次回からはイカジャム一回目を書いていきます。(イカジャム1巻目がアップを始めたようです)
あ、書いてて思ってたんですが、GGOのレア度の基準ってなんなんでしょうね。最新式の奴ほど高くなるんでしょうか?レンのピーちゃんとなシノンのMP−7たんみたいに。
包丁両手に高笑いをあげる2メートル大の身長を誇る囚人服のハゲチャビンと、2メートルほどのハルバードを振りかぶる170程の身長をしたいかつい形相の男。
プレイヤー達は直ぐに直感する。
この2人が《処刑人》と《殺人鬼》だと。
しかし彼らは目の前の敵に対して迂闊に攻撃することを憚れた。
それが、
「…………速い」
「くそっ……エイムが合わない。速いな、あのハゲ」
囚人服を着たハゲは敏捷性重視のステータスをしているのか、目にも留まらぬ速さで監獄内を縦横無尽に駆け回っているのだ。
その速さは凄まじく、たとえ止まった瞬間に照準を合わせて撃ったとしても弾丸が届く頃には別の場所にいるだろう速度だ。
「うひっ!瓦礫飛んできた!?」
「あたっ!?痛いにゃー!瓦礫痛いにゃー!」
「いやはや、末恐ろしい。あの威力は私のアーマーを切断する威力ですねぇ」
ハルバードを振り回す大男の破壊力は絶大で、まともに喰らえば死に戻りは確定だ。
プレイヤー達がどうしよと迷っていた時、下の階から階段を駆け上がる音が響く。
銃口を構えて何者かを待ち構えると、足音の主はアリーヤ達、地下探索班だった。
「こっちは終わった!お前ら、あとは……あー、あれか?おおっ!?……す、すげぇ速いな…おい」
アリーヤは超高速で駆け回るハゲの速度に冷や汗を垂らし、大男のハルバードの威力に腰をガクガク震えさせた。
「うぷぷ、アリーヤビビりすぎかも」
「ダサいにゃー」
「うう、うっせーな!…ったく。ああ、そうだ。ドロップ品でなりきりコス一式ってお前ら持ってる?」
え……ピタッと停止した《チョコ》。
なぜならアリーヤの言ったなりきりコスとは、彼女が手に入れた使い道のなさそうなドロップアイテムだったからだ。
そうとは知らず、アリーヤは手元の本を開きながら宣う。
「いやあ、あのハゲの動きを止めるのが《なりきり看守たんコス》らしいんだよ。大男の方は《なりきり司書コス》な?」
なんでも……と続け、アリーヤの解説が。
それには、モンスターの設定でハゲ頭こと《殺人鬼》は《なりきり看守たんコス》を着たプレイヤーを見ると犬の服従のポーズのように地面に背中をつけて足と腕を折り曲げ、へっへっ、と何かを期待するかのように動きを止めるのだとか。
……余談であるが、これが男が《なりきり看守たんコス》を着ると血の涙を流しながら自滅を図るとか……。
更に《処刑人》の設定では、内気の彼は図書室の《司書》が好きならしく、《なりきり司書コス》を着たプレイヤーを見るとモジモジと動きを止めて恥ずかしさのあまり、憤死するらしい。
なお、男が着用した場合は怒りのあまり憤死するらしい。
「なるほど。好都合だな。コス一式ならチョコが持ってるぞ」
「え?マジで?…………。じゃあ、そういうことだから、チョコ。………な?(悪い笑み)」
ウィンドウを操作してカメラモードを起動させた悪い笑みのアリーヤ。
それに対してチョコは親指を下に突き下ろして涙ながらに訴えた。
「なんでボクがこんな……!意味不明かも〜〜〜〜!!!!」
『キャイ〜ン!ハッハッハッハ』
ドン!ボカーーン!
『あぅあぅあぅあぅあぅ……///』
ドンドンドンドンドンドガガガン!
「はい、しゅーりょー」
大男とハゲ頭が残したドロップ武器の数々にいたくご満悦のプレイヤー達。
そしてその輪の中には《なりきり看守たんコス》と《なりきり司書コス》を披露したチョコがプルプルと震えている。
その目はまっすぐにアリーヤを射抜いているが、それを知ってか知らずかアリーヤは生き残ってるプレイヤー達を手招きして集合させる。
「えー、ととりあえず今回はお疲れ様でしたー。設定ではこの後超弩級ボスモンスターの《クリスタルプリズン》は浄化という形で消滅するようです。その際にドロップ武器を落とすというので我々は今から外に退出後、どっさり山盛りのドロップアイテムを入手して解散になります。アイテムは整理した後、カタログを各自にメール送信しますので欲しいのがあったら後日山分けするわ。んじゃ撤収ー」
うーい、とプレイヤー達は帰り支度を始める。
キラキラと輝く監獄を抜け、ぞろぞろと集まる囚人ゾンビ共を薙ぎ払って止めておいた車に乗り込む。
その数分後、監獄はまるで花火のような煌めきを残して全てポリゴンへと消滅し、監獄があった場所の中心地には大量のドロップアイテムが落ちていた。
そこへワラワラとハイエナどもがニタニタ笑顔で集っていく。
「!!うおおおお、マジかこれ!マジかこれ!?」
アリーヤの手には黒色のマントが握られている。
実はこれ、 メタマテリアル光歪曲迷彩(オプチカル・カモ)という名称の防具で、装甲表面で光そのものを滑らせ、自身不可視化するといういわば究極の迷彩能力をもつマント。レア装備の光学迷彩である。
とあるBoB大会で存在を確認され、一躍時のレア装備と噂されたもので、今回アリーヤはそれをゲットしたのだった。
これには勿論彼の幸運値の高さとそれに関連するアビリティーーーレアアイテム上昇率やアイテムドロップ数を底上げする系の能力が役に立ったのだろう。
「これで他のスコードロンの奴らに追いかけられても逃げ切れる……」
感無量と涙を流すアリーヤの姿に、他のプレイヤー達は呆れ半ばで他のアイテムを物色していく。
「おいおい!これは、 ベヒモスが使ってるガトリング銃のGE M134だぞ!ははは、重い!重すぎるだろ!!こんなの、全然持てないぞ!」
「にゃはははは〜!凄そうなブラスターにゃー!!バズーカ型の光学銃もあるにゃー!」
「とりあえずボクはアリーヤを締め上げて録音記録を消させなきゃだねーって消えるの早ーーっ!?バカアリーヤーー!!」
「JailBrake……ジェイルブレイク?これ、もしかしてハンドガード?なんの銃に対応するものか調べないと……」
今回ゲットできたアイテムの数は総勢で94個。
そのうち半分がゴミウェポンであるわけだが、一部のドロップ武器がかなり強武器、超レア武器で、プレイヤー達はホクホク顔でスコードロンのホームに帰宅、アイテムを保管してその日は乙る事となった。
「えー、と。GGO……サンタクローズ……」
高級マンションの一室、背が高い女性が人差し指で苦労しながらパソコンのタイピングを続ける。
「……本当に出た。GGO初期から続けてる有名なカモプレイヤー……《アリーヤ》初期から始めているため、ステータスはベテランと言えるものの、中の人の実力は低い。……推定ステータス……幸運高い!」
プレイヤーの参照画像ではモザイク線の入った頼りない雰囲気のアバターがピースサインをしている。
………それも、複数の銃口に囲まれた上で、額から大量の冷や汗を垂らしながら。
きっと彼はこの後無念の蜂の巣にされたことだろう。
「アリーヤさんも苦労してるんだ……」
女性ーーー小比類巻香蓮は少しの間、フィールドに出ればカモにされ続けたとあるGGOプレイヤーに同情の念を抱き、次に苦労しているのは自分も同じだけど……と自らの身長の高さに肩を落とした。
「……ん?」
ピコン、と出てきたのは『やっと終わった!(≧∀≦)今回は良いものザックザックでマジ最高(*´ω`*)』というメッセージだ。
差出人はアリーヤ、顔文字を出してくる彼のセンスに香蓮は笑みを含んだ。
「お疲れ!アリーヤさん」
わざわざ口に出さなくても良いのだが、無言でニヤニヤ笑う自分を想像して根暗陰キャはダメだと香蓮はメッセージに打った言葉をそのまま口にした。
その後1人っきりで独り言を言う自分って……と哀愁漂う表情を浮かべるのもまたご愛嬌。
『今度は一緒にどっか行こうか( ´∀`)無敵のマント手に入れたから今度見せてやんよ!ふおおおおぉぉぉぉ フオオオ(((卍(^ω^)卍)))フオオオ』
余程イイ物を拾ったのか、アリーヤのリアルの人が今現在どんなテンションで打ち込んだのかよく分かる文章だ。
うん、楽しみにしてるね!……と、普段の香蓮なら言う場面はないセリフを、GGOのレンが言っているのだと脳内でイメージ補完しつつメッセージを送信。
そのあとはもう夜は深いと香蓮は欠伸を一つ、ベッドに潜り込んだ。
「ふぁ……あー、寝みぃ……」
GGOサーバー内に無数に存在するスコードロンの一つ、レイヴンズネスト。
そのホームの中でたった1人、頼り無さげな背中を見せる男はドロップ品の数々を整理しながらカタログを作成していた。
「アサルト…9。サブマ14、ショットガン6、砂3、ライトマ8、 ハンドガン11、ランチャー系が6、ブラスターが24、特殊系10、光剣3……か。……希望が無けりゃ半分は売っぱらっても良いよなぁ。…つって、ガトリングとかどうするっかねぇ。筋力に余程振りまいてる《ベヒモス》でさえ重量過多で動きが鈍いって話だし……かと言ってショップでぼったくろうにも扱える筋力値の使い手がいない=買い手がつかない…だしなぁ。でも売れればこれだけで何十万……ウヘヘヘヘへ。い、いやいや…でもなぁ…んー」
今の所《ジャック》は光剣総取り、《サラ》はショットガンをいくつか、《チョコ》《バニラ》は軽いものとブラスターを、《プライス》《ユーリ》はジャガーノートを希望している。
《スカル》は金になるものが良いって言ってるし……今回戦力にならなかったバフォメットにはクズレア度のブラスターを、《狂った科学者》を撃ち殺した銀二にはレア度の高い銃を進呈しよう……。
……《グレン》は……『金と昨日の講義のノート貸して栗山くん』か…おいリアル割れやめぇ。
他にも今回の参加者にカタログを渡していき、ドロップ品の整理を終えていく。
しかし最後に使い道のあまりなさそうな武器、ガトリングが壁として立ちはだかるのだ。
「これ…うーん。いや…うーん」
ウンウンと頭を捻り、仕方ないから装甲車にでも括り付けるか……それとも。
「売るとしたらこいつかぁ。でも俺苦手なんだよなぁ…こいつ。……マジで」
アリーヤの持つ顧客リストと銘打たれた名簿の1番上。
お得意様の☆印を書かれたその名前は《ピトフーイ》と書かれていた。
しかし、それを見るアリーヤの顔はとても渋りきったもので、というのも《ピトフーイ》というプレイヤーを彼が苦手とする理由はGGO初期の頃から弾除け・囮・後ろ弾と味方にされたくない裏切りプレイを散々された経験があるからだ。
「まあいいや、当分は飾り物って枠で。物珍しさに客が集まるだろ」
何の気なしにそう呟いたわけだが、後日アリーヤは考えなしの行動を後悔することになる。
なぜならば彼のスコードロンにとあるマシンガン好きのラバーズが立ち上がったからだ。
今回立ち上がった彼らは、とあるカテゴリーの銃にいたく心酔している。
曰く、マシンガンはイイぞ〜^^コレ、、、イイ
曰く、サイドアーム?邪道だそんなもの!マジガンイガイノジュウハミナシネバイイ!
曰く、ブラスター?もっとダメに決まってるだろ!バカか貴様は!キエロ!イレギュラ-!!
彼らはマシンガンが大好きで大好きで大好きなラバーズである。
対MOB戦でも対人戦でもマシンガンしか使わない、正に漢の中の男達なのだーーー。
「「「「「「ガトリング下さい」」」」」」
「だが断る」
金はないけどガトリングは撃ってみたい彼らの出現にアリーヤは頭を抱えたのであった。
実は今回のお話は、とあるGGOプレイヤー達を真改z……ちょこっと強化しようと思って書いただけなんだ(棒読み)。
まさか彼らが第一回イカジャムを制してしまうなんて……誰が予想出来た!?…そう思うだろ?アンタも。思わないのか……?思ってんだろ……?