衝撃的な出会いは次の瞬間バレットサークルの血のような赤い線を視界に収めた着後に消し飛びました(物理的に)
その後メッセージが届いたのでそれを見てみると『お前のMP7は預かった』なんて脅迫文めいた一文が書かれてあり、必死にレア銃あげますんでそれだけは勘弁して下さいとメッセージを送り返し、何事もなく夜は明けて……。
「んじゃ、乙」
「お疲れーっス」
いつものアルバイトを終えて自宅に帰宅、メッセージに添付されていた砂漠フィールドの集合座標へ赴き人質交換の交渉をするため、アサルトライフルにサブマシンガン、PDW数丁にショットガンなど、古今東西問わず色んな銃をこれでもかと詰め込んだ装甲車に乗った。
「おーう、アリーヤ!そんなカモがネギ背負ったような大荷物でどこ行くんだよ!」
「今後の俺の身の安全を守るための交渉だ!ついてくんなよ!」
「そ、そんなこと言われると…つ、着いて行きたくなっちゃうのが人間のサガなんだからねっ!!」
「おぉいいぜ。着いてくるんだったら容赦なくぶち殺してやるよ」
チンピラプレイヤーのバフォメットにフラグを吐き捨て砂漠フィールドへいざ行かん。
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「………ここか」
砂漠フィールド……まあ、どこも似た様なものだが、砂と枯れ木と岩とたまにオアシス。
それしかない、あと廃棄された戦車?
本当にデザートスコーピオンがいるのかどうかも怪しい場所だが、とりあえず指定された座標地点に辿り着くと、急にボンネットにくすんだピンク色の服を着たチビが立っていた。
「……………うおっ!!?びくった!?」
ビクッと肩を震わせて驚きを表し、ドキドキしながら車から出ると、目の前のチビは恐らく俺と同じ様な情けない顔をして手元に俺のMP7A1を取り出した。
「こ、交渉……」
「お、おーけー……まずは昨日の事だな。とりあえず俺はアンタの情報を言い触らさない。これで良いか?」
互いに互いをビビりながら交渉を始め、第一にデザートスコーピオン改めGGOプレイヤーの『レン』に関する情報を他所に漏らさない。
第二に現在『レン』が所持しているMP7A1と俺が持ってきた何らかのレア銃をトレードする。
第三にこれもなんかの縁だしフレンド登録でもしますか……だ。
「色んな銃を持ってきたから、好きなの選んで良いよ」
「っ!うわぁ………色んな銃が、いっぱいある……」
防弾ガラスに顔をひっつかせて中の銃器を覗き込むレンに苦笑しながらドアを開いて一つ一つ解説しながらトレードする銃を決める。
「こっちはM4A1にこれはガリル。まあ、ビルドの構成からして、レンはAGI型だし軽くて速射性の良いサブマシンガンが良いよな。なら、ヴェクターとかステアーTMPとか?ああ、有名どころじゃMP5とUMP45って所か」
「これは?」
ピッとレンが指差す物を見てひっそりとほくそ笑む。
レンが興味を示したのはサブマシンガンの中にポツンと置かれた一つのアタッシュケースだったからだ。
「流石にこれはサブマシンガンじゃないよね…?ど、どう見てもただのアタッシュケースだよね…!」
「ふふ、これを見て度肝抜かすなよ?」
ジィーッとアタッシュケースを注視するレンの期待に応え、近くの岩場に向けて取手の左側に備え付けられたトリガーを軽く引いた。
次の瞬間側面に隠された銃口から曳光弾が飛び出て岩場のあちこちへと銃弾が飛び出していった。
「ひゃ〜〜〜〜〜!!」
「ふっふっふ、MP5K コッファーって名前のサブマシンガンの偽装モデルだ。外見がもろにアタッシュケースだから誰も警戒しない。まあ、このゲームってfpsだから銃も持たずにただこれだけ持ってたら完全に怪しまれるけどね」
まあ、考えによっては幾らでも殺りようはあるということだ。
例えば住宅街、例えば一軒家の室内、例えば飛行機の中……その他諸々エトセトラ。
荒廃した世界でポツンと置かれていても怪しまれない場所に前もって配置し、敵をおびき寄せて、こちらに抵抗の意思はないと騙してからのーーー蜂の巣………とか。
「こ、これっ!これにする!」
「んん?」
ニヤニヤと下らない考えをしていた俺は、レンの興奮による上ずった声に我を取り戻し、MP5K コッファーを装甲車の中へ戻し、彼女が手に持った銃器へと視線を落とす。
「へぇ、P90か」
レンが両手で持った銃、名をーーーP90。
サブマシンガンというより、厳密に言えばPDWに属するこの銃は、一見すると摩訶不思議な外見をしている。
なんというか、その、なんかこう、グリップ部分がホニャホニャ?となってて?かと思えばストックが全て角っとしていて?うーん、表現に困る。
………まあ、そのP90だが、この特徴的な構造の理由は、調べた所人間工学に基づいた設計によるものらしい………やっぱり訳が分からないよ。
「P90……ピーちゃん……かぁ……えへへ、ピーちゃん可愛い……なまら可愛い」
「……レンってもしかして道産子か?……ま、まあ、とりあえずトレードする武器はP90ってことで良いか?」
「うんっ!」
P90のフレームに頰をスリスリしてにへらっと頰を緩めるレンの愛らしい仕草にドキッとしてしまい、それを誤魔化すために慌ててトレードシステムの操作を始める。
程なくして俺のP90と、レンが所持している俺のMP7A1がトレード承認されて、レンは晴れてピーちゃんもといP90を、俺は晴れて愛棒であるMP7A1を、手に入れた、又は無事に取り戻した。
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「………はぁ、なるほど。つまり……あれか、この時間帯……夕暮れ時の砂漠フィールドに、レンが着込んでるくすんだピンクの迷彩服はぴったり溶け込んでるのか」
「うん、というより私ってデザートスコーピオンって呼ばれてるの?」
「………姿の見えないPKプレイヤーの正体がこれとはね……ハハ…ハ」
トレードを済ませ、ついでにフレンド登録ま終わらせて、レンと俺は装甲車の中で何気ない会話をしていた。
例えばレンは普通はかったるいので直ぐにすっ飛ばして誰もやらないチュートリアルを、鬼教官に叱咤激励されながら完遂し、見事自分にあった武器ーーサブマシンガンへと思い至ったこと。
何気なく武器も迷彩服もくすんだピンクにしたら、砂漠フィールドでは思い掛け無い効果を発揮していて、以降姿の見えない暗殺者としてレベルとお金稼ぎのプレイヤーキルをモンスター討伐の合間にやっていること、などなど………まあ、俺の方も色々と話をしたが、それは今は話さなくて良いだろう。
「そうだ、そのP90の迷彩もくすんだピンクに塗装して貰うか?」
「えっ!」
その話に至ったのは、俺の過去話が一つ話し終わり、レンがまたもP90のピーちゃんへ頬ずりを開始した時だ。
「だってレンが姿の見えないPKプレイヤーなのは全身くすんだピンク迷彩のおかげなんだろ?だったらそのP90も初期迷彩から色を変えとかないと、今にバレちまうぞ」
そう言って指し示す指の先には、デフォルトカラーである真っ黒色のP90が。
レンも俺の提案に二つ返事で色を変えることにしたようだ。
「でも、どこで変えよう」
「それなら俺に行きつけの店があるから、そこで変えてもらえよ。丁度、俺も行く所だったしさ」
「本当?いいの?」
「はは、遠慮すんなよ。ほら、行くぞ」
そう言ってハンドルを握ると、アクセルを思い切り踏み込んでGGOの初期フィールドである首都グロッケンへと直行した。
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首都グロッケンの端っこの外れ。
隠れ家的な様相を呈した誂えの店 銃器工房『Gun Army Fire Arms Factory』のガレージ前へと装甲車を停める。
「おーい、グレン!俺だ、とりあえず中に入れろ」
ガレージを数度叩いて大声で戦友の名を呼ぶ。
数秒間待つと重厚なガレージがガラガラガラ……と開き始め、色んな銃器や防弾チョッキ、レーザー対策の対光弾防護フィールドや各種グレネードなどにごった返す油臭い工房がその姿を表す。
「……………やっ」
そしてそんな工房の中から、黒い革ジャケットの上に青色のパーカーを着込み、下は丈の短い青のショートパンツを履いて、首筋に巻いたチェック柄のマフラーの中に口元を隠している、眠くて仕方がないような気怠げな二重瞼のウサ耳少女が片手をひらひらと上げて姿を現した。
レンが工房の中をキョロキョロと眺めている横で、戦友に対して片手を上げて今日の要件を話す。
「よぉ、グレン。今日はMP7A1にスリング付けてもらうのと、この子の銃のカラーリングを変えてもらおうと思ってさ」
「んー……オッケ……」
俺の隣に立つレンをぱちくりと数度瞬きした戦友は、数ミリこくんと頷いて工房の中へと踵を返す。
その後をついて行きながらレンにこの工房と工房の経営者である戦友の紹介を始める。
「あいつの名前は「グレムリン」。俺は専らグレンなんて呼んでるけどな。趣味は色々と、銃を弄ったり意味のないアタッチメントを装備させたりとかが大半だけど、ちゃんと仕事はこなす出来る女だ」
「……どーも」
「よ、よしくおねひゃいひま……噛んだ」
先頭を歩きながらひらひらと片手を振るグレンをレンはほえーっなんて言いながら興味津々に見つめている。
「ガンスミス系のマスタリやスキル習得に半分ほど注ぎ込んでる変人だけど、ステータスはDEX重視で、一度姿を見せたら周囲には既に地雷やらクレイモアやら、兎にも角にも色んな罠が張り巡らされてると思って良いぞ。……トラップが怖くて近付けない、罠解除をしてる内に撃たれてる。そんでついたあだ名が蟻地獄。近付きゃドカン。うろちょろしてもズドン…………こんな怖い女には近づかないよーにってね」
実際、それで被害に遭ってるプレイヤーはレンの実績以上の数を占めるだろう。
革ジャケパーカーに下はショートパンツと首から口元まで隠すマフラーに頭にはウサ耳を付けて戦場を闊歩する気怠げな女。
その外見に騙されてホイホイついていったおバカさん達の末路は、跡形もなく爆散したのちにレアな落し物を容赦なく剥ぎ取られるという至極可哀想な結末だ。
「……マグレ撃ちのトリガーラッキーには……言われたくないなぁ……」
半顔ジト目でこちらをチラチラと見てくるグレンに分かってねぇなぁ、と肩を竦める。
「ステータスも、そこんとこも含めて実は計算尽くなのよ………俺はな!………その点お前はLUXステータスは1すら上げないからドロップはカス武器のまんま………」
「はいはい……それで、銃出して」
鋼鉄製のカウンター席にちょこんと座り、足をブラブラさせながら指示を出すグレンに従ってカウンターの上にMP7A1をゴトリと置くと、レンもその隣にP90を置いた。
「………ん、すぐに済むから……適当に見てなよ」
「おう」
台の上に置かれた銃器に頰を緩めて奥の部屋へ姿を消すグレン。
工房に置いてかれた俺とレンは、言われた通り工房内の品々を探索することにした。
「ふんふん、シールド機構搭載のフォトンソードか。フォトン刃の出力を一時的にオーバーロードさせて対象への銃撃を全て遮断するシールドが張れる……と、まあ、その代わり使ったら暫く使用できないみたいだけど……こりゃかなり使えるな」
グレンの新作であるフォトンソードの性能を見て財布の紐がズルズルと緩む。
早速購入タグを打ち込むと、隣でショーケースを見ていたレンがおっかなびっくり飛び上がった。
「うひゃっ!?ね、値段………」
どうやらフォトンソードの値段を見てびっくりしたようだ。
「あ?ああ、こんくらい溜め込んでる銃を売っぱらえば良いし別に痛くも無いな。だいたいフォトンソードはこんぐらいの値段がゴロゴロしてるぞ」
「ひょ…………」
「それよりグレネードだな、グレネードグレネード!プラズマグレネードより有澤製の超重グレネード!爆破はやはりロマンだよなぁ!!後で装甲車の一つに改造して貰うっかなー」
今の所要塞級スコードロンホームすらも爆砕出来るとか、実は中に詰め込んだロマンを飛ばしていると噂の「OIGAMI」グレネードキャノンを重戦車に載せるか、はたまた「OGOTO」グレネードキャノンを装甲車の一つに載せて貰うか、もしくは両方買って載せるか。
「………ここまでの値段を還元したらどんな額になるんだろ……」
「さあ?そんなの考えたこと無いし、ぶっちゃけグレンの収入源って俺かコアなファンくらいだから一月にこれぐらいのお買い物はフツーだなぁ」
「……………」
「お、グレン特製簡易トラップキットも出てるな。今回はギロチンチョッパーとカミソリブレードにポータブルレザ雷、有澤製爆烈地雷か。前買ったスーパーカーボン製手裏剣は使い勝手良かったしなー……まあ、買うだけ買ってみるか」
「………アリーヤって、お金持ち?」
「うん?レア銃だけはかなり溜め込んでるから、全部売っ払っても遊んで暮らせるのよ」
どこか達観したようなレンにVサインを見せ付けて気に入った、もしくは興味を示した商品に購入タグを次々と打ち込んでいく。
まあ、このくらい買い込めば最低でも2、3ヶ月はグレンの奴も収入には困らないだろうし、工作に金を注ぎ込めることだろう。
うん、ほんとにイイコトシタナー(棒読み)
「ん………毎度ありー……」
「お、終わったか、お疲れさん」
商品の支払いを終えると、奥の部屋からグレンがひょっこりと現れて青い革製のワンポイントスリングを装着したMP7A1とくすんだピンクに塗装したP90を台の上に置いた。
「んじゃ、お前の商品貰ってくぞ」
「……ん、ありがと、これで2、3ヶ月は工房に篭って研究に打ち込めるかな」
恐らくは商品売買の支払額が記入されているだろうカードを見つめてニマニマと頰を緩めるグレンを見て苦笑する。
一体何が出来るかは知らないが、こいつの実験台や商品の被害に遭うこれからの被害者たちに、合掌南無三。
「ここに篭ってばっかいないで、偶にはレイドボス討伐に付き合えよ。昨日、バフォメットとあいつのスコードロンメンバーで行ったけど散々だったぜ」
「………あいつ、バカだしね……良いよ、今度呼んで」
「おう。……そろそろ行くか、レン。新しい相棒の試射だ」
「うんっ!」
ムフッと笑うグレンの工房を後にし、レンを連れてもう一度砂漠フィールドへと。
レンの実体験を元にして工房で買ったくすんだピンク色のシートを装甲車に被せて使う物だけストレージに格納する。
レンも準備出来てるようで、カラー変更とおまけで付けてもらったP90のスリングを肩に引っさげ、意気揚々と夕暮れ時の砂漠へと姿を溶け込ませた。
「なるほど……これは確かに見えないな」
シートを被せた装甲車は物の見事に夕暮れ時の砂漠の風景に溶け込んでしまった、車の中にGPS発信機を置いてなければ誰もこの装甲車の存在に気づかないことだろう。
思いがけずくすんだピンクの脅威を知って乾いた声で笑う。
その後レンを伴って砂漠フィールドを歩いていると、500メートル先にモンスターと戦闘しているスコードロンの一団を発見した。
状況はプレイヤー側の優勢、もう少しすればモンスターを撃破出来るはずで、ここら辺は砂丘の盛り上がりもあって平坦な道は今俺とレンのいる細い砂道のみ……。
つまり、あの連中はモンスターを倒した後でここを通る可能性が非常に高い。
早速工房で買った商品を試してみない手は……………………………ナイ!
「よし!レン、ここの道にさっき購入したポータブルレーザー地雷……通称レザ雷と有澤製の爆雷を試してみるぞ!」
「らじゃ!」
ウキウキとストレージに格納している工作キットを取り出して砂の中をサッサッと穴を掘る。
その中へ円盤型の爆雷と反楕円形のレザ雷を巧妙に設置していく。
レンにオッケーサインをもらい、自分でも偽装の具合を確認する………オッケー!
後はあの一団がここに来るまでひたすら待つのみだった。
ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶
「ヒドゥゥゥゥィィォン!!」
「よし!」
「一丁上がりだぜ!」
「ヒャッハーーーー!」
「イェアーーー!」
砂漠を蠢く巨大蚯蚓がその巨体をゆっくりと砂の地面へと倒していく。
そして巨体蚯蚓の周りで歓声を上げるのは5人からなる黒尽くめのプレイヤー。
その手には光学系ブラスターやレイガン、大口径レーザーライフルなどがそれぞれ握られている。
倒した巨大蚯蚓からクレジットやアイテムなどを回収した5人は、最早こんな場所には用が無いとばかりにスタコラサッサと移動を開始する。
「急げ急げ、デザートスコーピオンが出るかもしんねぇぞ」
「だけどよぉ、ギータ、ここであいつを倒せば俺たちのスコードロンにも箔がつくって言うもんじゃねえか?」
「バカ言うな。姿の見えない敵にどう戦えってんだ!………たく」
「あぁあぁ、やっぱり超激レア装備のステルス迷彩かねぇ〜……。デザートスコーピオンが羨ましいよ」
軽い光学銃を手に持った5人は砂丘に挟まれた細い道のりを駆け足で走っていく。
その時、先頭を走っていたブラスター使いの男は、カチッと何かを踏んだ音に首を傾げ、次の瞬間には眩い閃光と共にその姿を消した。
「〜〜〜ッ!!?ウッ、ソだッろおぁぉ!!?ァダァァァァァァァ………」
その後ろを走っていた男もレーザー地雷による至近距離のレーザー一斉射撃によって2人目の犠牲者と化す。
「バカな!対光弾防護フィールドくらい持ってるはずだろ!!」
「お前こそバカか!こんな至近距離でそんなモンが当てになるか!逃げろ!」
「ウワァァァァァァ」
5人から一気に2人減り、3人は周囲警戒もせずに一目散に逃げ出そうとする。
そこへ、姿の見えぬ暗殺者が、その牙を剥く。
「へーーー」
大型のブラスターを手にした男の下半身が一気に千切れていく。
男の股間部から下をマズルフラッシュが埋め尽くし、上半身のみとなった男は、直後に死亡判定を喰らって装備品を一つ落とし、首都グロッケンへ死に戻りした。
「ひぃ……!!ケースケがAA-12落とした!?」
「拾ってやれよ!あいつ……俺の宝だっつって大金はたいて購入した超レアだろ!?」
「そんな暇ねぇよ!相手はあのデザートスコーピオンだぞ………ウバァッッッ………」
砂丘の向こうへ走った味方は「ドカッ」という発砲音と共に死亡した。
1人残された男は顔を引きつらせながら横を見た。
姿は見えないはずなのに、そこに、獰猛に笑うデザートスコーピオンが、こちらへ銃口を向ける姿が、想像できたからだった。
ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶
「…………爆雷使わなかったな」
「うん」
その場にいた5人のプレイヤーが全滅してドロップ回収……剥ぎ取りを終えた俺は、レザ雷とレンの虐殺で戦闘が終わったことに不満を感じていた。
というか、有澤製爆裂地雷で5人がいた場所がクレーターになるのを期待していたために、かなり肩透かしを喰らったような感じだ。
「……対光弾防護フィールド持ってても至近距離だと普通に喰らうのね。レンも1個くらい持っとけば?軽いし、ブラスター1個とエネルギーパック2個くらいなら持てるだろ」
有澤製爆裂地雷を回収するために周りを掘っていると、レンが早速落ちていた銃ーーー大口径ショットブラスターの「サンダーレイン」を片手で構えた。
「並のモンスターなら至近距離でズドン……これで一撃だ」
一時掘るのを止めてサンダーレイン試射の為に砂丘の向こう側へ。
砂の坂道を下りながらサンダーレインの説明を軽くして戦闘音を聞いて駆けつけた蜥蜴達に撃ってみろと言ってみる。
「えいっ!」
バリバリバリバリバリ……!!
丸い円筒に幾つも空いた穴から雷鳴と複数に枝分かれした光波が近距離に近付く蜥蜴をいとも容易く撃破した。
このサンダーレインという大口径のショットブラスターは、エネルギーパックの消費が激しい代わりに高いダメージを誇る電磁性誘導レーザー弾を広範囲に撃ちだせる優れもので、小型モンスターの広範囲殲滅やレイドボスへの大ダメージ武器など、対人戦以外なら結構頻繁に用いられる万能光学銃だ。
「レンのAGIにモノを言わせて接近。問答無用で撃ち込めば大抵の奴なら一撃死だろ」
おお!と感嘆するレンにアドバイスをしといて蜥蜴群が残したクレジットやドロップアイテムを回収していくと、今回使わなかった有澤製爆裂地雷が地震のような轟音を響かせて起爆、範囲一体を焦土と化した。
「……………知らない内にレイドボスが引っかかったのか」
「あ、レベル上がった」
ピクピクと、クレーターの真ん中で痙攣するレイドボスを、若干哀れみの目で見つめた後に奪った光学銃で息の根を止める。
実は初期にMP7A1が手に入ってから、あんまり筋力値は上げなかったし積載量も面白兵器やグレン特製簡易トラップキットで満杯だったので光学銃を使うのは随分と久し振りになる。
昨日のレイドボス討伐と今回のプレイヤーキル及びたまたまレイドボスをぶっ殺した事で俺もレベルが上がったので、余ってるポイントと共に筋力値を少しだけ上げようかな……なんて考えた。
まあ、積める物は何でもかんでも積み込みたし、スキルもマスタリーもMP7A1運用に必要なPDWマスタリーやクイックドローとかトレジャーハンターなどの技能系スキルなど、必要最低限のモノは取っているので今後のステ振りを諦めた上で幾らか余裕はあるのだ。
「とりあえず今日は落ちるか……」
「そうだね」
レイドボスがいたであろうクレーターにドロップしたレア銃を2、3個搔き集め、それを装甲車の中に突っ込んで首都グロッケンへ帰投し、レンに別れを告げてガンゲイルオンラインの世界から意識をログアウトさせた。
主人公はあんまり強くない……と思う。使ったトラップがクレイジーなだけで中堅レベル上級未満だと思う。
ただ、反則や裏ワザ開発などを日々模索研究しているため、エムが使用するラインなし狙撃などを取得している(ラインなし狙撃は撃てるだけであって実戦だと動かない敵にしか当てられないなど限定的)