍しさも相まってか、GGOでもトップクラスのレア度に指定されており、俺も過去一度しか手に入れたことがない、まあ、今はもうないが

 

「サイドアームは無しか」

 

「……あの、やっぱり……ダメですか」

 

サラの言葉に、ひとまず首を横に振る。

レイドボス討伐になるわけで、ボス級にダメージを与えられる高威力の火力……ショットガンを持つプレイヤーは貴重な訳で、俺も今回の討伐においては自前のショットガンを幾つかプレイヤー達に貸し与える予定だ(あくまで貸し与えるだけなので終わったら返却してもらう)。

それに、士気向上の意味合いでもサラのアバターの容姿が優れているというのはとても好評点なので9割がた採用である。

なぜなら、野郎は現実がどんなに残酷でも仮想世界の美少女を崇め奉るものである。

サラのリアルがどんなものかは知らないが、レンやグレン、有名どころじゃ《シノン》のような可愛い美少女プレイヤーは大いに持て囃されアイドルやイッちゃうとこだと女神のように扱われる。

 

「別にハンドガン系のサイドアームが無くってもOKだ。それに、今回のボスじゃハンドガンはあんまり効かないだろうから、別に持ってなくて構わないよ。サラさん…で良いかな?今回はよろしくね」

 

「あっ………は、はい!」

 

つまり、こんな好条件のプレイヤーを採用しない手はないわけで、サラという名前の横にマルを囲って討伐メンバーの剪定を終了する。

 

「あの、今回も……よろしくお願いしますね」

 

「?……あ、ああ」

 

過去にサラと会ったことがあったのか?俺は。

 

「終わったか、アリーヤ」

 

「お、おう、今回は相手が相手だしな。慎重に選んだつもりだ。出し惜しみなしで行く、外にM870やスパス12、ストライカー、USAS、KSGにイサカと盛りだくさんで持ってきたから使いたい奴には使わせろ」

 

「フゥ!豪華だな。分かった、任せとけ。他には?」

 

「特に無い……いや、グレンの護衛には気を遣えよ。あいつ、俺と同じで体力がネェから、あいつに死なれたら計画がパァ!だ」

 

「オーケーオーケー。そこも加味しとく」

 

バフォメットに言っといて今回討伐に参加するメンバー表を纏める。

 

《アリーヤ》男 工兵

《グレムリン》女 工兵・マークスマン

《サラ》女 アタッカー

《バフォメット》男 サポーター

《ジャック・ザ・リッパー》男 アタッカー

《チョコ》女 工兵

《バニラ》女 工兵

《池尻》男 サポーター

《サトウ銀二》男 マークスマン

《スカル》男 コマンダー

《ハニンバル灰》男 タンク

《ソープ》アタッカー

《ユーリ》女 アタッカー

《プライス》女 アタッカー

《はぐメタ》男 スカウト

《牛カルビ》男 タンク

《ジム》男 タンク

 

計17人、野郎ばかりと思えば6人も女性プレイヤーがいる、まあ、これも俺のレア銃ハンターというブランド力あってのものだろう。

 

………………嘘だ、いや、半分は嘘じゃ無いけど。

実を言えばこのパーティーの殆どが俺と銃のトレードないし、なんらかの交流や縁を持つプレイヤー達だ。

バフォメットは言わずもがな、《ジャック・ザ・リッパー》……通称ジャックは、フォトンソードや銃剣での斬り合いを好む変わり者だが、その実力は高く、討伐の際には高確率で彼に同行を依頼している。

 

《チョコ》と《バニラ》の双子プレイヤーはアバターの容姿もあってGGOで本人達には非公式のファンクラブが発足してるほどのかなりの人気者、二人共にトレードしたことがあり、チョコは《SIG MPX-SD》、バニラは《レイストーム》という光学銃を未だに使っているらしい。

 

《池尻》はステータス・外見共に筋肉マッチョのプレイヤーで、そのSTR値を使って軽機関銃のRPDで打撃支援を、更にSMAW ロケットランチャーを用いた火力支援も積極的に行う寡黙なプレイヤーだ。

しかも彼は巨体に似合わずとても照れ屋で紳士的な人物のため、男女問わずかなり人気が高く頼りになる。

 

《サトウ銀二》、バフォメットがリーダーを務めるスコードロン、《フォールンダウン》のメンバーだ。

バフォメットのスコードロンメンバーはキチガイやらポンコツやらまともなヤツがいないが、銀二はそんなメンバーやバフォメットを健気に支える素晴らしく有能なプレイヤーである。

武器はH&K G28 DMRを使用している。

 

 

《スカル》は状況判断能力に長けるともっぱら評判のプレイヤーで、武器は欧州製のSCAR-L。

基本的にステータスはバランス寄りでアタッカーやポイントマン、時にはスナイパーもやることがあるらしい。

今回は俺を含めた全員を指揮してもらう事になる。

 

《ハニンバル灰》、バフォメットのスコードロンメンバーでキチガイ。

関わらぬが吉。

 

《ソープ》ソフトモヒカンのナイスなおっさん。

リアルで娘2人がこんな殺伐としたけしからんゲームをやり始めたと聞いて意気揚々とソフトとヘッドギアを買ったという噂がある。

元傭兵だとか現在進行形で傭兵だとかいろいろ噂が流れているが、その出自は自身のブログツイッターという説がある。

 

《ユーリ》、ソープの娘だという噂があるプレイヤーで、ソープと同じく傭兵だとか言われている。

使う武器はM4A1など。

たまにプライスと一緒にソープを殴る蹴るという行為が目撃される。

 

《プライス》、可愛いハットを目深く被るプレイヤーで、いつもユーリと行動している姿が目撃されるが、ちょっかいを出すプレイヤーやスコードロンは、軒並み謎のソフトモヒカンのおっさんに壊滅されている……らしい。

武器はユーリと同じくM4A1。

 

《はぐメタ》はAGI特化の逃げ戦プレイヤー。

あまりにもAGI寄り過ぎてハンドガンもしくは光学銃しか装備出来なくなったらしい。

そのステータス上、モンスター戦は嬉々として戦うが対人戦となると、敵プレイヤーが銃口を構える時には既に姿を消しているらしい。

 

《牛カルビ》、名物スコードロン《お肉屋さん》のメンバーである牛肉を司るお肉神の1人……と言われている。

彼が崇める牛さんの姿を象ったプロテクターは、かなり硬いらしい。

 

《ジム》はどっかで見たような白いプロテクターを装備した光学銃使いのプレイヤー。

どんなこだわりがあるのやら、モンスター戦でも対人戦でも構わず光学銃を撃ちまくる。

プロテクターと片手に持つライオットシールドの防御性能と生命力の高さに加え、そこそこ速い足を生かして弾を喰らいながら敵に接近、至近距離から光学銃をブッパするクレイジーなヤツだ。

 

 

そして、今回討伐を予定しているのは、現GGOで未だに攻略されていないボスモンスターの一匹であるクリスタルプリズンだ。

こいつの外見はまさに結晶体の監獄と呼ぶにふさわしく、中にはこいつが今までに溜め込んだ結晶体が、長年の過程を経て色々な情報体を摂取、そしてレアな装備やアイテム、銃器に変質するという設定がある。

要はこいつをぶっ殺して中を開くとレアもんがどっさりありますよ、という事だ。

この話を聞いて、今までに攻略を行ってきたプレイヤーやスコードロンを、こいつは《看守》や《囚人》、《鞭》などを使い、全プレイヤーの攻略を悉く潰してきたのである。

こいつ自体が動く事は無いが、その分防御力は圧巻の一声で、工兵によるC4などの爆破技能で大ダメージを与える事が鍵とされている。

 

「さて、討伐の時間だ。今回アタッカーとタンクに任せて欲しいのは俺たち工兵によタゲ取りが行かないような立ち回りと《看守》《囚人》の清掃。サポーターとマークスマンは《鞭》の動きを抑制していてくれ。スカルは展開毎に指示を頼む」

 

「分かった。今回勝てば俺たちが初めての攻略パーティーだな」

 

「前回でヤツにフォトンソードが効くのは分かってんだ。初っ端から飛ばしていくぞ」

 

名前通りのスカルフェイスで顔を保護しているプレイヤーが笑いながらSCAR-Lにマガジンを装弾する。

他にも、頭にバンダナを巻いた頬に傷のあるアバターが、両手に持ったフォトンソードやナイフのグリップを、ジャグリングのようにヒョイヒョイヒョイッと手まわししている。

 

「うーし、車に乗り込め!アルカトラズまでアクセル全開だー!」

 

「「「「「うぇーい!」」」」」

 

こちらも色々と準備を済ませ、出向けるのは監獄フィールド、又の名を「アルカトラズ」。

3台の軽装甲機動車に4人と1台に5人が乗り込み、アルカトラズに行くまででエンカウントしたモンスターには遠慮なく備え付けられている銃機関砲のM2機関銃をぶっ放していく。

 

そのまましばらく北へと北上して洞窟に入り、凍え死ぬような寒さを耐えながら地下の最奥部へと進んでいく。

氷の棘で出来たバリケードを叩き壊しながら進んでいき、目的の建てられている場所へ到着する。

 

 

 

「……………デケェ……」

 

「…………ん、2回目だけど……慣れない、ね」

 

グレンと一緒にクリスタルプリズンを見上げる。

青く透き通る結晶の監獄。

それは建物3〜4階建て程の大きさで、この監獄が発しているのか、時折気味の悪い呻き声が聞こえては洞窟の中を延々と響いていく。

そしてその監獄周りをグルグルと周遊する鞭のような触手。

アレこそが監獄に近づく愚か者達を切り刻み、粉々に叩き潰す監獄の《鞭》だ。

 

「ひゃー、こ、怖わ……バニラちゃんボク怖い……!」

 

「にゃー!?ちょ、チョコちゃん……!い、いきなり抱きつかにゃいでぇ……」

 

2人抱き合いガクガクと震える《バニラ》《チョコ》と同じく、クリスタルプリズンの様相に頬を引きつらせながらストレージの中身を確認していく。

クリスタルプリズンの門をこじ開け、中へ侵入するには俺とグレン、バニラ、チョコの動きが重要となるため、その責任は重い。

指揮を務めるスカルから3分後にGOサインを出すという合図を無線越しに受け取り、改めて武器の最終確認を行っていく。

 

「お、落ち着け……落ち着け……!で、ででで、出来る……お、おお、俺なら出来るぞぉ……おおお」

 

「うぷぷ……み、見なよバニラちゃん。あ、アリーヤ……ビビッてるよぅ……うう……こわわ」

 

「にゃは、や、やっぱりアリーヤはビビリ屋さんだー……コワイィ……!!」

 

「………3人とも……びびり……やーいやーい」

 

「な、なに!?お、お俺はびびってなんかねーし!?く、クリスタルプリズンとか余裕ですし!?あ、アレ?オカシイな……はは、え、MP7の安全装置が外れないぞぞぞぞぞ」

 

「ぼ、ぼぼぼボクだってビビってないけどぉー!?《鞭》とか簡単に避けれるから……あ、アレぇ?おかしいなー、MPXのストックが伸縮しないなななな」

 

「わ、私だってビビってないからにゃー!?レレ、レイストームが少し調子悪いけど………アレれ?レイストームのエネルギーパックが入らないんだけどどどど」

 

『おい、何遊んでる。そろそろ《囚人》共が来るぞ』

 

『ほうら、おいでなすった。ザコどもの出陣だ』

 

無線からスカルとジャックの声が響く。

クリスタルプリズンに視線を落とすと、結晶体の監獄の周囲の地面から、ボコボコとナニカが盛り上がり、土の中から異形の生命体が這い出てきた。

 

『時間だ、始めるぞ。まずアタッカー陣が《囚人》を薙ぎ払って門までの道を作る。そこを工兵4人が通って門の爆破工作を開始、アタッカー、タンクはその間の工兵の護衛だ』

 

クリスタルプリズンを彷徨う《囚人》達がノロノロとした動作でこちらへと歩み寄る。

しかし、それよりも先に《囚人》達の元へ駆けたジャックが両手のナイフで遠慮情けなしにザクザクと切り裂いていく。

ソープ、ユーリ、プライスの3人組が互いに互いの背中をカバーし合い《囚人》の群れをドンドン薙ぎ倒していく。

そして俺たちはジャック達が開いた道から、クリスタルプリズンへと続く門へ敏捷性のあらん限り思いっきり全力疾走していく。

 

「わ、わわわぁーー!!?」

 

「ちょ、チョコちゃぁーん!?」

 

疾る過程でチョコが《囚人》に腕を取られる。

《囚人》の外見は映画でもよく見かけるゾンビそのもので、目は白濁し、肉は削げ、腐食した臭いが漂うアンデッド系モンスターだ。

そしてこの《囚人》のいやらしい所は、腐食性の毒……唾液を口から吐き出し、それによってプレイヤーな装備や戦闘服などにダメージを与え、耐久力を徐々に減少……最終的に破壊するのだ。

ジュウッと服の溶ける音と何かが腐る臭いがし、チョコの戦闘ベストがビリビリッと破られる。

 

「ひゃー!?公然猥褻変態変態羞恥プレイぃー!!?」

 

「クソッ!退けオラァ!」

 

チョコにしがみつく《囚人》の頭を撃ち抜き彼女の腕を掴む。

そのまま周りへMP7A1の弾丸を垂れ流しながら門まで走り抜ける。

 

「ふぇぇ……あ、アリーヤぁぁぁぁ」

 

「涙目じゃねえかお前!?しっかりしろよ!」

 

びぃびぃ泣き喚く少女を引っ張りながら周りの《囚人》を撃ち殺していく。

ノロノロと動くゾンビの頭をゆっくり構えてヘッドショット。

近ずく奴には蹴りをかまして強引に地面に倒し、頭を踏みつけて腐りきって脆い頭蓋を打ち砕いていく。

中堅ぐらいの実力を持つ俺(自称)ならば、このくらいのスムーズな動きは今までの経験からどうすれば効果的か……いや、どんなアクションをすれば生き延びれるか、という動きに直結していく。

例えばこのゾンビ共はプレイヤーの動きに合わせて動くため、障害物やフィールドの段差、ギミックに対応出来ない。

そのため地面に横たわる死骸に簡単に足を引っ掛けて倒れ、鈍く起き上がる前に別のゾンビが体の上に倒れていく。

たったこれだけで動けないゾンビが鼠算式に増えていき、門へと辿り着く負担が軽くなっていく。

 

「あ゛、ア゛リ゛ー゛ヤ゛が゛っ゛こ゛い゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛」

 

「だー!!こんな時だけ抱き着くな!その成長途中の胸を摺り寄せるな!気が散る!つーかお前も撃たんかぁ!?」

 

「う、うぅ、ひっぐ、ごめんねアリーヤ……今までバカにしてごめんなさい」

 

泣きながらゾンビを撃つチョコのヘッドショット率は傍目に見ても俺より速いし正確だ。

俺のような「なんちゃって中級者」とは違い、このバニラとチョコという双子は実力や名声共に「上級に近い中級者」なのだ。

 

「ちょ、チョコちゃん大丈夫……………ちょ、チョコちゃん?」

 

「ん………アリーヤ………」

 

ゾンビを殺していく中で合流したバニラとグレンがピシッと固まってしまう。

俺とチョコの今の姿は、互いに互いの腕を絡ませたまま阿吽の呼吸で背中を守りつつ門まで走り行くベストカップル(?)だと思う。

 

「誤解すんなよ!大事なことだから二回言うぞ!?いいか!誤解すんなよ!?」

 

MP7A1のマガジンを交換して弾を糾弾、そのまま周りの敵はと撃ちまくる。

バニラもグレンも固まった状態から抜け出して個々に《囚人》共を撃ち殺し始める。

 

「………ちぇ、今から良いところだったのに」

 

「あ!?なんか言ったか!?」

 

「な、なんでもないー!」

 

「おい!ちんたら走ってんじゃねぇよお前ら!」

 

チョコが何やらボソボソと呟いていたために聞き返すと、前で戦っていたジャックが《囚人》を斬り殺しながら笑っている。

 

「お前、フォトンソードは?」

 

「ありゃあ楽しいけど制限があっからよ。《看守長》までのお楽しみだなァ……オラ!」

 

………そうだった、《囚人》を切り抜けて門を壊し、中に入ったとして次は《看守》と《看守長》を倒さなければならないのだった。

他のモンスター戦よりも面倒臭く、果てしなく怠い戦いに憂鬱になりながらも、そのデカさからレイドボス史上最多のドロップ率とレア銃排出を期待して《囚人》を殺す。

 

『上空注意!《鞭》が来るぞ!』

 

群がる《囚人》をジャックが切り払った時、無線からスカルの緊急連絡が奔る。

上を見上げると一本の長い長い触手が唸りを上げて飛来し、やがて地面を這うようにこちらへ迫ってくる。

 

「走れえええええええええええええ」

 

「ひゃー♪」

 

「んにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

「んぅ………」

 

「ヒャハハハハハハハハ!」

 

背後に迫る《鞭》をどうにかやり過ごし、あと100メートル先の門へ我先にと駆け出していく。

門の周辺に溜まる《囚人》共へ向けて有澤製の手榴弾を思いっきり投じ、爆発と爆風によって周辺一帯の《囚人》を全て一掃する。

 

「ヒュゥー♪やっぱグレネードっつったら有澤製だなァ」

 

「へっ、分かってんじゃねえか、ジャック。グレン、チョコ、バニラ!始めるぞ」

 

門に辿り着いた俺たちは門をペタペタと触って技能系スキルである《爆破工作》を開始する。

ストレージから取り出したC4爆薬をGGOのシステムがオートで作動するままに最適な配置、最適な角度へと設置していく。

その間俺たちの周りはジャックやサラなどのアタッカーやジムや牛カルビ達タンクが護衛してくれている……………はずだ!

 

「後何秒だァ!」

 

「60秒!」

 

「十分守りきれるな、銀二、もっと火力寄越せ!近づかせんなぁ」

 

「分かった。バフォメット、正面の方にグレネード行くぞ」

 

「プライス、ユーリ!足を撃ってもこいつらは這って来るぞ!頭だ!頭を狙え!」

 

「ハニンバルが邪魔で撃てない」

 

「殺せ殺せ!イライラする!」

 

「はぐメタはまだ死んでないよな!?」

 

ギャーギャーと叫びながら銃声音がいつまでも続いていく。

ボン、ボン、と手榴弾が弾け飛び、幾つもの《囚人》の身体が引きちぎれて行く。

そして門は、大ダメージを与えられる分の爆薬を仕掛け、起爆のタイミングを待つだけの状態になった。

 

「よし、一度下がるぞ!引け!」

 

「《鞭》がまた来る!避けろ!」

 

再び上空から迫り来る《鞭》を辛うじて避けながら門と距離を置き、念のため伏せた状態で思いっきりスイッチを入れる。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーッッッッッッッ!!!

 

 

 

 

爆轟とも言える地響きに《囚人》は全て地面へと倒れ伏し、堅牢を誇る監獄の門が、悲鳴声を上げて中への道のりを開いた。

 




駄文駄文駄文。
もっと描写上手くなりたいな……。
次は監獄中へ突入死ます。書いてる時のイメージはもろにBO2のアルカトラズですϵ( 'Θ' )϶

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。